友達近居、シェアハウス、マンション購入…おひとり様女性の老後の住まい、最適な選択肢は?
現在、おひとりさま女性の間で注目されている新しい暮らし方の一つに「友達近居」があります。同年代の気の合う友人と近隣に住んだり、同じマンション内で暮らしたりして、適度な距離感を保ちながらも、お互いに見守りや生活の手助けを行うライフスタイルです。また、同じ家に複数人で住む形のシェアハウスを選ぶ人も増えています。 ある調査によれば、おひとりさまを含むマンションを購入した女性には、「将来の不安や心配が減った」「心が豊かになり、ゆとりができた」など、精神的にポジティブな変化が見られました。この記事では、将来の住まいに不安を感じているおひとりさま女性に向けて、今どきの暮らし方やマンション購入のメリットについて詳しく解説します。
01友達近居、シェアハウス…おひとり様女性が注目する暮らし方とは?
燦(さん)ホールディングス株式会社が実施した「おひとりさまの終活に関する意識調査」※によると、老後について金銭面は44%、精神面では34%の人が不安を抱えているという結果が出ました。
金銭面の不安では「これからの人生で必要な金額がわからない」という回答が77%と圧倒的に多く、老後の生活費や医療費に対する不透明感が大きな課題であることが浮き彫りになっています。一方、精神面では「相談できる相手がほしい」が43%、「孤独死」が40%と、おひとりさまだからこその悩みが多いことが分かりました。
これらの不安を解消する方法として関心を集めているのが、気の合った仲間と助け合いながら生活するライフスタイルです。具体的な選択肢としては「高齢者向けシェアハウス」が挙げられます。これは同世代の仲間と共同生活を送ることで、日常の助け合いや孤独感の軽減を図るものです。さらに、若い世代と高齢者が共に暮らす「多世代型シェアハウス」も増えており、異なる世代間での交流やサポートが期待されています。
しかしながら、これらのシェアハウスではプライベートの確保が難しいことや、入居者同士の生活リズムの違いによるストレスが問題となることもあります。そこで最近注目されているのが、同居ではなく友人同士で近くに暮らす「友達近居」という新しいスタイルです。例えば、1つのマンションでそれぞれが部屋を購入し、互いの生活をサポートするという形です。このスタイルには、介護付き老人ホームで別々の部屋に暮らす場合も含まれます。
おひとりさま女性の老後の住まいには多様な選択肢があり、ライフスタイルや価値観に応じた最適な方法を選ぶことが求められるでしょう。そこで次の段落からは、「高齢者向けシェアハウス」「友達近居」「マンション購入」それぞれの特徴とメリット・デメリットについて解説します。
02高齢者向けシェアハウスのメリット・デメリット
シェアハウスは、複数の他人が共同で生活する賃貸住宅です。キッチンや浴室、トイレなどは他の居住者と共有し、各個室がプライベートスペースとなります。このシェアハウスのターゲットを高齢者向けに絞ったものが「高齢者向けシェアハウス」です。高齢者向けシェアハウスの特徴として、階段に手すりが付いていたり、段差をなくすためにスロープが設けられていたりするなど、高齢者に配慮した設備が充実しています。
高齢者向けシェアハウスに住むメリット・デメリットには、以下のようなものが挙げられます。
メリット
- 個別に賃貸住宅を借りるよりも生活費を抑えられる
- 持ち家と異なり、メンテナンス費用がかからない
- 介護施設とは違って、敷金(一時入居金)が発生しない
- 同年代の入居者同士で交流ができる
- 異変があった際に早期発見につながりやすく、孤独死のリスクが低い
デメリット
- 老人ホームとは異なり、基本的に介護スタッフは常駐していない
- 入居できるのは自分で自分のことはできる元気な高齢者に限定される
- 入居者の生活リズムや価値観の違いがトラブルに発展する可能性がある
高齢者向けシェアハウスでは経済的なメリットや社会的なつながりが得られますが、個々のニーズや状況に応じて最適な住まい方を選ぶことが重要です。シェアハウスに似た住まい方として、スウェーデン発祥の「コレクティブハウス」も選択肢に加えるとよいかもしれません。
コレクティブハウスは、空き家対策として近年、日本でも増えている暮らし方です。共用スペースで他の居住者と交流できる点はシェアハウスに似ていますが、トイレやキッチンなどが完備された独立した専用住居があるため、よりプライバシーが確保されます。プライバシーを守りつつ、必要な時に他の住人と交流したり助け合えたりする点が、おひとりさま女性にとって魅力的なメリットといえるでしょう。
03友達近居のメリット・デメリット
二世帯住宅を建てるのではなく、親子がそれぞれに独立した暮らしをしながら近くに住む「近居」を選ぶケースも増えています。超高齢社会といわれる現在の日本では、親子の近居だけでなく、兄弟姉妹や友人同士の近居も一般的な選択肢になっていくのではないでしょうか。
おひとりさま女性の老後の住まい方として、この友達近居のメリットとデメリットを以下にまとめます。
メリット
- 気の合う友人が近くにいるので、気持ちにゆとりが生まれる
- 適度な距離感を保ちながら住める
- 同居よりハードルが低い
- 何人で暮らすかなどを自分たちで決められる
デメリット
- 介護付き老人ホームで近居する場合、お互いが一定の費用を捻出できないと実践できない
- 同居に比べて、もしものときに発見が遅れる可能性がある
- 友人といえどもトラブルが発生する可能性がある
友達近居は同居とひとり暮らしの中間的な選択肢で、適度な距離感と自由度を保ちながら老後を過ごせる魅力的なスタイルといえるでしょう。ただし、経済的な負担や緊急時の対応、友人との関係性維持といった課題もあります。個々のライフスタイルや価値観に応じて、友達近居が適しているかどうかを慎重に検討することが重要です。
04マンション購入のメリット・デメリット
賃貸住宅を探すのではなく「マンション購入」という選択肢もあります。おひとりさま女性がマンションを購入する主なメリット・デメリットは、以下のとおりです。
メリット
- 賃貸住宅を借りるのが難しい年齢になっても、住む場所に困らない
- 賃貸住宅よりも充実した設備・仕様で暮らせる
- セキュリティ面で安心感がある
- ライフスタイルに合わせてリフォームできる
- マンションによってはペット飼育ができる
- 住まないときは賃貸として貸し出すことができる
デメリット
- マンションを所有している限り、固定資産税や維持費の負担がある
- 気軽に住み替えや引っ越しができない
- 家族構成が変わると暮らしにくくなる
マンション購入というとハードルが高いと感じるかもしれませんが、購入者に占めるおひとりさま女性の割合は、年々増加傾向にあるといいます。実際にどのくらい増えているのか、データを交えて見ていきましょう。
マンション購入で意識にポジティブな変化あり!将来への不安が軽減されたという意見も
以下の表は、SUUMOリサーチセンターの調査から抜粋した、直近5年間の新築マンション契約者に占めるシングル世帯の割合です。
契約者全体 | シングル男性世帯 | シングル女性世帯 | |
---|---|---|---|
2023年 | 4,934 | 8.1% | 11.0% |
2022年 | 5,972 | 7.3% | 10.9% |
2021年 | 7,289 | 6.9% | 11.0% |
2020年 | 5,139 | 5.8% | 8.6% |
2019年 | 4,931 | 5.6% | 6.5% |
2019年まではシングル世帯の男女比率に大きな差はありませんが、2020年以降はシングル女性の割合が急増しています。購入理由については、「資産を持ちたい、資産として有利だと思ったから」(40.9%)、「老後の安心のため住まいを持ちたいと思ったから」(40.7%)が全体に比べ高い結果となりました。
また、一般社団法人 女性のための快適住まいづくり研究会が実施したアンケート結果※では、マンション購入後は「将来の不安や心配が減った」「心が豊かになり、ゆとりができた」などポジティブな心境の変化が見られました。さらに、マンション購入という経験を通じて自分の将来設計をより現実的に考え、8割を超える人がNISAやiDeCoなどの「投資を行っている」と回答しています。
おひとりさま女性がマンションを購入するメリットや注意点は、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひあわせてご確認ください。
05おひとりさま女性が選ぶべきマンションの条件とは?
ここでは、おひとりさま女性が選ぶべきマンションの条件について解説します。
売りやすく、貸しやすい物件を選ぶ
将来的に売却したり、賃貸に出したりする可能性を視野に入れて物件を選びましょう。駅近など利便性が高いエリアの物件は、需要が高く売りやすい傾向があります。交通の便が良く、周辺に商業施設や医療機関がそろっているエリアは、幅広い層からの人気があり、賃貸物件としても魅力的です。
住宅ローン控除が適用される広さを選ぶ
住宅ローン控除を受けるためには、不動産登記上の床面積が50平方メートル以上であることが条件となります。ワンルームや1DK~1LDKなどのコンパクトなマンションは、ひとり暮らしに最適な間取りといえますが、専有面積が50平方メートルに満たないものがほとんどです。長期的な資金計画を考えるうえで住宅ローン控除は大きなメリットとなるため、専有面積は必ずチェックしましょう。
自分のライフスタイルに合った規模の物件を選ぶ
近年、ファミリー向けの大規模マンションの中に、シングル向けのコンパクト住戸が分譲されるケースが増えています。こうした物件は居住環境や共用施設が充実しているため、安心して暮らすことができるでしょう。一方で、シングルやディンクス向けのマンションは、ライフスタイルに合った住環境を確保できる可能性が高いといえます。
将来の安心と快適な生活を実現するため、以上3点を考慮して賢く物件を選びましょう。
062050年、3人に1人がおひとりさま女性になる予測も!老後の住まいについてしっかり検討を
おひとりさま女性というと現在シングルの人だけを想像しがちですが、実際には結婚している女性も将来的にはおひとりさまになる可能性があります。これは、平均寿命が女性の方が長く、パートナーとの死別後にひとり暮らしになるケースが多いためです。
2020(令和2)年度の国勢調査によると、世帯総数5570万のうち23.5%にあたる約441万世帯が65歳以上の女性単独世帯となっています。
さらに、国立社会保障・人口問題研究所がまとめた「日本の世帯数の将来推計」によれば、2050年には65歳以上の女性の単独世帯が29.3%に増加すると予測されています。
そのため、既婚女性も老後の住まいについて考えておく必要があります。おひとりさま女性の老後の住まい選びは、経済的な安定や生活の質を保つために欠かせない要素です。将来に備えて、早めに情報を収集し、自分に合った住まいを検討しましょう。
マンション購入では、まず「毎月どのくらいの返済額なら家計に負担がないか」が重要です。サイト内にはさまざまな住宅ローンのシミュレーターをご用意しています。「毎月の返済額シミュレーター」や「借入可能額シミュレーター」などを目的に合わせてご活用ください。
また実際の金融機関からいくらまで借り入れできるかをすぐ知りたい方は、「住宅ローン保証審査」のご利用がおすすめです。物件を決める前でも審査できるので、現実的な予算のもとでマイホーム選びができます。
監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
関連キーワード