新築住宅購入時にかかる諸費用はいくら? モデルケースをもとに徹底解説

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新築住宅の購入時には、物件価格以外にもさまざまな諸費用の支払いが発生します。しかし実際に、どれくらいかかるかを購入前にきちんと把握できていない方も多いのではないでしょうか。 この記事では新築住宅の購入を検討している方に向けて、諸費用の種類や相場について具体的なモデルケースを交えながら紹介します。物件価格以外に、どの程度の予算を用意しておけばいいか知りたい方は一緒に確認していきましょう。

01新築住宅の購入時にはさまざまな費用が発生する

新築住宅は戸建てとマンションのどちらを購入するかで、かかる諸費用が若干異なります。以下に、物件の種類別にかかる諸費用をまとめてみたので参考にしてください。それぞれの費用の詳細については、次の章で解説しています。

住宅購入にかかる諸費用一覧

諸費用 新築一戸建て 新築マンション
仲介手数料 ×
不動産売買契約書の印紙代
工事請負契約書の印紙代 ×
所有権保存・移転登記の費用
建物表題登記の費用 ×
火災・地震保険料
不動産取得税
修繕積立基金 ×
金銭消費貸借契約書の印紙代
融資手数料
ローン保証料
抵当権設定登記の費用

〇=諸費用がかかる △=諸費用がかかる場合がある ×=諸費用はかからない

なお、実際にはこれら諸費用とは別に、購入後は毎年固定資産税および都市計画税の支払いが必要になることも忘れないようにしてください。

モデルケースで大まかな費用感を把握しよう

これから住宅を購入しようと考えている方が気になるのは、「実際に何にどれくらいかかるか」ではないでしょうか。そこでここからは、物件の種類や価格別に2つのモデルケースを紹介します。モデルケースを参考に、新築住宅購入時にかかる諸費用の目安を掴んでおきましょう。

なお、諸費用がかかるタイミングは大まかに分けると「住宅購入時」と「住宅ローン契約時」の2つがあるので、以下の諸費用もそれぞれにまとめてあります。また、今回のモデルケースは、あくまでも一定の条件下における目安です。実際にかかる諸費用とは異なる点もご注意ください。

モデルケースを算出した際の条件は以下の通りです。

・固定資産税評価額:物件価格と同額
・建物表題登記の費用:9万円
・火災および地震保険料:戸建て(H構造)10万円、マンション(M構造)で4万円、地震保険はいずれも3万円
・不動産取得税:軽減措置適用後0円
・水道負担金:30万円
・修繕積立基金:30万円
・融資事務手数料:3万円
・ローン保証料:物件価格×2%
・司法書士への報酬:一律5万円

モデルケース1|新築戸建て(注文住宅)

  • 物件価格:6000万円(土地部分3000万円、建物部分3000万円)
  • 住宅ローン借入金額:5000万円

【住宅関連】

  • 売買契約書の印紙代:1万円
  • 建設工事請負契約書の印紙代:1万円
  • 所有権保存・移転の登記費用:54万5000円
    • 建物:3000万円×0.15%【所有権保存登記】+
      土地:3000万円×1.5%【所有権移転登記】+
      5万円【司法書士への報酬】
  • 建物表題の登記費用:9万円
  • 火災・地震保険料:13万円
  • 水道負担金:30万円

【住宅ローン関連】

  • 金銭消費賃借契約書の印紙代:2万円
  • 融資手数料:3万円
  • ローン保証料:100万円
    • 5000万円×2%
  • 抵当権設定の登記費用:10万円
    • 5000万円×0.1%【登録免許税】+
      5万円【司法書士への報酬】

合計:223万5000円

モデルケース2|新築マンション

  • 物件価格:5000万円(土地部分1000万円、建物部分4000万円)
  • 住宅ローン借入金額:3500万円

【住宅関連】

  • 売買契約書の印紙代:1万円
  • 所有権保存・移転の登記費用:32万円
    • 建物:4000万円×0.15%【所有権保存登記】+
      土地:1000万円×1.5%【所有権移転登記】+
      5万円【司法書士への報酬】
  • 火災・地震保険料:7万円
  • 修繕積立基金:30万円

【住宅ローン関連】

  • 金銭消費賃借契約書の印紙代:2万円
  • 融資手数料:3万円
  • ローン保証料:70万円
    • 3500万円×2%
  • 抵当権設定の登記費用:8万5000円
    • 3500万円×0.1%【登録免許税】+
      5万円【司法書士への報酬】

合計:153万5000円

ここまで紹介してきたように、住宅購入時にかかる諸費用は、物件価格や借入金額が増えるほど、高くなることが分かるでしょう。これは、登記費用やローン保証料など諸費用の一部が、算定根拠となる金額に対する割合で計算されているからです。自己資金が少なく、諸費用も含めたローンを組むことを考えている場合は、諸費用の額によっては月々の返済額負担も重くなることは頭に入れておきましょう。

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02新築住宅の購入でかかる諸費用について

ご自身の予算に合わせた諸費用の目安はイメージできたでしょうか。ではここからは、諸費用の概要について「住宅購入時」と「住宅ローン契約時」のそれぞれに分けて解説していきます。

「住宅購入時」にかかる諸費用

新築住宅購入時にかかる諸費用は、主に9つあります。中には表題登記や所有権保存登記のように中古住宅ではかからず、新築住宅だけにかかる費用もあるので、しっかりチェックしておきましょう。

仲介手数料

仲介手数料は不動産会社など、物件を仲介する業者から住宅を購入する際にかかる費用です。注文住宅や新築マンションのように、購入にあたって仲介業者が間に入らない取引では基本的に支払う必要はありません。ただし、建売住宅の中には建設に携わった売主からではなく、仲介業者を通じて購入する取引形態もあり、その場合は仲介手数料が発生することがあります。

仲介手数料について知っておきたいポイントは、「宅地建物取引業法で上限が決められているため、不動産会社が金額を自由に決められるわけではない」という点です。具体的な上限を求める式は以下の通りです。

売買価格 仲介手数料上限額
200万円まで 取引額の5%
200万円超え400万円まで 取引額の4%
400万円超え 取引額の3%

売買価格が400万円を超える物件の取引においては、「(物件価格×3%+6万円)+消費税」という速算式が用いられています。

不動産売買契約書の印紙代

印紙代とは、契約書などの作成時に課される税金です。印紙税法に基づいて定められており、納付税額は「契約書に記載されている金額」によって異なります。例えば、5000万円の物件を購入する場合は、「1000万円を超え5000万円以下のもの」に該当し、税額は2万円です。ただし、不動産売買契約書については2027年(令和9年)3月31日まで印紙税の軽減措置が用意されており、上記例の場合、税額は1万円になります。

建設工事請負契約書の印紙代

注文住宅のように土地を購入して自宅を建てる場合は、工事を依頼する会社との間で建設工事請負契約書の作成が必要です。建設工事請負契約書の作成についても不動産売買契約書と同じく、「契約書に記載されている金額」に応じて、印紙代を納めなければいけません。

税額については、不動産売買契約書と若干異なる部分はあるものの、「1000万円を超え5000万円以下」であれば同じく2万円です。また、建設工事請負契約書にも軽減措置があり、「1000万円を超え5000万円以下」の場合は1万円となります。こちらの軽減措置も2027年(令和9年)3月31日まで予定されています。

所有権保存・移転登記の費用

新築住宅を建設または購入をした場合、その物件の持ち主が自分であることを公的に記録するため、所有権保存登記や所有権移転登記をします。その登記を行う際に支払うのが「登録免許税」で、計算式は「不動産の固定資産税評価額×税率」です。

土地の所有権移転登記については2026年(令和8)3月31日まで、建物の所有権保存登記や所有権移転登記については、2027年(令和9)3月31日まで軽減措置の対象です。

軽減措置によって土地の所有権移転登記は1.5%(本則2.0%)、住宅用家屋の所有権保存登記は0.15%(本則0.4%)、所有権移転登記は0.3%(本則2.0%)の税率が適用されます。なお、登記手続きを司法書士などの専門家に依頼する場合、登録免許税とは別に報酬として5万~10万円程度かかるのが一般的です。

表題登記の費用

表題登記とは、まだ登記がされていない土地や建物について「不動産の存在や規格」を新たに登録する登記のことです。新しく登記するという性質上、すでに登記が存在していることの多い土地の購入で行うケースはほとんどありません。主に新築した建物で行う登記であり、よくある事例としては注文住宅の建設時が挙げられます。なお新築マンションについては、建設したディベロッパーが表題登記をすませていることが多く、買主が行うケースはありません。

表題登記については、最初に行う登記として法律で義務付けられていることから、管轄する法務局に支払う登録免許税はかかりません。ただし、地積測量図などの必要書類の準備が必要になり、専門家である土地家屋調査士に依頼する場合は報酬として9万~12万円程度支払うのが一般的です。所有権の保存・移転登記(こちらは司法書士)とは依頼する専門家が異なる点には気を付けてください。

火災・地震保険料

せっかく夢のマイホームを手に入れても火災や地震などの災害にあってしまうと、住宅ローンだけが残ってしまうかもしれません。そうした事態を避けるために、住宅購入時には火災保険とセットで地震保険に加入するのが一般的です。

建物損害保険の保険料は、過去の統計から災害によって被害を受けるリスクごとに算定されており、住宅の構造や住む地域によって異なります。一般的にはマンションのほうが耐火性は高いため、木造戸建てに比べると被害を受けるリスクが少なく、保険料は割安です。

各保険会社でバラつきはありますが、10年契約の場合における火災保険の保険料は戸建てで10万円前後、マンションは4万円前後が相場です。一方、地震保険は保険金額1000万円あたり、年間で6500~3万2600円程度が目安になります。ただし、10年契約については2022年10月から廃止される予定です。

不動産取得税

不動産取得税は土地や建物といった不動産を取得した際に課される税金です。不動産を取得したらかかる税金でも、固定資産税や都市計画税は1月1日時点で所有している人に対して毎年課税されますが、不動産取得税は取得した際に一度だけ支払います。

不動産取得税の計算式は「固定資産税評価額×4%」で、軽減措置が用意されています。2024年3月31日までに取得した建物(住宅用)やその土地を対象に、建物は「3%の軽減税率」、土地は「固定資産税評価額を2分の1に減額」と「3%の軽減税率」の適用を受けられる場合があります。

修繕積立基金

修繕積立基金は新築マンションを購入した場合にかかる費用で、中古マンションの購入ではかかりません。修繕積立基金は階層や延床面積といったマンションの規模によっても異なりますが、20万~50万円程度が相場になっています。

水道負担金

水道負担金は新たに水道を設置したり、既存の水道の口径を増やしたりする際に、住んでいる自治体の水道局へ支払う費用です。基本的には新築戸建てを建設する際にのみ発生し、呼び方は水道利用加入金や給水分担金など、自治体によって変わる場合があります。

実際に支払う料金の目安は15万~30万円程度ですが、そもそも徴収しない自治体もあるなど、各自治体によって異なるのも特徴です。建設工事費とは別に水道負担金を請求されている場合でも、基本的には支払う必要のある費用という認識でいるとよいでしょう。

ここまで住宅購入時にかかる諸費用について簡単に解説してきましたが、概要は把握できたでしょうか。より詳しい内容が知りたい方は、以下の既存記事も参考になるので確認してみてください。

「住宅ローン契約時」にかかる諸費用

続いて、住宅ローンの借入時にかかる諸費用を解説します。なお、以下で解説する際の金額の目安は住宅ローン1本分です。夫婦でペアローンを組む場合は契約する住宅ローンが2本になるため、かかる費用も2倍になる点は注意してください。

金銭消費貸借契約書の印紙代

金銭消費貸借契約書とは、住宅ローンの借り入れに際して金融機関と契約者が交わす書面です。こちらも正式な契約書である以上、不動産売買契約書や建設工事請負契約書と同じく、記載されている金額に応じて印紙代がかかります。

仮に、契約書に記載されている金額が3000万円である場合、「1000万円を超え5000万円以下のもの」に該当し、納める税額は2万円です。ちなみに金銭消費貸借契約書は、不動産売買契約書や建設工事請負契約書とは異なり、軽減措置はありません。

融資手数料

融資手数料は、住宅ローンを借り入れた金融機関に対して支払う手数料です。名称は金融機関によって異なり、「融資事務手数料」や「事務取扱手数料」と呼ぶところもあります。

融資手数料は主に、定額型と定率型の2種類があります。定額型は借入金額にかかわらず一律に支払うタイプで、一般的には3万~6万円程度かかります。一方、定率型は一定の割合を手数料として支払うタイプで、借入金額の2.2%で設定している金融機関が多いです。定率型は定額型に比べ、支払う費用が高くなりがちですが、その分後述するローン保証料がかからないケースもあります。

ローン保証料

住宅ローンの借り入れでは、万が一契約者が返済不能になった場合に債務の立て替え払い(債務免除ではないので注意)をしてくれる保証会社との契約が条件になっている金融機関が大半を占めます。ローン保証料は、その保証会社と契約を結ぶのに必要な費用です。

ローン保証料には、内枠方式と外枠方式があり、内枠方式とは住宅ローン金利に上乗せして支払う方法です。上乗せされる金利は0.2%~0.5%が相場となっています。そして、外枠方式とは、保証料全額を最初に支払う方法で、借入金額の2%に設定されているケースが多くみられます。融資手数料が高くなりがちな定率型を採用している金融機関の中には、ローン保証料を0円にしているところもあります。

抵当権設定の登記費用

抵当権とはいわゆる担保のことで、住宅ローンを借りる際に契約者が返済不能になった場合に備えて、金融機関側が土地や建物に設定するよう求めてきます。その抵当権を公にするための手続きが抵当権設定登記で、その際に登録免許税の支払いが必要です。抵当権設定登記にかかる登録免許税の計算式は「住宅ローンの借入金額×0.4%」です。

ただし、「自己の居住用である住宅」など、一定要件を満たしたマイホームに関しては、2024年3月31日まで税率が0.1%になる特例措置の対象となります。また登記を司法書士に依頼する場合は、登録免許税のほかに報酬として5万~10万円程度支払う必要があることも覚えておきましょう。

住宅ローンに関連する諸費用については、以下の記事でも詳しく解説しているので、興味がある方は確認してみてください。

03新築と中古で諸費用は変わる?

結論からいうと、新築住宅と中古住宅では、新築住宅のほうが物件価格に占める諸費用は割安になるケースが多いです。なぜなら、新築住宅は建売の一部で仲介業者が間に入るケースを除き、仲介手数料を支払わなくてよいからです。一般的に、新築住宅の購入にかかる諸費用は物件価格の5~7%といわれています。5000万円の新築住宅の場合、250万~350万円程度が目安です。

また今回紹介した諸費用以外にも、新しい住宅に合った家具または家電の購入代や引っ越し代も必要です。住宅の購入には多額のお金がかかるので、しっかりした資金計画を立てるためにも、こうした諸費用も別途計算しておきましょう。

04新築物件は中古物件に比べて諸費用が抑えられる!事前に把握しておこう

新築住宅は仲介手数料がかからないケースが多く、中古住宅よりは諸費用が割安になりがちですが、それでも物件価格の5~7%かかるといわれています。

どのような住宅を購入するにしても諸費用は一定程度かかるものの、事前に金額を把握しておけば、マイホーム購入で慌てることは少なくなるでしょう。この記事を参考にどれくらいの諸費用がかかるのかをリサーチして、自分の理想とする住宅探しに役立ててください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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