住宅ローンは「エリア × 制度」で総額が変わる|関東・関西の助成金と金利優遇を比較
住宅を購入するとき、つい物件価格ばかりに目が向いてしまう人もいるでしょう。しかし、実際に支払う総コストは物件価格だけで決まるわけではありません。総コストのカギを握るのは、初期費用を下げる「補助金」と、総返済額を下げる「金利優遇」です。実はこの2つは、住むエリアによって利用しやすさや内容に大きな違いがあることをご存じでしょうか。 そこでこの記事では、最新調査のデータをもとに、関東・関西で助成金の傾向がどう違うのか、そしてこれから住宅ローンを組む人が総コストを抑えるには何を確認すべきかを解説します。
01住宅ローンの「見えないコスト差」はエリアで決まる
住宅購入では、仮に同じ価格の物件を選んだとしても、最終的に支払う住宅ローンの総額は人によって大きく異なります。その差は、「①自治体や国の補助制度で購入時の負担を減らす」「②住宅ローンの金利優遇制度で長期的な返済負担を減らす」という2つを上手に活用できるかどうかで生まれます。
まず、①は環境性能の高い住宅取得や省エネ設備導入などに対して行政が用意している支援金を活用する方法です。
たとえば、東京都の「東京ゼロエミ住宅」では、省エネ性能の高い新築住宅に最大240万円、国の「みらいエコ住宅2026事業」では、GX志向型住宅などに最大125万円(地域により110万〜125万円)の補助が受けられます。要件を満たせば、それぞれの制度を利用できる可能性がありますが、併用の可否や対象経費については、各制度の最新情報を確認してください。
これらの制度は住宅購入時の自己負担額、ひいては住宅ローンの借入額そのものを直接減らせるのがメリットです。
一方、②は各金融機関が一定条件を満たした住宅に適用する金利引き下げ措置を活用する方法です。たとえば、全期間固定金利型の「フラット35」には「フラット35S」という金利引き下げプランがあり、省エネ・耐震などの基準を満たすと一定期間金利優遇が受けられます。
こちらは一度に受け取る補助金とは異なり、毎月の返済を通じて長期間効果が続くのが特徴です。①と②を組み合わせれば、同じ価格の住宅でも総支払額に数百万円程度の差が生まれることもあります。
ただし、どちらも「利用できるかどうかは住むエリアによって大きく異なる」点には注意してください。補助制度は省エネ支援が手厚い地域、移住・定住促進に力を入れる地域、空き家活用が豊富な地域など、自治体ごとに重点分野は異なります。
また、金利優遇制度も各金融機関で条件や引き下げ率が異なるので、住宅ローンを利用する際は「いくら借りられるか」だけでなく、「どのエリアで、どんな制度を使えるか」まで考えておくことが総コストを抑える第一歩になります。
02関東・関西で助成金のカテゴリはこう違う
住む地域ごとに利用できる支援制度が異なる点は、塗装会社紹介サイト「ヌリカエ」の調査結果からも明らかです。同調査で全国4375件(関東1238件・関西615件)の助成金・補助金制度を分析したところ、制度カテゴリの構成には下記のような違いがありました。
| 分類 | 関東 | 関西 |
|---|---|---|
| 耐震・防災 | 26.6% | 35.3% |
| 省エネ | 22.1% | 14.3% |
| バリアフリー | 17.0% | 15.0% |
| リフォーム全般 | 9.0% | 4.1% |
| 空き家 | 8.5% | 11.4% |
| 子育て・若年 | 6.4% | 8.3% |
| 防犯 | 3.5% | 0% |
| 移住定住 | 1.2% | 4.6% |
| その他 | 5.8% | 7.2% |
上記の分析結果を見ると、関東では「省エネ」、関西では「空き家」「移住定住」の割合が比較的高い傾向にあります。そのため、関東では「省エネ住宅を取得し、補助金や金利優遇を活用する」、関西では「移住・定住や空き家の支援制度を活用する」ことが、住宅ローンの総コストを抑えるポイントになってくるでしょう。
【関東】省エネ住宅なら「補助金+金利優遇」のダブル取り
関東地区、とりわけ東京都で省エネ住宅を建てるなら、自治体・国の補助金と金融機関の金利優遇を組み合わせるのがおすすめです。代表的な補助金としては、以下の2つが挙げられます。
| 制度名称 | 概要 |
|---|---|
| 東京都「東京ゼロエミ住宅」 | 断熱性能や省エネ設備の基準を満たした新築住宅に、水準に応じて助成金が交付される制度。 最上位の水準Aで最大240万円、太陽光発電や蓄電池の設置で別途補助が受けられるケースも |
| 国土交通省・環境省「みらいエコ住宅2026事業」 | GX志向型住宅など一定の要件を満たせば、最大110万円が補助される制度。 ただし自治体補助との併用可否は制度ごとに異なるため、事前確認が必要 |
上記に加えて、省エネや耐震といった基準を満たした住宅には全期間固定金利型「フラット35」の金利引き下げ制度が適用される場合があります。具体的な金利プランと優遇金利は以下のとおりです。
| フラット35S名称 | 優遇金利 |
|---|---|
| フラット35S(金利Bプラン) | 年▲0.25%(当初5年間) |
| フラット35S(金利Aプラン) | 年▲0.50%(当初5年間) |
| フラット35S(ZEH) | 年▲0.75%(当初5年間) ※長期優良住宅との併用で年▲1.0% |
仮に東京都で5500万円のGX志向型住宅を新築するモデルケースでは、「東京ゼロエミ住宅(最大240万円)+ みらいエコ住宅2026事業(最大110万円)+ フラット35Sの金利優遇」の3つを活用できる可能性があります。
補助金は「借入額」を、金利優遇は「利息を含む総返済額」を減らすのに効果的です。それぞれのメリットを上手に組み合わせることで、住宅ローンの総コストを大きく抑えられる可能性があります。
【関西】移住・定住 + 空き家活用で取得コストを下げる
関西エリアは、移住定住支援や空き家活用に関する制度の割合が関東より高い傾向にあります。そのため、地方への移住や中古住宅の取得を考えている人にとっては、取得コストを大きく下げられる可能性があります。
たとえば、大阪市内の30代夫婦が小学生の子ども2人と和泉市南部エリアへ移住し、新築住宅を取得したケースを考えてみましょう。このケースでは条件さえ満たせば下記の制度を活用できる可能性があります。
- 南部地域等移住定住支援補助金(新築住宅取得):100万円
- 子育て支援加算:子ども1人につき25万円 × 2人 = 50万円
- 国の「みらいエコ住宅2026事業」(GX志向型住宅):最大110万円
上記のケースでは補助金だけで最大260万円(和泉市150万円 + 国110万円)の支援を受けられるうえ、利用条件を満たしてフラット35Sなどの金利優遇を組み合わせれば、初期費用だけでなく35年間の総返済額も抑えられます。
住宅価格は都市部より地方のほうが抑えられるケースが多いですが、自治体独自の支援制度まで含めて比較すると、総コストの差はさらに広がるかもしれません。住宅ローンを検討する際は、物件価格だけでなく「その自治体でどんな制度が使えるか」まで確認しておくことが重要です。
03金利優遇で住宅ローンの総返済額はいくら変わる?
ここまで紹介してきたように、自治体や国が用意している補助金を活用すれば住宅ローンの借入額を最大で数百万円程度抑えることができます。では、見えないコスト差を決めるもう1つの要素である金利優遇で住宅ローンの総返済額はどれぐらい変わるのでしょうか。
仮に借入金額3000万円、借入期間35年(元利均等返済・ボーナス返済なし)で住宅ローンを借りた場合、金利2.0%と1.5%で毎月の返済額と総返済額をそれぞれシミュレーションすると、結果は以下のとおりです。
| 金利 | 2.0% | 1.5% |
|---|---|---|
| 毎月の返済額 | 約9万9000円 | 約9万2000円 |
| 総返済額 | 約4170万円 | 約3850万円 |
このシミュレーションでは、金利が0.5%下がるだけで総返済額は約320万円少なくなりました。毎月の差額は約7000円に見えてもも、35年間積み重なると大きな差になります。金利優遇措置を上手に活用すれば、補助金以上に総返済額を抑えられる可能性もあります。
04住宅ローンを借りる前に確認すべき「制度の穴」
補助金や金利優遇を活用することで、住宅ローンの負担を大幅に軽減できる場合があります。ただし、補助金を活用する際は予算上限に気を付けてください。
一般的に、補助金は国や各自治体の予算が決まっており、上限に達した時点で受付が終了します。そのため、「来年でいいや」と申請を後回しにすると、本来使えるはずだった補助を受けられなくなる可能性があります。
また、2026年度は国の「みらいエコ住宅2026事業」の受付開始告知が7月までずれ込むなど、契約時点で制度の詳細が確定していないケースもあります。制度内容が固まる前に住宅ローンの契約を進めると、想定していた補助を受けられないリスクがあることも意識しておきましょう。契約前に特に確認しておきたいのは、以下の3点です。
- お住まい予定の自治体が、どのタイプの制度に力を入れているか
- 補助金の担当課はどこか、申請は自分でやるのか工事会社・施工会社に任せられるのか
- 今年度の受付状況(予算の残り・締め切り)がどうなっているか
制度は自治体ごとに窓口も申請方法も異なるため、住宅探しの早い段階で情報を集めておくことが、住宅ローンの総コストを最小化するポイントになります。
05制度を調べたら、次は「自分に最適な住宅ローン」を見つけよう
今回紹介したように、各自治体の制度や金利優遇を上手に活用すれば、住宅ローンの総返済額を抑えられる可能性があります。活用にあたってはそれぞれ条件があるため、まずは住宅探しを始める段階で自治体の情報を集めてみることをおすすめします。
その際には補助金の金額を単純比較するのではなく、物件価格、住宅ローン金利、税制、通勤・通学費、維持費などを含めた総住居費で比較することが大切です。そして、利用する制度に目途が立ったら、金利優遇も含め実際にどの住宅ローンを選ぶかを検討してみましょう。
実は金融機関や金利タイプの違いによる総返済額の差は、補助金の額を上回ることも珍しくありません。そのため、住宅ローンを申し込む前に「自分はいくら借りられて、毎月いくら返すことになるのか」を把握しておくことが重要です。
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監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
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