注文住宅、分譲一戸建て、分譲マンション…住宅市場動向調査から購入経験者の住宅選択理由を読み解く
国土交通省が2019年4月から2020年3月までの間に住宅を購入・リフォームした世帯を対象に行った「令和2年度住宅市場動向調査」の結果が公表されました。住宅探しを始めた人にとって実際にマイホームを購入した人たちがどのように住宅を選んだのかは気になるところです。調査結果から見えてきたものや、住宅の購入に経済的要因が与えた影響などを紹介します。
01購入した住宅の選択理由は?
国土交通省の住宅市場動向調査は、今後の住宅政策の企画立案の基礎資料とすることを目的として毎年実施されているものですが、実際に住宅を購入した人を対象としたものなので、住宅購入を検討している人にとっても参考となるものです。令和2年度の調査結果(※)を見ていきましょう。
住宅の種類を絞って比較・検討
購入する住宅の種類は、大きく分けて「注文住宅」(設計からオーダーメイドで建てる住宅)、「分譲一戸建て住宅」(いわゆる建売住宅)、「分譲マンション」、「中古一戸建て住宅」、「中古マンション」の5つです。同調査によると、一戸建てを取得した世帯の多くは一戸建てを、マンションを取得した世帯の多くはマンションを、それぞれ検討する際の比較対象としていて、住宅の種類を絞った上で比較して物件選びをする傾向があることがわかりました。
注文住宅取得世帯が比較したのは(複数回答、上位3つ)
注文住宅 | 71.8% |
分譲一戸建て住宅 | 23.5% |
中古一戸建て住宅 | 15.4% |
分譲一戸建て住宅取得世帯が比較したのは(複数回答、上位3つ)
分譲一戸建て住宅 | 61.4% |
注文住宅 | 48.5% |
中古一戸建て住宅 | 20.1% |
分譲マンション取得世帯が比較したのは(複数回答、上位3つ)
分譲マンション | 79.2% |
中古マンション | 31.7% |
分譲一戸建て住宅 | 27.5% |
中古一戸建て住宅取得世帯が比較したのは(複数回答、上位3つ)
中古一戸建て住宅 | 70.6% |
分譲一戸建て住宅 | 35.9% |
中古マンション | 26.8% |
中古マンション取得世帯が比較したのは(複数回答、上位3つ)
中古マンション | 72.6% |
分譲マンション | 29.4% |
中古一戸建て住宅 | 20.6% |
住宅購入の決め手は?
では、購入する際の決め手となるのは何だったのでしょうか?同調査によると、注文住宅取得世帯では「一戸建てだから」が44.1%、分譲一戸建て住宅取得世帯では「新築住宅だから」が64.4%と最も高く、一戸建て住宅の購入者はどういう建物かが選択の理由となっています。
一方、分譲マンションでは「住宅の立地環境が良かったから」が69.4% 、中古一戸建て住宅と中古マンションでは「価格が適切だったから」が最も多く、それぞれ56.0%、67.1%となっています。
中古住宅を選ぶ人は、価格を重視していたことがわかります。
注文住宅取得世帯の住宅選択理由(複数回答、上位3つ)
一戸建てだから | 44.1% |
信頼できる住宅メーカー/不動産業者だったから | 42.6% |
新築住宅だから | 40.0% |
分譲一戸建て住宅取得世帯の住宅選択理由(複数回答、上位3つ)
新築住宅だから | 64.4% |
一戸建てだから | 61.7% |
住宅の立地環境が良かったから | 46.4% |
分譲マンション取得世帯の住宅選択理由(複数回答、上位3つ)
住宅の立地環境が良かったから | 69.4% |
新築住宅だから | 57.4% |
マンションだったから | 44.9% |
中古一戸建て住宅取得世帯の住宅選択理由(複数回答、上位3つ)
価格が適切だったから | 56.0% |
一戸建てだったから | 47.2% |
住宅の立地環境が良かったから | 45.5% |
中古マンション取得世帯の住宅選択理由(複数回答、上位3つ)
価格が適切だったから | 67.1% |
住宅の立地環境が良かったから | 54.8% |
マンションだったから | 42.5% |
住宅購入の決め手となった「設備等」は
住まい選びの際には、建物の種類だけでなく、住宅の設備や間取り、デザインなどが決め手となることもあります。同調査では、「設備等に関する選択理由」を聞いています。注文住宅では、住宅の性能である「高気密・高断熱住宅だから」が最も多くなりましたが、それ以外の住宅はすべて、間取りや広さが上位を占めていることがわかります。
注文住宅取得世帯の設備等に関する選択理由(複数回答、上位3つ)
高気密・高断熱住宅だから | 56.5% |
住宅のデザインが気に入ったから | 55.6% |
火災・地震・水害などへの安全性が高いから | 48.0% |
分譲一戸建て住宅取得世帯の設備等に関する選択理由(複数回答、上位3つ)
間取り・部屋数が適当だから | 68.0% |
住宅の広さが十分だから | 57.6% |
住宅のデザインが気に入ったから | 49.6% |
分譲マンション取得世帯の設備等に関する選択理由(複数回答、上位3つ)
間取り・部屋数が適当だから | 82.4% |
住宅の広さが十分だから | 50.9% |
住宅のデザインが気に入ったから | 44.4% |
中古一戸建て住宅取得世帯の設備等に関する選択理由(複数回答、上位3つ)
住宅の広さが十分だから | 78.0% |
間取り・部屋数が適当だから | 74.0% |
台所の設備・広さが十分だから | 38.0% |
中古マンション取得世帯の設備等に関する選択理由(複数回答、上位3つ)
住宅の広さが十分だから | 71.1% |
間取り・部屋数が適当だから | 64.5% |
住宅のデザインが気に入ったから | 31.6% |
新築か中古かの選択理由は
マイホームを購入する際、新築か中古かで迷う人も少なくありません。同調査では、中古一戸建て住宅と中古マンションそれぞれの取得世帯に中古住宅にした理由を尋ねています。中古一戸建てでは60.6%が、中古マンションでは71.0%が「予算的に見て中古が手ごろだったから」と回答し、「新築にこだわらなかったから」は中古一戸建てでは46.1%、中古マンションでは36.1%となっています。
一方で新築のマイホームを取得した人が中古住宅を選ばなかった理由で最も多かったのは、一戸建て・住宅マンション共に「新築の方が気持ち良いから」、ついで「リフォーム費用などで割高になる」、「隠れた不具合が心配だった」と続きました。
建物の新しさへのこだわりよりも、手ごろな価格を重視する人が、中古住宅を選ぶ傾向が高いことが見て取れます。
物件に関する情報収集方法
さて、マイホームを購入した人たちは、物件に関する情報をどのような方法で収集したのでしょうか?
住宅の種類別に見てみると、注文住宅取得世帯では「住宅展示場で」が最も多く、分譲一戸建て住宅取得世帯と分譲マンション、中古一戸建て住宅取得世帯では「インターネットで」が、中古マンション取得世帯では「不動産業者で」が最も多い結果となっています。
注文住宅の場合、実際の物件を見て情報収集ができない上、デザインや設計、間取りなどを原則として施工主が決定しなくてはならないため、住宅展示場でモデルハウスを見て、施工業者の特徴や技術を確認しながら情報収集するケースが多いものと考えられます。
02住宅取得時に経済的要因が与えた影響は?
マイホーム購入にあたって、今後の住宅ローン金利の変動や家計収入の見通し、景況感などの経済的要因を考慮して、例えば「金利が上がる前に固定金利のローンを組もう」とか、「景気が悪くなって不動産価格が下がるまで購入するのを待とう」といった具合に、購入のタイミングや住宅ローンのタイプを見直すケースも珍しくありません。こういった経済的な要因は、どの程度住宅取得の意志決定に影響を与えているのでしょうか?
同調査では、「景気の先行き感」、「家計収入の見通し」、「地価/住宅の価格相場」、「住宅取得時の税制等の行政施策」、「従前住宅の売却価格」、「金利動向」の6つの経済的要因が住宅の購入にどう影響したかを調べるために、各要因の影響を指標化しました。それによると今回の調査では住宅の種類別ではいずれの住宅でも6つの経済的要因がプラスに働きました。6つの要因の中では「景気の先行き感」がややマイナスに影響したものの、それ以外はプラスに働き、中でも「金利動向」の影響が大きくなりました。住宅を購入した人には「金利の安い今のうちにマイホームを買っておこう」という意識があったようです。
住宅ローンの最新金利推移は以下のページで確認できます。
住み替え前の家賃は?
マイホーム購入にあたって住宅ローンを利用する場合、毎月の返済額をどのくらいにすればよいか、悩む人も多いものです。無理のない返済額の目安となるのが、購入前に支払っていた家賃です。家賃と比較して、返済額の許容範囲を決めると良いでしょう。
同調査で、購入した住宅の種類別に、住み替え前に支払っていた家賃(月額)の平均を調べたところ、次のような結果となりました。
購入した住宅の種類 | 住み替え前に支払っていた平均家賃(月額) |
注文住宅 | 6万6897円 |
分譲一戸建て住宅 | 8万1330円 |
分譲マンション | 9万9342円 |
中古一戸建て住宅 | 8万5457円 |
中古マンション | 8万5035円 |
現在支払っている家賃でいくらくらいのローンが組めるのかを調べるには、「借入可能額シミュレーター」が便利です。現在支払っている家賃などいくつかの数値を入力するだけで、その場で借入可能額の目安を調べることができます。
マイホーム購入経験者の傾向を知りたい場合は、取引経験が豊富な不動産業者や、マネープランニングの専門家であるファイナンシャルプランナーから情報を得ることもできます。マイホーム選びをする際には、様々な人の意見や経験談も参考にすると良いでしょう。
監修:相山華子
ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。
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