住居の住み替えにかかる費用はどれくらい?諸費用をまとめて紹介
子供の独立や定年退職を機に住居の住み替えを検討している人も多いのではないでしょうか。今回は実際に住み替えをする際の手順や費用、住み替えの際にローンが残っている場合の適切な対処法について解説します。
01家を住み替える際の手順とは?
実際に住み替えを決めた場合、どのような手順で住み替えを進めればよいのでしょうか。現住居売却と、新居購入の手順について確認しておきましょう。
現住居売却の主な手順
- 不動産業者に現住居の査定依頼
- 不動産業者を選び、媒介契約を結ぶ
- 現住居を売りに出す
- 買主と売買契約を結び、手付金を受け取る
- 残金を受け取った後、物件を引き渡す
- 新居購入
新居購入の主な手順
- 資金計画を建て、予算を決める
- 物件探し
- 資金計画検討
- 物件を決めて売買契約を結び、手付金を支払う
- ローン審査・手続き
- 残金の支払い、物件引き渡し
- 新居に入居
住み替えにあたっては、現住居の売却と新居の購入を同時進行で進め、現住居の売却・引き渡し直後に新居の引き渡しを受けて入居するのが、無駄のない理想的な流れです。しかし、現実にはそうは上手く運ばず、新居を購入する前に現住居を売る「売り先行」か、新居を購入してから現住居を売る「買い先行」のどちらかになるケースがほとんどです。売り先行と買い先行には、それぞれ次のようなメリットとデメリットがあります。
売り先行のメリット・デメリット
売り先行になると、現住居の売却益を新居の購入資金に当てられるので資金計画が立てやすくなる、住宅ローンを組まずに新居を購入できる可能性があるなど、資金面で無理をせず住み替えがしやすいというメリットがあります。
一方、現住居を売却後にすぐに新居が見つからない場合は、仮住まいをしなくてはならず、その賃料や現住居から仮住まい、仮住まいから新居へと、2回の引っ越しが必要となり、コストが余分にかかってしまいます。
買い先行のメリット・デメリット
買い先行の主なメリットは、現住居に住み続けながらじっくりと時間をかけて新居探しや購入の手続きができること。また、仮住まいを借りる必要がなく、引っ越しが1回のみで済むのもメリットの1つです。その一方で、現住居の売却益を新居の購入資金に当てられない、場合によっては現住居のローンと新居のローンを2重で支払わねばならないといったデメリットもあります。
このように、売り先行・買い先行のそれぞれメリットとデメリットがありますが、資金面でなるべく無理せずに住み替えをしたい場合は「売り先行」で、時間をかけてゆっくり新居を選びたい場合は「買い先行」で住み替えをする方が良いと言えそうです。
02家の住み替えにはどのくらいの費用が必要?
では、住み替えには、どんな費用がどのくらいかかるのでしょうか?ここでは住み替えにかかる一般的な費用の項目と、その金額の目安について解説します。
現住居の売却時にかかる費用
- 仲介手数料
現住居が売れた場合、買い主を見つけて売買契約を仲介した不動産業者に仲介手数料を支払います。仲介手数料には定価はないので不動産業者や物件によって異なりますが、法律で上限(=売却額の3%+6万円+消費税)が設けられているので、これを超えて仲介手数料を請求されることはありません。なお仲介手数料を支払うタイミングは売買契約締結時と引き渡し時に半額ずつ支払うケースと、引き渡し時に満額をまとめて支払うケースとがあります。利用している不動産業者に支払いのタイミングを確認しておくと良いでしょう。
- 印紙税
不動産売買の際に売り主と買い主との間で交わす不動産売買契約書には、印紙税が課されます。印紙税は売り主と買い主が分担して収入印紙を購入し、不動産売買契約書に貼ることによって納めることになっています。ただし、買い主が全額を負担した場合、売り主の印紙税納付義務はなくなります。
印紙税の金額は不動産売買契約書に記載された契約金額に応じて決まり、最も安い場合で200円、最も高い場合は60万円です。印紙税の価格の詳細は国税庁のホームページで確認することができます。
新居の購入時にかかる費用
- 物件取得費用
物件の取得費用は、取得する物件の広さや立地、種類や築年数によって異なるので一概には言えませんが、住宅ローンフラット35を運営する独立行政法人住宅金融支援機構がフラット35の利用者を対象に行った調査では、2019年の平均所要資金は以下のような結果となっています。1つの目安として参考にすると良いでしょう。
住宅取得の平均所要資金
不動産の種類 | 平均所要資金 |
マンション | 4,521万円 |
土地付き注文住宅 | 4,257万円 |
建売住宅 | 3,494万円 |
注文住宅 | 3,454万円 |
中古マンション | 3,110万円 |
中古戸建 | 2,574万円 |
出典:独立行政法人住宅金融支援機構「2019年フラット35利用者調査」P9
- 手付金
不動産売買契約を結ぶ際に、支払う一時金のことで、一般的には物件価格の5%から10%にあたる金額を支払うケースが多いようです。
- 仲介手数料
中古住宅を購入する場合は、不動産会社に仲介手数料を支払います。仲介手数料の上限や支払いのタイミングは売却時と同じです。
- 印紙税
売買の場合と同じく、不動産売買契約書に売り主と分担して収入印紙を貼付し、契約書に課される印紙税を支払います。ただし、売り主が全額を負担した場合、買い主の印紙税納付義務はなくなります。
- 登録免許税
取得した不動産の所有権を登記するにあたって国に納める税金で、登記料とも呼ばれます。税額は原則として次の計算式で求めることができます。なお、税率は登記の種類によって異なります(0.4%~2%)。
登録免許税額=不動産の固定資産税評価額✕税率
- 不動産取得税
不動産を取得した際に課される税金で、次の計算式で求めることができます。本来の税率は原則4%ですが、土地と住宅については2021年3月31日までに取得したものに関しては3%に引き下げられています。
不動産取得税額=不動産の固定資産税評価額✕税率
- 住宅ローン手数料
住宅ローンの利用にかかる手数料として金融機関に支払います。金額は金融機関によって異なりますが、一般的には3万円~5万円、あるいは融資額の2%程度が目安です。
- 住宅ローン保証料
万が一、住宅ローンが支払えなくなったときのために、あらかじめ金融機関に納めておく保証料のことです。金融機関や、借入額、返済年数によって異なる。一般的には一括払いの場合は借入額の2%前後が目安。金利上乗せ払いの場合は、金利に0.2%前後が上乗せされることが多いようです。
- 固定資産税と都市計画税の精算料
固定資産税と都市計画税は、1月1日時点で固定資産課税台帳に登録されている人が納税義務者となります。売主が先払いしている引き渡し以降分の固定資産税と都市計画税を日割り計算して算出した額が精算金で、買主が負担します。起算日は地域の慣行で1月1日とするケースと4月1日にするケースがあり、1月1日を起算日とした場合は、買主は引き渡し日から翌年の12月31日までの額を負担します。通常は引き渡し日に精算します。
- 仮住まいにかかる費用
現住居を買い主に引き渡した後、すぐに新居に入れない場合は仮住まいを借りる必要があり、その場合は賃貸住宅であれば賃料のほかに契約時の礼金・敷金、仲介手数料がかかります。
- 引っ越し料
現住居または仮住まいから新居への引っ越し費用がかかります。引っ越し前に不用品を処分して荷物を減らす、繁忙期を避けて平日に行うなどして工夫すれば、引っ越し費用を抑えられる可能性があります。
03家の住み替え時、残ったローンはどうすべき?
現住居の住宅ローンが残っている状態で住み替えをする場合、売却時にはローンを精算しておく必要があります。現住居の売却益でローンの残額を精算できれば良いのですが、売却益が残高を下回ってしまうなどして、精算できない場合も珍しくありません。
その場合は、自己資金で不足分を補って精算するか、「住み替えローン」を使う方法が一般的です。住み替えローンは、現住居のローン残高と新居購入費をまとめて1つのローンにして借りられるというもの。手持ちの現金でローンの残高が精算できない場合には便利なローンですが、通常の住宅ローンに比べて審査基準が厳しく、金利が高いというデメリットがあります。
また、新居の購入費用の支払い期限までに現住居の売却益が入らない場合は、「つなぎ融資」を使って借りた資金で現住居のローンの残額を支払うことができます。つなぎ融資は売却益が入り次第、速やかに返済されることを前提としたローンですが、やはり一般的な住宅ローンよりも金利が高いこと、新居購入のための住宅ローンとは別途借り入れなくてはならないため、保証料や手数料が余計にかかってしまうことに注意が必要です。
このように、住み替えは現住居の売却と新居の購入を同時に進めなくてはならないため、単に住宅を購入するだけの場合・売却するだけの場合に比べて資金繰りが難しく、想定外の出費が発生してしまうことも珍しくありません。予算オーバーに陥らないためには、無理のない資金計画を立てることが大切です。家族でよく話し合い、不安な場合は金融機関の担当者やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談してアドバイスを受けるようにしましょう。
監修:相山華子
ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。
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