【東京都・新築一戸建て】太陽光パネル設置を義務づける新たな制度の検討も!

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東京都は2022年6月24日まで、環境確保条例改正案の意見公募を実施。今回の改正案の内容で世間的に大きな注目を集めたのが、「大手ハウスメーカーが建築する新築一戸建ての太陽光パネル設置義務化」でした。都内の住宅取得価格は他の道府県に比べて現時点でも十分高額なのに、今回の改正によってさらに住宅購入が難しくなることを懸念する人もいるのではないでしょうか。 そこで、この記事では東京都の太陽光パネル設置条例案の内容について詳しく解説します。都内で住宅探しを考え始めている人は参考にしてください。

01東京都、新築一戸建てに太陽光パネル設置の義務化を検討

まず前提としてお伝えしておきたいのは、脱炭素化を進めているのは日本だけではないということです。地球温暖化などの気候変動を阻止するために、世界中の国で脱炭素化が進められています。具体的には、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにすることを目標に掲げており、それを達成するために国はもちろん、東京都などの各自治体もさまざまな方策を検討している状況です。そうした状況において、今回検討されたのが環境確保条例の改正案であり、「原則、都内すべての新築建物に太陽光パネル設置を義務付ける方針」となっています。

ただし、ここで誤解してはいけないのが、太陽光パネル設置の義務付けは「一定規模以上の事業者(ハウスメーカーなど)」が対象になっている点です。義務を負っているのはあくまでも「事業者」であり、「一般消費者」ではありません。しかも、都内の供給延べ床面積の合計が年間で合計2万平方メートル以上の比較的大規模な事業者に限定されています。そのため、東京都の試算によると実際に住宅を供給している事業者のうち、上位50社程度のみ(ただし、都内の年間着工件数で見ると、およそ半数)が該当する見込みです。

また義務を負った事業者は、1社ずつに目標とする合計設置量(合計キロワット)が課され、それを達成すればよい仕組みになっています。つまり、すべての住宅に設置しなくても、大型の施設などに太陽光パネルを多めに載せれば目標達成に近づくというわけです。すべての消費者が新築一戸建てを建てるときに、必ず太陽光パネルを設置しなければいけないというわけではありません。

なお、住宅設置型の太陽光パネルの普及促進については、国会でも議論されています。実際に2022年6月13日には、改正建築物省エネ法が参議院本会議で可決・成立しました。ただし、この改正建築物省エネ法では、2025年度以降の新築住宅に断熱性能の基準達成を義務付けたものの、太陽光パネルの設置義務化は見送られています。

それに比べて、東京都の太陽光パネル設置義務化は2022年7月末現在で検討中ではあるものの少し踏み込んだ内容になっており、最短で2024年度中の施行が検討されています。条例が改正されてもすぐに消費者へ影響が及ぶわけではありませんが、これから住宅建設を考えている人は状況を注視しておいたほうがよいでしょう。

02電気代高騰に備えて!新築戸建てに太陽光パネルを設置するメリット

この記事を読んでいる人の中には、脱炭素化の目標達成にあまり興味がない人もいるかもしれません。しかし、太陽光パネルを設置すれば電気代の節約につながるうえ、発電した電気が余ればそれを電力会社に売電して収入を得ることも可能です。住宅用太陽光発電の売電については、設置から10年間は固定価格で電力会社に買い取ってもらえることが保証されています。

特にウクライナ情勢の緊迫化や円安の進行が進む2022年の日本においては、エネルギーコストの増加による電気代の高騰が懸念されており、今後は自家用太陽光発電の必要性が増す可能性が高いです。また、停電時でも太陽光発電で発電できる状態なら電力を確保でき、あらかじめ蓄電池を導入して電気を貯めておけば、発電できないときでも電気が使えます。そういった点からも、地震や台風などの災害が多い日本において、太陽光発電を設置するメリットは大きいといえるでしょう。

ただし、自宅に太陽光パネルを設置するうえで気になるのが費用です。月々の電気代や売電で設置コストを回収できる可能性があるとはいえ、あまり高額になるようだと設置をためらう人もいるのではないでしょうか。経済産業省の調達価格等算定委員会が作成した「令和3年度以降の調達価格等に関する 意見(案)」という資料によると、新築戸建ての太陽光発電設置費用は1kWあたり平均で27.5万円でした。住宅用太陽光発電の平均的な積載量は4.5kWだといわれているので、設置する際の平均的な費用目安は、約124万円=27.5万円×4.5kWになります。

しかし、この費用をそのまま消費者が負担するとは限りません。太陽光発電の設置にあたっては、各自治体で設置費用に対する補助を実施している場合があります。たとえば、東京都であれば以下の基準で補助金制度を利用できます。

  • 3kW以下の場合:12万円/kW(上限36万円)
  • 3kWを超える場合:10万円/kW(50kW以上は対象外)
    ※ただし3kWを超え3.6kW未満の場合:一律36万円

4.5kWの太陽光発電を設置するのであれば、79万円=124万円-45万円(4.5kW×10万円)で設置できる計算です。

なお、売電で得られる収入が毎月どのくらいになるかは、住んでいる地域や日当たりなどの立地によって異なります。どのくらいの期間で設置コストを回収できるかについては建築する住宅の条件によって変わるので、実際に設置する際には入念なシミュレーションで確認しましょう。

03今後、住宅取得で考慮すべきことは?

先述したように、東京都の環境確保条例の改正が対象とする太陽光パネルの設置義務者は、一定規模以上の事業者なので、住宅購入者に費用負担は及ばない仕組みになっています。一方で、2022年6月13日に国会で成立した改正建築物省エネ法では、2025年度以降の省エネ性能向上の義務化がうたわれており、今後の建築費用の負担増につながる可能性は否定できません。世界的な脱炭素化の流れは、今後も続くことが予想されます。そのため、家づくりにおける省エネ性能の向上に関する設備にかかる費用は、将来的に高くなる可能性があるでしょう。

ただし、過去を見てみると法律改正によって消費者の経済的な負担が増加した際には、負担軽減を図るために国が補助金等の支援儀業を打ち出してくる事例も多いといえます。そのため、これから新築戸建てを建てる予定のある方は、東京都以外にも国の補助金や減税制度について注視しておくことをおすすめします。最新の情報をキャッチして、お得に住宅建設を実現しましょう。

04首都圏の注文住宅、平均所得資金は5162万円!購入できるかどうかシミュレーションしてみよう

東京都が検討中の太陽光パネル設置を義務付ける条例改正は、あくまでも提案段階です。実際に施行されるまでには、猶予があります。しかし、脱炭素化は世界中で多くの国が掲げている目標なので、もしも東京都で条例改正が施行された場合、この動きは全国的な広がりを見せる可能性があることも頭に入れておくとよいでしょう。この場合でも、直ちに住宅購入者の費用負担が増す条例になることは考えられにくいですが、住宅建築はもともと多額の費用がかかることもあり、注意が必要です。

たとえば、住宅金融支援機構「2020年度フラット35利用者調査」によると、首都圏の土地付き注文住宅の平均所要資金は5162万円でした。今回、新築戸建てで太陽光パネルを設置する際の費用目安は約124万円なので、今後は「5162万円+124万円=5286万円」ほどかかる可能性があります。東京都環境局が平成28・29年度土地利用現況データなどを活用して調べた「太陽光発電設備現況調査」では、太陽光パネルを設置している棟数は都内全体のわずか3.75%しかありませんでした。しかし、今後は太陽光パネルを好むと好まざるとにかかわらず、設置しなければいけない状況に陥る可能性があることは想定しておく必要もあるでしょう。

以上のことから、首都圏で注文住宅を検討している方は、5300万円程度の購入資金を目途に毎月の返済額をシミュレーションしてみることをおすすめします。サイト内には「借入希望額」「ボーナス返済額」「借入期間」の3つを入力するだけで、簡単に住宅ローンの支払いイメージがつかめる「毎月の返済額シミュレーター」を用意しているので試してみてはいかがでしょうか。また、実際に住宅ローンを借りるにあたって金融機関の審査に不安がある方は、希望の借入額の融資が受けられるかどうかがすぐに分かる「スゴい速い住宅ローン審査」もあるので、こちらもぜひ試してみてください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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