ウッドショックで1棟あたり100万円超の値上げも!?一戸建ては今が買い時?原因や見通しを解説

2021.08.20 10

01ウッドショックとは?

2020年以降、世界的に木材の価格が高騰しています。かつて原油価格の急上昇が世界経済の混乱を招いたオイルショックになぞらえて「ウッドショック」と呼ばれる状況が起きています。日本でも住宅建築などに使われる丸太や製材の輸入価格が上昇し続けており、その影響から国内で流通する丸太や製材の価格も上昇、特に輸入製材の価格は2021年5月に前年同月比40ポイント以上も高くなっています。こういった木材価格の突然の上昇により、住宅用木材にも価格高騰や供給の遅れが生じており、新築一戸建て住宅市場への影響が懸念されています。

出典:新型コロナがもたらす供給制約:ウッドショックの影響(経済産業省)

02ウッドショックはなぜ起こったのか?

ウッドショックにはいくつかの原因が指摘されていますが、その一つがアメリカでの動きです。

もともと超低金利政策による住宅購入ブームが起きていたアメリカでは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うリモートワークの普及を機に、市民が郊外に住宅を購入したりリフォームしたりする動きが加速しました。特に2020年5月のロックダウン解除後は住宅建築需要が急激に拡大しました。経済産業省の資料によると、2021年1月のアメリカの住宅建築許可指数は、前年同時期に比べ約30ポイントも上昇しています。

出典:新型コロナがもたらす供給制約:ウッドショックの影響(経済産業省)

さらに、アメリカでは山火事の頻発や虫害により木材が不足傾向だったことに加え、コロナ禍で多くの製材所が休業を余儀なくされたことや、木材輸送用のコンテナが不足したことなども相まって、木材の需給バランスが崩れ、世界的な建築用木材の価格高騰、いわゆるウッドショックに繋がったものとみられています。そして、そのあおりを受ける形で日本の住宅用木材の価格も高騰しています。例えば、農林水産省の調査(※1)では、2021年6月の「米まつ丸太」(米国産松材の丸太)の価格は前年同月比+127%(1立方メートルあたり2万6600円)、「米つが(栂)正角(防腐処理材)」(米国産つが角材)は前年同月比+130.2%(1立方メートルあたり10万3600円)となっています。

またこうしたアメリカの状況に加え、中国での木材需要の拡大も、ウッドショックの原因の一つと指摘する声もあります。

※1 出典:農林水産省「木材流通統計調査(令和3年6月)」

03ウッドショックの影響

では、ウッドショックによって日本の住宅市場にはどのような影響が出ているのでしょうか。

国土交通省が2021年6月25日~7月5日に全国の中小工務店109店を対象に行った調査(※2)によると、2021年6月末時点で「木材の供給遅延が生じている」と回答した工務店は全体の94%に上り、そのうち36%は「現在の工事に遅れが生じている」と回答。また、木材の供給が遅延していると回答した工務店のうち35%が「木材の供給遅延により、ここ1か月の間に新規契約の締結を見送った」とし、34%が「資金繰りが新たに厳しくなっている」と回答しました。ウッドショックによる木材の品薄・価格高騰によるしわ寄せが、住宅市場に少なからぬ影響を及ぼしている現状が明らかになりました。

※2 出典:国土交通省「中小工務店における木材の供給遅延の影響について」

経済産業省による分析でも、ウッドショックによる新築一戸建て住宅販売業への影響は深刻です。同省によると、新型コロナウイルス感染拡大の影響が甚大だった2020年においても、不動産業全体では例年とほぼ同じ水準で推移しました。一方で新築一戸建て住宅販売業は、コロナ禍の影響を受けて2020年4月に大きく落ち込んだものの、8月までに大きく回復。結果として2020年全体では前年を上回る水準となりました。しかし、月単位で推移を見ていくと下に示したグラフの通り、新築一戸建て住宅販売業は2020年8月をピークとして低下に転じ、輸入材の価格が上昇に連動する形で低下傾向が続いています(※3)。

先に紹介した国土交通省の中小工務店対象の調査結果と照らし合わせると、新築住宅の購入を検討している人は多いにもかかわらず、木材の供給不足や価格高騰が原因で実際の販売が伸び悩み、新築一戸建て住宅販売業界全体のコロナ禍からの回復も足踏み状態にある状況が見て取れます。

このままウッドショックが続くと、住宅購入者側には「条件に合う土地が手に入ったのに、木材が調達できないために新築工事に着工できない」「木材価格が高騰したため、当初の予算をオーバーしてしまう」といったリスクが生じてしまうことになります。木造住宅は購入価格のおよそ1割が木材費だと言われています。実際、2021年6月には大手住宅メーカーによる建築費用の値上げが相次いで報道され、その額は1棟あたり数十万円から100万円前後に上ると言われています。

※3 出典:新型コロナがもたらす供給制約:ウッドショックの影響(経済産業省)

04林野庁も対応に乗り出すが

こうした事態を受け、国も対応に乗り出しています。林野庁では木材需要のひっ迫解消を図るため、4月14日に木材の加工、流通、輸出入業界の関係者らを招いた情報交換会を開催したほか、4月30日付で主要業界団体に対して住宅建築向け木材の適切な発注や、過剰在庫の抑制を呼び掛ける通知を出すなどして対応を進めています。しかし、2021年7月現在、具体的にどのような対策を取るかについては示されておらず、4月14日の林野庁の情報交換会でも林野庁の木材産業課長は「今後の予測は難しい」としたうえで、「しばらくこの状況が続くことを前提とすると、木材を使う側の方々におかれてはまず、木材は乾燥の時間も必要である等、国産材を即座に動かすのは難しい性格の材料であることをご理解いただいた上で、どのような行動をとっていくべきなのか、このような場で中長期的な議論を続けたい」と述べるにとどめています(※4)。

※4 出典:林野庁「令和3年度 国産材の安定供給体制の構築に向けた中央需給情報連絡協議会臨時情報交換会 議事録」P8

05住宅購入はどう判断すべき?

では、このような状況の下で新築一戸建て住宅の購入を検討している場合、購入のタイミングはどう判断すれば良いのでしょうか?

すでに売り出されている分譲一戸建て住宅であれば価格の変動は考えにくいので問題はありませんが、注文住宅の場合は、特に急いでいないのなら、しばらく様子を見るのが賢明な判断だと考えられます。というのも、ウッドショックが近々沈静化するのか、それとも、もうしばらくの間続くのかが現状では明確に予測できないからです。この状況で注文住宅の新築契約を結んでしまうと、最悪の場合、土地を購入して基礎工事を始めたのに、予定していた木材が確保できなくなって、工事が中断してしまったということにもなりかねません。一部では「アメリカの住宅購入ブームが去って需要が落ち着けば、ウッドショックバブルがはじけて木材価格は下落する」という見方も出ており、木材価格の高い今、焦って購入してしまうと、「下落してから買えばよかった・・・」と、後悔することにもなりかねません。

それでも、早く注文住宅を購入したい場合は、ハウスメーカーや小売店に木材を確実に確保できるかどうかを確認した上で判断するようにしてください。

今後売り出される分譲一戸建て住宅については、将来、同水準の住宅価格がいくらになるかを予測することは困難なので、通常の住宅を購入する時と同様に、その物件の販売価格から判断していくことになります。

また、新築へのこだわりがなければ、同じ一戸建て住宅でも現在の木材価格の影響を受けない中古一戸建て住宅を選択肢に入れるのも一案です。築浅の物件を選べば、素材や機能面、耐震性などでも新築一戸建て住宅と遜色のない物件が割安な価格で手に入れられる可能性もあります。

06ウッドショック、今後も起きる可能性は?

今回のウッドショックを機に、輸入木材への過度の依存を問題視する声も高まっています。実際、日本では住宅の建築などに使われる木材の7割弱が輸入木材であることから、このまま依存を続ければ、たとえ今回のウッドショックを乗り越えたとしても、海外で木材需要が拡大するたびに木材の供給不足や価格高騰、つまりウッドショックに直面するおそれがあるのです。

そこでウッドショックのリスクを避けるために、検討されているのが国産材へのシフトです。しかし、国内の林業は労働力不足や労働者の高齢化が深刻な上、市場価格が維持できないなどの構造的な問題を抱えており、必要量の国産材の安定供給は難しく、国産材へのシフトは容易ではありません。もちろん、輸入木材への依存度が高い日本のサプライチェーンの脆弱性の改善については、今後も引き続き議論していく必要がありますが、その解決策が具体化するには、かなりの時間を要するものとみられます。

新築一戸建て住宅の購入を検討している人は、今後も注意深く木材価格の推移を見守るとともに、注文住宅の場合は、信頼できる工務店やハウスメーカーの意見を参考にしつつ、納得できる価格で購入できるタイミングを慎重に見極めることが大切です。

07住宅購入予算シミュレーターで予算計画を立ててみよう

ウッドショックの原因や影響を見てきましたが、住宅の購入を具体的に検討するにあたっては予算の検討が必要となります。完済までの予算計画は「住宅購入予算シミュレーター」を利用して試算することができます。このシミュレーターには3つの予算パターンが用意されていて、住宅ローンの返済額や将来のライフイベントも加味した貯金推移も確認することができます。無理のない住宅購入予算の検討にお役立てください。

相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

関連キーワード

事前審査・相談

ご利用上の注意

  • 本記事は情報の提供を目的としています。本記事は、特定の商品の売買、投資等の勧誘を目的としたものではありません。本記事の内容及び本記事にてご紹介する商品のご購入、取引条件の詳細等については、利用者ご自身で、各商品の販売者、取扱業者等に直接お問い合わせください。
  • 当社は本記事にて紹介する商品、取引等に関し、何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとします。
  • 当社は、本記事において提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。本記事には、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。本記事のご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただいたものとします。

0