価格は上昇なのに注文住宅の床面積が縮小!上昇する坪単価を調べて建物価格の相場を知ろう!

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住宅金融支援機構が2021年8月に発表した「フラット35利用者調査」によると、注文住宅・土地付き注文住宅は価格上昇が続いているのに反して、床面積は縮小傾向にあることがわかりました。建物価格の目安を知るために使われるのがよく目にする「坪単価」です。坪単価を見る際に注意しておきたいことを説明します。

01注文住宅・土地付き注文住宅、価格は上昇傾向なのに床面積は縮小

独立法人住宅金融支援機構が2020年4月から2021年3月までの間にフラット35を利用して住宅を取得した人を対象に行った「2020年度フラット35利用者調査(※1)」によると、調査対象者が取得した注文住宅の価格(所要資金)の平均は3534万円で、2014年以降7年連続で上昇が続いています。土地付き注文住宅の平均価格も2013年以降上昇を続け、2020年は4397万円となっています。

地域別にみると、注文住宅・土地付き注文住宅ともに首都圏の平均価格が最も高く、次いで近畿圏、東海圏という順になっています。最も伸び幅の大きいのも首都圏で、中でも首都圏の土地付き注文住宅の平均価格は上昇が著しく、昨年の4993万円(※2)に比べて約170万円も高い5162万円でした。価格上昇の背景としては建築資材や人件費の高騰、コロナ禍に伴う生活様式の変化による戸建て需要の増加などが指摘されています。

※1 出典:独立行政法人住宅金融支援機構「2020年度フラット35利用者調査」

※2 出典:独立行政法人住宅金融支援機構「2019年度フラット35利用者調査」

2020年の注文住宅・土地付き注文住宅の平均取得価格

地域 注文住宅 土地付き注文住宅
首都圏 3808万円(3772万円) 5162万円(4993万円)
近畿圏 3746万円(3555万円) 4540万円(4343万円)
東海圏 3606万円(3522万円) 4412万円(4278万円)
その他地域 3356万円(3276万円) 3949万円(3869万円)
全国 3534万円(3454万円) 4397万円(4257万円)

※()内は2019年の平均取得価格

その一方で床面積は縮小傾向にあります。同じくフラット35利用者調査によると、2020年に取得された注文住宅の床面積の平均は124.4平方メートルと、2014年以降7年連続の縮小となりました。土地付き注文住宅の床面積も縮小傾向にあり、2020年は平均111.1平方メートルと3年連続で縮小しています。縮小は注文住宅の方が大きく、首都圏のみならず近畿圏・東海圏・その他の地域でも床面積の平均が前年を下回りました。土地付き注文住宅は全国的に減少幅が小さいものの、東海圏で0.4平方メートル、その他の地域で0.7平方メートルの縮小となっています。

床面積が縮小傾向にある背景としては、価格高騰を抑えるために建築規模を縮小するケースが増えていること、世帯人数が減りコンパクトな住宅を選ぶ人が増えていることなどが考えられます。

2020年の注文住宅・土地付き注文住宅の平均床面積

地域 注文住宅 土地付き注文住宅
首都圏 123.9㎡(125.2㎡) 105.8㎡(105.8㎡)
近畿圏 127.4㎡(125.3㎡) 111.2㎡(111.0㎡)
東海圏 126.5㎡(127.8㎡) 114.8㎡(115.2㎡)
その他地域 123.4㎡(125.6㎡) 113.1㎡(113.8㎡)
全国 124.4㎡(125.8㎡) 111.1㎡(111.5㎡)

※()内は2019年の平均取得価格

なお、この調査では建物の面積が平方メートルで表されていますが、戸建て住宅の面積は坪数で表されることも多いものです。1坪は約3.3平方メートルですから、2020年の注文住宅・土地付き注文住宅それぞれの全国平均面積を坪数に換算すると、それぞれ次のようになります。

注文住宅 124.4㎡ 37.6坪
土地付き注文住宅 111.1㎡ 33.6坪

02坪単価で建物価格の目安を知ろう

「坪」は日本独自の面積の単位で、日常生活で使われることは減っていますが、建物の価値を表す際には、いまだに「坪単価」が用いられることが多く、ハウスメーカー(含む工務店)の広告などでよく見かけます。

坪単価とは、建物の床面積1坪(3.3平方メートル)あたりの建築費を算出したもので、次の式で求めることができます。

坪単価=建物の本体価格÷延べ床面積(建物の床面積の合計)

例えば、建物の本体価格が3000万円で、延床面積が50坪なら、3000÷50=60なので、その建物の坪単価は60万円ということになります。注文住宅の価格は上昇していて床面積が縮小しているということは、坪単価が上昇しているということになります。また、土地の面積が同じで坪単価の異なる建物を比べる場合には、原則として坪単価が高い建物はより建築費が高いと見当をつけることができます。

ただし、何をもって「建物の本体価格」とするのかについて、法的な定義がないことに注意が必要です。「建物の本体価格」の中身はハウスメーカーごとに異なるため、「建物の本体価格」にエアコンや照明器具の代金、外構工事費用やガスの配管工事費用などまで含めているハウスメーカーもあります。また、ハウスメーカーによっては延べ床面積のかわりに、施工面積を利用して坪単価を算出するケースも珍しくありません。施工面積とは、各階の床面積の合計である延べ床面積に、ベランダや玄関ポーチなどの面積を加えた面積のことです。

つまり、例えば建物Aと建物Bの価値を坪単価で比べようとする場合、AとBが同じハウスメーカーによる建物であれば「建物の本体価格」と「延床面積」の基準が同じなので比較検討する意義はありますが、異なるハウスメーカーによる建物である場合は、「建物の本体価格」の基準が異なっていたり、延べ床面積ではなく施工面積を使っていたりする可能性があるので、適切に建物の価値を比較検討できないおそれがあるということです。注文住宅の施工を依頼するハウスメーカーを坪単価で選ぶ場合は、以下の点をハウスメーカーに確認した上で判断することが重要です。

契約前に確認したいポイント

坪単価を元に、ハウスメーカーに注文住宅の施工を依頼するときは、以下のポイントを確認しましょう。

「本体価格」に含まれる内容

建物の建築費以外に、エアコンの設置や外構工事、ガスや電気の屋外配管費など建物本体の建築費以外の費用が含まれていないかどうかなどを確認しましょう。

延べ床面積か施工面積か

坪単価の算出に使われているのが「延べ床面積」なのか、バルコニーやポーチの面積など各階の床面積以外の面積が含まれた「施工面積」なのかを確認しましょう。

なお、各ハウスメーカーの「本体価格」や「延床面積」の範囲が明確にされ、かつ坪単価の根拠が確認できたとしても、この時点の坪単価は、あくまでも実際の施工前の見積価格であることを忘れないようにしましょう。坪単価は注文住宅の価格の1つの目安として上手に活用しましょう。

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相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

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