返済中のマイホームが被災したら住宅ローンはどうなる?|再建で使える主な公的支援制度まとめ

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令和8年熊本地震や同年8月の千葉豪雨をはじめ、各地で大きな被害をもたらす自然災害が相次いでいます。地震や水害でマイホームが損壊・倒壊したとしても、住宅ローンの返済が自動で免除されるわけではありません。ローン返済に加え、壊れた家の再建費用が必要になることで、住宅ローンの負担が重くなる可能性があります。再建のために新たなローンを組めば、いわゆる「二重ローン」の状態になることもあります。 こうした事態に対し、国や自治体は返済不要の支援金から低利融資まで、生活再建を支える公的制度を幅広く用意しています。さらに、自然災害で住宅ローンなどの返済が困難になった場合に、債務の減額・免除を検討できる「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」もあります。 この記事では、「もし住宅ローン返済中に被災したら」という視点で、使える公的支援制度の内容と申請のポイントを整理します。これから住宅ローンでマイホームを取得しようと考えている方はぜひご一読ください。

01まず知っておきたい|被災してもローンの返済義務は残る

大前提として知っておかなければならないのが、たとえ災害でマイホームが全壊したとしても、住宅ローンの返済義務そのものはなくならないということです。結果として、住宅ローンを返済しながら再建費用も負担することになり、再建のために新たなローンを借りれば「二重ローン」の状態になる可能性があります。

被災時の負担を少しでも軽くするため、次の2種類の制度を確認しておきましょう。

  1. 再建費用を支える「公的支援制度」(給付・融資)
  2. ローンの返済負担を軽くする「減免・猶予の制度」
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すべての支援の入口になる「り災証明書」

多くの公的支援制度を利用する際に重要になるのが「り災証明書」です。市区町村が被害の程度を証明する書類で、住まいや生活に関する公的支援の申請に必要です。

り災証明書では、被害の程度を原則として次の6区分で表します。

り災証明書における被害程度の6区分

被害の程度 損害割合
全壊 50%以上
大規模半壊 40%以上50%未満
中規模半壊 30%以上40%未満
半壊 20%以上30%未満
準半壊 10%以上20%未満
一部損壊 10%未満

被災した自宅のある市区町村に交付を申請すると、市区町村の職員が住宅の損害割合を調べたうえで証明書が発行される流れです。

片付けや修理を始める前に、被害状況を写真や動画で記録しておきましょう。やむを得ず先に修理する場合も、被害状況がわかる写真や修理の見積書・領収書などを保管しておくことが大切です。

02被災したときに確認したい主な公的支援制度

2種類の制度のうち、まずは公的支援制度について詳しく紹介します。被災したときに確認しておきたい主な公的支援制度には、次のようなものがあります。

  • 被災者生活再建支援制度
  • 住宅の応急修理制度
  • 災害復興住宅融資
  • 災害弔慰金
  • 災害障害見舞金
  • 災害援護資金

被災者生活再建支援制度|最大300万円が返済不要で受け取れる

自然災害で自宅に大きな被害があった世帯に対し、返済不要の支援金を支給する制度です。被害程度に応じて決まる「基礎支援金」と、再建方法に応じて決まる「加算支援金」の合計で支給額が決定します。

全壊等の被害を受けた世帯が住宅を建設・購入する場合、合計最大300万円が支給されます。単身世帯の支給額は4分の3となるため最大225万円です。大規模災害の場合には、自治体独自に上乗せ支援が加わることもあります。申請窓口は被災当時に住んでいた市区町村で、基礎支援金の申請期間は災害発生日から13か月以内、加算支援金の申請期間は37か月以内です。

なお、当制度はあくまで自宅の被害が対象であり、空き家・別荘・賃貸に出している物件は対象外です。

参考:内閣府防災情報のページ「被災者生活再建支援法」

住宅の応急修理制度|住むために必要な最小限の修理を支援

準半壊以上(半壊等)の被害を受けた住宅について、住むのに必要最小限の部分を応急的に修理してもらえる制度です。大規模半壊に資力要件はありませんが、それ以外の半壊等には所定の資力要件が設けられています。

本制度では、原則として自治体から施工業者に費用が支払われます。限度額を超える部分などは自己負担となる場合があります。2026年度の限度額は、半壊以上75万7000円・準半壊36万7000円が目安です。具体的な金額は、市区町村や適用される災害によって異なります。

なお、すでに施工業者へ費用を支払い済みの場合などは対象外で、応急仮設住宅との併用には一定の制限があります。半壊以上の被害を受けて修理に1か月以上かかると見込まれる場合には、工事完了まで最長6か月間、応急仮設住宅に入居できます。

災害復興住宅融資|通常ローンより低金利で再建資金を借りられる

り災証明書の交付を受けた方が、自宅の補修や新たな住まいの建設・購入を行う際、低金利で融資を受けられる住宅金融支援機構の融資制度です。建設・購入は原則として全壊した方が対象ですが、大規模半壊・中規模半壊・半壊の場合も、被災住宅の修理が不能または困難であるなど一定の要件を満たせば対象となります。

住宅の再建に必要な資金を確保するための選択肢の一つになります。

参考:住宅金融支援機構「災害復興住宅融資(建設・購入)」

災害弔慰金・災害障害見舞金|家族の死亡・重度障害に給付される

災害により死亡した場合や、一定の重度障害を負った場合に給付を受けられる制度です。

災害弔慰金は、生計維持者が亡くなった場合500万円以下、その他の家族が亡くなった場合250万円以下の支給を受けられます。災害障害見舞金の支給額は、生計維持者が重度障害を負った場合250万円以下、その他の家族が負った場合125万円以下です。

支給額はいずれも上記の範囲内で市区町村が決定し、申請先も市区町村です。

参考:内閣府防災情報のページ「災害弔慰金の支給等に関する法律」

災害援護資金|生活再建の資金を最大350万円まで借りられる

災害によって負傷したり、住宅・家財の被害を受けたりした世帯が、生活再建資金を借りられる制度です。貸付限度額は350万円で、利率は年3%以内(据置期間は無利子)、償還期間は据置期間を含めて10年となっています。

世帯人数や住宅・家財の被害状況などに応じた所得要件があります。

主な支援制度の早見表

上記の6つの支援制度を早見表にまとめました。情報の確認に役立ててください。

被災住宅に対する主な公的支援制度

制度 主な目的 内容・金額の目安
被災者生活再建支援制度 住宅・生活の再建を支援 最大300万円の現金給付
住宅の応急修理制度 住宅の応急修理 現物支給(修理)
半壊以上:約75万7000円
準半壊:約36万7000円
災害復興住宅融資 建設・購入・補修資金の融資 住宅金融支援機構による融資
災害弔慰金 災害による死亡に対する給付 生計維持者:500万円以下
その他:250万円以下
災害障害見舞金 災害による重度の障害に対する給付 生計維持者:250万円以下
その他:125万円以下
災害援護資金 生活再建資金の融資 最大350万円
利率:年3%以内

03住宅ローンが返せないとき——二重ローンを防ぐ制度

被災しても住宅ローン返済がなくなるわけではありません。被害が大きく、従来どおりの返済が難しいと感じたら、早めに動くことが重要です。

まずは金融機関へ相談|返済猶予・期間延長・金利引き下げ

被災して返済が厳しい見通しなら、まずはローンを組んでいる金融機関へ相談しましょう。金融機関によっては、被災者向けに返済猶予や返済期間の延長、金利の引き下げなどの条件変更を用意しています。全期間固定金利の【フラット35】でも、要件に該当する被災者向けに、返済金の払い込みの据え置き・一時的な金利引き下げ・返済期間の延長といった措置を用意しています。

これらの措置を使えば、返済負担を抑えることも可能です。自宅の補修費用の発生や被災による収入減などで負担が重いときは、返済が滞る前に、できるだけ早く相談しましょう。

自然災害債務整理ガイドライン|自己破産せずにローンを減免できる

災害でローン返済が困難になった人が、自己破産することなく、ローンの減額や免除を受けられる「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン(通称:自然災害債務整理ガイドライン)」も定められています。

対象となるのは、災害救助法が適用された自然災害(東日本大震災を含む)の影響で、ローンを返せなくなった、あるいは近い将来返せなくなることが確実と見込まれる個人・個人事業主です。加えて、被災前に返済の滞りがなかったことなど、一定の要件を満たす必要があります。

ガイドラインが適用されることで、一定の財産を手元に残せる場合があり、生活再建に必要な資金を確保しやすくなる可能性があります。手続きを支援する登録支援専門家(弁護士、公認会計士、税理士、不動産鑑定士など)への費用は原則としてかかりません。

個人信用情報機関に債務整理を行ったことが登録されないので、その後の生活再建がしやすくなる点もメリットです。なお、特定調停手続の利用にかかる費用は負担する必要があります。

ガイドラインを使った債務整理を希望する場合、まずは最も多額のローンを借りている金融機関に申し出ます。金融機関の同意を得られたら、地域の弁護士会などに相談しましょう。

04税金の軽減も忘れずに

住宅や家財などが被災した場合、税金の負担を軽くできる制度も設けられています。

所得税の場合、一定の要件を満たす場合、確定申告で「雑損控除」と「災害減免法による所得税の軽減・免除」のいずれか有利なほうを選択できます。ただし、災害減免法を選べるのは、その年の合計所得が1000万円以下で、かつ住宅や家財の損害額がその価格の2分の1以上の場合です。

その他、固定資産税や都市計画税の減免を受けられるケースもあります。詳しくは、管轄の税務署や市区町村の窓口で確認してください。

05これからマイホームを買う人が、今できる備え

ここまで見てきたように、公的支援はいざというときに心強い制度です。しかし、それだけで再建費用のすべてを賄えるわけではありません。マイホーム購入を検討するなら、次の備えも忘れずに考えておきましょう。

地震保険・火災保険を確認する

被災後の生活再建に備えるうえで重要なのが、火災保険と地震保険です。ただし、火災保険では地震・噴火・津波を原因とする損害は補償されず、地震で発生した火災による焼失も原則として補償対象外となります。地震による損害に備えるには、地震保険への加入が必要です。

地震保険は、必ず火災保険とセットで契約する仕組みです。同じ所在地・建物構造などの条件であれば、どの保険会社で加入しても補償内容や保険料は基本的に同じです。

補償額は、火災保険の保険金額×30〜50%の範囲で設定され、上限額は建物5000万円・家財1000万円です。支払われる保険金は、建物・家財の損害区分に応じて次のように定められています。

【地震保険】損害区分ごとの支払われる保険金

損害区分 支払われる保険金
全損 契約金額×100% (時価が限度額)
大半損 契約金額×60% (時価×60%が限度額)
小半損 契約金額×30% (時価×30%が限度額)
一部損 契約金額×5% (時価×5%が限度額)
出典:一般社団法人日本損害保険協会「備えて安心 地震保険の話」

ハザードマップで土地のリスクを確認する

できるだけ災害リスクが高くない立地の物件を選ぶというのも、事前の備えとして有効です。ハザードマップを確認すれば、その土地のリスクをある程度把握できます。ハザードマップでリスクを確認できる災害は、洪水・内水氾濫、土砂災害、津波・高潮、地震による揺れやすさ、液状化などです。

ハザードマップは国土交通省「ハザードマップポータルサイト」から、いつでも閲覧できます。「重ねるハザードマップ」で複数の災害リスクを重ねて表示できるほか、「わがまちハザードマップ」で市区町村ごとの情報も見られます。マップには避難場所も記載されているので、事前に避難場所の位置と自宅からの避難経路を確認しておくと安心です。

地震による災害リスクが高いとされる都道府県では、地震保険料が高く設定されているため注意が必要です。また、土砂災害警戒区域・津波災害警戒区域などに立地する場合、売買契約時の重要事項説明事項に該当します。買主が契約前に災害リスクを把握できる仕組みですが、裏を返せば、そのリスクは将来の売却時の評価にも影響し得るということです。

無理のない返済計画を立てる

被災時の二重ローンによる負担を抑えるには、万一の再建費用や火災・地震保険料も資金計画に盛り込み、家計に余力を持っておくことも重要です。返済負担率に余裕を持たせておけば、金利上昇局面でも、無理なく返済を続けやすくなります。

購入前に「スゴい住宅ローン探し」の住宅ローンシミュレーターで毎月の返済額と借入可能額を試算し、無理のない資金計画になっているか確認するのがおすすめです。

06もしものときに使える制度を知っておくことが、安心してマイホームを持つための備えになる

住宅ローン返済中に被災してもローンはなくなりません。しかし、公的な支援金や低利融資、ローン減免などを活用すれば、再建による負担を軽減できます。多くの制度で求められるのが「り災証明書」です。片付けや修理を始める前に被害状況を写真で記録し、できるだけ早く証明書を申請しましょう。

とはいえ、住まいや生活の再建には費用がかかります。公的支援や保険を活用できても、ローン返済に負担を感じる可能性もあるでしょう。

万一に備えるためにも、物件決定前に「住宅ローン保証審査」で借入可能額の目安を把握しておきたいところです。併せて、「最新金利ランキング」で金融機関ごとの金利を比較し、自分の条件に合う住宅ローンを探してみましょう。

借入額や金利によって毎月の返済額は変わるため、購入前に複数の条件を比較しておくことが大切です。その分だけ家計に余力が生まれ、万一のときの再建費用にも備えやすくなるでしょう。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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