コロナで急増、子どもの教育費への不安 住宅ローン返済と両立するには

2021.04.28 15

人生最大の買い物ともいわれる、住宅の購入。購入にあたっては多くの人が住宅ローンを利用しますが、その返済時期が子育て期間と重なることが多く、家計が苦しくなってしまうことも珍しくありません。特に最近は新型コロナウイルスの影響で収入が減り、教育費に不安を抱く人も増えています。子どもの将来を左右する教育費を確保するためには、いつからどのような準備を始めれば良いのか、具体的な貯蓄方法とともに解説します。

01住宅の購入と子育ては同時進行

近年、日本では晩婚・晩産化が進み、内閣府の調査によると2018年の平均初婚年齢は男性が31.1歳、女性が29.4歳で、これに伴って妻の第1子の平均出生時年齢も上昇し続け、2018年には調査開始以降最高の30.7歳となっています(※1)。これらの調査結果から、今の日本では30歳前後で結婚して子育てをスタート、概ね30代~40代にかけて子育てをすることが平均的な流れとなっていることが見て取れます。 一方、住宅の一次取得(最初の購入)についても30代が最も多く、国土交通省の調査によると、「中古マンション」以外の住宅では一次取得者のうち「30代」の占める割合が最も高くなっています(※2)。

<住宅の一次取得者のうち30代が占める割合>

住宅の種類 第一次取得者のうち「30代」が占める割合
注文住宅 48.4%
分譲一戸建て住宅 51.3%
分譲マンション 51.7%
中古一戸建て住宅 38.1%
中古マンション 30.3%

また、同調査によると住宅を購入した人のうち住宅ローンを借りた人の割合と、住宅ローンの長さは以下の表のとおりでした。いずれの種類の住宅の場合も、返済期間の平均は30年前後(※3)。仮に30歳で出産、住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合、住宅ローン返済と子育てに同時進行で臨まねばならいことになります。

<住宅ローンを借りた人の割合と返済期間>

住宅の種類 住宅ローンの利用者の割合 平均返済期間
注文住宅(建築) 76.0% 32.1年
分譲一戸建住宅 69.3% 32.7年
分譲マンション 61.7% 31.5年
中古一戸建住宅 48.4% 28.1年
中古マンション 49.4% 28.9年

(※1)出典:内閣府「令和2年版 少子化社会対策白書」P15

(※2)出典:国土交通省「令和元年度 住宅市場動向調査」P21

(※3)出典:国土交通省「令和元年度 住宅市場動向調査」P28、29

02教育費はどのくらいかかるのか

では、具体的に子どもの教育費には、どのくらいの費用を見込んでおけば良いのでしょうか?実際には進学先が公立か私立か、理系か文系かなどによって異なるので一概には言えませんが、1つの目安として、ここでは文部科学省の「2018年度子供の学習費調査」(※4)の結果をご紹介しましょう。同調査によると、幼稚園~高校までの学習費総額(保護者が子どもの学校教育および学校外教育のために支出した費用の総額)は、以下の表のとおり。幼稚園から高校まですべて公立に通わせたとしても1人当たり約541万82円、すべて私立に通った場合は1人当たり公立の約3.38倍にあたる1829万8000円もの費用がかかることになります。

幼稚園~高校までの学習費総額
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(※4)出典 文部科学省「2018年度子供の学習費調査」P1

さらに大学に進学する場合は、当然、より多額の教育費が必要になります。独立行政法人日本学生支援機構の「平成30年度学生生活調査」(※5)によると、自宅(実家)から大学に通った場合の1年間の学生生活費(学費+生活費)の平均は、171万4000円。大学の種類別にみると、国立大学の場合は112万2300円、公立大学は113万300円、私立大学は181万800円でした。

また、実家を離れてアパート等で一人暮らしをしている大学生の1年間の学生生活費の平均は、222万1000円、大学の種類別では国立大学が176万5800円、公立大学が168万1900円、私立大学が249万5300円でした。子どもが自宅から通えない大学に進学した場合、国立でも4年間で平均700万円以上、私立なら平均1000万円近い費用がかかることになります。

<居住形態別学生生活費(年間)>

区分 大学(昼間部) 自宅 アパート等
国立 112万2300円 176万5800円
公立 113万300円 168万1900円
私立 181万800円 249万5300円
平均 171万4000円 222万1000円

(※5)出典 独立行政法人日本学生支援機構「平成30年度学生生活調査」P7

7割が「コロナの影響で教育費に不安」

ここまで各種調査の数字を見てきて、「果たして、こんなに教育費を用意できるだろうか?」と不安を覚えた人も多いのではないでしょうか?あるいは新型コロナウイルスの影響で経済の先行きが見えないことへの不安から、「教育費が払えなくなるかもしれない」と危機感を抱いている人もいるかもしれません。

実際、ソニー生命が大学生以下の子どもがいる20歳以上の男女1000人を対象に行った「子どもの教育資金にかかる調査2021年」(※6)によると、子どもの教育費の負担を「重い」と感じる親は全体の63.9%に上りました。

また、新型コロナウイルスの影響で経済の見通しが不透明になっていることも、教育費への不安を増しているようです。同調査によると、全体の約74.8%がコロナの影響で「家計が悪化した」と回答。「子どもの教育費が減少した」と回答した人は53.9%、「教育費としての備えが減少した」人も61.4%に上りました。また、コロナの影響で「家計が悪化した」と回答した人のうち「教育費としての備えが減少した」と回答した人の割合は71.4%と、「家計が改善した」と答えた人よりも39.7%も高い結果に。家計の悪化が、教育費の備えの減少に直結しやすい点が明らかになりました。

住宅ローンや他の支出もかさむ中、教育費だけにお金をかけるわけにはいきませんが、やはり経済的な問題で子どもが進路を阻まれたり、進路の選択肢が制限されたりしてしまうのは、避けたいものです。少しずつでも将来に備えて、教育資金を確保するようにしましょう。

(※6)出典:ソニー生命「子どもの教育資金にかかる調査2021年

03教育費の準備の時期と備え方

では、教育費の準備はいつから始めればよいのでしょうか?

避けたいのは「子どもの希望の進路が決まってから」という考え方。子どもが自分の意思で進路を決定できる年齢になってから貯蓄を始めたのでは、十分な資金を貯蓄できないおそれがあるからです。教育費のピークは大学の4年間です。一般的には高校までにかかる教育費は家計でまかない、高校卒業までに大学でかかる費用の6割から7割を貯めるのが基本だと言われています。子どもが選んだ進路をできる限り柔軟にサポートできるよう、なるべく早い時期から大学入学からの教育費に備えた貯蓄を始めると良いでしょう。
また、変動型の住宅ローンを組んでいる場合は、金利の上昇リスクをあらかじめ織り込んで準備をすることが大切です。例えば、全期間固定額の住宅ローンを組んでいると仮定して差額分を貯蓄するという方法があります。金利が上昇した時にはその貯蓄した分が繰り上げ返済の資金になりますし、教育費のための貯蓄も金利上昇の恩恵を受けることができます。

なお、2010年から「高等学校等就学支援金制度」(通称高校無償化制度)が導入され、所定の受給資格を満たす生徒は、公立・私立に関わらず高校の学費が実質無償になっています。こういった制度を上手く活用して浮いた分を教育費のための貯蓄に回すようにしましょう。

※高等学校等就学支援金制度について詳しくは⇒文部科学省ホームページ

しかし、先ほども述べた通り、子育て時期は住宅ローンの返済時期とも重なりがちで、何かと支出がかさむ時期でもあり、「なかなか貯蓄にまで手が回らない」、もしくは「どうやって貯めれば良いのかわからない」という人も多いことでしょう。そこで、ここでは特別なテクニックや知識がなくても教育費が溜まりやすい貯蓄法を3つご紹介します。

児童手当を貯める

中学卒業までは国から毎月、児童手当が支給されます。手当の金額は児童の年齢によって異なり、3歳未満は1人当たり一律月額1万5000円、3歳~小学校終了前は月額1万円(第3子以降は1万5000円)、中学生は一律月額1万円が支給されることになっています。児童手当は原則として申請した月の翌月から支給されるため、支給総額は生まれた月によって異なりますが、最も少ない3月生まれでも198万円、最も多い4月生まれは合計209万円が支給されることになります。

児童手当の用途は自由なので、すぐに使わずに教育資金として貯金しておけば、中学終了までに、200万円前後のまとまった金額を貯蓄できるはずです。


(例1)子どもが3月生まれの場合(3月に生まれてすぐに申請すると翌4月から支給される)

  • 0歳~3歳未満:1万5000円×36か月=54万円・・・①
  • 3歳~小学校入学前まで:1万円×36か月=36万円・・・②
  • 小学校6年間:1万円×72か月=72万円・・・③
  • 中学校3年間:1万円×36か月=36万円・・・④

3月生まれの児童手当の総支給額=①+②+③+④=198万円


(例2) 子どもが4月生まれの場合(4月に生まれてすぐに申請すると翌5月から支給される)

  • 0歳~3歳未満:1万5000円×36か月=54万円・・・①
  • 3歳~小学校入学前まで:1万円×47か月=47万円・・・②
  • 小学校6年間:1万円×72か月=72万円・・・③
  • 中学校3年間:1万円×36か月=36万円・・・④

4月生まれの児童手当の総支給額=①+②+③+④=209万円


つみたてNISA

毎月決まった金額を貯蓄していく「積立貯金」は、貯蓄の基本ではありますが、超低金利が続く近年では利息がほぼ付かないため、決して効率の良い貯蓄方法とは言えないのが現状です。もっと効率的にお金を増やしたいものの、いきなり投資をするのは怖いという人におすすめなのが、「つみたてNISA」です。

NISA(小額投資非課税制度)とは、2014年1月にスタートした、個人投資家ための税制優遇制度で、最長5年間、1年あたり120万円の投資枠から得られた利益に対して税金が非課税になる制度です。

一般口座で株式やETF、投資信託などを運用して利益が出た場合は通常20.315%の税金がかかりますが、NISA口座で運用した場合は税金がかかりません。ただし、NISAで非課税の優遇を受けられる期間は5年間と短い上、投資対象が株式や投資信託であるため、元本割れのリスクもあることから、投資初心者にはハードルが高いかもしれません。

その点、毎月定額の投資商品を買い付けていく「つみたてNISA」(非課税累積投資契約に係る少額投資非課税制度)は、より少ない金額で長期間、コツコツとお金を貯めたい人に向いているタイプのNISAです。つみたてNISAの場合、1年間の非課税投資枠の上限は40万円、投資枠運用による利益が非課税になる期間は最長20年と長く、投資は毎月定額買付の方式で行われるので、一般的な積立貯金の感覚で続けられるメリットがあります。また、投資対象にできる投資商品は、「手数料が低水準」、「頻繁に分配金が支払われない」など、長期・積立・分散投資に適した公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)に限定されているため、比較的低いリスクで運用できるのもメリットの1つです。また、いつでも自由に口座から払い戻しができるので、急な出費への備えとしても向いていると言えるでしょう。

なお、つみたてNISAで運用する投資信託やETFも元本が変動する商品です。元本が保証されているわけではないことをあらかじめ理解しておきましょう。

学資保険

学資保険は文字通り、子どもの学費を貯めることを目的とした保険で、毎月保険料を払い込むことによって、子どもが一定の年齢になったときに、「祝い金」、「満期金」といった名目で給付金を受け取ることができます。「普通の積立貯金と同じでは?」と思われるかもしれませんが、学資保険と一般的な積立貯金の最大の違いは、「払込免除特約」がついていること。一般的な積立貯金の場合、途中で親が病気や死亡などにより積立不能となった場合、月々の積立ができなくなってしまいますが、学資保険は「払込免除特約」がついているケースがほとんどなので、親が積立不能になった場合は、それ以降の月づきの支払いが免除になる上、満期時には祝い金や満期金が契約通り、満額で受け取ることができます。

また、学資保険には税制上のメリットもあります。学資保険の保険料は所得税の生命保険料控除の対象とすることができ、年末調整や確定申告で適切に処理すれば、所得税や住民税を抑える効果も期待できます。なお、学資保険の保険料の相場は月額1万円~1万5000円程度。児童手当(1万円~1万5000円)を保険料の支払いに充てる人も多いようです。

一方、学資保険にはメリットだけでなく、「中途解約すると元本割れのおそれがある」「将来の返戻率が固定されるため、インフレになると実質的に損をしてしまう」「払い戻し率が低い商品の場合は、元本割れするおそれがある」など、いくつかのデメリットが指摘されています。せっかくの教育資金への備えが台無しになってしまわないよう、複数の保険会社の商品をよく比較検討して納得できる商品を選ぶようにしましょう。

30代~40代にかけては、住宅ローンの返済と子育てが重なってしまうことが多く、教育費のための貯蓄をするのは難しいと思われがちです。しかし、30代~40代はいわゆる「働き盛り」の年代でもあり、会社員であれば年収が大きく上がり始める時期でもありますし、勤務先の許可が得られれば副業をするなどして夫婦で協力すれば、世帯の総収入を増やすことも不可能ではありません。つみたてNISAや学資保険など、比較的リスクの低い金融商品も上手く活用して、効率良く着実に貯蓄を増やし、子どもの将来に備えてあげましょう。

相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

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