住宅購入の理由は?購入後に広さや通勤時間はどう変わった?

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念願のマイホームを購入した人たちの実際の生活はどんなふうに変わったのでしょうか?国土交通省が2019年度に住宅を購入した世帯を対象に行った調査の報告書をもとに、住宅購入前後の変化を調べてみました。また、住宅購入者の年収や自己資金などのデータも紹介しているので参考にしてみてください。

01住宅選択の理由は?

人生最大の買い物とも言われるマイホームですが、住宅を購入した人は、どのような点にこだわって住宅を選んだのでしょうか。国土交通省の「令和2年度住宅市場動向調査」(※)で住宅の選択理由を聞いたところ、注文住宅では、「一戸建てだから」が44.1%で最も多く、分譲一戸建て住宅では、「新築住宅だから」が64.4%で最も多くなりました。

一方、分譲マンションでは「住宅の立地環境が良かったから」が69.4%、中古一戸建て住宅、中古マンションでは、「価格が適切だったから」が最も多く、それぞれ56.0%、67.1%となっています。「価格が適切だったから」という回答は、注文住宅では18.2%に過ぎず、分譲一戸建て住宅では39.2%、分譲マンションでも34.7%で、住宅選択の理由が経済性だけではないことが分かります。

※出典:令和2年度住宅市場動向調査報告書

購入した住宅の選択理由(複数回答、上位3つと「価格が適切だったから」の割合)

注文住宅 分譲一戸建て住宅 分譲マンション 中古一戸建て住宅 中古マンション
一戸建てだから/マンションだから 44.10% 61.70% 44.90% 47.20% 42.50%
信頼できる住宅メーカー/不動産業者だったから 42.60%
新築住宅だから 40.00% 64.40% 57.40%
住宅の立地環境が良かったから 46.40% 69.40% 45.50% 54.80%
価格が適切だったから 18.20% 39.20% 34.70% 56.00% 67.10%

02マイホーム購入で変わったことは?

では、マイホーム購入後、住まいや生活にはどのような変化があるのでしょうか?同じく「令和2年度住宅市場動向調査」の結果からみていきましょう。

延べ床面積が広くなった

マイホームの購入前後で大きく異なるのが延べ床面積です。下表のとおり、中古マンション以外は、購入前の住まいよりも延べ床面積が広くなっていることがわかりました。新築注文住宅では30平方メートル近く、分譲一戸建て住宅、中古一戸建て住宅では、住み替え後の延べ床面積は、以前の住まいよりもそれぞれ30平方メートル以上広くなっています。

住宅の種類 住み替え前の延床面積 住み替え後の延床面積
新築注文住宅(全国) 87.5平方メートル 117.1平方メートル
分譲一戸建て住宅(三大都市圏) 74.2平方メートル 108.5平方メートル
中古一戸建て住宅(三大都市圏) 77.2平方メートル 112.5平方メートル
分譲マンション(三大都市圏) 71.3平方メートル 74.2平方メートル
中古マンション(三大都市圏) 73.8平方メートル 71.4平方メートル

通勤時間の変化は?

通勤時間にも、わずかですが変化が見られました。通勤時間をマイホームの購入前後で比較してみると、分譲マンション、中古一戸建て住宅、中古マンションを購入した世帯では、通勤時間が短くなり、注文住宅と分譲一戸建て住宅では長くなっています。

住宅の種類 住み替え前の通勤時間(片道) 住み替え後の通勤時間(片道)
新築注文住宅(三大都市圏) 34.3分 38.8分
分譲一戸建て住宅(全国) 41.8分 42.5分
中古一戸建て住宅(全国) 43.5分 43.3分
分譲マンション(全国) 47.9分 46.4分
中古マンション(全国) 45.4分 42.8分

延べ床面積の広い注文住宅や分譲一戸建て住宅が建てられる土地は駅から離れているケースが多く、結果として通勤時間が長くなる傾向があると考えられます。

03マイホーム購入時の年齢や年収、自己資金比率は?

では実際にマイホームを購入した人はどんな人なのでしょうか。同じく「令和2年度住宅市場動向調査」の結果をもとに、マイホーム購入者の属性や経済状況について見ていきましょう。

購入時の平均年齢は、新築の場合は40代前半ごろ、中古の場合は40代後半

購入した住宅の種類別に世帯主の平均年齢を見てみると、新築では40代前半ごろ、中古の場合は40代の後半となっています。分譲一戸建て住宅が最も若く、39.6歳。それ以外の住宅はすべて購入者の平均年齢は40代となっています。世代では新築注文住宅、分譲一戸建て住宅、分譲マンション、中古一戸建て住宅の購入者は30代が最も多く、中古マンションでは40代が最も多くなっています。マイホームを購入するきっかけは、結婚や子どもの誕生などさまざまですが、住宅ローンの返済期間から逆算して、30代40代のうちにマイホームを購入しておこうと考える人が多いものと考えられます。

住宅の種類 世帯主の購入時の平均年齢
新築注文住宅(全国) 40.4歳
分譲一戸建て住宅(三大都市圏) 39.6歳
中古一戸建て住宅(三大都市圏) 46.8歳
分譲マンション(三大都市圏) 43.5歳
中古マンション(三大都市圏) 47.1歳

平均世帯年収は分譲マンション購入世帯が864万円で最高

マイホーム購入に踏み切った世帯の平均年収も、購入する住宅の種類によって異なります。買い替えをする人は含まず、一次取得者に限って見てみると最も世帯年収が高いのは分譲マンションを購入した世帯(平均864万円)で、最も低い中古一戸建て、中古マンション購入世帯(657万円)よりも200万円以上高くなっています。

住宅の種類 平均世帯年収
新築注文住宅(全国) 761万円
分譲一戸建て住宅(三大都市圏) 681万円
中古一戸建て住宅(三大都市圏) 657万円
分譲マンション(三大都市圏) 864万円
中古マンション(三大都市圏) 657万円

住宅の種類別 購入資金と自己資金比率

続いて、住宅の購入資金について見ていきましょう。一次取得者で購入資金が最も多かったのは、新築注文住宅(土地を購入)を購入した世帯で平均4486万円、最も少なかったのは中古マンションを購入した世帯で平均2213万円でした。

また、購入資金のうち自己資金が占める割合である自己資金比率は一戸建て・マンションともに中古物件を購入した世帯が高く、新築注文住宅購入世帯で22.0%、分譲一戸建て住宅と分譲マンションを購入した世帯がそれぞれ20.6%と25.6%、中古一戸建て住宅と中古マンションを購入した世帯でそれぞれ32.5%と37.0%となっています。

住宅の種類 平均購入価格 平均自己資金比率
新築注文住宅(全国/土地を購入) 4486万円 22.0%
分譲一戸建て住宅(三大都市圏) 3757万円 20.6%
中古一戸建て住宅(三大都市圏) 2696万円 32.5%
分譲マンション(三大都市圏) 4393万円 25.6%
中古マンション(三大都市圏) 2213万円 37.0%

中古一戸建て住宅と中古マンションを購入した世帯の自己資金比率が高くなっていますが、一般的に中古物件は資産価値が下がっていることが多く、金融機関の審査は新築に比べ厳しくなります。そのため自己資金を多めに用意する必要があったことがその理由として考えられます。

04住宅ローンの利用率や返済額、返済負担率はどのくらい?

上記の表で紹介した自己資金比率を見てもわかる通り、住宅の種類に関わらず、多くの世帯が購入資金の半額以上を住宅ローンで賄っています。

住宅ローンの利用率と返済期間

「住宅市場動向調査」によると、住宅ローンを利用する世帯の割合は、新築注文住宅を購入した世帯が76.1%、分譲一戸建て住宅と分譲マンションを購入した世帯がそれぞれ67.7%と62.6%、中古一戸建て住宅と中古マンションを購入した世帯でそれぞれ49.3%と50.4%となっています。価格が比較的安価な中古の物件では、一括購入する人が比較的多くなっているようです。

なお、住宅ローンを利用する世帯のうち、住宅ローン減税制度の適用を受けている世帯の割合(適用を受ける予定の世帯含む)は、新築注文住宅の購入世帯が最も多く、92.7%に上りました。

住宅の種類 住宅ローン利用率 住宅ローン減税制度適用率
新築注文住宅(全国) 76.1% 92.7%
分譲一戸建て住宅(三大都市圏) 67.7% 84.9%
中古一戸建て住宅(三大都市圏) 49.3% 69.8%
分譲マンション(三大都市圏) 62.6% 89.7%
中古マンション(三大都市圏) 50.4% 67.7%

中古一戸建て住宅と中古マンションで適用率が低い理由としては、床面積が50平方メートルに満たなかったり、一定の耐震基準に適合しなかったりしたことで住宅ローン減税の適用対象にならない物件であったことが考えられます。なお、令和3年度の税制改正で床面積は40平方メートル以上が適用対象となっています。

また、住宅ローンの平均返済期間は注文住宅、分譲一戸建て住宅、分譲マンションを購入した世帯では30年を超え、中古一戸建て住宅、中古マンションを購入した世帯はそれぞれ28.1年、28.9年となっています。

住宅の種類 平均返済期間
注文住宅(全国/住宅建築における借入金の返済期間) 32.4年
分譲一戸建て住宅(三大都市圏) 31.0年
中古一戸建て住宅(三大都市圏) 27.2年
分譲マンション(三大都市圏) 31.1年
中古マンション(三大都市圏) 25.3年

中古の場合の返済期間が短いのは、先でも触れたように、購入時の平均年齢が新築に比べると高く、完済時の年齢を考慮して住宅ローンを組んでいることがその理由として考えられます。

年間の返済額と年収に対する負担率

では、住宅ローンを利用してマイホームを購入した世帯では、年間どのくらいの金額を返済しているのでしょうか?購入した住宅の種類別に見ると、最も平均返済額が多いのは分譲マンションで年間139万1000円、世帯年収に占める返済負担率は17.4%となっています。返済負担率が最も高いのは、分譲一戸建て住宅で18.6%、年収の約2割が住宅ローンの返済に充てられていることになります。

住宅の種類 平均年間返済額 返済負担率
注文住宅 124万7000円 17.9%
分譲一戸建て住宅(三大都市圏) 123万5000円 18.6%
中古一戸建て住宅(三大都市圏) 112万円 15.9%
分譲マンション(三大都市圏) 139万1000円 17.4%
中古マンション(三大都市圏) 92万4000円 14.8%

住宅ローンを組む際、無理のない返済負担率は25%前後と言われているので、それを下回る無理のない返済計画になっているといえそうです。

無理なく買えるかどうかを試算する

マイホームの購入を決めるにあたっては、「今の年収でローンを借りられるかな」、「毎月の返済はどのくらいかな」、「自己資金率はどのくらいが妥当なのか?」など、不安や迷いを感じる人も少なくありません。まずは実際にマイホームを購入した人たちの年齢や収入、購入価格や住宅ローン返済額などを参考に、「今の自分にも無理なくマイホームが買えるかどうか」を想像してみましょう。

今の収入で借りられるローンや返済額などについて、より具体的な目安を知りたい場合は、「住宅ローンシミュレーション」を試してみましょう。簡単な数値などを入力するだけで、適切な住宅購入予算や借入可能額、毎月の返済額の目安をすぐに確認できます。また、金利による違いもすぐに比較検討できるので、住宅ローンを選ぶ際の目安としても役立ちます。金融機関に相談する前にシミュレーションして、返済額などの目安を頭にいれておくことをお勧めします。

相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

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