住宅価格が上がる都市部、注目される「認定低炭素住宅」という選択肢
ここ数年、都市部を中心に住宅価格の高騰が続いています。マイホームを検討している方の多くが、費用負担を少しでも抑えて効率的に建てたいと考えているのではないでしょうか。 そこで注目されているのが「認定低炭素住宅」です。高い省エネ性能だけでなく、場合によっては容積率の緩和が受けられるため、限られた敷地でも十分な広さの住宅を建てられる可能性があります。 本記事では、認定低炭素住宅が都市部の狭小地で家を建てる方にとって有効な選択肢となり得るのか、分かりやすく解説します。
- 01なぜ都市部では“同じ予算で小さな家”になりやすいのか
- 02認定低炭素住宅とは?長期優良住宅とZEHとの違い
- 認定低炭素住宅の制度目的は「都市のCO₂削減」
- 長期優良住宅は「住宅を長持ちさせる」ことを目的とした制度
- ZEHは「エネルギー収支ゼロ」を目指す住宅
- 認定低炭素住宅・長期優良住宅・ZEHは併用可能か
- 03都市部で認定低炭素住宅が有効な理由
- 容積率緩和で床面積を確保しやすい
- エネルギー効率の向上で「住居費全体」が安定する
- 税制・金融面の優遇も活用できる
- 04注意!認定低炭素住宅は誰にでも有利とは限らない
- 認定取得には手間とコストがかかる
- 05都市部での家づくりは「制度活用力」で差がつく
01なぜ都市部では“同じ予算で小さな家”になりやすいのか
2026年3月17日に公表された令和8(2026)年地価公示では、東京23区の住宅地で前年比プラス13.8%となるなど、都市部における土地価格の上昇が続いています。加えて建築費も上昇しており、同じ予算でも確保できる延床面積は年々縮小している状況です。
土地取得費は固定費のため、容積率を最大限活かさないと、面積あたりのコストは割高になりやすくなっています。つまり、今まで以上に「効率的な家づくり」の重要性が増しているのです。
こうした背景から、容積率緩和の恩恵が受けられる認定低炭素住宅に関心が集まっています。
02認定低炭素住宅とは?長期優良住宅とZEHとの違い
上記のように都市部で注目される「認定低炭素住宅」ですが、同じく高性能住宅の基準として知られる「長期優良住宅」や「ZEH(ゼッチ)」とはどのように違うのでしょうか。ここでは、それぞれの制度の成り立ちと違いを整理したうえで、都市部で検討する際のポイントをお伝えします。
認定低炭素住宅の制度目的は「都市のCO₂削減」
認定低炭素住宅は、「都市の低炭素化の促進に関する法律(エコまち法)」に基づく認定制度です。個別の住宅の省エネ性能を高めるだけではなく、都市全体のCO2排出量を削減することを目的としています。
低炭素住宅の認定を得るには、断熱性能の向上や高効率設備の導入、一次エネルギー消費量の削減などを通じて、一定の省エネ基準を満たさなければなりません。基準をクリアし、所管行政庁の認定を受けて初めて「認定低炭素住宅」となります。
単なる性能表示ではなく、法律に基づく行政認定の制度である点が、認定低炭素住宅の特徴といえるでしょう。
長期優良住宅は「住宅を長持ちさせる」ことを目的とした制度
長期優良住宅は、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づく認定制度です。一定の省エネ性能が求められる点は認定低炭素住宅と共通ですが、それ以外にも耐震性の確保、劣化対策、メンテナンスのしやすさなども求められます。こうした要件を通じて、長く住み続けられる住宅にすることを目的としているのです。
つまり、長期優良住宅は「環境負荷を減らすため」というよりも、「長寿命化によって社会全体の住宅ストックの質を高めるため」の制度といえます。
ZEHは「エネルギー収支ゼロ」を目指す住宅
ZEHは、経済産業省主導のエネルギー政策に基づく家づくりの基準です。高断熱化・高効率設備・太陽光発電などを組み合わせ、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目的としています。
ZEHも認定低炭素住宅も住宅の省エネ性能に関係する点では共通ですが、ZEHが「省エネ性能の基準」であるのに対し、認定低炭素住宅は「都市政策上の制度」であるという点が大きな違いです。こうしたことから認定低炭素住宅には、次のような法的優遇措置が設けられています。
認定低炭素住宅における主な法的優遇措置
- 住宅ローン減税の借入限度額の優遇
- 登録免許税の税率の軽減
- 一定条件下での容積率の緩和
特に容積率緩和は、ZEHにはない認定低炭素住宅独自の措置となっており、都市部の家づくりに大きく影響する要素です。
認定低炭素住宅・長期優良住宅・ZEHは併用可能か
結論からいえば、認定低炭素住宅・長期優良住宅・ZEHを併用することは、制度上可能です。
まず、認定低炭素住宅と長期優良住宅はいずれも法律に基づく行政認定制度です。それぞれ異なる法律を根拠として、異なる目的のもとに作られた制度のため、両方の基準を満たしていれば両方の認定を受けられます。
次に、ZEHは省エネ性能の基準です。認定低炭素住宅や長期優良住宅の省エネ性能に関する要件はZEH水準と重なる部分も多く、設計上ZEHの基準を満たしていれば、認定を受けやすくなるでしょう。
ただし、併用するにはそれぞれの申請手続きや基準への適合が必要になるので、設計や申請の手間やコストが余計にかかります。補助金も重複して受け取れないケースがあり、併用したからといって、その分お得になるとは限りません。
マイホームの立地や目的に合った制度・基準を選び、必要に応じて組み合わせるのが効果的です。
03都市部で認定低炭素住宅が有効な理由
地価の上昇で、住宅取得費用に占める土地代の割合が高まる都市部では、「同じ予算でどれだけの広さと性能を確保できるか」が家づくりの重要なテーマです。認定低炭素住宅は、そんな都市部の家づくりと相性がよいと考えられます。その理由について探っていきましょう。
容積率緩和で床面積を確保しやすい
1つ目の理由は、認定低炭素住宅は、一定の条件下で容積率の緩和が認められていることです。
容積率とは、敷地面積に対する延床面積の上限を定める規制のことです。建物が密集する都市部では容積率の制限が厳しく、設計の自由度に大きく関わります。
認定低炭素住宅では、全体の延床面積の1/20を限度として、省エネ設備(太陽光発電設備、燃料電池、蓄電池など)のスペースを容積率算定から除外できます。この緩和措置を適用することで、同じ敷地面積でも実質的に居住スペースとして使える床面積を増やせるでしょう。土地単価の高い都市部では、1㎡の価値が数十万円に相当するケースもあり、資産効率の観点からも大きなメリットにつながります。
ただし、容積率の扱いは自治体や用途地域によって異なり、必ずしも一律に適用されるわけではありません。認定低炭素住宅で容積率緩和を狙う場合、設計者や行政窓口への事前確認が必須です。
エネルギー効率の向上で「住居費全体」が安定する
住宅購入時には、建築費やローン借入額といった家づくりの費用に気を取られがちです。しかし、実際に住み始めると光熱費も家計に大きく影響します。
認定低炭素住宅は一次エネルギー消費量を抑えられるため、冷暖房費や給湯費などの光熱費を抑えやすいのもメリットです。物価や生活コストも高くなりやすい都市部において、月々の光熱費を抑えられれば、家計にゆとりが生まれるでしょう。
また、近年は電気代やガス代の高騰が家計を直撃しています。さらなるエネルギー価格の上昇リスクを踏まえると、将来にかけて住居費全体を安定させられる点も、認定低炭素住宅の魅力といえます。
税制・金融面の優遇も活用できる
認定低炭素住宅には、さまざまな税制上の優遇措置が設けられています。先ほど紹介した住宅ローン減税の借入限度額の優遇、登録免許税の軽減のほか、フラット35の金利引き下げも対象です。
これらの優遇措置を活用すれば、住宅の取得費や維持費を抑えることができ、長期的な家計の負担軽減につながるでしょう。加えて、長期優良住宅やZEHなどと併用すれば、さらに負担を軽減できる可能性もあります。
04注意!認定低炭素住宅は誰にでも有利とは限らない
ここまで認定低炭素住宅のメリットについて紹介してきましたが、すべての立地で有利というわけではありません。
そもそも、認定低炭素住宅は市街化区域等に建てられる住宅を対象としており、市街化区域等外に建てる場合は原則として認定を受けられません。これは、制度自体が都市の低炭素化を目的としているためです。
制度の大きな特徴である容積率緩和も、容積率に余裕がある土地に建てるケースや、容積率上限まで使い切らないケースでは、それほど効果が見込めません。地価がそれほど高くない郊外に建てる場合でも、面積を効率化できるインパクトは小さくなるでしょう。
あくまで「都市部の市街化区域等内において、容積率が制約になっている立地」でこそ、強みが活きる制度だといえます。
認定取得には手間とコストがかかる
認定低炭素住宅の検討でもう一つ気をつけなければならないのが、所管行政庁の認定を受けなければならない点です。設計段階での性能計算や必要書類の作成、申請・審査など、通常の住宅よりも手続きの手間や時間がかかります。当然、その分、設計費用や申請関連費用が上乗せされることもあるでしょう。
制度の活用によって税制優遇や容積率緩和などのメリットが受けられる一方、新築時の負担が増える側面もあります。また、家づくりのスケジュールが長引きやすいため、入居希望時期が明確に決まっている場合は注意が必要です。
05都市部での家づくりは「制度活用力」で差がつく
土地代が大幅に上昇している都市部では、地価と容積率による制約が、家づくりの設計と予算に大きく影響します。容積率の緩和措置が設けられている認定低炭素住宅は、そうした環境下で、住宅の「広さ」と「性能」を両立するのに効果的な制度です。
ただし、すべての立地で有利になるわけではないため、敷地条件や希望する広さ、予算などとのバランスの見極めが求められます。
地価の高い都市部で、広さも性能も十分なマイホームを叶えたいなら、まずは資金計画からスタートしてみてはいかがでしょうか。 「スゴい住宅ローン探し」では、あなたにぴったりの住宅ローンが見つかる「最新金利ランキング」や「住宅ローンシミュレーション」、家探し前でも欲しい金額が借りられるのかすぐわかる「住宅ローン保証審査」など、住宅ローンの予算検討に便利なサービスを多数ご用意しています。都市部での家づくりの第一歩としてぜひご活用ください。
監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
関連キーワード






