住宅の火災保険料の相場はどのぐらい?保険料の決まり方を解説
住宅購入時に加入することが多い火災保険。不動産会社に勧められるままに加入はしたものの、具体的にどんな損害が補償されるのか明確に把握している人は少ないのではないでしょうか?そこで今回は、火災保険のカバー範囲、保険料の相場、加入のタイミングなどを解説します。
01火災保険のカバー範囲
火災保険は損害保険の1つで、火災、風水害、落雷、爆発・破裂などによる建物と家財の損害を補償する保険です。
ここで言う「建物」とは、建物本体とそれに付随する設備(門や塀、車庫や物置など)を指し、家財は家の中にある物品全般のことを指します。火災保険には「建物のみ」を対象にしたもの、「家財のみ」を対象にしたもの、「建物と家財」を補償対象にしたものがあります。「建物のみ」が対象のものは「家財」が対象外に、「家財のみ」を対象にしたものは「建物」が対象外になってしまうことに注意が必要です。
なお、火災保険には大きく分けて、基本的な補償内容の「住宅火災保険」と住宅を取り巻くさまざまなリスクを総合的に補償する「住宅総合保険」があり、それぞれの補償内容は概ね次の表のとおりです。
補償されるリスク | 住宅火災保険 | 住宅総合保険 |
火災 | ○ | ○ |
落雷 | ○ | ○ |
ガス爆発・破裂 | ○ | ○ |
風災・雪災・ひょう災 | ○(一部自己負担ある場合あり) | ○(一部自己負担ある場合あり) |
水災 | × | ○(一部自己負担ある場合あり) |
物体の飛来・落下・衝突 | × | ○ |
給排水設備の事故等による水漏れ | × | ○ |
騒擾等による暴行・破壊 | × | ○ |
盗難(家財の補償を付けた場合) | × | ○ |
出典:一般社団法人日本損害保険協会「火災保険」
このように、火災保険の補償範囲は多岐にわたりますが、地震が原因の損害は補償の対象外です。地震による津波や土砂崩れ、噴火が原因で建物や家財が倒壊や火災などの損害を受けても火災保険では補償を受けられません。地震による損害に備えるには、別途、地震保険に加入する必要があることに注意しましょう。
もらい火による損害は誰が負う?
不動産の購入時には必ずと言って良いほど、火災保険への加入を勧められますが、中には「火災を起こさないように十分注意すれば、火災保険なんて不要なのでは?」と加入を躊躇する人もいるかもしれません。しかし、火災の出火元は自宅とは限りません。いくら気をつけていても、近隣で発生した火災の火が燃え移り、自宅が損害を受けてしまう可能性はゼロではありません。「その場合は、火元の人が損害賠償してくれるのでは?」と思うかもしれませんが、実はそうとも限りません。というのも「失火責任法」という法律で、「失火者に重大な過失がなければ損害賠償をしなくてもよい」旨が定められているからです。つまり、自宅から出火した火が隣家などに燃え移っても、「重大な過失がある」と認められない限り、損害賠償をしなくても良いことになっているのです。逆に言うと、近隣からもらい火をして損害を受けても、相手に故意や重大な過失がなければ賠償責任を求めることはできず、損害の修復費用は自分で負担しなければなりません。こういったリスクへの備えとしても、火災保険は大切だといえるでしょう。
02火災保険の保険料の相場は?
では、火災保険に加入した場合、どのくらいの保険料がかかるのでしょうか?
火災保険の保険料は各保険会社が独自に決定しますが、その決定基準となるのは主な要素は以下のとおりです。
- 建物の構造
火災保険の保険料は、建物の構造によって大きく左右されます。火災保険では、建物をその壊れにくさや燃えにくさに応じて次の3つに区分して評価しており、一般的にはM構造⇒T構造⇒H構造の順に保険料が高くなります。
- M構造(コンクリート造りのマンションなど)
- T構造(鉄骨造の戸建ての建物など)
- H構造(木造の戸建ての建物など)
- 建物の所在地
台風や大雪の被害を受けやすい地域は、そうでない地域に比べて保険料が高く設定される傾向にあります。
- 専有・延床面積
一般的には専有・延床面積が広ければ広いほど保険料が高くなります。
- 築年数
一般的には築年数が浅いほど、保険料が安くなります。保険会社の中には「築浅割引き」制度を設けているところもあります。
- マンションか戸建てか
立地条件や延床面積が同じでも、マンションか戸建てかによって保険料は異なり、一般的には一戸建てのほうがマンションよりも保険料が高くなります。
たとえば、大手保険会社Aで以下の物件の見積もり(概算)をとったところ、保険料はそれぞれ次のようになりました。
<大手保険会社A社の見積もり(概算)>
立地:東京都、面積:100㎡
保険期間:10年、保険の対象:建物のみ、補償:火災・風災、割引:なし
月間保険料 | 年間保険料 | |
マンション | 259円 | 2,933円 |
一戸建て | 1,329円 | 1万5,098円 |
- 補償内容
カバーする補償内容が多ければ多いほど保険料が高くなります。
- 保険期間・支払い方法
火災保険の保険期間は1年~最長10年間で、保険期間が長ければ長いほど保険料は安くなります。また、年払いや月払いよりも、一括払いで支払ったほうが保険料は安くなります。なお、火災保険の保険料は掛け捨てである場合がほとんどですが、保険期間中に解約した場合は、原則として残りの契約期間に応じて解約払戻金が支払われます。
このように、火災保険の保険料はさまざまな要素やその組み合わせによって物件ごとに大きく異なります。自宅の火災保険料を知りたい場合は、火災保険の保険料を無料で一括比較できるウェブサイトを利用して、複数の保険会社から見積もりを取ることをおすすめします。同じ条件でも保険会社によって見積もりが異なるので、最も良い条件の会社を選ぶことができます。なお、見積もりを依頼したからといって、必ずその会社の保険に加入したり、手数料を支払ったりしなくてはいけないわけではありません。
03新築時の火災保険の加入タイミング
では、火災保険にはどのタイミングで加入すれば良いのでしょうか?住宅を新たに取得した場合は、住宅の引き渡し日を火災保険の補償開始日とするのが一般的です。手続きが遅れて、補償開始日が引渡し日より後になってしまうと、万が一、引渡し日から補償開始日の間に何らかの損害が起きてしまっても、火災保険の補償対象にはなりません。補償対象開始が引渡し日に間に合うよう、保険を選び、申込みの手続きをしておくことが大切です。
保険の見積もり依頼の後、保険会社からの回答が出揃うまでに数日~2週間、見積もりの比較検討に数日~1週間、加入申し込みから補償開始まで1~2週間かかることを想定して、引渡し日より遅くとも1カ月半~2カ月前には火災保険の検討を始めた方がよいでしょう。
<火災保険検討のスケジュール>
- 引き渡し日の1カ月半~2カ月前:
検討開始、各保険会社のHPや資料、店頭で情報収集 - 引渡し日の1カ月~2週間前:
見積もり依頼、見積もりの比較検討、保険の決定 - 引渡し日の2週間前:
加入申し込み手続き
不動産購入時は、火災保険の加入以外にも煩雑な手続きが多くて忙しいこともあり、あまり深く考えずに、不動産会社に勧められるままに火災保険に加入してしまいがちです。その場合、あとになって確認してみると、不要な補償内容や特約が含まれていて保険料が必要以上に高くなっていることも珍しくありません。不動産会社から火災保険を提案された場合は、必ず、加入前に補償内容や保険料、保険金の額などをしっかりと確認し、できれば他社からも見積もりをとって比較検討した上で、納得できる保険を選ぶようにしましょう。
監修:相山華子
ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。
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