iDeCo(個人型確定拠出年金)とNISAどちらを選ぶべき?違いを比較して解説

2021.02.26 16

老後資金について調べていると、iDeCoやNISA、企業型DCと、さまざまな制度を目にするでしょう。どれも資産形成の手助けになる制度ですが、それぞれに特徴があるので内容をよく理解しておかないとメリットを活かせなくなるかもしれません。そこで、これから資産形成を始める人に向けて、この記事ではiDeCoやNISA、企業型DCの概要、およびその違いについて解説していきます。

01iDeCoとNISA、それぞれの制度をおさらい

iDeCoは「老後資金形成のために設けられた制度」で、個人が60歳までに掛金を拠出して資産運用し、そのお金を60歳以降に年金として受け取ることができます。従来の確定拠出年金法が改正され、2017(平成29)年1月から大幅に対象者を拡大したことで、多くの国民にとって、より身近な制度になりました。正式名称は「個人型確定拠出年金」であり、企業型確定拠出年金(企業型DC)などと同じく、私的年金の一種に含まれます。

私的年金の一種である関係上、原則として60歳を迎えるまで資金を引き出せないという制限はありますが、加入資格者は「20歳以上60歳未満のすべての人」となっており、非常に幅広いのが特徴です。iDeCoの主なメリットとしては、3つの税控除が設けられている点が挙げられます。

まず、1つ目のメリットは「掛金の全額所得控除」です。iDeCoにおける掛金には上限が設けられていますが、その全額を所得から控除できるので、所得税や住民税の節税につながります。2つ目のメリットは「運用益の非課税」です。一般的に金融商品を運用して得られた利益には20.315%の税金がかかりますが、iDeCo口座なら非課税扱いになるので手取り金額が減る心配はいりません。最後に3つ目のメリットは「受け取り時の控除」です。60歳以降の運用資産の受け取り方法には年金と一時金、もしくはその両方があり、選択次第で公的年金等控除や退職所得控除の対象になります。加入者本人の勤続年数や年金収入によっても変わりますが、控除額は数百万円程度になることも多く、受け取り時に多額の税金を支払わなくて済むように配慮されています。

一方、2014(平成26)年にスタートしたNISAは「少額投資非課税制度」という名称のとおり、どちらかというと投資を行う人に向けて創設された制度です。毎年120万円までの投資で得た運用益などが最長5年間非課税になるのがメリットで、より短期的なスパンで投資を考えている人に向いている制度になります。NISAも「家庭の資産形成」を目的としている点はiDeCoと同じですが、老後資金形成に特化した制度ではありません。そのため、上場株式が投資対象になっている一方で、定期預金のような元本保証型の商品は対象に含まれていない点には注意しましょう。

次の段落からはiDeCoとNISAに加えて、つみたてNISAまで含めたそれぞれの制度の違いについてより詳しく解説していきます。なお、企業型DCとiDeCoの違いについては後述していますが、企業型DCの詳細を知りたい人は下記の関連記事もチェックしてみてください。

02iDeCoとNISA、つみたてNISAの違い

まず、iDeCoとNISAの違いとして挙げられるのは、「NISAには掛金拠出期間の年齢上限がない」という点です。iDeCoは私的年金の一種なので、60歳以降から年金を受け取るために利用します。そのため、掛金拠出期間は60歳までと決められているのに対して、NISAは個人の投資への参加を促す制度なので、そうした年齢上限はありません。NISAは「日本に住む20歳以上の人」なら誰でも利用できるという点で、より対象者が幅広いのが特徴です。

一方で、投資対象の範囲については、iDeCoのほうが加入者の選択肢は増えます。iDeCoは直接株式や債券投資を行うことはできませんが、投資信託を購入することで間接的に株式や債券への投資も可能です。それに対して、NISAは上場株式を直接購入できる反面、定期預金などのより安全性の高い元本保証型の商品は投資対象になっていません。NISAでは金融庁が定めた一定の条件を満たす投資信託やETFも購入できますが、元本保証型の商品を選べないことから、投資の幅という観点ではやや狭くなります。

また、年間の積立上限額についても大きく異なります。NISAは加入条件を満たしている人なら誰でも年間で120万円が上限であり、5年間続ければ最大で600万円分の投資額における運用益が非課税です。一方、iDeCoの掛金上限は加入者の働き方によって異なり、例えば自営業者は月額6万8000円、企業年金に加入していない会社員は月額2万3000円しか拠出できません。ただし、iDeCoは比較的早い年代から60歳までコツコツと運用すれば、トータルの資産でNISAを上回れる可能性はあります。

払い出し期間については、NISAは私的年金ではないため、運用期間中にいつでも掛金を口座から出金できます。これは、「原則60歳まで掛金や運用益を出金できない」という制約があるiDeCoにはないメリットです。しかし、この制約の見方を変えると、iDeCoは「60歳まで簡単にお金を引き出せない」ので、より老後に向けてお金を貯めやすい制度になっているともいえます。

なお、NISAとつみたてNISAの違いは、基本的に「投資対象の範囲」と「年間および累積の積立可能額」の2つです。つみたてNISAは上場株式が投資対象になっておらず、「一定の投資信託への投資から得られる分配金や譲渡益」を目的として投資することになります。また、つみたてNISAは年間の積立額が40万円と少額ではあるものの、非課税期間は最長20年と長い期間になっていることからも分かるとおり、より長期的な投資を想定した制度です。NISAとつみたてNISAにはそれぞれ一長一短がありますが、少額投資非課税制度は同時に2つの口座を持つことは禁止されています。そのため、NISAとつみたてNISAを同時に利用することはできず、どちらかを選択しなければいけません。

以下にiDeCoとNISA、つみたてNISAの違いを表にまとめてみたので、参考にしてください。

iDeCoとNISA、つみたてNISAの違い一覧表

iDeCo NISA つみたてNISA
利用者 20歳以上60歳未満のすべての人 日本に住んでいる20歳以上(口座を開設する年の1月1日現在) 日本に住んでいる20歳以上(口座を開設する年の1月1日現在)
投資対象の範囲
年間の積立可能額 上限額は条件により異なる 120万円 40万円
非課税期間 60歳まで積立可能 最長5年間 最長20年間
払い出し 60歳以降 いつでも可 いつでも可
投資可能期間 60歳まで 2014~2023年 2018~2037年

03iDeCoと企業型DCの違い

ここまでiDeCoとNISA、つみたてNISAの違いについて解説してきました。しかし、会社員として働いている人のなかには、企業型DCについて聞いたことのある人もいるでしょう。企業型DCは別名「企業型確定拠出年金」と呼ばれており、前述したようにiDeCoと同じく私的年金制度の「企業年金」に該当します。

iDeCoと企業型DCは、どちらも毎月一定額の掛金を拠出する確定拠出年金である点に変わりはありませんが、その目的は大きく異なります。iDeCoは個人が掛金を拠出しますが、企業型DCは主に企業が従業員のために掛金を拠出する私的年金です。つまり、iDeCoは個人に老後資金の自助努力を促す制度であるのに対し、企業型DCは従業員のための福利厚生のひとつだといえます。

ただし、企業が掛金を拠出するといっても、資産運用を従業員自らが自由に行える点についてはiDeCoと同じです。企業型DCに加入すると、企業が口座管理手数料や掛金を拠出してくれるので、その資金を元手に従業員は資産運用を行うことになります。選べる商品は勤務する会社と提携する信託銀行などの資産管理機関によって異なりますが、定期預金や保険商品のような元本保証型から、投資信託のような元本変動型まで幅広く用意されているのが一般的です。そうして運用した資産を60歳以降に年金方式か一時金として受け取ることができます。将来どれくらいの金額を受け取れるかは、個人の運用成績次第になる部分もiDeCoと同様です。

また、企業型DCにも掛金の上限額が決められています。厚生年金基金や確定給付企業年金など企業型DC以外の企業年金に加入している場合は月額2万7500円、企業型DCのみに加入している場合は月額5万5000円です。上限の範囲内でどれだけ掛金を拠出するかは企業ごとで判断しますが、なかには「個人で掛金を追加で拠出するからもう少し多い金額で資産運用したい」と感じる人もいるでしょう。企業型DCでは、そうした人のために「マッチング拠出」という制度も用意されています。

マッチング拠出とは、企業型DCで会社が拠出する金額が掛金上限まで届いていない場合に、従業員自らが追加で出資して運用できる制度です。採用可否については会社ごとの判断に委ねられており、実際に採用している会社はそれほど多くないものの、より多くのお金で資産運用したい人に向いています。ただし、利用する場合でも「従業員が拠出する掛金は会社が拠出する掛金を超えないこと」という制限があります。

そのほかにも、企業型DCに加入している人は、2021(令和3)年2月現在ではiDeCoとの併用に制限がある点に注意しましょう。企業型DCとiDeCoを併用するには、「併用することを会社の規約で認めている場合」という条件があるからです。また、仮に会社の規約でiDeCoとの併用が認められていても、「マッチング拠出を利用していない」「企業型DCの掛金上限金額をiDeCoの掛金上限分引き下げる規約変更を労使合意の上で行う」といった条件をクリアしておく必要があります。

このように、これまで企業型DCとiDeCoの併用は実務上の高いハードルがありました。しかし、2022(令和4)年10月からは制度改正によって「会社の掛金が企業型DCの上限金額(確定給付企業年金がない場合5万5000円、確定給付企業年金がある場合2万7500円)に達していない場合」に限り、それらの制約がなくなります。結果的に企業型DCとiDeCoの同時加入のハードルは下がるため、企業型DCにすでに加入している人は、今後は老後資金形成の選択肢が増えることを知っておきましょう。

04iDeCoとNISAと企業型DC、それぞれどう使い分けるの?

iDeCoとNISA、企業型DCには、それぞれ特徴があるので、それに合った形で上手に利用することが求められます。まず、iDeCoについては前提として「老後資金に特化した制度である」という点をよく理解しておきましょう。老後の所得確保に向けて個人が継続的に自助努力するための制度であり、原則的に60歳以降しか資金を引き出すことができません。しかし、投資の対象商品は元本保証型から元本変動型まで豊富にそろっている上、どの金融機関を選択するか個人が自由に選べる点は魅力です。そのため、目標とする老後資金までなんとかして貯めたい人に向いています。

次にNISAについては老後資金というよりも、「個人投資家のための税制優遇制度」といった側面が強い制度です。もともと個人の資産運用を促進することが目的で導入された制度なので、ある程度の預貯金があって投資に回せるお金がある人なら積極的に活用するのもよいでしょう。ただし、NISAには拠出した掛金に対する所得控除はありません。以上のことから、老後資金対策を重点的に考えるなら、安全性の高い元本保証型の商品もあり、長期間投資すればするほど節税メリットも増えるiDeCoをおすすめします。

最後に企業型DCは、そもそも会社の福利厚生という位置付けです。そのため、個人が利用できるかどうかは勤務先によって異なり、勤務先に企業型DCがないケースも多いのが難点だといえます。仮に企業型DCを導入している会社に勤めているのであれば、掛金上限まで資産運用できるマッチング拠出を利用して運用することをおすすめします。なぜなら、マッチング拠出で個人が拠出する掛金は、iDeCoと同じく全額所得控除の対象になるからです。そのため、企業型DCを利用する場合でも、iDeCoとほぼ変わらないメリットを得られるケースがあります。

05iDeCoとNISAを併用で、大きな節税効果に

iDeCoの特徴として、「掛金の全額所得控除」「運用益の非課税」「受け取り時に控除が適用される」など、税制面でのメリットが大きいことが挙げられます。その一方で、原則60歳まで資金を引き出せないのは、「お金を貯める」という観点からはメリットですが、やはり不自由さを感じることもあるでしょう。

また、iDeCoは掛金変更も年に1回しかできません。掛金の拠出がどうしても難しくなった場合は停止する方法もありますが、停止したからといって自由にお金を引き出せるわけではなく、口座管理手数料はそのままかかり続けます。それに対して、NISAは年間上限額の範囲なら拠出する掛金をいつでも自由に変更できます。NISAの掛金で制限されているのは上限額だけであり、下限額は設定されていません。そのため、NISA口座だけ開設しておき、そのまま利用せずにほったらかしておくこともできます。

以上のことから、老後資金対策の観点からは基本的にiDeCoをおすすめしますが、いつでも口座から資金を引き出せる安心感を得たい人はNISAとの併用を選択するのもひとつの方法です。併用すれば、急な出費が重なったときはiDeCoだけで運用を行い、余裕があるときだけNISAで投資するといった家計の状況に合わせた臨機応変な対応がしやすくなります。iDeCoの所得控除による節税は早く始めるほどメリットが大きくなるので、とりあえずiDeCoを少額で始め、余裕資金があるときはNISAで投資するとより効率的に資産運用できるでしょう。

06自分に合った資金運用方法を選んでみよう

今回は、資産運用の方法として代表的な制度であるiDeCoとNISA、企業型DCについて紹介してきました。基本的に個人の老後資金対策を応援するのがiDeCo、投資家向けの制度がNISA、企業に勤務している人のための福利厚生が企業型DCといったイメージです。どれも利用者にとってメリットがあるのは間違いないので、それぞれの違いをよく理解して、自分に合った資産運用方法を選択しましょう。

ただし、どの方法を選ぶにしても、「目標金額」を事前に把握しておくことが重要です。目標金額まで貯めるには、「いくら掛金を拠出してどれくらいの利回りが必要か」をシミュレーションし、計画的な運用を行うことが求められます。まずは、サイト内にある「老後のお金シミュレーション」を活用して、自分の目標金額を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。

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