火災保険の契約期間短縮と保険料値上げへ!加入・解約再加入手続きは2022年前半までに?

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かつては最長36年もの長期契約が可能だった火災保険ですが、2015年に現在の最長10年間に短縮され、さらに2022年には最長5年間に短縮される見込みです。なぜ火災保険の契約期間は短縮されることになったのでしょうか?また、火災保険の契約期間が短くなることにより、どのような影響が考えられるのでしょうか?新たに住宅を購入する際の注意点とあわせて解説します。

01火災保険の契約期間、最長5年に短縮へ

住宅向け火災保険の契約期間は、2022年後半以降、現行の10年間から5年間に短縮される見込みであることが報じられました。2015年10月までは最長36年間の長期契約が可能だったことを考えると、火災保険の保険期間はこの数年で30年以上短縮されることになります。なぜ、契約期間の短縮が相次いでいるのでしょうか?

背景にあるのは、大規模な自然災害の頻発です。日本では近年、台風や集中豪雨などの自然災害が多く発生し、各地で被害が続発。特に洪水や土砂崩れなど大きな被害を及ぼす集中豪雨は目に見えて増加しており、1時間の降水量が50mm以上の集中豪雨の回数が1980年~84年は年間平均で214回だったのに対し、2015年~2019年は331回と、年120回以上増えています(※1)。

※1 出典:損害保険料率算出機構「火災・地震保険の概況(2020年度)」P27

当然、自然災害によって家屋などが損害を受けるケースも増えており、その被害を補償する火災保険の保険金支払いが増加、特に2018年度は7月の豪雨や台風21号や24号など大規模な自然災害による被害が大きかったことから、自然災害による保険金の支払い件数は84万6364件、支払金額は7079億円と、いずれも急増し、過去最高を記録しました(※2)。

自然災害による保険金の支払件数と支払金額

自然災害による保険金の支払件数と支払金額

※2 出典:損害保険料率算出機構「火災・地震保険の概況(2020年度)」P24

こうした保険金の支払いの増加が損害保険会社の収支を圧迫していることから、近年、火災保険料の値上げが相次ぎ、最近では2021年1月にも損害保険会社各社が保険料を値上げしています。

火災保険の保険料は、「損害保険料率算出機構」が、損害保険各社が過去に支払った保険料などをもとに算出する「参考純率」を目安に決定されますが、同機構では自然災害の頻発による保険金支払いの増加に保険料の値上げが追い付いていないことから、参考純率をさらに引き上げることを検討しており、金融庁の審査を通過すれば、2022年にも損害保険各社は火災保険の保険料のさらなる値上げに踏み切るものとみられています。また、同機構では「参考純率」の適用期限について、自然災害の発生状況を早く保険料に反映できるよう、これまでの10年間から5年間に短縮する方向で調整しており、決定すれば、火災保険の契約期間もこれにあわせて現行の最長10年間から最長5年間に短縮される見込みです。

02そもそも火災保険とは?

火災保険の契約期間が短縮される影響を考察する前に、そもそも火災保険とはどのような保険なのかを、おさらいしておきましょう。

火災保険は建物や家財を対象とする保険で、一般的には、以下のような場合に保険金が支払われます(個々の契約の保障内容は、保険商品や契約者の選択によって異なります)。

火災保険で保険金が支払われるのは

火災 火災で家が燃えてしまった場合など。火災によって生じた臨時費用(仮住まい用の宿泊費や交通費)も補償される場合も
落雷 落雷により火災が起きた場合、落雷による高電圧で電化製品が壊れた場合など
破裂、爆発 ガス漏れによって爆発が起きた場合など
水災 豪雨による洪水で家が流されたり、床下浸水したりした場合など
風災 台風による暴風で屋根瓦が飛ばされた場合、窓ガラスが割れた場合など
雪災、ひょう災 雪の重みで建物が壊れた場合、ひょうが降って屋根に穴があいた場合など
水濡れ 水道管から水が漏れ、床や家財が水浸しになった場合など
盗難 家財が盗まれた場合、泥棒によって鍵や窓ガラスが壊された場合など

なお、火災保険では地震や噴火、津波による被害は補償されません。そうした損害を補償するのが地震保険です。地震保険は火災保険とセットでの契約が必要で、地震保険単独での契約はできません。

なお、火災保険がどうやって決まるのかは、下記の関連記事で詳しく説明していますので確認してみてください。

03契約期間短縮の影響は?

火災保険の契約期間が、想定されているとおり現行の最長10年間から最長5年間に短縮されると、保険契約者は保険料改定の影響を受けることになります。
保険会社が保険料を改定して値上げしても、改定前に契約した火災保険については、保険料が変更になるわけではありません。契約期間中は契約時の保険料が適用されるので、改定前に保険を契約した人が保険料改定の影響を受けるのは改定後に新たに契約もしくは契約更新をしたタイミングです。

仮に2021年にAさんが最長10年間の火災保険を、Bさんが最長5年間の火災保険をそれぞれ契約し、その後、保険料が値上げされたとすると、Aさんが値上げ後の保険料を支払うのが2031年以降なのに対し、Bさんは2026年には値上げ後の保険料を支払わねばならなくなってしまいます。

2021年に契約、2022年に保険料が値上げされた場合の支払いイメージ

2021年に契約、2022年に保険料が値上げされた場合の支払いイメージ


つまり、契約期間の短い人の方が保険料改定の影響を受けやすいということです。もちろん、改定で保険料が下がることもありますが、昨今の状況から考えるとその可能性は限りなくゼロに近いと言わざるを得ず、もし予定通り2022年に保険料が改定されれば、契約者の保険料負担は増えることになるでしょう。

報道によると、今回の改定で損害保険料率算出機構は保険料の目安となる参考純率を11%引き上げるとされていますが、過去の改定時には、保険料は参考純率よりも数%高い割合で値上げされているので、今回の改定では保険料が少なくとも11%以上は上がる可能性が想定されています。

保険料の値上げ後、今の保険契約終了後に同じ契約を更新すると、同じ補償内容なのに保険料が高くなってしまうことになるのです。

また、火災保険には長期割引契約があり、契約期間が長いほどその割引率は大きくなります。現行の火災保険の契約は最長10年でとなります。保険料の割引率は保険会社によって異なりますが、10年契約の一括払いではおよそ18%です。契約期間が最長5年間に短縮されると、割引率はおよそ14%になると予想されます。

なお、保険会社によって契約できる期間は異なり割引率も低くなりますが、一括ではなく年払いにすることも可能です。

04火災保険料を節約するには?

保険料負担をこれ以上増やしたくない場合は、どうすれば良いのでしょうか?まず、最長契約期間が10年から5年になる前に契約を見直すことを検討してみましょう。

契約を見直す

長期契約割引率が高い10年契約の火災保険に加入できる期間は残り少ないので、これから火災保険の加入を検討している、あるいは1年更新など短期の火災保険に加入されている場合は、2022年にも予想される保険料の値上げ前に契約を切り替えることで保険料の負担が軽減される可能性が高くなります。

現在加入中の火災保険を解約する場合は、契約期間の途中でも解約が可能です。一括払いや年払いですでに保険料を支払い済みの場合は、未経過分の保険料が月割りで計算され、ほぼ全額が解約返戻金として戻ってきます。具体的な金額が知りたい場合は損害保険会社か保険代理店に問い合わせてみましょう。

その他の節約の方法も、いくつかご紹介します。

補償内容を見直す

火災保険は補償対象が多ければ多いほど、保険料が高くなります。もちろんその分、いろいろなリスクに備えることができて安心ですが、たとえば洪水による浸水被害の可能性が低いマンションの高層階に住んでいるのに水災特約に入っている場合など、一般的に考えてリスクが低いものは補償対象から外すことを検討しても良いでしょう。また、複数の保険を契約している場合、補償対象が重複している場合があるので注意が必要です。

自己負担額を上げる

保険によっては、保険金支払額から差しかれる自己負担額の金額を選べるものがあり、自己負担額を増やすことで保険料を下げることができます。たとえば「少額の損害は自己負担でカバーするので、高額な損害を受けたときのみ補償を受けられればよい」という人は、自己負担額を高く設定しても良いでしょう。

割引制度を活用する

保険会社では、火災保険の保険料にさまざまな割引制度を設けています。割引制度の種類や割引率は保険会社によって異なるので、契約している保険会社のホームページなどで、利用できるものがないか確認しましょう。

  • 割引制度の例

割引制度には以下のようなものがあります。

長期割引 契約期間が長ければ長いほど保険料が安くなる
耐火建築物割引 一定の耐火基準を満たす建物を対象とする割引制度
築浅割引 築後一定年数以下の建物を対象とする割引制度
ホームセキュリティ割引 盗難や火災のリスクを下げるために警備会社と契約し、専用の機器(防犯カメラなど)を設置した場合に受けられる割引制度
オール電化割引 ガスを使わず、住宅内の空調・給湯・調理などすべての設備を電力で賄う住宅を対象とする割引制度
ノンスモーカー割引 建物の所有者や居住者が喫煙者でない場合に適用される割引制度

複数の会社の商品を比較検討する

保険料や割引制度は保険会社によって異なるので、同じような補償内容でも、別の保険会社の火災保険を契約したほうが、保険料が安くなる場合があります。現在契約中の保険の契約を更新せずに、複数の会社の保険を比較検討できるサイトや保険代理店を利用して、より良い条件で契約できる会社を探すのも一案です。

ただし、保険料の安さにこだわるあまり、十分な補償が得られなくなるのは本末転倒です。火災や自然災害などの被害を受けたときに、どのような補償がどのくらいあればスムーズに日常生活を取り戻すことができるのかをよく考えた上で、火災保険を選ぶようにしましょう。

相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

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