マンションを購入する際の手付金とは?相場を解説

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マンションを購入する際に必要になる「手付金」は、何のために支払うお金なのでしょうか?手付金の目的や支払うタイミング、手付金の相場やできるだけ安く抑える方法についてご紹介します。

01そもそも手付金とは?

マンションを購入する際には売主と買主の間で売買契約を結びますが、契約が成立した際に、買主から売主に支払うのが、手付金です。手付金は通常、契約締結時に現金で支払われ、買主が支払った手付金を売主が受け取ることにより、売主・買主の双方がその不動産の売買に合意したものとみなされます。原則として手付金はマンションの売買代金には含まれませんが、実際には「手付金は、残代金支払時に売買代金の一部に充当する」などと契約書に明記した上で、売買代金の一部に充当するケースがほとんどです。

なお、手付金には、「証約手付」、「解約手付」、「違約手付」の3種類があります。契約時に支払う手付金がどれに該当するかは売買契約書に明記されていますが、マンションの売買契約における手付金は「証約手付」と「解約手付」であることがほとんどです。

  • 証約手付

契約の成立を証明するために支払われる手付のこと

  • 解約手付

契約成立後に買主の都合で契約を解除する場合は手付金を放棄(手付流し)することによって、逆に売主の意志で解除する場合は手付金を倍返し(手付倍返し)することによって、損害賠償責任を負うことなく契約を解除できる性格の手付のこと

  • 違約手付

売主または買主に契約違反があった場合に、損害賠償とは別に手付金を没収できる性格の手付のこと

02マンションの手付金の相場はいくら?

マンションの売買契約の際に支払う手付金の相場は、一般的には、その物件の売買価格の概ね5%~10%と言われています。売主側から一方的に手付金の金額を提示されることがよくありますが、手付金は本来、売主や仲介の不動産会社が独断で決めて良いものではなく、原則として売主と買主の話し合いと合意で決められるべきものです。したがって、売主や仲介業者から提示された手付金の金額に不服がある場合は、買主側から値下げを交渉することもできます。手付金には特に法律で下限が設けられているわけではないので、極端にいえば0円とすることもできますが、手付金が安すぎると安易に契約を解約されるおそれがあることに注意する必要があります。

逆に手付金が高額過ぎると、買主が手付を放棄して売買契約を解除することができなくなるおそれがあります。そこで、宅地建物取引業法では、売主が宅地建物取引業者で、買主が宅地建物取引業者以外の者である場合に限って、「手付金は売買代金の20%を超えてはならない」という制限を設けています(宅地建物取引業法第39条第1項)。

なお、売主が宅地建物取引業者で買主が個人である場合は、以下の「手付金保全措置」の基準に合わせて、完成物件は売買代金の10%、未完成物件は売買代金の5%に当たる金額を手付金とすることもよくあります。

手付金保全措置とは、売買契約後に、売主の不動産会社(宅地建物取引業者)の倒産などによって物件の引き渡しができなった場合に買主が支払った手付金が戻るようにする措置のことで、手付金の金額が以下の基準を超える場合は、売主である宅地建物取引業者に保全措置(金融機関等との保証契約の締結など)をとることが義務付けられています(宅地建物取引業法第41条、第41条の2)。なお、保全措置は実際に手付金が支払われる前に講じなくてはならず、売主は保全措置が講じられていることを示す保証証書を買主あてに発行する必要があります。

【保全措置が必要な手付金の金額】

  • 未完成物件の場合

手付金の金額が売買代金の5%を超える場合、または1,000万円を超える場合

  • 完成物件の場合

手付金の金額が売買代金の10%を超える場合、または1,000万円を超える場合

03手付金をできるだけ安く抑えるには?

ほとんどの売買契約で、手付金は結果として売買代金の一部に当てられるので、手付金を多く支払うことは売買代金の先払いに繋がります。しかし、マンションの購入時には何かとお金がかかるので、「できる限り当座の出費を少なくしたい」などの理由で、なるべく手付金を安く抑えたいと考える人もいるでしょう。では、手付金を安く抑えるには、どうすればよいのでしょうか?

結論から言うと、手付金を安くする方法は、主に手付金が安い不動産会社を探すか手付金の値下げ交渉をする、の2つしかありません。

  • 手付金が安い不動産会社を探す

手付金の支払いは法律で義務付けられているものではなく、手付金の金額にも特に下限が設けられていません。このため、最近では「手付金0円」を売りにする不動産会社や、「手付金一律●万円」など手付金の安さを謳う不動産会社も増えているようです。手付金をとにかく安く抑えたい場合は、こういった不動産会社を選んで物件を購入することも選択肢の1つではありますが、手付金がゼロの場合は当然ながら、万が一、契約を解除せざるを得なくなった場合に「解約手付」の恩恵(手付金を放棄することで損害賠償を負わずに契約を解除できる)を受けることができません。手付金を支払わずに買主側の都合で契約解除した場合は違約契約をせざるを得ず、売買代金の1~2割程度の違約金を支払わなくてはならなくなってしまうおそれがあります。こういったリスクを考えると、手付金0円の売買契約よりも、手付金のある売買契約をしたほうが安全かもしれません。もしも、どうしても手付金が用意できず、手付金0円で売買契約を結ぶ場合はトラブルを避けるために、売主や仲介の不動産会社に売買契約の解約時にどのような負担が発生するのかをしっかりと確認した上で契約をするようにしましょう。

一方、安すぎる手付金にもリスクがあります。手付金が安いと、売主から契約を解除されやすくなるおそれがあるだけでなく、手付金が「手付金保全措置」の基準以下である場合は、万が一、不動産会社が物件の引き渡し前に倒産などした場合に、手付金を取り戻せなくなることも頭に入れておきましょう。

  • 手付金の値下げ交渉をする

先述のとおり、手付金は本来、売主と買主が話し合って決めて良いものです。したがって、売主から提示された手付金が高過ぎると感じた場合や自己資金で払えそうもないと判断した場合は、値下げ交渉をすることもできます。売主に率直に「出せる金額」を伝えた上で粘り強く交渉を続ければ、手付金を安く抑えることも不可能ではありません。 ただし、売主にとっては、「手付金を安くする」=「買主からの契約解除のリスクが高くなる」ことになるので、しつこく値下げ交渉をしてくる買主は売却相手としての優先順位を下げられてしまうおそれもあります。最悪の場合、手付金の金額に折り合いがつかないままに交渉が決裂して、売買契約ができなくなる可能性も考えられますので注意が必要です。せっかく見つけた条件に合うマンションを、手付金のために買えなくなってしまうのは非常に残念なこと。マンション購入を決めたら、手付金として支払えるよう、物件の10%に当たる金額を目安に自己資金を準備しておきたいものです。

相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

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