物件売却時に頼れる「レインズ」、一般人が類似情報を閲覧する方法を紹介!
不動産の売買の際に耳にすることが多い「レインズ」とは、どのようなものなのでしょうか?会員となっている不動産業者だけが物件情報を確認できるシステムの仕組みや、一般人が類似の情報にアクセスする方法などを解説します。
01レインズとは
「レインズ(REINS)」とは、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムのことで、正式名称を「Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)」と言います。
レインズに登録された不動産売買情報は国土交通大臣が指定する「不動産流通機構」によって一元管理され、会員登録した不動産業者のみが閲覧できる仕組みとなっており、売りたい人や貸したい人の依頼に基づいて、不動産業界全体が連携して買いたい人や借りたい人を探します。また、買いたい人や借りたい人には、不動産会社がレインズに登録された情報から物件を紹介します。
レインズは信頼できる不動産情報交換の場として全国で広く利用されており、会員数は13万9161社(※2020年末時点)で、今や日本における不動産取引に不可欠なインフラと言っても過言ではありません。
※出典:公益財団法人不動産流通推進センター「指定流通機構の活用状況について(2020年)」
宅地建物取引業法では、不動産の売主と専属専任媒介契約か専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者(不動産業者)に対して、レインズに取引対象の物件情報を登録することを義務付けています。国ではより安全でスムーズな不動産取引を実現するために、レインズ会員の不動産業者が売主または買主と「専属専任媒介契約」または「専任媒介契約」を結んだ場合、契約後一定期間内にレインズに対象物件の情報を登録すること、そして売主・買主に定期的に業務報告をすることなどを義務付けています。義務の内容は、媒介契約の種類に応じて異なります。不動産業者と「専属専任媒介契約」または「専任媒介契約」を結んだら、それぞれの義務が適正に守られているかどうかをしっかり確認するようにしましょう。一般媒介契約もあわせた3つの媒介契約制度の特徴は以下の通りです。
3つの媒介契約制度
専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
契約(依頼)できる不動産業者 | 1社だけ | 1社だけ | 複数の不動産業者に依頼できる |
媒介契約の期間 | 3カ月以内 | 3カ月以内 | 3カ月以内 |
レインズへの登録 | 義務:契約締結日の翌日から5日以内(不動産会社およびレインズの休業日は除く) | 義務:契約締結日の翌日から7日以内(不動産会社およびレインズの休業日は除く) | 任意 |
登録証明書 | 義務 | 義務 | 登録した場合は義務 |
業務状況の報告 | 1週間に1回以上文書または電子メールで報告 | 2週間に1回以上文書または電子メールで報告 | 任意。報告を求めることは可能 |
成約登録 | 義務 | 義務 | 任意(レインズの規程では要登録とされている) |
レインズ利用の流れ
レインズを使って売却・購入する場合の大まかな流れを紹介します。
売却の流れ
- 売主が不動産業者に売却を相談
- 不動産業者がレインズを検索して周辺の相場や取引事例を確認
- 調査やレインズ検索の結果などをもとに不動産業者が不動産を査定、売却価格を売主に提示
- 不動産会社から専属専任媒介契約、専任媒介契約、一般媒介契約の3種類の媒介契約の内容や違いの説明を受け、納得した上で媒介契約を書面の交付により締結
- 不動産業者がレインズに不動産の情報を登録。登録証明書が売主に発行される
- 売主は登録証明書を受領、登録内容を確認
- 不動産業者から業務処理状況の報告を受ける
- 不動産会社から買主(購入希望者)の紹介を受け、内見等の案内をし、購入申込みがあれば不動産会社から報告を受ける
- 買主と価格等の売却条件で合意すれば売買契約を締結し、書面の交付を受ける
- 不動産業者が成約した価格などをレインズに登録
- 買主から残金を受領し、物件を引き渡す
購入の流れ
- 買主が不動産業者に購入を相談
- 不動産業者が買主の希望条件をもとにレインズで検索
- 不動産業者がレインズの検索結果などをもとに買主に物件を紹介
- 不動産業者が売主側の不動産業者に内見を申し込み。内見後、買主から希望があれば、購入を申し込む
- 売主と価格等の条件で合意すれば、宅地建物取引士から重要事項の説明を受け、売買契約を締結し書面の交付を受ける
- 売主側の不動産会社が成約した価格等をレインズに登録
- 売り主に残金を支払い物件の引き渡しを受ける
レインズ利用のメリット・デメリット
不動産業者はレインズが整備される前まで、自分の持っている情報、あるいは自社のネットワークの範囲内でしか売主や買主を見つけられませんでした。そのため物件の選択肢は少なく、売主は条件の合う買主を、買主は条件に合う物件を見つけづらいことが課題となっていました。レインズが不動産業者や地域の壁を越えて、全国の不動産情報を1つのシステム上で共有できるようにしたことで、不動産の流通促進などのメリットが生まれましたが、一方でレインズを利用することにはデメリットもあります。売主側と買主側それぞれのメリットとデメリットを説明します。
レインズ利用のメリット
- 売主側
- 売りたい不動産の情報を全国の不動産業者に共有してもらえるので早期売却が期待できる
- 類似物件の成約価格を確認できるので、適正な価格設定ができる
- 買主側
- 豊富な掲載物件の中から条件に合う物件を探すことができる
- 全国の不動産情報が網羅されているので、遠隔地の物件の情報も得られる
- 不動産業者に条件に伝えれば検索してもらえるので、物件探しの手間が省ける
レインズ利用のデメリット
- 売主側
- 次々に新たな物件情報が追加・更新されるため、掲載後、早期に買い手がつかないと、情報が埋もれてしまい、売れ残ってしまうリスクがある
- 不特定多数の人に物件情報を知られてしまう
- 買主側
- 閲覧者が多い分、条件の良い物件はすぐに売却済みになってしまう
02レインズは一般人では利用できない?
先にも述べたとおり、レインズは不動産業者のためのシステムであり、登録された情報はレインズ会員に課された守秘義務を前提に交換されているため、一般には公開されていません。つまり、レインズを利用できるのは原則としてレインズを運営する「不動産流通機構」に会員登録した不動産業者に限られ、一般人の利用はできないことになっています。
03レインズを一般人が利用するには?
一般人がレインズを直接利用することはできません。ただし、例外があります。売主は、自身が売り出している物件の登録情報や取引の進捗具合だけなら閲覧できるようになっています。先で触れたように、専属専任媒介契約、専任媒介契約を交わした不動産会社は、依頼主に登録証明書を渡します。登録証明書には、レインズへログインするためのアカウント情報が記載されており、売主はそれを使って登録状況を確認することができるのです。
また、レインズに登録されているものと類似の情報を他の方法で確認することができます。
レインズとほぼ同じ物件情報を確認できる「不動産ジャパン」
公益財団法人不動産流通推進センターが運営しているウェブサイト「不動産ジャパン」では、国内のほぼすべての不動産会社が加盟する不動産流通4団体から提供される不動産物件情報・不動産会社情報の提供を行っており、レインズに登録されている物件情報とほぼ同じ情報を確認することができます。レインズと同様に情報は随時更新される上、不動産の種類別、地域別に物件が探せる検索システムも備わっており、間取りや専有面積、価格なども確認できるので、住まい探しをする際の参考にすると良いでしょう。ただしレインズで確認することができる成約情報は掲載されていません。
REINS Market Information:実際の取引価格の確認が可能
国土交通省が不動産取引に対する消費者の不安解消を目的に2007年から運用しているウェブサイトで、レインズに登録された成約価格を確認することができます。サイトにアクセスし、検索システムに希望する最寄り駅や駅からの距離、間取りなどを入力すれば、実際の取引価格(1平方メートル当たりの価格)を閲覧することができます。個別の取引が特定できないように所在地の番地など詳細な住所は提示されませんが、エリアの相場を知るには便利なシステムとなっています。不動産業者に相談する前に、まずは相場を知っておきたいという場合に活用すると良いでしょう。
04無理のない住宅購入予算を知るには?
住まいの購入を考えている場合、物件の相場を確認できたら、予算内で購入可能かどうかを見極めた上で具体的な物件探しに入ることをおすすめします。「住宅購入予算シミュレーター」では、収入や家族構成など9項目を入力するだけで、結婚や出産といったライフイベントも加味した上で、安心して支払える予算計画を確認することができます。
監修:相山華子
ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。
関連キーワード