不動産投資は節税対策になるのか?税制の仕組みから考える

2021.01.15 11

不動産投資には節税効果があると言われていますが、本当なのでしょうか?今回は所得税、住民税、贈与税、相続税、それぞれの観点から節税効果について確認していきましょう。不動産投資で節税をする際の注意点についても紹介します。

01不動産投資に節税効果があると言われている理由

不動産投資による節税効果が期待できるとされている税は、所得税、住民税、贈与税、相続税です。それぞれの税について、なぜ不動産投資による節税効果があるのかを理解した上で、適切に税務処理を行い、納税することが大切です。

所得税の節税効果

所得税法上、所得は10種類(給与所得、退職所得、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得、一時所得、雑所得)に分けられています。このうち、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得の4つの所得のみ、赤字が出たときに他の所得の黒字との損益通算(赤字分を黒字分から差し引くこと)が認められています。損益通算をして他の所得の黒字が少なくなれば、結果として課税対象額が少なくなり、所得税の納税額を軽減することができます。

具体的には不動産投資での所得税は、家賃収入により得た収益から必要経費などを差し引いた利益に課せられます。差し引いた金額が赤字となると損益通算が認められるのです。例えば給与所得者の場合は確定申告で不動産投資の赤字を申告すれば、給与所得から差し引かれていた所得税の一部が還付されることになります。

なお、赤字額が大きく、損益通算しても赤字が残ってしまう場合は、青色申告者に限って翌年以降3年間に限って、繰越控除を受けることができます。これらのことから、一般的に「不動産投資が赤字になれば所得税の節税効果がある」と言われているのです。

ただし、不動産所得の赤字のうち、次に該当するものは損益通算できないことに注意が必要です。

  • 別荘など生活に通常必要でない資産の貸付けに係るもの
  • 土地を取得するために要した借入金の利子に相当する部分の金額

住民税の節税効果

住民税も損益通算によって節税できる場合があります。住民税の納税額は、前の年の1月から12月までの所得に応じて計算される「所得割」と、各市町村の定める額が一律に課される「均等割」を合算した額です。このうち、均等割については金額が一律に固定されていますが、所得割については、前の年の所得が低ければ低いほど、課される金額が少なくなります。つまり、不動産投資で生じた赤字を給与所得等で損益通算することによって総所得額を少なくすれば、所得税だけでなく住民税の節税効果も期待できるということになります。

贈与税の節税効果

贈与税は個人から財産を無償でもらったときに課される税金のことで、受け取った側が申告し、納税しなくてはなりません。なお、法人から財産をもらった場合には、贈与税は課されませんが、所得税が課されます。

贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、後述する一定の要件に該当する場合は「相続時精算課税」を選択することができます。

暦年課税の場合

贈与税は、個人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から、基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対して課されます。したがって、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら、贈与税は非課税で、申告も不要です。暦年課税の場合の贈与税の税率は10%~55%で、課税対象額によって異なります。

相続時精算課税の場合

「相続時精算課税」は、60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子・孫(贈与を受けた年の収入が2000万円以下の者に限る)への生前贈与について利用できる課税方法です。

この方法を選んだ受贈者(財産を受け取る人)は確定申告をすることによって、贈与者(財産を贈与する父母または祖父母)1人あたり最大で2500万円の特別控除を受けることができます。つまり、同一の贈与者から贈与される財産が2500万円までであれば、贈与税が非課税になるということです。不動産を贈与した場合の贈与税は、その不動産の固定資産税評価額に基づいて算出されるため、固定資産税評価額が2500万円以下の不動産であれば非課税で贈与できることになります。また、1人の贈与者からの贈与額の合計が2500万円になるまでは、何回贈与を受けても非課税となります。

贈与額が特例控除の上限である2500万円を超えた場合は、超えた分に対して贈与税が課されますが、その場合の税率は一律20%で、課税対象額によっては暦年課税の場合よりも低くなります。2500万円を超えた贈与財産に対して納めた贈与税は相続時に相続税額から控除され、相続税額がすでに納めた贈与税納税額よりも少ない場合は、差額が還付されます。

<例>孫が相続時精算課税制度を使って、祖母から2年間にわたって3000万円(1年目に2000万円、2年目に1000万円)を贈与される場合

  • 1年目

贈与税の課税対象額=2000万円(贈与額)―2000万円(特別控除)=0

であることから、贈与税は0円。

  • 2年目

祖母からの贈与に適用できる特別控除上限額2500万円のうち、1年目に2000万円の控除を適用しているので、2年目以降に適用できる控除額の上限は500万円となります。したがって、

贈与額の課税対象額=1000万円(贈与額)-500万円(特別控除)=500万円

贈与税の税額は500万円×20%(税率)=100万円

この場合、祖母が亡くなったときに、孫は「祖母から相続する財産と贈与された3000万円を合計した金額」をもとに計算した相続税額から、すでに納めた贈与税相当額(100万円)を控除した金額を、相続税として納税することになります。

この相続時精算課税制度を使って子や孫に投資用に所有している不動産を生前贈与すれば、子や孫が支払う贈与税や相続税を現金で贈与する場合に比べて納税額が安く抑えられる可能性があり、節税効果を期待することができます。

ただし、相続時精算課税制度を選択すると、その贈与者が亡くなるまで継続して適用され、暦年課税に戻すことはできなくなることに注意が必要です。

相続税の節税効果

相続税の納税額は、相続する財産の評価額によって異なります。現金を相続する場合は、その金額がそのまま評価額になりますが、土地は主に「路線価」で、建物は主に「固定資産税評価額」が相続税の評価額になります。路線価は実勢価格(実際に売買される価格)の80%程度、固定資産税評価額は70%であることが多いため、現金をそのまま子や孫に相続するよりも、現金で不動産を購入し、その不動産を相続した場合のほうが相続税を安く抑えられる可能性が高くなります。

例えば2億円を現金で相続した場合と、2億円で購入した不動産(土地1億円+建物1億円)を相続した場合を比較してみると、相続税の評価額は以下のとおり5000万円も低くなります。

<現金と不動産の相続税評価額の違い>

  • 現金の場合:2億円(土地1億円+建物1億円)
  • 不動産の場合:土地8000万円(路線価=実勢価格の約80%)+建物7000万円(固定資産税評価額=実勢価格の約70%)=1億5000万円

ただし、相続で不動産を取得した場合、被相続人には不動産取得税や登録免許税などの税金がかかることに注意が必要です。

02不動産投資で節税を行う場合の注意点

ここまで見てきたとおり、不動産投資には一定の節税効果が期待できます。もちろん、不動産投資の本来の目的は節税ではなく、投資を通じて収益を上げることであり、その収益にかかる税金は適正に納めなくてはなりませんが、税制や特例措置を理解し、適切な経理処理や納税手続きを徹底すれば、結果として節税効果が得られることがあるのです。これまで税制や経理処理にあまり気を遣ってこなかった方は、投資効率を向上するためにも、以下のポイントに留意して節税を心がけましょう。

減価償却費を意識する

不動産所得にかかる所得税は、投資で得た収入から必要経費、控除額などを差し引いた金額(利益)に対して課されます。つまり、経費が増えて利益が少なくなればなるほど、所得税を低く抑えられることになります。一般的に必要経費として認められる経費には、不動産の購入費、建物の修繕費、維持管理費、固定資産税、損害保険料、不動産取得税、借入金の利子、減価償却費などがあります。このうち、節税効果を高めるために特に意識したいのが、減価償却費です。減価償却費は建物が時間の経過とともに劣化し、価値が下がっていく分を経費とみなすもので、実際の支出は伴いません。このため、普段あまり意識することがなく、必要経費として計上するのを忘れられがちですが、本来は建物の価値がゼロになるとみなされるまで(法定耐用年数を過ぎるまで)、毎年必要経費として計上できます。

減価償却の方法には「定額法」と「定率法」とがありますが、1998年4月1日以後に取得した建物の償却方法は定額法のみが適用されることになっています。定額法では原則として計上できる償却費は毎年同額で、「建物の取得価格×減価償却率」で求めることができます。減価償却率は建物の耐用年数に応じて決められており、国税庁のホームページに掲載されています。投資用の建物の耐用年数と償却率を確認して減価償却費を計算し、必要経費として忘れずに計上するようにしましょう。

青色申告をする

確定申告の際に青色申告をすると青色申告控除を受けることができるため、所得税の課税対象額を減らすことができ、節税効果が期待できます。

損益通算を意識する

前述した通り、不動産所得は給与所得など他の所得と損益通算が可能です。不動産投資で赤字が出た場合は損益通算をして所得税や住民税の課税対象額を減らすことによって、節税効果を高めることができます。 あくまでも不動産投資の目的は節税ではなく収益を上げることです。特に不動産投資の規模を拡大したい、あるいは事業として行いたい場合は、節税にこだわりすぎるのは得策ではありません。というのも、投資の収支バランスが悪い状態が続くと、投資規模を拡大するための融資を受けづらくなってしまうからです。また、節税にこだわるあまり、無意識に脱税行為を犯してしまうおそれもあり、そうなると社会的信用まで失ってしまいます。投資本来の目的を見失うことのないよう、節度を守って節税に取り組むようにしたいものです。

相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

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