
期限は10月31日まで!ポイント付与でお得な「グリーン住宅ポイント」は申請するべきか

環境にやさしい住宅を取得またはリフォームした人に商品などに交換できるポイントが付与される「グリーン住宅ポイント」の発行申請が始まりました。具体的にどのような条件を満たせばポイント申請ができるのか、制度の概要やメリット・デメリットについて解説します。

01グリーン住宅ポイントとは?
グリーン住宅ポイント制度は、環境にやさしい住宅の普及を通じて、新型コロナウイルス感染症の影響で落ち込んだ経済の回復を図るために、一定の省エネ性能を備えるなどの条件を満たす住宅を取得した人、リフォームをした人、建築工事の発注者に対して、国がポイントを発行する制度です。ポイントの申請期限は2021年10月31日までですが、予算の消化状況によっては早まる可能性もあります。
発行されるポイントは条件によって異なりますが、特例に該当する場合はポイント数が加算されたり上限が引き上げられたりする仕組みになっていて、最大で100万ポイントが発行されます。ポイントは1ポイント=1円換算で商品に交換したり、追加工事費用に充てたりすることができます。ただし、賃貸住宅の建築について発行されたポイントは、一定の要件に適合する追加工事には利用できますが、商品との交換はできません。
ポイントの詳細については、詳細については、国土交通省の特設サイトで確認できます。
なお、ポイントは自動的に付与されるのではなく、要件を満たす工事の発注者または住宅の購入者が申請することによって発行されます。申請にかかる条件や申請によって発行されるポイントは、以下の4つの申請区分ごとに異なります。
新築住宅の建築・購入
新築住宅で対象となるのは次の1と2いずれかの省エネ性能を有するものです。なお、ここでの「新築住宅」は完成(完了検査済証の発出日)から1年以内、かつ、第三者が未入居の住宅のことを指します。
- 高い省エネ性能等を有する住宅(次のいずれか)
- 認定長期優良住宅、認定低炭素建築物、性能向上計画認定住宅、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)
- 一定の省エネ性能を有する住宅
- 日本住宅性能表示基準で定める断熱等性能等級4かつ一次エネルギー消費量等級4以上の住宅
申請者
注文住宅の場合:自ら居住するために新たに住宅を建築する人(工事請負契約における建築主や発注者)
分譲住宅の場合:自ら居住するために新築住宅を購入する人(不動産売買契約における購入者)
対象期間
注文住宅の場合は工事請負契約を、分譲住宅の場合は不動産売買契約を、2020年12月15日〜2021年10
月31日までの間に締結していること。なお、対象となるのは最初の契約(原契約)のみで、変更契約は対象外です。
発行ポイント数
発行ポイント数は住宅の性能によって異なり、高い省エネ性能等を有する住宅の場合は基本ポイントが40万ポイント、一定の省エネ性能を有する住宅は30万ポイントです。いずれの場合も、以下の加算要件を満たす場合はポイント加算があり、高い省エネ性能等を有する住宅の場合は最大100万ポイントが、一定の省エネ性能を有する住宅は最大60万ポイントが発行されることになります。
住宅の性能 | 基本ポイント | ポイント加算 | 発行ポイント(加算がない場合) |
高い省エネ性能等を有する住宅 | 40万ポイント | 60万ポイント | 100万ポイント(40万ポイント) |
一定の省エネ性能を有する住宅 | 30万ポイント | 30万ポイント | 60万ポイント(30万ポイント) |
加算要件は以下の通りです。
- 東京圏の対象地域からの移住のための住宅
- 多子世帯が取得する住宅
- 三世代同居仕様の住宅
- 災害リスクが高い区域からの移住のための住宅
既存住宅の購入
既存住宅の購入で対象となるのは以下の1から3の要件をすべて満たすものです。
- 不動産登記事項証明書に「新築」と記載された日付が、2019年(令和元年)12月14日以前であること
- 既存住宅購入の、売買契約額が100万円(税込み)以上であること
- 以下のいずれかに該当する住宅であること
- 空き家の活用のため情報提供サイト等を通じて、空き家等に関する情報の提供を行う、「空き家バンク」登録住宅
- 東京圏の対象地域からの移住のための住宅
- 災害リスクが高い区域からの移住のための住宅
- 住宅の除却に伴い購入する住宅
申請者
自ら居住するために既存住宅を購入する人(不動産売買契約における購入者)
対象期間
不動産売買契約を2020年12月15日〜2021年10月31日までの間に締結していること。なお、対象となるのは最初の契約(原契約)のみで、変更契約は対象外です。
発行ポイント数
購入する既存住宅の要件に応じて、15万、30万または45万ポイントのいずれかの発行を受けることができます。
住宅の要件 | 住宅の除却を伴わない | 住宅の除却を伴う |
以下の1から3のいずれかに該当 1.空き家バンク登録住宅 2.東京圏の対象地域からの移住のための住宅 3.災害リスクが高い区域からの移住のための住宅 |
30万ポイント | 45万ポイント |
1から3いずれにも該当しない | なし | 15万ポイント |
ただし、追加工事交換は売主が宅地建物取引業を有する事業者の場合に限られ、個人間売買では利用できません。
リフォーム工事
リフォーム工事で対象となるのは、以下の1から3のいずれかのリフォーム工事を行う住宅であること(1から3の工事と併せて行う4から7の工事も対象)
- エコ住宅設備の設置
- 開口部の断熱改修
- 外壁、屋根・天井または床の断熱改修
- バリアフリー改修
- 耐震改修
- リフォーム瑕疵保険等への加入
- 既存住宅購入加算
4から7は、1から3とあわせて実施した場合のみ対象となります。
ただし、1申請あたりの発行ポイント数(既存住宅購入加算を除く)の合計が5万ポイント未満の場合は申請できません。
申請者
リフォーム個別申請の場合:工事請負契約におけるリフォーム工事の発注者
リフォーム一括申請※の場合:以下に該当するリフォーム工事の発注者。
- 全住戸の所有者
- 管理組合法人
- 法人でない管理組合
※同一建物内の複数住戸に対してリフォーム工事を発注する人が、複数の住戸をまとめて申請する場合の申請方法
対象期間
工事請負契約を2020年12月15日〜2021年10月31日までの間に締結していること。なお、対象となるのは最初の契約(原契約)のみで、変更契約は対象外です。
発行ポイント数
リフォーム戸別申請の場合
1戸当たりの発行ポイントは、対象となるリフォーム工事等に応じたポイント数の合計です。ただし、合計が5万ポイントに満たない場合は申請できません。なお、発行ポイントには世帯の属性や既存住宅購入の有無などにより、それぞれ下表のとおり上限が設けられています。
世帯の属性 | 既存住宅購入の有 | 1戸当たりの上限 |
若者・子育て世帯 | 有 | 60万ポイント |
無 | 45万ポイント | |
一般世帯 | あり | 45万ポイント |
無 | 30万ポイント |
この表での「若者世帯」は、2020年12月15日時点で、40歳未満の世帯を、「子育て世帯」は、2020年12月15日時点で、18歳未満の子を有する世帯、またはポイント発行申請時点で18歳未満の子を有する世帯のことを指します。
また、リフォームに際しての「既存住宅購入」については、次の要件をすべて満たす既存住宅の購入の場合に限られることに注意が必要です。
- 建物の不動産登記事項証明書において、新築と記載された日付が2019年(令和元年)12月14日以前の住宅であること
- 売買契約額が100万円(税込)以上であること
- 2020年12月15日以降に売買契約を締結すること
- 売買契約締結から3カ月以内にリフォーム工事の請負契約を締結すること
- 自ら居住する住宅の購入であること
なお、一般世帯の場合、安心R住宅(「安心R住宅制度=特定既存住宅情報提供事業者団体登録制度」)を利用した「安心R住宅」の標章および安心R住宅調査報告書が発行されている住宅を購入した場合のみ、1戸当たりのポイント上限が加算されます。
リフォーム一括申請の場合
対象となるリフォーム工事等に応じたポイント数の合計が発行されますが、1申請あたりの発行ポイント数の合計が5万ポイント未満の場合は申請できません。また、建物1棟に発行されるポイントには上限(30万ポイント×総戸数)が設けられています。発行されたポイント数の合計を総戸数で割ったものが、各戸の発行ポイント数とされます。たとえば、全6室のマンション1棟全体で30万ポイントが発行された場合、各戸の発行ポイントは5万ポイントです。なお、建物の中にすでに本制度のポイントの発行(個別申請含む)を受けた住戸がある場合、その住戸については、ポイント数の合計が30万ポイントを超える分のポイントは発行されません。
賃貸住宅の建築
賃貸住宅の建築で対象となるのは以下の1から3のすべてを満たす住宅です。
- すべての住戸が賃貸用に建築される共同住宅等であること(所有者の住居や店舗を併用する建物は対象外)
- 住居として独立しているユニットが2戸以上存在し、すべての住戸の床面積が40平方メートル以上の共同住宅等であること
- 建築物省エネ法に基づく「住宅のトップランナー制度」の賃貸住宅に係る基準に適合する共同住宅等であること
申請者
新たに賃貸用の共同住宅等を建築する人(工事請負契約における契約者や発注者)
対象期間
工事請負契約を2020年12月15日〜2021年10月31日までの間に締結していること。なお、対象となるのは最初の契約(原契約)のみで、変更契約は対象外です。
発行ポイント数
1戸あたり10万ポイント×総戸数
02グリーン住宅ポイント申請の方法
ポイント発行申請は、原則、工事の発注者または住宅の購入者が行いますが、建築工事の請負事業者や分譲事業者等が代理で行うこともできます。申請は、原則、工事完了後に行います。ただし、「注文住宅の新築」、「新築分譲住宅の購入」、「リフォーム(請負契約額が1000万円(税込)以上のものに限る。)」、「賃貸住宅の新築」については、工事完了前であっても、必要な書類が整えば、ポイント発行申請を行うことができます。
申請区分 | 完了前申請 | 完了後申請 | |
新築住宅の建築・購入 | 〇 | 〇 | |
既存住宅の購入 | × | 〇 | |
リフォーム | 戸別申請 | 工事代金1000万円(税込) 以上のみ〇 | 〇 |
一括申請 | 〇 | × | |
賃貸住宅の建築 | 〇 | 〇 |
なお、工事完了前にポイント発行申請を行う場合は、工事完了後に完了報告を提出しなくてはなりません。完了報告書類を提出しないと、取得したポイント相当分の返還を求められるので注意が必要です。
申請方法の詳細については、国土交通省の特設サイトで確認できます。
03ポイントの利用方法
発行されたポイントは、商品に交換、もしくは「一定の要件に適合する追加工事の代金(追加工事交換)」に充てることができます。ただし、前述のとおり、賃貸住宅の建築に対して発行されたポイントは商品交換には使えません。
商品の交換
「新たな日常に資する商品」、「省エネ、環境配慮に優れた商品」など、所定の政策テーマに該当する商品と交換できます。500ポインから最高100万ポイントの多彩な交換商品があり、まで、下記「グリーン住宅ポイント・交換商品を探す」(https://goods.greenpt.mlit.go.jp/apl/public/viewCategoryTop)でポイント数や政策テーマ、都道府県、カテゴリー別に検索して希望の商品を探すことができます。
追加工事交換
以下に該当する工事の代金に充当することができます。
- 「新たな日常」に資する追加工事
- ワークスペースの設置工事、音環境向上工事、空気環境向上工事、菌・ウイルス拡散防止工事、家事負担軽減に資する工事
- 防災に資する追加工事
追加工事についての詳細は国土交通省の特設サイトで確認できます。
04グリーン住宅ポイントのメリットとデメリット
ここまで見てきた通り、グリーン住宅ポイント制度にはさまざまな要件があるものの、次のようなメリットがあります。
グリーン住宅ポイント制度のメリット
- 商品や追加工事に交換できるポイントがもらえる
- 省エネ性能の高い家に住むことで、電気代などのランニングコストを抑えられる
- 耐震性に優れた、災害に強い家に住める
- 建築業界や日本経済の活性化に貢献できる
- 環境に優しい住宅に住む満足感や安心感が得られる
グリーン住宅ポイント制度のデメリット
一方でグリーン住宅ポイントには、次のようなデメリットも指摘されています。
他の補助金と併用ができない場合がある
原則として、グリーン住宅ポイント制度と補助対象が重複する国の補助制度との併用はできないことになっています。
地方公共団体の補助制度については、国費が充当されているものを除いて併用が可能です。具体的には、新築、既存住宅の購入、リフォームについて、それぞれ以下の通り併用の可否が定められています。
注文住宅・賃貸住宅の新築、新築分譲住宅購入の場合の地方公共団体の補助制度との併用の可否
補助制度 | 併用の可否 |
すまい給付金 | 〇 |
住まいの復興給付金 | 〇 |
外構部の木質化対策支援事業 | 〇 |
地域型住宅グリーン化事業 | × |
ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業 | × |
ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化による住宅における低炭素化促進事業 | × |
既存住宅購入の場合の地方公共団体の補助制度との併用の可否
補助制度 | 併用の可否 |
すまい給付金 | 〇 |
住まいの復興給付金 | 〇 |
リフォーム工事の場合の地方公共団体の補助制度との併用の可否
補助制度 | 併用の可否 |
外構部の木質化対策支援事業 | △請負工事契約が別である場合は併用可 |
長期優良住宅化リフォーム推進事業 | △請負工事契約が別、かつ工期が別の場合は併用可 |
住宅・建築物安全ストック形成事業 | △請負工事契約が別である場合は併用可 |
地域型住宅グリーン化事業 | △請負工事契約が別、かつ工期が別の場合は併用可 |
ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化による住宅における低炭素化促進事業 | △請負工事契約が別である場合は併用可 |
次世代省エネ建材支援事業 | △請負工事契約が別である場合は併用可 |
高性能建材による住宅の断熱リフォーム支援事業 | △請負工事契約が別である場合は併用可 |
省エネ性能を付けることで住宅取得費が高額になる
グリーン住宅ポイント制度の対象となる省エネ性能の多くは、一般的な住宅に必ずしも必要なものばかりではありません。そのため対象となる住宅や工事は一般的なものよりも高額になってしまいます。
グリーン住宅ポイント制度は、環境にやさしい住宅を取得する、またはそうした家にリフォームすることを考える人がポイントを活用することでお得になるというものです。メリットとデメリットをしっかりと確認したうえで、利用を検討しましょう。

監修:相山華子
ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。
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