ウッドショックに次いでアイアンショックも!相次ぐ住宅設備の値上げがマイホーム購入に与える影響とは?
2021年以降、YKKAPやLIXIL、TOTOなど住宅関連の企業が、原材料価格の高騰により建築資材などの値上げを次々と発表しています。値上げの背景には何があるのか、そして住宅価格にはどの程度影響が及んでいるのでしょうか?
01原材料価格の高騰により建築資材などが相次ぎ値上げ
2021年以降は、原材料価格の高騰などを理由に、建材や建設設備などを扱う住宅関連企業による値上げの発表が相次いでいます。主な値上げは以下の通りです。
YKKAP
2021年11月30日、住宅用商品・エクステリア商品・ビル用商品などの一部商品について、2022年1月発注分から順次値上げすると発表。値上げ率は約8~15%で、住宅用商品については2022年1月1日発注分から約10~12%値上げされることになりました。
LIXIL
2021年12月7日、住宅用サッシやドア、キッチンやトイレなど計14分野の商品のメーカー希望小売価格を、2022年4月1日受注分から値上げすることを発表。値上げ率は「住宅用サッシ」が10~12%、「玄関ドア(引き戸)」が8~12%、「キッチン」が2~11%、「トイレ」が2~33%などで、最も値上げ率が大きい「水栓金具」は平均で11%程度)値上げされることになります。
TOTO
2022年1月28日、ウォシュレットやユニットバスなど計6商品について、2022年10月1日受注分より値上げすることを発表。「衛生陶器」が3~8%、「ウォシュレット」が2~13%、「水栓金具」が6~12%、「ユニットバス・システムバスルーム」が6~20%、「洗面化粧台」が4~8%、「システムキッチン」は2~7%、値上げされることになります。
AGC
2021年7月15日、国内の建築用ガラス関連製品の販売価格を、2021年10月1日納品分より引き上げることを発表。引き上げ率は、「フロートガラスおよびミラー」が15~20%、「網入板ガラスおよび型板ガラス」が30%、「建築用加工ガラス製品」については10~20%とされました。
サンゲツ
2022年1月14日、2022年4月1日受注分より壁装材・床材・カーテン・椅子生地・副資材の価格を引き上げることを発表。値上げ率は18~24%と予定されています。
02値上げの背景と今後の動向は?
この値上げラッシュの背景にあるのは、まず、原材料価格の高騰があげられます。さらに経済回復が先行したアメリカや中国で需要が拡大したため、輸送に必要なコンテナを確保するための費用も高騰しています。一般財団法人建築物価調査会によると、2021年12月の建築資材物価指数は124.7で、1年前の2020年12月(108.4)を15ポイント以上も上回っており、この1年間で建築資材の価格が急騰したことを示しています(※1)
※1 出典:一般財団法人建築物価調査会 建築資材物価指数
資材の中でも特に価格急騰が目立ったのは木材です。コロナ禍で落ち込んだ経済が回復する中で木材の需要が急増したこと、感染拡大による製材所の休業で木材の供給量が減ったこと、さらにテレワークの普及による持ち家志向の高まりで住宅需要が増えたことなどを背景に、木材需給がひっ迫し、価格が高騰。いわゆる「ウッドショック」と呼ばれる状況が続いています。
企業間で売買される物品の価格変動を示す日本銀行の指標「企業物価指数」によると、2021年12月の「木材・木製品」の物価指数は、前年同月比+61.3%も上昇したことがわかりました(※2)
※2 出典:日本銀行 企業物価指数
鉄や銅、アルミニウムなどの金属の価格上昇も著しく、「アイアンショック」とも言われる事態が起きています。門扉やサッシなど建築資材として幅広く使われているアルミニウムは、原材料である鉱石・ボーキサイトの主要産出国であるギニアで政変が起きたことなどを背景に供給不足が続き、価格が高騰。2021年8月には10年ぶりの高値を記録しました。脱プラスチックの動きが本格化する中、飲料の容器をプラスチックからアルミ缶に切り替えるメーカーが増えていることもあり、今後もアルミニウム価格の高騰は続くものとみられています。
銅は新型コロナウイルスの感染拡大による鉱山の閉鎖で供給量が減少したこと、ガソリン車の数倍銅を必要とするEV車の需要が増えていることなどを背景に価格が世界的に急騰。国内銅取り扱い大手のJX金属が発表した1トンあたりの銅の建値(基準価格)の平均も、2021年1月には87万円だったのに対し、2022年1月には117万9400円にまで高騰しています(※3)。
※3 出典:JX金属 胴建値
脱酸素の動きを背景に、化石燃料を使わないエネルギーへの転換が加速する中、風力発電の設備や次世代送電網(スマートグリッド)の材料として欠かせない銅の需要は今後さらに増加すると予測されており、銅価格の高騰傾向は続くものとみられます。
物流コストも上昇
世界的な原油価格の高騰などを背景に、物流コストも上昇しています。公益財団法人日本ロジスティックスシステム協会が行っている物流コスト調査によると、調査対象の企業・約170社の売上高に対する物流コスト比は、2020年度は前年度から0.47ポイント上昇し、平均5.38%と14年ぶりの5%台を記録。2021年度はさらに上昇して平均5.7%と、過去20年間の調査において最も高い売上高物流コスト比率となっています(※4)。
※4 出典:日本ロジスティックスシステム協会 2021年度物流コスト調査結果(速報値)
なお、物流業界では働き方改革関連法の適用により、2024年4月1日以降、ドライバーの年間の時間外労働時間の上限が、960時間に制限されることによって運賃の値上げ、物流効率の低下などの問題(いわゆる「物流の2024年問題」)が生じることが懸念されており、これが物流コストのさらなる増加につながるのではないかとも指摘されています。
03懸念される住宅価格上昇
建築資材の価格や物流コストの上昇分は、結果として工事費用に転嫁されるため、住宅価格の上昇が懸念されています。国土交通省が毎月発表している「建築工事費デフレーター」(工事費の相場を示す指数)を見ると、2021年11月の木造住宅の指数は118.0で、1年前の2020年11月(106.6)から約11ポイントも増えています。非木造住宅も同様に指数が上昇しており、2021年11月の指数は115.7で、前年11月から約8ポイント上昇しました(※5)。このまま工事費の上昇が続けば、住宅価格の上昇は避けられないものと考えられます。
※5 出典:国土交通省・建設工事費デフレーター
首都圏では、すでに住宅価格の上昇が続いており、一般社団法人不動産研究所の「不動産研住宅価格指数」(首都圏のマンション価格を示す指数)でも、2021年11月の指数は106.31で、17カ月連続の上昇となっています。
※6 出典:不動産研究所・不動研住宅価格指数
マイホーム購入を検討している人にとっては、「いつ住宅価格の高騰が一段落するのか」が気になるところですが、残念ながら明確な答えは誰にもわかりません。今後の推移を見極めようと住宅の購入を控える動きも当然考えられますし、逆に「これ以上高くなってしまう前に購入しよう」という人もいるでしょう。いずれの場合も、市場価格の動向だけにとらわれることなく、自分にとって無理のない購入金額を把握し、余裕ある返済計画を立てた上で購入を決めることが大切です。
04家探しを始める前に、買えるかどうかがわかる「スゴ速」
「スゴ速」は、家を決める前に住宅ローンが借りられるかどうかを調べることができます。面倒な書類のアップロードなどは不要で、いくつかの情報を画面上に入力するだけで、金融機関の審査を受けることができます。マイホーム購入の第一歩として、「スゴ速」を利用してみてはいかがでしょうか?
監修:相山華子
ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。
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