不動産売買・売却の全体の流れを把握しよう
家を売りたいと思った時、何から始めれば良いのでしょうか。不動産売却がはじめての方でも理解できるように、不動産の売却に関する全体の流れと、それぞれの段階で行うべきことや注意点について、分かりやすく解説します。
01不動産売却の全体の流れ
不動産売却の全体の流れは次のようになります。
- 不動産業者へ売却相談の問い合わせ
- 媒介契約を締結
- 売却活動のスタート~内見
- 購入申し込み~売買契約
- 決済・引き渡し
- 引き渡し後の対応
ではそれぞれのステップについて説明します。
02ステップ1:不動産業者へ売却相談の問い合わせ
不動産の売却を検討する場合は、まず不動産業者に相談しましょう。不動産の売却の手順や売却時の相場、準備すべきことなど、知りたい情報やアドバイスが得られます。
査定を依頼して売り出し価格を決定
売却したい不動産の査定を、不動産業者に依頼します。査定とは、売却する不動産の適正な価格を不動産業者に算出してもらうことです。不動産業者は、不動産の現地調査のほか、役所や法務局などでの調査を行い、周辺の成約事例、地域の特性や経済・市場の動向なども加味して適正な価格を算出します。
個人売買でも不動産業者に仲介の依頼が安全
不動産業者を介して売買をすると仲介手数料が発生します。仲介手数料には、宅地建物取引業法により定められた上限額があり、売買代金が400万円を超える場合は、下記のような速算法で、手数料の上限を求めることができます。
手数料の上限額=物件価格×3%+6万円+消費税
仮に物件価格が4000万円(税抜き)だとすると、仲介手数料の上限は、4000万円×3%+6万円+消費税で、138万6000円となります。
また、課税事業者である不動産業者を介しての取引では土地は非課税ですが、家屋の分の消費税がかかります。仮に物件価格が4000万円で建物価格2000万円の一戸建ての場合、消費税200万円が課税されます。仲介手数料は上限なので、これよりも安くなる可能性がありますが、仲介手数料と消費税と合わせた金額は300万円を超えてしまいます。
一方、知人などに売却する個人売買の場合、仲介手数料は不要で消費税も非課税となるため物件価格が抑えられ、自身と知人両者にとってメリットが大きくなります。
しかし、不動産業者を介さないことによるデメリットもあります。不動産の取引に関する知識や経験がない人が、個人間で契約を結ぶことは容易ではありません。また、不動産の売買は物件に欠陥があった場合には、その被害や修理にかかる費用も高額になるため、トラブルに発展するケースがあります。
不動産業者が仲介をする場合には、引き渡された不動産が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないときの契約不適合責任の対象や責任期間が設定され、売主と買主の利害が調整されます。
一方で個人売買では契約不適合責任の交渉も個人間で行わなければなりません。対象や責任期間は売主と買主の間では設定することは簡単ではありません。また、万が一物件に欠陥があった場合はトラブルになりかねません。
また、買主が不動産をローンで購入を希望しても、個人売買では、例えば不動産業者が仲介する場合に必要となる重要事項説明書や、契約不適合責任の設定が不十分な場合には金融機関が融資を認めないケースもあります。
一般的には、知人に売却する場合でも、不動産業者に仲介を依頼する方が安全だといえるでしょう。
03ステップ2:媒介契約を締結
不動産業者と売り出し価格を決めると次は媒介契約です。媒介契約とは、不動産の売却を不動産業者に依頼する契約です。媒介契約には3種類あります。
3つの媒介契約
3つの媒介契約と特徴について説明します。
一般媒介契約
一般媒介契約は、一度に複数の不動産業者と契約を結ぶことができ、売主は自分で見つけた買い手との直接取引もできます。
専任媒介契約
専任媒介契約は、一つの不動産業者とだけ契約を結び、売主が自分で見つけた買い手との直接取引もできます。
専属専任媒介契約
専属専任媒介契約は、一つの不動産業者とだけ契約を結び、売主が自分で買い手を見つけた場合でも、媒介契約を結んでいる不動産業者に仲介をしてもらわなくてはなりません。
3つの媒介契約の違い
これら3つの媒介契約には、媒介契約を結べる不動産業者の数と、売主自らが探した買い手と直接取引ができるかどうかの違いがあります。
手間をできるだけ省きたい場合には、専属専任媒介契約がおすすめです。販売状況の報告が少なくとも週に1回あり、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営している不動産物件情報交換のためのネットワークシステム(レインズ)への登録を契約から5日以内にしてもらえます。レインズは不動産業者が自由に閲覧できるシステムなので、不動産の買い手が見つかりやすくなります。
売主が自分で買い手を見つけられる可能性がある場合には、専任媒介契約が適しています。できるだけ早く不動産を売りたいので、レインズへの登録もして欲しいというときには、7日以内にレインズへの登録がされ、販売状況の報告は2週間に1度以上してもらえます。
不動産を売却していることを知られたくない場合には、レインズへの登録義務がない一般媒介契約がおすすめです。売主自ら買い手を探せる可能性が高い、または人気エリアに物件を持っている場合には、一般媒介契約でも比較的早く売却することが可能です。
04ステップ3:売却活動のスタート~内見
媒介契約を済ませたら、売却活動が始まります。集客は媒介契約を結んだ不動産業者主導で進められます。具体的には不動産業者のホームページや住宅のポータルサイト、チラシなどに物件の情報が掲載されます。
そうした情報を見て、物件に関心を持った見込み客が内見に来ます。5〜10件ほどの内見を受けて成約となるのが一般的と言われます。貴重な機会に良い印象を持ってもらうための準備が必要です。
効果的な売却活動のための準備
売却活動が始まると、不動産業者を通じて、週末を中心に購入を検討する人が内見に訪れます。できるだけ週末は内見のために予定を空けて、効率的に商談が進められるようにします。
内見では生活の場である家が商品になります。購入を検討する人に好印象を持ってもらうためには準備が必要です。
具体的には室内の清掃、特に水回りやキッチンは生活感が出やすいため、掃除と整理整頓をていねいに行います。ゴミの臭いや窓の汚れがないかをチェックします。洗面所やトイレには見栄えの良いタオルを使うなどの工夫で印象が変わります。
また、一戸建てやマンションの1階で庭がある場合は庭の手入れも忘れないようしてください。
反応がない場合の対処法
不動産を売り出して、1カ月経っても不動産業者から内見の案内が来ない場合は、不動産の販売価格が相場より高い可能性があります。
家を買いたいと思っている人は、インターネットのポータルサイトなどで物件を探すのが一般的です。住みたい地域で売り出されている物件をいくつも見ているので、多くの人がその地域の相場を把握していると考えたほうがいいでしょう。そのため相場よりも販売価格が高いと、なかなか興味を持ってもらえません。
販売価格が相場よりも高い設定になっている場合には、価格を下げる必要があります。不動産業者と相談をして、価格を再設定します。
また、物件の情報が正しく見込み客に伝わっていない場合もあります。不動産業者に要望を伝えて改善を図りましょう。
05ステップ4:購入申し込み~売買契約
内見を経て、買主が決まったら、契約の手続きに入ります。
購入申し込み
購入希望者から購入申込書を受領します。購入申込書には、購入希望価格、代金の支払い条件、融資利用予定の有無、契約・引き渡し希望日などが記載されています。買主からの条件を承諾する場合は売買契約に進みますが、そうでないときは、不動産業者が合意のための調整を行います。条件に合意したのちに売買契約に進みます。
契約にあたって確認しておくこと
契約するにあたって確認しておくべきことを整理しておきます。
契約不適合責任の有無と期間
契約不適合責任は、不動産購入後に欠陥や不具合などが見つかり、契約の内容に適合しないことがわかったときに、売主が負う責任のことです。任意規定なので、売買する不動産に契約不適合責任をつけるかどうかについて、売主と買主の間で合意が必要です。
契約不適合責任は対象と期間を設定することで、売主と買主を守ることができます。
ローン特約の有無
ローン特約とは、予定していた融資が金融機関等によって承認されなかった場合に、買主が不動産を購入する契約を解除して、契約を白紙に戻すことができるという特約です。中古の不動産は借入金額や不動産の評価額などの事情により、新築の場合に比べて審査が不調に終わることが多いため、住宅ローンの審査が不調に終わった場合、買主が無条件で契約解除できるようにするもので、売主と買主の合意によって定めるものです。
負担の消除
売主は、物件を買主に完全な所有権で引き渡すために、抵当権や賃借権などがついている場合には、それらを消除しておかなくてはなりません。また売却する不動産の所有者が亡くなった親族の名義になっていないかなど、売主名義であることもしっかり確認します。
公租公課等の精算
売却物件の固定資産税などの公租公課を売主と買主の間で清算します。引渡しの日を境にして、日割り計算するのが一般的です。
引き渡し前の物件の滅失や毀損
売り家の引き渡し前に、天災で建物が全壊するようなことがあった場合にどうするかを売主と買主の間で取り決めておかなくてはなりません。
測量の有無
土地付き住居の土地の売買代金は、地積(土地の面積)をもとに算出されますが、契約前または後に測量を行うか、または測量ではなく登記簿面積に基づき土地代金を算出するかを決めておきます。
引き渡し条件と時期
売り家を引き渡す際に、現状のまま引き渡すのか、クロス・畳・照明・エアコン、庭の木に至るまでの付帯設備等を撤去するのかを決めておきます。
不動産業者と打ち合わせ
契約締結前に、仲介する不動産業者と打ち合わせを行います。打ち合わせでは、契約締結の日時と場所、持ち物、受け入れ金額、支払金額などを確認します。
売主が契約締結日に持参するものは、以下のものです。
- 実印
- 印鑑証明書(3ヶ月以内のもの1通)
- 収入印紙
- 本人確認書類
- 登記済証(権利証)または登記識別情報通知
- 仲介手数料の半金
- 固定資産税納税通知書
契約締結時の流れ
売買契約の前に、宅地建物取引士による重要事項説明が行われます。続いて宅地建物取引士が契約書の読み合わせを行います。内容を確認後、契約書に調印し、買主からの手付金を受領して契約書類一式を交付します。
06ステップ5:決済・引き渡し
契約締結後は、引き渡し前に行わなければならないことがあるので、順を追って説明します。不明な点があれば不動産業者に相談します。
引き渡しの準備
売主は売り家に撤去すべきものが残っていないか、最終確認を行います。買主は金融機関にローンの審査結果を照会し、問題なく融資が行われるかを確認します。土地付き住宅の測量をする場合は売主や隣接する家に住む人の立会いの元で行うため、日時の調整が必要です。引き渡し前には買主立ち会いの元、現地確認を行います。
振込完了後、買主に領収証と鍵を渡し終了(1~2時間ほど)
手付金を差し引いた売買残代金を受領し、固定資産税などの費用および、登記費用や仲介料なども清算します。売主は売り家の所有権移転登記の申請を行うため、司法書士に必要な書類を渡して代行を依頼します。
売主は買主に領収書と売り家の鍵を渡し、不動産引渡確認証を買主より発行してもらいます。
07ステップ6:引き渡し後の対応
引き渡しが終わっても、売主は一定期間、不適合責任を負うため、期間終了までの間、何かあった時には誠実に対応しなければなりません。
不適合責任の期間終了まで
不動産の引き渡し後に不具合が発覚することがあります。売買契約書に明記した期間は、売主に修復義務がありますので最後まできちんと対応することが必要です。
監修:相山華子
ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。