マンション購入の流れとポイントをチェックしよう!
マンションの購入は、多くの人にとって初めての経験のはず。不動産取引には聞きなれない専門用語や独特の商習慣も多く、戸惑うことも多いのではないでしょうか。そこで今回はマンションの購入を決めてから引き渡しまでの流れと各ステップで気を付けるべきポイントをご紹介します。全体の流れを把握して、焦らず余裕をもってマンション購入の手続きを進めましょう。
01マンション購入全体の流れ
マンションの購入の流れは以下のようになります。
①希望条件をリストアップ |
②資金計画を立てる |
③物件の情報収集 |
④モデルルームの見学 |
⑤購入申し込み |
⑥住宅ローン事前審査 |
⑦重要事項説明 |
⑧売買契約 |
⑨住宅ローン本審査申込 |
⑩内覧会 |
⑪残余金の支払い |
⑫引き渡し |
①希望条件をリストアップする
マンション購入を決めたら、やみくもに行動を起こすのではなく、まずは希望の条件を整理して、リストアップすることから始めましょう。新しい住まいを決めるということは、これからの暮らし方を決めるということでもあります。マンション購入後にどんな暮らしがしたいのかをイメージし、それを叶えるために必要な条件を確認しておきましょう。なお、家族がいる場合は必ず家族を交えて話し合いの場を持ち、それぞれの希望を確認すること。全員の希望をすべて叶えるのは難しいものですが、後になって揉めたり悔んだりしないためには、妥協点を見つけて折り合いをつけ、全員が同意した上で具体的な物件探しに進むことが大切です。
希望する条件のリストアップ例
想定される希望する条件のリストアップ例を上げてみました。
- 新築か中古か
- マンションの規模
- 住みたい街・エリア
- 通勤・通学時間の許容範囲
- 立地条件で重視すること(学校、勤務先、病院、商業施設への距離など)
- 間取りの希望
- 欲しい設備(駐車場、宅配ボックス、カメラ付きインターホン、ウォークインクローゼット、床暖房など)
- 居室の位置の希望(向き、角部屋、高層階or低層階)
②資金計画を立てる
実際の物件探しに入る前に、教育費や老後資金なども考慮して、マンションの購入にどのくらいお金がかけられるのか、頭金はどのくらい用意できるか、親や祖父母から援助が受けられそうかどうか、あるいは毎月の返済額はどのくらいなら無理なく暮らせるのか、などを確認して、大まかな資金計画を立てましょう。
計画を立てるにあたってはファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談をするのも良いですが、いきなり相談するよりも、まずはオンラインで提供されているシミュレーションサービスで購入資金や住宅ローンに関する金額の「目安」を確認しておきましょう。目安となる数字を把握しておくことで、より具体的な相談ができるかもしれません。
「スゴい住宅ローン探し」の住宅ローンシミュレ―ションなら、いくつかの条件を入力するだけで、その場で「住宅購入予算」、「借入可能額」、「毎月の返済額」、「老後のお金」の目安が無料で試算できます。ぜひ、試してみてください。
③物件の情報収集
希望する条件がリストアップでき、大まかな資金計画ができたら、それらの条件をもとに具体的な物件の情報収集を始めます。
情報収集の第一歩は、インターネットや住宅情報誌で希望するエリアの物件を閲覧して、気になる物件を見つけることです。その物件の中から①でリストアップした希望の条件に近い物件にいくつか的を絞り、資料請求や問い合わせをしてみましょう。
サイトや情報誌でこれといった物件が見つからない場合は、希望エリアの不動産業者に相談するのも一案です。特に中古マンションの場合は、公開前の情報を得られる可能性もあります。
また、このタイミングで住宅ローンの情報収集も並行して行います。
④モデルルームの見学
中古マンションの場合は、問い合わせ後すぐに物件を見学できることが多いのですが、新築マンションの場合は建築工事中に販売を開始することが多く、モデルルームしか見学できないことがほとんどです。モデルルーム見学の流れは、以下の通りです。
来場予約
モデルルーム見学は、予約なしでできるケースもありますが、予約客との兼ね合いでゆっくり見学できないおそれがあります。また、最近では完全予約制のモデルルームも増えてきているので、できるだけ電話やオンラインで予約を入れてから出向くようにしましょう。
モデルルーム見学は、物件に詳しい担当者に直接質問ができる絶好のチャンスです。この機会を有効に生かすためにも、見学時に質問したいこと、確認したいことをあらかじめリストアップしておきましょう。予約時に伝えておくと当日の見学がスムーズになります。
見学当日の流れ
当日は予約した時間にモデルルームに出向き、受付を済ませます。受付時には簡単なアンケートへの記入を求められることがあります。
モデルルームでは、部屋の広さを実感することができるほか、設備などを実際に触れて確認できます。家事のしやすさや生活動線を確認し、廊下の幅や天井高、収納の高さなど、図面だけでは確認することが難しい点を重点的にチェックし、必要があればメジャーで測ってメモしておきましょう。
担当者への相談・確認
最後に見学中に気になったことや、質問し忘れたことを担当者に相談・確認して、見学は終了です。物件によっては最後にアンケートの記入を求められることもあります。購入を前向きに考えている場合は、このあと支払いのシミュレーションや支払方法、購入までの手順について担当者から説明を受けることも可能です。
なお、モデルルームは物件所在地と離れた場所に設けられていることも珍しくありません。購入する可能性がある物件の場合はモデルルームだけでなく物件の所在地にも必ず足を運び、周辺環境を確認しておきましょう。
⑤購入申し込み
購入したいマンションが決まったら、新築の場合は販売会社に、中古物件の場合は仲介不動産業者に購入申し込みをします。この際、多くの場合数万円~10万円ほどの「申込証拠金」を支払います。申込証拠金は「購入の意志の証」として売主に一時的に預けられるお金で、購入申し込みをキャンセルしたときには原則として全額が買主に返還されます。一方、売買契約にまで至った場合は、申込証拠金はそのまま手付金や契約時の印紙代、物件購入費などに流用されます。
一部では申し込みをキャンセルした時に返還されなかった、返還されたが、事務手数料と称して一部を差し引かれてしまったというトラブルも散見されます。後にトラブルにならないよう、日付と金額などを明記した預かり証を受け取り、申込証拠金の有効期限も確認しておきましょう。
⑥住宅ローン事前審査
申し込み後、売買契約に進む前に、住宅ローンの事前審査を受けます。住宅ローンの本契約は通常、売買契約後に行われますが、万が一、そのタイミングで審査に落ちてしまうと、売主・買主ともに大きな損害を受けてしまいます。事前審査はそういったリスクを避けるために行われるもので、主に買主の返済能力があるかどうか、信用情報に問題がないかどうかが審査されます。審査結果は1週間以内に出ることがほとんどで、審査に通れば売買契約へと進むことができます。なお、不動産業者が提携する金融機関のローンを勧められることも多いのですが、必ずこれを利用しなければいけないわけではなく、自分で選んだ金融機関を利用することもできます。
⑦重要事項説明
住宅ローンの事前審査に通ったら、いよいよ売買契約の締結ですが、その前に必ず宅地建物取引士から、マンションの概要や売買契約の条件について「重要事項説明」を受けることが法律で義務付けられています。
重要事項説明は、戸数の少ない小規模なマンションや中古マンションの場合は購入者予定者一人一人を対象に個別に行われますが、戸数が多い新築の大規模マンションでは複数の購入予定者を対象にした重要事項説明会が開催される場合も珍しくありません。
重要事項説明の内容に特に問題がなければ、説明内容を記載した重要事項説明書に署名・捺印して、手続きを終えます。もちろん、納得がいかない場合は署名捺印せず、売買契約に進まないという選択をすることもできます。
⑧売買契約
重要事項説明に問題がなければ、続いて売買契約書についての説明を受け、原則として同日中に売買契約を結びます。
売買契約は売買契約書に売主と買主双方が署名・捺印することによって成立しますが、新築のマンションの場合は不動産業者が売主なので、売主の欄にはすでに署名捺印がなされていることがほとんどです。中古マンションの場合は原則として売主と買主が仲介の不動産業者の事務所などで一緒に重要事項説明を受け、それぞれ売買契約書に署名・捺印して契約を交わすことになります。
売買契約が済んだら、買主は売主に対して、売買契約書に記載されている金額の「手付金」を支払います。手付金の金額は物件価格の5~20%程度とされることが多く、売主が物件価格の20%を超える手付金を受け取ることは法律で禁じられています。
⑨住宅ローン本審査申込
売買契約が済むと、住宅ローンの本審査に申し込みます。本審査では本人の返済能力や信用情報について事前調査よりも詳しく調査され、住民税決定通知書など収入を証明する書類、印鑑証明や住民票など本人確認用の書類の提出が求められます。求められる書類も多いので、事前に金融機関に確認しておきましょう。また、一般的な住宅ローンでは、万が一返済が不可能になったときのために「団体信用生命保険(団信)」への加入が義務づけられており、加入できる健康状態かどうかの審査も受けなくてはなりません。本審査、団信ともに審査結果は、1週間以内で通知されます。本審査に通ったら、住宅ローンの契約を行います。
⑩内覧会
建物が完成する前に購入した新築マンションの場合、完成後、引渡し前に実際の建物を確認するための機会として内覧会が開催されます。内覧会は単なる「お披露目」のイベントではなく、これまでモデルルームや図面でしか確認できなかった実際の物件を自分の目で確認できる貴重な機会です。
できれば家族で参加してしっかり物件をチェックし、不具合や傷などがないか確認しましょう。万が一不具合などが見つかった際は、引渡しまでに修繕・取り換えなどをしてもらう必要があります。
⑪残余金の支払い
住宅ローンの契約後、登記手続き(所有権登記、抵当権登記)が終了したら、金融機関から融資金が購入者の口座に振り込まれ、購入者は融資金から、すでに支払った手付金などを差し引いた残余金を売主に支払います。これを「融資実行」と言い、多くの場合、住宅ローンの金利は融資実行日時点の金利が適用されます。
また、融資実行日には物件の購入費だけでなく、登記料や固定資産税・都市計画税を日割り計算したものも合わせて支払うのが一般的です。中古マンションの場合は仲介手数料や日割り計算した管理費も支払う必要があります。
⑫引き渡し
残余金の支払いが済んだら、鍵が引き渡されます。引き渡し以降は、原則としていつでも入居が可能になりますが、新築の大規模マンションの場合は、各購入者が一斉に引っ越しをすると混雑してしまうので、引っ越し日の調整が行われることもあります。引っ越しまでの間に郵便物転送やガスの開栓予約をはじめ、必要な諸手続きを行い、スムーズに新生活が始められるよう準備を進めておきましょう。
02マンション購入時の注意点
マンション購入の手順を確認したら、購入までの手続きのうちトラブルになりやすいケースとその対策も合わせて確認しておきましょう。特に金銭の授受や契約にかかる手続きは確認を怠ると大きなトラブルに発展し、経済的な損失を被ってしまうおそれもあるので、次の点には十分注意するようにしたいものです。
売買契約では「住宅ローン特約」を付ける
住宅ローンは通常、売買契約前に受ける事前審査と契約後に受ける本審査とがありますが、それぞれ審査内容や範囲が異なるため、事前審査に通った人が本審査に落ちてしまうことも決して珍しくありません。事前審査は契約前に行われるので、仮に審査に落ちても契約違反に問われることはありませんが、本審査の場合は審査に落ちて購入ができなくなると契約違反に問われ、手付金(一般的に物件価格の5~20%)がペナルティとして売主に回収されてしまうことになります。審査に通らずにマンションが買えなくなるだけでなく、手付金まで取り戻せないとなると、買主にとっては非常に大きな痛手となってしまいます。
こういった事態を防ぐために、売買契約時には、住宅ローン審査に落ちてしまったときに契約を白紙にできる「住宅ローン特約」を結んでおく必要があります。住宅ローン特約には本審査に落ちた場合に自動的に売買契約が解除される「解除条件型」と、買主が申し出ない限り契約が解除されない「解除権保留型」とがあり、後者の場合は所定の期限が過ぎてしまうと契約解除できなくなってしまいます。売買契約を結ぶ際は、住宅ローン特約が付いていることを確認します。そして解除条件型か解除権保留型かをチェックし、解除権保留型であった場合は契約解除の期限を必ず確認しておくようにしましょう。
貯蓄をすべて頭金に回さない
住宅ローンを検討するにあたって、できるだけ借入額を抑えるために、頭金をたくさん用意しようと考える人も少なくありません。確かに頭金が多いと借入額が少なくなるため毎月の返済額が抑えられ、返済期間も短くできます。しかし、だからといって貯蓄をすべて頭金に回してしまうのは避けるべきです。
というのも、マンション購入時には物件の購入費だけではなく、手付金や不動産登記にかかる登記料、不動産取得税、ローン契約手数料などの「諸費用」も合わせて支払わねばならないからです。諸費用(一般的な目安は物件価格の3~10%くらい)は、原則として住宅ローンの融資対象にはならないため、別途、自分で用意しておく必要があります。頭金は物件価格の10~30%にとどめ、諸費用や新生活にかかる費用や万が一の出費に備えるようにしてください。
ここまで見てきた通り、マンション購入にはさまざまな手続きが必要で、専門的な知識がないと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もゼロではありません。理想のマイホームをみつけ、安心して新生活を始めるためにも、信頼できる不動産業者や金融機関を見つけ、時にはファイナンシャルプランナーなど専門家の手も借りながら、効率よく手続きを進めていきましょう。
監修:相山華子
ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。
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