コロナ収束後もテレワークは継続!?テレワーク普及で変わる住まい選び
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、私たちの生活は大きく変わりました。生活の変化に伴い、人々が住まいに求めるポイントにも変化が表れています。今回は各種調査の結果から読み取れる、住まい選びに関する意識の変化について紹介するとともに、これからの時代にふさわしい住まいの選び方について考えてみます。
01テレワークで変わった住まい選び
「職場までのアクセスの良さ」は、住まい選びの際の基準として欠かせないポイントの1つです。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの働き方を大きく変えました。感染拡大を防ぐために多くの企業が社員を自宅で勤務させるテレワークを導入、公益財団法人日本生産性本部の調査によると2021年4月現在「テレワークを行っている」と回答した人は全体の19.2%と予想より少なめな印象ではありますが、このうち自宅での勤務について「満足している」が27.1%、「どちらかというと満足している」が48.6%と全体の3/4が肯定的な回答をしています。
また、現在テレワークを行っている人に「コロナ収束後もテレワークを行いたいか」と尋ねたところ、31.8%が「そう思う」、45%が「どちらかというとそう思う」と回答。計76.8%の人がコロナ収束後もテレワークを続けたいと考えていることがわかりました(※1)。
※1 出典:公益財団法人日本生産性本部「第5回働く人の意識に関する調査」P17、P20
こうしたテレワークの普及・定着を背景に、住まいを見直す人も増えています。株式会社リクルート住まいカンパニーが実施した調査(※2)によると、「テレワークをきっかけに、自宅を仕事に適した環境に整えた」と回答した人は、全体の70%に上りました。具体的な整備内容としては「仕事の資料・PCなどの置き場、収納スペースを作った」が最も多く、全体の28%、ついで「ネットワーク環境を整えた」が26%、「ホワイトボード、モニター、プロジェクターなどを用意した」が24%と続きました。
また、テレワークをきっかけに引っ越しをしたり、検討したりする人も増えています。同じくリクルート住まいカンパニーの調査によると、「テレワークをきっかけに引っ越しをした」と回答した人は全体の10%、「前向きに引っ越しを検討し始めている」が27%、「検討はしていないが、引っ越ししてみたい」が15%でした。
テレワークをきっかけでの引っ越し実施
引っ越しを実施した | 10% |
前向きに引っ越しを検討始めている | 27% |
検討していないが引っ越ししてみたい | 15% |
引っ越しはしない | 47% |
02今後の住まい選びの基準が変わる?
テレワークを機に自宅で働くための環境を整備したり、引っ越しをしたり、引っ越しの検討をする人が増えていますが、暮らしや住まいに対する意識はどのように変わっているのでしょうか?
ミサワホーム総合研究所が新型コロナウイルスの影響でテレワークを経験した人824人を対象に行った「新型コロナウイルス影響下における住まいの意識調査」(※3)の結果を見ていきましょう。
同調査で「今後の暮らし、住まいや居住地に求める要素について、考え方や価値観の変化があったか」を聞いたところ、「場所にとらわれない働き方が良いと思うようになった」と回答した人が最も多く、全体の76.5%に。次いで「住む地域として、人口が密集した都心部よりも自然豊かな郊外が良いと思うようになった」が64.6%、「親、兄弟など親族と近い距離に住む方がよいと思うようになった」が63.8%と続きました。
今後の暮らし、住まいや居住地に求める要素について、考え方や価値観の変化があったか
そう思う | そう思わない | |
場所にとらわれない働き方が良いと思うようになった | 76.5% | 23.5% |
住む地域として、人口が密集した都心部よりも自然豊かな郊外が良いと思う | 64.6% | 35.4% |
親、きょうだいなど親族と近い距離に住む方が良いと思う | 68.3% | 31.7% |
また、「住む地域として、人口が密集した都心部よりも自然豊かな郊外が良いと思うようになったかどうか」について居住地域別に見てみると、「自然豊かな地域」に住む人の80%、「郊外住宅地・ニュータウン」に住んでいる人の76.4%が「そう思う」と回答。一方で人口が密集する「繁華街・商業地」に住む人の63.8%、「既成市街地・既存住宅地」に住む人の55.8%も「そう思う」と回答しています。
もともと自然豊かな地域に住んでいる人だけでなく、便利でにぎやかな地域に住んでいる人も半数以上が、「住むなら都心部よりも自然豊かな郊外が良い」と思うようになっていることから、毎日オフィスに通勤しなくても良い働き方を経験したことによって、住む地域についての意識が変化していることが見て取れます。調査を行ったミサワホーム総合研究所では、この意識の変化によって、「今後の住まい選びの基準が変わる可能性がある」と分析しています。
※3 出典:ミサワホーム総合研究所「新型コロナウイルス影響下における住まいの意識調査レポート」(3)暮らしや住まいの意識変化
03立地よりも住環境や住み心地の良さを求める人が増えている
では、住まい選びの基準は今後、どのように変化していくのでしょうか?auじぶん銀行が行った「ビジネスパーソンの住宅事情に関するアンケート」(※4)の結果から、その答えを探ってみましょう。
まず、「現在住んでいる住まいを決めた際に何を意識したか」を聞いたところ、最も多かった回答は「駅からの距離の近さ」で全体の62.2%、次いで「広さや間取り」50.4%、「家賃の安さや物件の価格」46.2%でした。つまり、現在住んでいる住まいを選んだときには、住まいの広さや間取りといった住み心地よりも、利便性を重視していた人が多いことがわかります。
次に、「コロナ禍の影響でテレワークを経験した上で、もし今転居するとしたら、何を意識するか」を聞いたところ、最も多かった回答は「広さや間取り」で、全体の52%。次に多かったのが「駅からの距離の近さ」の49.6%で、現在の住まいを決めた際と意識するポイントの1位と2位が逆転しました。その他のポイントでは「職場へのアクセスの良さ」や「都心へのアクセスの良さ」を求める人が減った一方で、「周辺の環境」や「公園や緑が多い」、「セキュリティが強い」や「水まわり設備の充実」、「防音性が高い」などのポイントを意識する人が増加。コロナ禍によるリモートワークを経験したことにより、住まい選びにおいて利便性より住環境や住み心地の良さを重視する人が増えていることがわかる結果となりました。
04どうする?これからの住まい選び
ここまで見てきた通り、コロナ禍の影響で住まいへの意識が変わり、住まい選びの基準として利便性よりも住環境や住み心地の良さを重視するようになったという人が増えています。しかし、ワクチン接種が先行しているアメリカの都市部ではすでにオフィス回帰が始まっており、たとえば1年以上テレワークを推奨してきた動画配信大手NETFLIXも、2021年9月以降はオフィス勤務に戻るよう従業員に通達したと報じられています。同様に日本でも、コロナの感染が収束し次第、テレワーク中の社員をオフィス勤務に戻す企業は多いものとみられています。再び通勤生活に戻る可能性がある人の場合、今現在テレワーク中だからといって、すぐに職場へのアクセスの悪い場所に引っ越すのは、いささか早計だと言えるでしょう。
しかし、その一方でコロナを機に定着したテレワークをワークスタイルの選択肢の1つとして残す企業、つまり、オフィスかテレワークかの二者択一ではなく、テレワークを含めた多様なワークスタイルを用意し、社員の事情やその時々の状況に応じて使い分けていく企業も増えていくのではないかと考えられます。そうすれば、新型コロナウイルスや別の伝染病、自然災害などによって従業員のオフィス勤務が難しくなったときに、企業として柔軟に対応できるからです。
こうしたことから考えると、これからは住まい選びのポイントも「柔軟さ」にあるのではないでしょうか。つまり、テレワークになってもオフィス勤務になっても柔軟に対応できる立地や間取りを想定して住まいを選ぶ事が大切になりそうです。
立地
リモートワークがオフィス勤務に切り替わっても、通勤に支障のないエリアを検討するのが無難です。同時に「公園や緑が多い」、「散歩道がある」など、リモートワーク中のストレスを解消しやすい住環境が整っているかどうかをチェックするようにしましょう。なお、先に紹介したauじぶん銀行のアンケートでは、住環境について「徒歩圏内に飲食店がある環境を求めるようになった」、「家の近くで子供と遊べる環境が良いと思った」、「都心離れが言われた時期もありましたが、自分としては不動産価値の点からもっと都心に移り住みたいと思いました」といった声も聞かれました。
間取り
同じくauじぶん銀行のアンケートで、「コロナ前の希望の間取り」と「コロナ後の希望の間取り」について聞いたところ、コロナ後は、コンパクトな「1K」の間取りの家を希望する人が減少。より広い「1DK」や「4LDK」を希望する人が増える結果となっており、コロナ前よりコロナ発生後の方が、より多くの部屋数が求められるようになっていることがわかります。なお、「部屋数を増やすとしたら、どんな用途の部屋が欲しいか」と聞いたところ、最も多かったのが「仕事部屋」で48.6%でした。理由としては「自分の部屋と別に仕事部屋を設けることで、仕事とプライベートのスイッチができるようにしたい」、「子供に邪魔されないため」といった声が寄せられ、テレワーク中も仕事とプライベートをはっきり分けたメリハリのある生活をしたいと望んでいる人が多いことが伺えます。住まいを選ぶ際には、仕事部屋として1部屋増やす、それが無理ならパーテーション等を利用してワークスペースが作れるかどうかなどを確認し、テレワークができる間取りを探すと良いでしょう。
いずれにせよ、生活の場と働く場の垣根が低くなりつつある今、住まい探しには「どう暮らすか」という視点に加えて、「どう働くか」という視点が必要になっていると言えます。この機会に改めて、「自分はどんな働き方をしたいのか、その働き方を実現するには、どんな住まいが適しているのか」という発想から住まい探しを始めてみると良いのかもしれません。
05物件未定でも事前審査が受けられる「スゴ速」
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監修:相山華子
ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。