住宅ローン契約者の4人に1人が団信を十分に理解せず 金利に注目が集まる中で見落としやすい契約内容

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2025年12月、日本銀行はインフレ対策の一環として政策金利の引き上げを行いました。それに伴って、住宅ローンの金利動向に懸念を抱いている方も多いでしょう。一方で、住宅購入経験者を対象にした調査では、住宅ローン契約時に加入する団体信用生命保険について、「十分に理解していなかった」と答えた人が約4人に1人にのぼることがわかりました。 今後の金利動向ばかりが注目されがちな住宅ローン選びですが、調査結果からは契約内容そのものへの理解が後回しにされてきた実態も浮かび上がっています。そこで、本記事では調査結果をもとに、住宅ローン契約時に見落とされやすい保険の問題点を解説します。

012025年12月、日銀が政策金利を0.75%程度へ引き上げ

日本銀行は2025年12月19日に開催した金融政策決定会合で、政策金利を従来の0.5%程度から0.75%程度まで引き上げることを決定しました。この決定によって政策金利は約30年ぶりの高水準となり、長く続いた低金利環境からの転換を示す動きとして、住宅ローンをはじめとする個人向けの借り入れへ関心が高まっています。

その後、2026年1月22~23日に開かれた金融政策決定会合では金利を据え置くことが決まりましたが、堅調に続く消費者物価指数を背景に今後も金利上昇圧力は高まることが予想されています。

実際の住宅ローン金利は市場金利や金融機関の調達コスト、競争環境などを踏まえて設定されるため、政策金利の動きが直ちに住宅ローン金利に反映されるわけではないものの、これから住宅購入を検討する人は金利の動きに敏感になっておくほうがよいでしょう。ただし、住宅ローンでは金利以外にも契約時に確認すべき重要な要素がありますが、十分に意識されていない実態があるようです。その実態について、アンケート結果を確認してみましょう。

02住宅ローン契約で見落とされやすい「保険」 4人に1人が十分理解せず

株式会社NEXERとくらすサポート秋田が、住宅購入経験者を対象に行った「住宅ローン契約時の保険に関するアンケート」によると、住宅ローン契約時に付帯する保険について約4人に1人が十分に理解していないことがわかりました。

また、同調査では保険選択理由として「金融機関に勧められるまま決めた」と回答した人も半数を超えるなど、住宅ローン選びではどうしても返済額に直接関係する借入額や金利条件に関心が集中しやすく、保険内容の確認は後回しになりがちなようです。

住宅ローンは高額な商品であり、契約時点での理解不足が将来の不安や想定外のリスクにつながる可能性もあります。これから紹介する調査結果の具体的な内容を踏まえて、住宅ローンの選び方をあらためて考えてみてください。

団体信用生命保険への理解度にばらつき

同調査の「住宅ローンと一緒に加入する保険(団信や火災保険)について、どのくらい理解していますか?」という質問に対しては、「とても理解している」が26.7%、「やや理解している」が48.3%で合計75%を占めました。

その一方で、「あまり理解していない」(18.0%)と「まったく理解していない」(7.0%)の合計が25%に達するなど、4人に1人が保険内容について十分理解しないまま契約しているという結果が出ています。

団信では一般的に契約者の死亡時にローン残高がゼロになりますが、それ以外にも病気や就業不能時が保障対象になる場合があります。そうした団信の種類による違いを比較しないまま契約してしまうケースも見られ、消費者の間でも理解度にばらつきがあるようです。

団信の選択、約半数が金融機関任せ

同調査の「保険の種類や条件はどのように選びましたか?」という質問では、「金融機関の提案にそのまま従った」(50.7%)が最も多く、「金融機関の提案を参考にしつつ自分でも調べた」(20.0%)、「自分で複数の保険商品を比較検討した」(11.3%)と続きました。

「金融機関の提案にそのまま従った」を選んだ人は「自分で探すのが大変だから」「急いでいたから」などの理由を挙げています。これは住宅ローンの手続きは物件契約や審査対応などと並行して進むため、保険内容まで確認・比較する余裕を持ちにくいことが影響していると考えられます。

たしかに、金融機関の提案は一般的なものであることが多く、そのまま従っても問題ないケースも少なくありません。一方で、すべての人にベストな選択肢とは限らないので、選択の背景や保障内容を把握しないまま契約を進めると、後になって「想定していた内容と違った」と後悔する可能性もあることは頭に入れておきましょう。

03なぜ団信は理解されないまま契約されるのか

では、なぜ団信の内容を十分に理解しないまま契約してしまうのでしょうか。主な理由は2つあります。

住宅購入時は判断が短期間に集中する

1つ目の理由は「時間的余裕の不足」です。住宅購入は他者との競争になりやすく、短期間での決断を迫られます。特に注文住宅は打ち合わせが多岐にわたるため、保険は「事務手続きの一部」として優先順位が下がりがちです。注文住宅に関する調査結果からも、時間的制約が保険選びを妨げている実態が浮き彫りになっています。

一方、建売住宅は打ち合わせ回数が注文住宅に比べて少ないものの、人気物件は「早い者勝ち」の側面が強く、申し込みから契約まで短期間で決断しなければいけないこともよくあります。さらに、ローン審査や契約手続きと並行して保険選びを進めなければいけない関係上、保険内容を検討する時間が不足しがちです。

事実、先述した「金融機関の提案にそのまま従った」という回答を選択した理由では、「手続きに余裕がなかった」「急いで決める必要があった」と答えた人が目立ったことからも、時間的制約が保険の選択に影響を与えていることがわかります。

専門用語が多く、団信の保障内容の差が見えにくい

2つ目の理由は、「保障内容の複雑さ」です。団信に限らず、保険は後々のトラブルを避けるために約款などで保障対象を明確にしていますが、その中には日常で使わない専門用語がたくさん使われており、直感的に各プランの決定的な違いを把握するのは難しいことが多いです。

たとえば、特約なしの一般的な団信では、病気やケガで一時的に動けなくなっても医師から「回復の見込みがある」と診断されれば保険金が下りないこともあります。つまり、「現状は収入が途絶えて生活が苦しいのに、住宅ローンはそれまでと同じように返済しなければいけない」という事態が起こる可能性もあります。しかし、こうした支払い条件の細かな違いまで理解することは、住宅ローンの他の手続きにも追われている消費者にとって難しい場合もあるでしょう。

そのため、保障の定義を正しく理解しないまま、「銀行が勧めるなら他の人も契約しているだろうから、きっと大丈夫」と思い込み、中身がブラックボックスの状態で契約に至るケースもあると考えられます。

04住宅ローン契約前に確認したい、保険の基本的な視点

住宅ローンは高額な借り入れをする商品なので、たとえ忙しい状況であっても可能な限り条件を確認したうえで契約するのが望ましいです。そこで、最後に住宅ローン契約前に確認したい保険の基本的な視点を解説していきます。団信の契約について、「どう選んだらいいかわからない」と悩んでいる方は参考にしてください。

「もし働けなくなったら」を想定し、団信の保障範囲を具体的に確認する

まず、前提として考えておきたいのは、住宅ローンは返済完了まで数十年にわたる長期契約だということです。契約期間中に万が一のことが起こるリスクも踏まえ、死亡時はもちろん、「生存していても働けなくなったとき」の家計へのダメージを想定しておくことをおすすめします。

具体的には保険ごとの支払い要件の差を確認しておくとよいでしょう。たとえば、住宅ローンの返済が免除される条件として「がんと診断されれば対象」となる団信もあれば、「1年以上の入院が必要」な団信もあるので、保障対象となる条件を整理しておくことが大切です。

また、多くの団信では精神疾患が対象外なことが多く、特定の病歴がある場合の扱いに違いがあります。自分の健康リスクを把握したうえで、契約内容と照らし合わせてみてください。

返済不能リスクを家計のキャッシュフローに組み込む  

住宅ローンの契約では「いくら借りられるか」ではなく、「どんな状況でも返済を続けられるか」という視点も重要です。理想の住宅を追い求めるあまり予算上限まで借りると返済が滞ってしまうリスクも高くなり、最終的にはせっかく手に入れたマイホームを失うかもしれません。

そのようなことにならないように、たとえば病気で収入が減った場合でも「保険でローンが完済される」のか、それとも「毎月の返済額が補填されるだけ」なのかは把握しておきましょう。

ただし、保障が手厚いほど金利の上乗せ幅も大きくなる傾向があるため、教育費や老後資金とのバランスを考えることも大切です。金利上乗せで保険の特約料を支払ってでも手厚い保障を優先すべきかは契約者の状況によって異なるので、将来の家族構成の変化まで予測したうえで判断することがポイントになります。

合わせて遺族年金や障害年金などの公的保障も視野に入れるとともに、団信の保障は完済するとなくなるため、その後の保障を民間の保険で確保しておく考え方も大切です。

契約前に団信を比較・検討できる状態にする

団信の契約は住宅ローンの手続きと並行して行われることが多いので、まったく情報がない状態でイチから調べるのは大変です。そのため、できれば住宅ローンの契約を始める前に、ある程度情報を整理しておくとよいでしょう。

団信に加入した場合の金利の違いはもちろん、返済額の推移や保障内容、適用条件の違いをあらかじめ把握しておけば、その場で即断する必要がなくなり、冷静に判断しやすくなるはずです。団信は金融機関ごとに異なり、「がん」や「三大疾病」への保障を手厚くした特約も選べます。金利上乗せの有無と保障のバランスを軸に、事前に比較検討しておきましょう。

また、同じような金利水準の住宅ローンであっても団信の保障内容が違う場合もあるため、住宅ローン選びでは「金利+保障内容」をセットで比較する視点が欠かせません。あらかじめ複数の選択肢を把握して比較検討の余地を残しておくことが、結果として納得感のある住宅ローン選びにつながるはずです。

05住宅ローンは「借りられるか」より「返済を続けられるか」で考える

近年続く、日銀の利上げを背景にあらためて住宅ローンへの関心が高まる中、今回紹介した調査結果からは契約時に付帯する保険の内容が十分理解されないまま手続きが進んでいるケースがあることがわかりました。住宅ローンは高額かつ数十年にわたる長期契約であるため、契約時点での判断がその後の自分の将来に大きく影響します。

もちろん、金利動向は重要な判断材料の一つではありますが、それだけで住宅ローンの良し悪しが決まるわけではありません。団信の保障内容や返済リスクへの備えを含め、「万が一のときでも返済を続けられるか」という視点で契約内容を確認することが求められます。そのためにも、住宅ローンを契約する前に条件を整理し、複数の想定でシミュレーションを行っておくことが大切です。

当サイトでは住宅ローンの予算作成に役立つ各種シミュレーターを用意しています。また、最新の金利と毎月の返済額を手軽に知りたい方には「住宅ローン金利ランキング&最新動向」が便利です。 物件が決まる前でも借入可能額が把握できる「住宅ローン保証審査」も、具体的な資金計画づくりにぜひお役立てください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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