資金援助で家を買うなら2023年末までがお得?「住宅資金の贈与税非課税特例」のキホン

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住宅を買うときに親や祖父母から資金援助を受けると、一定額まで贈与税が非課税になる「住宅取得等資金の贈与税特例」。本来、2021年4月以降は非課税枠が縮小される予定でしたが、2021年度の税制改正で4月以降も従前と同じ非課税枠が維持されることになりました。改めてこの特例の概要と注意点を確認するとともに、2021年度の税制改正で注目すべきその他のポイントについても押さえておきましょう。

01住宅取得等資金の贈与税非課税特例とは?

贈与税は、個人が1年間(1月1日~12月31日)に贈与を受けた財産の合計額から、基礎控除額の110万円を差し引いた残りの金額に課される税金で、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に申告、納税します。

贈与税の税率には、祖父母や親などの直系尊属が成人の子に対して行う贈与に適用される「特例税率」と、それ以外の贈与に適用される「一般税率」とがあり、特例税率の方が低く設定されています。
基礎控除額を超えた分を下記の速算表に当てはめて贈与税額を計算します。

一般税率の速算表

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1000万円以下 40% 125万円
1500万円以下 45% 175万円
3000万円以下 50% 250万円
3000万円超 55% 400万円

特例税率の速算表

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1000万円以下 30% 90万円
1500万円以下 40% 190万円
3000万円以下 45% 265万円
4500万円以下 50% 415万円
4500万円超 55% 640万円

マイホームの購入で親や祖父母から資金援助をしてもらう場合は、さらに優遇されることになっているのです。なお、贈与税が課されるのは個人からの贈与であり、法人からの贈与には所得税が課されることになります。

贈与税額の計算例

一般税率と特例税率で、どのくらい贈与税額が異なるのか、500万円の贈与を受けた場合を例に計算してみると、次のとおり、特例税率の方が4万5000円も税額を低く抑えることができます。

基礎控除後の課税価格は、500万円-110万円=390万円
一般税率の場合:390万円×20%-25万円=53万円
特例税率の場合:390万円×15%-10万円=48万5000円

マイホーム購入、親や祖父母から資金贈与を受けている世帯はどのくらい?

では、実際にマイホーム購入にあたって親や祖父母から資金贈与を受けている人は、どのくらいいるのでしょうか?不動産流通経営協会の「第26回不動産流通業に関する消費者動向調査2021年度」によると、2020年4月~2021年3月に首都圏で新築住宅を購入した世帯のうち、親からの贈与を受けた世帯は全体の14.9%に上っています。親から1000万円超の贈与を受けた世帯の割合は、「30~34歳」が最も高く(25.6%)、次いで「50歳以上」(25.1%)、「29歳以下」(25%)となっています。また、受贈額が「3000万円超」だった人は全体の1.1%に過ぎませんが、50才以上では6.3%となっています。(※1)。

※1 不動産流通経営協会の「第26回不動産流通業に関する消費者動向調査2021年度」P6

原則として、夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産については贈与税が課されませんが、生活費や教育費という名目で贈与を受けた財産であっても、それを預金したり不動産の購入資金に充てたりした場合は、贈与税が課されます。たとえ親や祖父母からの贈与であっても、マイホーム購入資金の援助を受けた場合は贈与税を支払わなくてはなりません。

前述のとおり、直系親族からの贈与の場合は一般の贈与に比べると税率が優遇されてはいるものの、マイホーム資金のような多額の資金贈与を受けると贈与税が大きな負担になってしまいます。そこで国では直系親族からの贈与を促進し、マイホーム取得を後押しすることを目的に、「住宅取得等資金の贈与税非課税特例」を設けています。直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた人が一定の要件を満たせば、取得する住宅の種類ごとに定められた非課税限度額まで贈与税が非課税になる制度です。

贈与税の非課税特例の適用条件は?

住宅取得等資金の贈与税非課税特例の適用を受けるには、次のような要件を満たす必要があります(2022年税制改正前)。

受贈者の要件 1.贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(贈与者は受贈者の直系尊属)であること
2.贈与を受けた年の1月1日現在、20歳以上であること
3.贈与を受けた年の合計所得金額が2000万円以下であること(※)
4.配偶者や親族など特別の関係がある人から取得した住宅でないこと。または、これらの人と請負契約して新築や増改築した住宅でないこと
5.贈与を受けた年の翌年の3月15日までに、贈与された資金の全額を充てて住宅の取得や新築をすること
6.贈与を受けた時点で日本国内に住所を有していること
7.贈与を受けた年の翌年の3月15日までにその住宅に居住すること、または同日後、遅滞なくその住宅に居住することが確実と見込まれること
8.原則として2009年分から2014年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと
取得する住宅の要件 1.新築または取得した住宅の登記簿上の床面積が40平方メートル以上240平方メートル以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上が受贈者の居住用であること
2.取得した住宅が次のいずれかに該当すること
・建築後、使用されたことのない住宅
・建築後使用されたことのある住宅で、その取得の日以前20年以内(耐火建築物の場合は25年以内)に建築されたもの

※取得する住宅の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、合計所得金額の制限が「1000万円以下」とされます。

住宅購入者の10.8%が贈与税の非課税特例を利用

このように受贈者や住宅にさまざまな要件が課されてはいるものの、メリットが大きいため、この特例を利用する人は少なくありません。不動産流通経営協会の調査(※2)では、この特例制度を住宅購入者全体の10.8%が利用、年代別に見ると「29歳以下」が最も多く、14.8%がこの制度を利用していることがわかりました。同調査で特例制度を利用した人に、この制度の利用が住宅購入に与えた理由について聞いたところ、「借入金額を少なくできた」が最も多く(60.3%)、次いで「住宅を購入することができた」(56.0%)、「住宅の購入時期を早めた」(17.2%)、「当初の予定よりも広さや仕様がよりよい住宅を購入できた」(12.9%)という結果となっており、特例制度が住宅購入の意志決定や住宅選びに大きく影響していることが伺えます。

※2 不動産流通経営協会の「第26回不動産流通業に関する消費者動向調査2021年度」P7

022022年度税制改正で贈与税非課税特例はどう変わった?

2022年の税制改正では、この贈与税の非課税特例について、「適用期間」、「非課税限度額」、「中古住宅の要件」、「受贈者の年齢」が次の通り見直されることになりました。

適用期間の見直し

特例の適用期間が2年間延長され、2023年12月31日までとされました。

改正前 2021年12月31日
改正後 2023年12月31日

非課税限度額の見直し

これまでの制度では非課税額が最大1500万円とされていましたが、今回の改正で最大1000万円に縮小され、住宅の種類に応じて次の金額が非課税限度額とされました。なお、改正前は住宅取得の契約締結時期に応じて非課税枠が定められていましたが、今回の改正で契約締結の時期は問われなくなりました。

住宅の種類 非課税限度額
耐震・省エネまたはバリアフリー住宅 1000万円
その他の住宅 500万円

中古住宅の要件の見直し

これまでの制度では中古住宅については、「取得の日以前20年以内」に建築された住宅であることが要件とされていましたが、今回の改正で中古住宅の建築時期に関する要件は廃止されました。また、耐震基準についても登記簿上の建築日が1982年1月1日以降の場合は、新耐震基準を満たしているものとみなし、耐震証明等が不要とされました。

改正前 取得の日以前20年以内(耐火建物は25年以内)に建築されていること
改正後 要件廃止

受贈者の年齢要件の見直し

受贈者の年齢は、これまで「20歳以上」とされていましたが、成人年齢の引き下げを背景に、今回の改正で「18歳以上」とされました。ただし、年齢要件の見直しが適用されるのは、成人年齢引き下げが施行される2022年4月1日以降となることに注意が必要です。

改正前 20歳以上
改正後 18歳以上

03住宅ローン控除の控除額や控除率も見直しへ

今回の税制改正では、住宅ローンの超低金利により減税控除額がローンの支払い利息額を上回る「逆ザヤ」状態が生じていることが問題視されていた住宅ローン控除制度についても、見直しが行われました。

適用期限の延長

住宅ローン控除制度は、2021年末で期限を迎えることになっていましたが、今回の改正により適用期限が4年間延長され、2025年末が期限とされました。

控除率の縮小

逆ザヤ問題の解消のため、控除率は現行の1%から0.7%に縮小されることとなりました。

減税期間の延長

現行では原則10年間(特例では13年間)とされている新築住宅の減税期間は、原則13年間に延長されました。一方、中古住宅については、10年間に据え置かれました。

所得上限の引き下げ

控除の適用を受けるための要件として課されている所得の上限は、現行の3000万円から2000万円に引き下げられました。

変更点 新制度 現行制度
制度の適用期限 2025年末 2021年末
控除率 0.7% 1.0%
減税期間(新築) 原則13年間 原則10年間
減税期間(中古) 10年間 10年間
所得上限 2000万円 3000万円

借入限度額の見直し

今回の改正で、省エネなど環境性能に優れた住宅を対象とした優遇措置が拡充されました。まず、耐震性など一定の要件を満たした「認定住宅」の場合、減税対象となる借入限度額は5000万円でしたが、今回の改正で、2023年末までに入居した場合は、住宅の環境性能に応じて5000万円(長期優良住宅など認定住宅)、4500万円(ゼロエネルギーハウスZEH)、4000万円(国が定める省エネ基準を満たした住宅)の3段階に分けられることになりました。一方、省エネ基準を満たさない一般住宅については借入限度額が4000万円から3000万円に引き下げられました。

2024年、2025年に入居する場合の借入限度額は、認定住宅は500万円、その他の3つの分類の住宅については、それぞれ1000万円引き下げられることになります。

住宅の種類 残高の上限(新制度) 控除率 控除期間
認定住宅(長期優良住宅など) 2022年、23年に入居 5000万円 0.7% 13年
2024年、25年に入居 4500万円
ゼロ・エネルギーハウス 2023年、23年に入居 4500万円
2024年、25年に入居 3500万円
国の省エネ基準適合住宅 2022年、23年に入居 4000万円
2024年、25年に入居 3000万円
その他の一般住宅 2022年、23年に入居 3000万円
2024年、25年に入居 2000万円 10年

なお、中古住宅については「その他の一般住宅」は一律2000万円、「認定住宅、ゼロ・エネルギーハウス、国の省エネ基準適合住宅」は一律3000万円、控除期間はいずれの住宅も一律10年間とされました。

04住宅・土地税制に関する特例制度の延長・終了

今回の税制改正で住宅・土地税制に関する特例制度にも延長されるものや終了するものがあります。

住宅地の「固定資産税の据え置き特例」終了

新型コロナウイルス感染拡大の影響による税負担増を防ぐために、2021年度に適用された「固定資産税の据え置き特例」は、住宅地については2021年末で終了することとされました。一方、商業地については前年度からの固定資産税の増加を土地の評価額の2.5%分の税額までとする制度に変更した上で、特例の適用期間を2022年末まで1年間延長することになりました。

「マイホームの買換えに関わる特例」の延長

マイホームを買い替えた際の譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができる「特定の居住用財産の買換えの特例」制度が2年間延長され、2023年12月31日売却分まで適用されることになりました。

「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の延長

マイホームを買い替えて譲渡損失した場合に、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができる(控除しきれなかった場合は3年以内に繰り越して控除できる)特例制度が2年間延長され、2023年12月31日売却分まで適用されることになりました。

新築住宅に係る固定資産税減額措置の延長

新築住宅に係る固定資産税を3年間(マンションの場合は5年間)2分の1に減額する措置が年間延長され、2024年3月31日まで適用されることになりました。

今回の税制改正で、住宅取得者にメリットのある特例制度には適用期限が設けられているものが多いので、数年以内に住宅取得を検討している人は適用のタイミングを逃さないよう、改正内容をしっかり確認するようにしてください。

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相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

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