震度7の熊本地震、マンションにも被害―「耐震基準」で分かれる明暗、これから住宅ローンを組む人が知るべきこと
2026年7月28日に発生した「令和8年熊本地震」は、最大震度7を観測し、マンションでも壁のひび割れやエレベーター停止などの被害が起きました。日本では耐震基準を大地震のたびに見直してきた過去があり、そのおかげもあって倒壊するマンションこそ減っていますが、被害を受けることで住み続けられなくなるリスクがあるのも現実です。 そこでこの記事では、これから住宅ローンを組む人に向けて、それぞれの耐震基準(旧耐震・新耐震・2000年基準)の違いを紹介したうえで、安心して暮らせる物件選びと無理のない資金計画について解説します。
01令和8年熊本地震でマンションに何が起きたか?
2026年7月28日午後4時27分、熊本県を震源とする激しい地震が起きました。「令和8年熊本地震」と名付けられたこの地震は宇城市と氷川町で最大震度7を記録し、戸建てだけでなくマンションにも大きな爪痕を残しました。国内で震度7を観測するのは2024年の能登半島地震以来で、熊本県内では2016年の熊本地震以来10年ぶりの出来事です。
当該地震では、ショッピングモールで発生したガス爆発(原因は調査中)や製紙工場の煙突倒壊などによる人的被害も報告され、熊本県では死者38人・重傷者33人などの被害(8月31日時点)が発生しました。
また、建物被害も多数報告されており、たとえば熊本市中央区の14階建てマンションでは共用部の壁のひび割れやドアがゆがんで開きにくくなったほか、エレベーターが3基とも停止したとのことです。高層階の住民は階段での上り下りを余儀なくされ、「外出するだけで毎日汗だく」「買い出しも最小限」との声も聞こえています。
同マンションのエレベーターは、地震時管制運転により震度4程度以上で自動停止し、震度5弱を超える揺れの後は技術者による点検が必要な仕組みのため、復旧には時間がかかる見込みです。このように、マンションには倒壊しなくても「住みにくくなるリスクがある」ことは頭に入れておかなければいけません。
02そもそも「耐震基準」とは?旧耐震・新耐震・2000年基準の違い
マンションの地震リスクを左右する最大の要素といえるのが「いつの耐震基準で建てられたか」です。建築基準法はこれまで大地震のたびに見直され、地震に耐えるための最低ラインである耐震基準は大きく3つに分かれています。具体的には下記のとおりです。
| 名称 | 概要 |
|---|---|
| 旧耐震基準 (〜1981年5月) |
震度5強程度の揺れで倒壊しないことを想定 震度6強〜7は想定外で、相対的に倒壊リスクが高い |
| 新耐震基準 (1981年6月〜) |
震度6強〜7でも“倒壊しない”ことを目標に旧耐震基準を強化 |
| 2000年基準 (2000年6月〜) |
主に木造住宅向けの追加強化(地盤に応じた基礎、接合部の金物、耐力壁のバランス等) RC造マンションは新耐震基準の枠組みが基本 |
これらの耐震基準が建物被害にどの程度影響するかが明らかになったのが「令和6年能登半島地震」で、下記のような違いがありました。
▼令和6年能登半島地震における建築物構造被害の原因分析を行う委員会最終とりまとめ(令和7年12月)
- 旧耐震(1981年5月以前):倒壊・崩壊19.4%
- 新耐震(1981年6月〜2000年5月):倒壊・崩壊5.4%
- 2000年6月以降:倒壊・崩壊0.7%(608棟中4棟)
同地震では耐震等級2・3や長期優良住宅では倒壊被害はなく、多くが無被害〜軽微にとどまっています。一方で、RC造建築物は新耐震基準以降で上部構造が倒壊・大破した事例はありませんでしたが、基礎の大破・杭の損傷や配管など建築設備の損傷で“継続使用性”が損なわれた事例は確認されています。
以上のことから、新耐震基準以降、特に2000年基準や上位の耐震等級を満たす建物は、地震が起きても相対的に安心だといえるでしょう。ただし、それらの建物であっても「被害がゼロ」というわけではありません。能登、そして今回の令和8年熊本地震が示す通り、倒れなくても住みにくくなるリスクはどのような建物にも存在するといえます。
03これから中古マンションを買う人が「耐震」で失敗しないための4つのチェックポイント
では、これからマンションを買う人は何を確認すればいいのでしょうか。特に中古マンションは築年数だけでは判断できない落とし穴があるので注意しなければいけません。内見や重要事項説明の場で気を付けたいポイントは以下のとおりです。
- 建築確認日
- 耐震等級・耐震診断・改修履歴
- 立地・地盤・建物形状
- 管理状態と修繕積立金
①建築確認日
まず確認したいのが、建物がどの耐震基準で建てられたかです。新耐震基準の分かれ目は「1981年6月1日以降に建築確認を受けたかどうか」ですが、1981年完成でも旧耐震基準の場合があります。
そのため、「完成年」ではなく確認済証の日付で判断するのがポイントです。重要事項説明の場で、新耐震基準への適合を示す書類(耐震基準適合証明書など)を確認するのもよいでしょう。
②耐震等級・耐震診断・改修履歴
耐震等級は、2000年に創設された住宅品質確保促進法に基づく住宅性能表示を取得した住宅が対象で、1〜3の3段階で評価されます(1が建築基準法の最低ライン、2はその1.25倍、3は1.5倍の耐震性。ただし、この倍率は「実際の地震の揺れが1.25倍・1.5倍まで安全」という意味ではありません)。旧耐震の物件では、耐震診断の有無や改修履歴を管理組合に確認しておくと安心です。
③立地・地盤・建物形状
内見時にあわせて見ておきたいのが、立地と建物の形です。軟弱地盤はもちろん、1階が駐車場のピロティ形式や、L字型など極端に不整形な建物は揺れが集中しやすいため要注意です。
④管理状態と修繕積立金
最後は、地震の被害を受けた「あと」を見据えたチェックポイントです。地震後の復旧は管理組合の資金的な体力に左右される部分が大きく、積立金が少ないマンションでは、資金不足や住民間の合意形成の難しさから修繕が思うように進まないことがあります。長期修繕計画の有無や、修繕積立金の残高・滞納状況も、リスク管理の一部として確認しておきましょう。
04「耐震性」と「住宅ローン・資金計画」はつながっている
基本的に、新しい基準や上位の耐震等級の建物のほうが地震による被害は受けにくいです。しかし、耐震性の高い物件はその分だけ価格が上がりやすいのも現実です。つまり、安全な住まいは無理のない返済計画あってこそ長く住み続けられるともいえるでしょう。
実は「良い物件選び」は「有利なローン」にも直結しています。たとえば、フラット35は住宅の技術基準(耐震性など)を満たす住宅が対象ですが、さらに性能の高い住宅は当初一定期間の金利引き下げを受けられる「フラット35S」というローンを申し込めます。
フラット35Sでは住宅の性能に応じて「金利Aプラン(耐震等級3など)」と「金利Bプラン(耐震等級2・免震など)」があり、前者は▲0.5%、後者は▲0.25%の金利引き下げをいずれも当初5年間受けられるのが特徴です。
安心を追求するあまり無理な借り入れをすると日々の生活が苦しくなる可能性があるうえ、万が一地震被害を受けたあとも、修繕費や一時的な住み替え費用などの突発的な支出に耐えられないリスクがあります。
特に住宅ローンの総返済額は金利差で数百万円変わることも珍しくなく、同じ借入額でも0.数%の差が長期では大きく響きます。だからこそ、住宅ローンを選ぶときは最初の1行だけで決めることはせず、複数の金融機関を比較することが、安心してマイホームに住むための大切なポイントだといえます。
05安全な住まいを、無理のない住宅ローンで
耐震基準が厳格化されてきたこともあって、近年の大地震でもマンションが倒壊する事例はほとんどありません。しかし、今回の令和8年熊本地震が実証したように、新しいマンションも被害と無縁ではなく、住みにくくなるリスクは存在します。そのため、購入する前に耐震基準や築年(建築確認日)、管理状態を必ず確認してください。
ただし、無理な返済計画を立てると資金的な余力がなくなってしまい、日々の生活はもちろん、災害時にも困ってしまうかもしれません。安全な物件は無理のない返済計画とセットで初めて「長く住み続けられる住まいになる」という考え方を基本に、耐震性の高い物件で安心して暮らし続けるためにも、まずは自分に合う住宅ローンを知ることから始めるとよいでしょう。
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監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。






