住宅ローン減税、2024年~2025年に控除額引き下げ!省エネ基準非適合は対象外

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住宅購入にはさまざまな費用がかかりますが、それらの負担感を和らげる制度として住宅ローン減税があります。しかし、住宅ローン減税は2022年に制度が改正され、2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅では「省エネ基準への適合」が条件になります。 住宅ローン減税を上手に活用すれば所得税や住民税の節税に大きく役立つ場合があるので、これから住宅購入をする予定のある人は、新しい基準について理解しておいたほうがよいでしょう。そこで、今回は2024年1月以降に適用される住宅ローン減税について、「実際にどれくらい控除額が変わるか」や「制度を利用するときの注意点」を紹介します。

01住宅ローン減税が適用される借入金の上限を住宅性能の基準別に紹介

まずは、住宅ローン減税が適用される借入金の上限を住宅性能の基準別に確認しておきましょう。

・住宅ローン減税が適用される借入金の上限(新築住宅の場合)

住宅性能 2023年入居 2024年入居 2025年入居
認定長期優良住宅
認定低炭素住宅
5000万円 4500万円
ZEH水準省エネ住宅 4500万円 3500万円
省エネ基準適合住宅 4000万円 3000万円
省エネ基準に適合しない
「その他の住宅」
3000万円 ※0円

※2023年末までに建築確認を受けた場合2000万円。2024年6月末までに竣工済の住宅については、省エネ基準に適合しない場合にも特例の適用がある場合あり

上の表のとおり、どの住宅性能においても2024年~2025年の入居にかけては制度を利用できる借入金の上限額が少なくなりますが、省エネ基準に適合していない新築住宅については、原則的に住宅ローン減税の適用対象外になります。では、実際の控除額にどれくらい影響が出るのでしょうか。

022023年中の入居と2024年~2025年の入居、控除額にどのくらいの差が出る?

それでは、新築住宅に2023年に入居する場合と、2024年~2025年にかけて入居する場合でどれくらい控除額に差が出るのか確認していきましょう。まず、試算の前提となる控除率と控除期間については以下のとおりで、これは2023年入居でも2024年~2025年にかけて入居する場合でも、どちらも変わりません。

  • 控除率:年末の住宅ローン残高の0.7%
  • 控除期間:13年

上記の控除率、控除期間から試算した住宅性能・入居開始年別の控除額は以下のとおりです。

住宅性能 入居開始年 最大控除額 差額
年間 合計
認定長期優良住宅
認定低炭素住宅
2023年 35万円 455万円 45.5万円
2024年~2025年 31.5万円 409.5万円
ZEH水準省エネ住宅 2023年 31.5万円 409.5万円 91万円
2024年~2025年 24.5万円 318.5万円
省エネ基準適合住宅 2023年 28万円 364万円 91万円
2024年~2025年 21万円 273万円
省エネ基準に適合しない
「その他の住宅」
2023年 21万円 273万円 273万円
2024年~2025年 0円 0円

上記表のように、控除額の差が最も小さい認定長期優良住宅や認定低炭素住宅では13年間のトータルで45.5万円ですが、住宅ローン減税が適用されなくなる「その他の住宅」にいたっては273万円もの控除が受けられなくなってしまうことがわかります。

もちろん、住宅ローン減税は「年末時点での借入残高」に控除率をかけて算出する制度であるため、すべての人がこれほどの控除を受けられるわけではありません。とはいえ、かなりの金額を節税できる可能性のある制度なので、2024年~2025年にかけて「その他の住宅」に入居する予定でも利用したい人もいるでしょう。2024年~2025年に「その他の住宅」に入居する予定の人が住宅ローン減税を利用する場合は、2023年末までに建築確認済みであるかどうかが大きなポイントになります。

ただし2023年末までに建築確認済みなら借入金の上限2000万円まで適用

2024年~2025年に省エネ基準に適合しない「その他の住宅」に該当する新築住宅に入居する人は、原則的に住宅ローン減税を利用することはできません。ただし、2024年6月30日までに竣工済みであり、かつ2023年末までに建築確認を受けた住宅に入居する場合は例外として、最大2000万円の控除を10年間受けられることになっています。その場合において必要になる書類は以下のとおりです。

  • 確認済証もしくは検査済証(2023年12月31日までに建築確認を受けた住宅であることを証明するため)
  • 登記事項証明書(2024年6月30日までに竣工済であることを証明するため)

建築確認とは建物や土地が建築基準法および各市町村の条例などに適合しているかどうかの検査で、自治体などから指定を受けた民間の検査機関が行います。検査は着工前と完成後の2回にわたって行われ、着工前の検査で交付されるのが「確認済証」、完成後の検査で交付されるのが「検査済証」です。建売住宅は建築確認が済んでから売り出されているはずなので、購入する場合は不動産会社の担当者などに事前に確認してみてください。

仮に借入金の上限2000万円が適用された場合の最大控除額は年間14万円、10年間トータルで140万円になります。つまり、「その他の住宅」に2023年までに入居できた場合は年間最大21万円(13年間トータル273万円)、もしも入居が2023年に間に合わなかった場合でも建築確認が2023年末までに間に合っていれば、年間最大14万円(10年間トータル140万円)の控除が受けられるということです。

なお、今回の住宅ローン減税は2025年入居までの人が対象です。そのため、省エネ基準を満たした住宅を2025年末までに建築・購入しても、入居が2026年以降になると制度が延長されない限り、住宅ローン減税を利用できなくなってしまう点に気を付けておきましょう。

中古住宅なら2024年~2025年も上限14万円の控除あり

ここまで新築住宅をメインに、2022年に行われた住宅ローン減税の改正について紹介してきましたが、中古住宅が該当する既存住宅の購入でも住宅ローン減税を利用できる場合があります。既存住宅における住宅性能別の借入金の上限や最大控除額は以下のとおりです。

既存住宅における住宅ローン減税の借入金の上限と最大控除額

住宅性能 入居開始年 借入金の上限 最大控除額
年間 合計
認定長期優良住宅
認定低炭素住宅
ZEH水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅
2023年~2025年 3000万円 21万円 210万円
省エネ基準に適合しない
「その他の住宅」
2023年~2025年 2000万円 14万円 140万円

上の表のように、中古住宅の場合は入居開始年による借入金の上限額の変動はなく、2025年末まで同じ金額です。また、借入金の上限も「その他の住宅」とそれ以外に大別されています。ただし、控除期間が10年である点や建築年が1981年12月31日以前の既存住宅は、別途耐震基準適合証明書など、一定の耐震性を持つ建物であることを証明する書類が必要である点には気を付けてください。

032024年~2025年の住宅ローン減税の申告手続きに注意

上述したように、2024年以降に建築確認を受ける新築住宅で住宅ローン減税を利用するには、一定程度の省エネ性能基準に適合していることが条件で、それを証明するために以下の書類の提出が必要になります。

・住宅ローン減税の利用にあたって一定程度の省エネ性能を満たしていることを証明するための書類

住宅性能 必要書類
認定長期優良住宅 長期優良住宅建築等計画の認定通知書の写し及び住宅用家屋証明書の写し
認定低炭素住宅 低炭素住宅認定通知書及び住宅用家屋証明書、認定低炭素住宅建築証明書のいずれか
ZEH水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅
建設住宅性能評価書、住宅省エネルギー性能証明書のいずれか

上記の書類はそれぞれの所轄行政庁、市区町村、登録された建築士事務所に属する建築士、指定確認検査機関などが発行します。実際の取得にあたっては一般消費者が自力で手に入れることは難しいので、住宅の設計者や施工者に相談しましょう。また、すでに建築工事が完了している分譲(建売)住宅で2024年以降に住宅ローン減税を利用する場合は、上記書類を取得済みである物件の中から選ぶのが基本です。

04住宅ローン減税をお得に利用するなら2023年中の入居を目指そう

今回紹介したように、住宅ローン減税は2024年から制度が変わります。2023年中に入居する人と、2024年~2025年にかけて入居する人では、最大273万円もの控除額の差が生じる恐れがあるので、マイホーム購入を検討している人は、早めの決断を心がけましょう。ただし、マイホーム購入には多額の支出が伴います。資金計画が不十分なままマイホーム購入を進めると、家計が苦しくなるかもしれません。そのため、まずは「どれくらいの予算なら無理のない返済計画が立てられるか」についてシミュレーションすることをおすすめします。

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新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

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トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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