家を買うリスクはある?買い時や買い方をもう一度考えてみよう

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家は生活基盤となる理想的な「場所」としての役割はもちろん、節税対策や投資の面でも優れた「資産」としての価値を持つこともあります。その反面、住宅ローンの支払いや長期使用による資産価値の低下、建物の修繕・維持に費用がかかるなどのリスクがあることも事実です。そこで今回は「家を買う」ことを検討中の方のために、実際に家を買った人の購入した理由を参考にしつつ、家を買うことのメリットやデメリットを解説します。

01そもそも家を買う理由とは?

家を買うことは、一生に一度あるかないかの大きな大イベントです。そこでまずは、実際に家を買った人たちはどんな理由が決め手となり購入に踏み切ったのか知っておきたいところですね。さまざまな調査やアンケート結果から主な理由を5つ挙げてみました。

賃貸の家賃支払いがもったいない

総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」によると、総住宅数 約6,240万7,000戸のうち、61.2%にあたる3,280万2,000戸が「持ち家」という結果でした。これに対して「借家」は1,906万5,000戸で、これは総住宅総数の35.6%です。日本人の「持ち家志向」は強いことが、このデータを見ると明らかでしょう。

もう1つ参考にしたい調査は、「全国宅地建物取引協会連合会(全宅連)」が毎年9月23日に、住宅購入者に対して実施している「不動産の日アンケート」(以下同アンケート)です。この調査結果によると、2019年度時点で「持ち家派」と答えた人は全回答者の80.9%。「持ち家派」である最大の理由は『家賃を支払い続けることが無駄に思えるから』というもので、「持ち家派」と答えた人の実に53.5%を占めています。

出典:全宅連 9月23日は不動産の日「不動産の日アンケート」2020年1月

資産を残したい

同アンケートでは「持ち家派」である理由の第2位は、『持ち家を資産として考えているから』で、32.1%という結果でした。前年(30.9%)に比べると、その割合が増えています。

出典:全宅連 9月23日は不動産の日「不動産の日アンケート」2020年1月

その背景には、社会情勢の悪化や将来への不安もあるでしょう。特に老後の収入面を考えると、「賃貸はリスクが高い」と考える人もいるようです。持ち家の場合はローン完済後に住居費を払う必要がなくなりますし、住宅ローンと同時に加入する「団体信用生命保険(団信)」あれば、住宅ローン名義人にもしものことがあっても、保険金でローンを完済できる仕組みがあります。こうした背景も「持ち家」が人気の要因でしょう。

好きなように暮らせる空間が欲しい

同アンケートの「持ち家派」の理由の第3位は『落ち着きたいから』、そして第5位は『賃貸は何かと(近隣や使い方)気を遣うことが多いから』です。

出典:全宅連 9月23日は不動産の日「不動産の日アンケート」2020年1月

つまり「落ち着ける、自由な空間が欲しい」ということでしょう。将来的に家族構成が変わったり、ライフスタイルが変わったりしても、「持ち家」であれば好きな時に自由なリフォームができます。この点も「持ち家」の大きな強みと言えますね。

節税対策

住まいとして使用している「持ち家」は、「節税対策」としても有効な資産です。例えば現在、親が住んでいる「持ち家」を相続する場合、相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×相続人数」です。建物の評価額はこの基礎控除額内に収まれば、相続税を支払うことはありません。また、不動産(建物)は比較的流動性が低いため、現金で持っている場合より評価額は下がります。さらに宅地が「小規模宅地等の特例」に該当すれば、評価額を80%減額できます。

老後対策

持ち家を「資産」として考えることは、老後の生活設計を考える上でも重要です。主に年金収入だけで生活する老後は、「住居費(家賃)」を払う必要があるかないかで大きく家計収支が変わります。また資金が必要になった場合に、持ち家を希望の条件で売却できれば「資産」としての利用価値もあります。高齢になると収入も少なくなり、住宅ローンを組むのは難しくなるため、「持ち家」があれば心強い存在でしょう。

02家を買うと、どんなリスクが想定される?

では家を買うリスクには、どんなものが想定されるでしょうか。ポイントを5つ挙げてみました。

住宅ローンの返済などの資金面

住宅ローンの返済は一般的に長期間になるので、途中で転職や失業、病気などで支払い能力がなくなった場合、家計を圧迫する恐れがあります。返済期間の見直しができるとはいえ、固定資産税のように削ることのできない支出もあるので、家計収支とのバランスを考える必要があるでしょう。

金利を変動金利に設定した場合は、さらに金利上昇リスクを考えなければなりません。現在の金利は低水準で推移していますが、今後もこの傾向が10年、20年と続くかは不透明です。いずれにせよ、ローン返済期間が長期になるほど、こうしたリスクを念頭に住宅ローンを組む必要があります。

資産価値の下落

持ち家の資産価値が下落するリスクも、考えておく必要があるでしょう。経年劣化による価値低下だけでなく、周辺の地域事情の変化によって相場が変わることもあります。たとえ今は人気のエリアでも、ローン完済後、あるいは数十年後には購入時よりも不動産価格が下落していることは考えられます。近隣の施設や交通事情の変化などは、評価額に影響を及ぼすでしょう。

修繕などのメンテナンス

持ち家のメンテナンス、修繕にかかる費用は自分で負担しなければなりません。一戸建ての場合、10年以上住んでいると壁の塗り替えや修繕、水回りのリフォームなど、何かと手を入れる必要が生じます。分譲マンションでは室内の修繕に加えて、共用部の修繕積立金があります。今後は世帯数の減少などで、修繕積立金が値上がりする可能性もあります。購入当初から修繕費もあらかじめ考慮しておくことが大切です。

引っ越しが簡単ではない

引っ越しが簡単にできないことも、持ち家特有のリスクです。例えばご近所トラブルがあったとしても、住宅ローンの精算や住居の売却などに手間や時間がかかり、簡単に引っ越しできないため、トラブルを解決する方法を探らなくてはなりません。家族の転勤や通学先の変更、あるいは子どもが独立して部屋が余ってしまう事情があっても、気軽に引っ越しはできないでしょう。

災害リスク

災害が起こって家屋が被害に遭った場合は、住まいを失うケースも。住むのに危険なレベルで家屋が損傷したとしても、持ち家だとなかなか簡単に手放せません。特に水害と地震に関しては日本中どこでも起こるリスクがあるため、家を買う時にはハザードマップなどを活用して、できるだけ災害リスクの少ない場所を選ぶことが極めて重要です。

03家を買うときの注意すべきポイント

先述したように家を買うときには「資金面の問題」や「資産価値の下落」、「引っ越しが簡単ではない」といったリスクが想定されます。そこで家を買うときに注意すべきポイントについて、簡単に説明していきましょう。

資産価値が落ちにくいエリアの物件を購入する

持ち家が、長い間高い資産価値を持つかどうかは、その「立地」によるところが大きいと言えます。やはり分譲マンション、一戸建てともに「都心へのアクセス」の良い立地は人気の傾向にあります。分譲マンションは駅近であることや生活インフラが整っていることも重要です。都心エリアを例に挙げると、同じ23区内であっても東部エリアは比較的相場が安く、しかも交通アクセスも良好なので、今後はさらに相場が上がる可能性もあります。他のエリアでもこれから新路線や新駅ができたり、再開発が進んだりするエリアは狙い目です。このような「資産価値の落ちにくいエリア」をターゲットにして物件を選定すると、マイホームが将来的に高い資産価値を維持できる可能性があります。

ライフプランを想定して将来設計を行う

「引っ越しにくい」というデメリットを避けるためには、将来家族にどのようなイベントが起こりうるのかをある程度想定した上で物件を選ぶことが重要です。子どもの人数や年代、世帯主に転勤の可能性はないか、老後の生活はどうするのかといった点ですね。将来のシミュレーションにおいては「資金面」も含めた想定が大切で、「住宅資金」「教育資金」「老後資金」の3つの資金を軸にして、家族間でよく検討しましょう。

適切な住宅ローン返済額の目安を知る

家を買う上で、住宅ローンの適正額の返済はとても重要です。無理のない返済プランを考える上で基本となるのが、「返済負担率(返済比率)を25%以内に収める」ということです。「返済負担率」とは、年収に占める年間のローン返済額の割合のこと。年収に対して年間返済総額は25%以下といったラインが家計に無理のない範囲とされます。

また月々の返済額の負担を減らすためにも、頭金を購入金額の最低1割は用意すること、購入にかかる諸費用(100万円以上かかるケースが多い)もできるだけ現金で準備しておき、住宅ローンに組み込まないようにすることも大切です。住まいとしての「マイホーム」の購入では、住宅ローン控除(減税)や各種税金の軽減措置などの制度もあります。しっかり活用して節税対策をしましょう。

04持ち家のリスクを把握した上で購入しよう

家は大きな買い物になりますので、購入を検討している段階から綿密なリサーチ、準備が必要になります。サイト内の「スゴい速い住宅ローン審査」では、まだ購入物件が決まっていない段階でも、実際に金融機関からの借入上限額の目安を知ることができます。購入プランを明確にするためにも、ぜひ利用してみてください。

岩永真理

監修:岩永真理

IFPコンフォート代表、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®、住宅ローンアドバイザー

プロフィール

大手金融機関にて10年以上勤務。海外赴任経験も有す。夫の転勤に伴い退職後は、欧米アジアなどにも在住。2011年にファイナンシャル・プランナー資格(CFP®)を取得後は、金融機関時代の知識と経験も活かしながら個別相談・セミナー講師・執筆(監修)などを行っている。幅広い世代のライフプランに基づく資産運用や住宅購入、リタイアメントプランなどの相談多数。

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