トランプ再選で住宅ローンに波紋?金利上昇リスクへの備え方を解説

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2024年11月6日に行われたアメリカ大統領選挙では、減税や規制緩和政策を掲げたトランプ前大統領が当選しました。その結果、2025年1月20日にはトランプ前大統領が再び大統領に就任し、実際にどのような経済政策を実行していくかによって、日本の経済や住宅ローンにも影響を与えるのではないかと懸念されています。 仮に円安ドル高が急速に進行すれば日本国内の物価高を招くだけでなく、住宅ローン金利の上昇につながる恐れもあるので、特に金利上昇リスクの影響を受けやすい変動金利の住宅ローンを利用している人は注意が必要です。そこで、本記事ではトランプ前大統領の再選が日本の住宅ローンへ与える影響と、金利上昇リスクが高まったときに住宅ローンの利用者が取るべき対策や行動を具体的に紹介していきます。

01トランプ再選が日本の住宅ローン金利を押し上げる理由とは?

なぜ、トランプ次期大統領が掲げている経済対策を実行すると、日本の住宅ローン金利に影響を及ぼす可能性があるかというと、それはアメリカの金利上昇リスクが高まるからです。トランプ次期大統領は大統領選挙において、減税やインフラへの積極的な投資を掲げて当選しました。

一般的に、減税やインフラ投資を行うと経済が活性化するので消費の拡大や投資の増加、賃金上昇などが促されて物価が上がるインフレが起こりやすくなります。その結果、アメリカの10年国債利回りなどの長期金利が上昇することが多く、海外の投資家はより高いリターンを求めてアメリカ国債へ資金を移し、それに伴って日本国債への需要が減少して価格が下落します。

債券は価格と利回りが反比例の関係(価格が下がると利回りが上昇、価格が上がると利回りが下降)にあるので、日本国債の価格が下落して利回りが上昇すると、10年債券利回りを基準に設定される住宅ローンの固定金利も資金調達コストの上昇に伴って高くなりやすいというわけです。国債利回りの上昇は日銀の政策金利とも関係しているので固定金利だけでなく、変動金利の住宅ローンにも影響を及ぼす可能性もあります。

また、こうしたトランプ次期大統領の政策がアメリカの金利上昇を招くことで、金利のよいドルを買う動きが加速して円が売られる円安ドル高を進行させ、その結果、輸入物価のさらなる上昇が起きる可能性も指摘されています。日銀は物価安定目標を年2%に定めており、それ以上に物価が高騰する場合は物価高対策の一環として政策金利を引き上げて投資家に円を買ってもらい、為替が円高に動くように促す可能性があります。

すると今度は、政策金利と密接に関係している変動金利の住宅ローンの金利上昇リスクが高まってしまうでしょう。もしも日本国債の利回りが上がっていた場合、金融機関は政策金利と資金調達コストの上昇といった2つの要因から、それらのコストを融資金利に転嫁する可能性がより高くなると考えられます。

02住宅ローンの金利上昇リスクに取るべき具体的な備え方

先述のように、トランプ前大統領がアメリカ大統領に就任することが決まったことでアメリカ経済が活性化し、結果的に日本でもインフレが起こって金利が上がるリスクが以前よりも高くなっています。その影響は住宅ローンも例外ではなく、日本国債の利回りが上がったり、日銀が政策金利を引き上げたりすると固定金利、変動金利の種別を問わず、住宅ローン全体で金利上昇が起こるかもしれません。

そのため、住宅ローンを利用する人は日頃から日銀の金融政策やアメリカの政治情勢の動向を注視しておくことが大切です。しかし、いざ実際にそのような事態になったときに、具体的にどのような行動に出ればいいか分からない人もいるでしょう。そこで、ここからはこれから住宅ローンの利用を検討する予定の人やすでに契約している人に向けて、金利上昇リスクが高まったときに取るべき行動について紹介します。

金利タイプを見直す、または契約内容を再確認する

金利上昇リスクが高まっているときは、例えば変動金利から固定金利へ切り替えるといった金利タイプの見直しが有効です。一般的に固定金利は契約当初の金利が変動金利より高いケースが多い反面、一定期間は契約時に定められた金利が適用されるのが特徴です。そのため、たとえ金利上昇局面でも毎月の返済額が変わることなく、計画的に返済できるのが強みです。

一方、変動金利も契約内容によっては、5年ルールや125%ルールなど急激な金利上昇が返済リスクにつながらないように配慮されている商品もあります。しかし、一部の住宅ローンではそうした契約が適用されていないケースもあるので、現在、変動金利を選択している人は契約内容をよく確認したうえで、固定金利への切り替えを検討するとよいでしょう。

また、現在、固定金利を組んでいる人も契約内容を再確認してみることをおすすめします。なぜなら、顧客獲得競争が激しくなっているときは、金利上昇局面でも銀行同士で差別化を図るために、金融機関があえて低い金利の商品を取り扱う場合があるからです。同じ固定金利で今より低い金利の商品が市場に出ている場合は借り換えを検討してみるとよいでしょう。ただし、借り換えには手数料や諸費用が発生するので、金利だけでなく総合的なコストを比較して判断するようにしてください。

繰り上げ返済を活用する

一般的に、変動金利の住宅ローンの返済中に金利上昇が起こると毎月支払う利息が増えてしまい、総返済額が多くなってしまいます。その影響を抑えるには、繰り上げ返済が有効です。なぜなら、金利は借入残高に対してかかるため、繰り上げ返済で借入残高を減らせば例え金利が上昇してもその影響を最小限に抑えられるからです。特に金利が上昇する前に行うと支払う利息を大幅に減らせる場合があるので、日銀の利上げの情報をチェックしつつ繰り上げ返済のタイミングを図るとよいでしょう。

なお、繰り上げ返済には毎月の返済額を減らす「返済額削減型」と返済期間を短縮する「返済期間短縮型」の2種類があります。前者は毎月の家計が少し楽になりますが、返済期間は変わらないのでトータルで支払う利息は返済期間短縮型に比べると多くなります。一方、後者は返済期間が短くなることで、総支払利息は部分返済より減ります。しかし毎月の返済額は繰り上げ返済後も変わらないので、もし一時的な支出があるときなどはやりくりする必要があります。どちらも一長一短があるので、どちらが自分に合っているかをシミュレーションしたうえで選ぶことがポイントです。

頭金を増やして借入金額を減らす

金利上昇時において、住宅ローンの総返済額に大きく影響するのは借入金額と返済期間の2つです。そこで、これから新規に住宅ローンを利用することを考えている人は、頭金を増やして借入金額を減らしてみるのもよいでしょう。住宅ローンの利用にあたってはライフプランを含めた返済計画を考えることは大切ですが、仮に金利上昇リスクが高いと判断したときは、その計画を見直し、余剰資金を頭金に充てることを検討してみるのも選択肢の1つです。その際は、頭金を入れると実際にどれくらい総返済額が減るかもしっかりシミュレーションしておくことをおすすめします。

返済計画を見直す

すでに住宅ローンを借りている人は、まず返済計画を確認してみるとよいでしょう。将来的にどれくらい金利が上昇するかは誰にも分かりませんが、返済計画を確認したうえで仮に金利が上がったときのことをシミュレーションすればライフプランの修正をしやすくなるはずです。なお、シミュレーションするときは住宅ローンだけでなく家計全体の負担を把握し、一緒に見直しをすると効果的です。

現在ではさまざまな金融機関が無料で利用できるシミュレーションツールをインターネット上で提供しているので、まずはそれを試してみることをおすすめします。当サイト内にも、住宅ローンに関する各種シミュレーションツールを用意しているので、ぜひ利用してみてください。

03金利上昇リスクを最小限に抑えるために適切な資金計画で安心を確保しよう

2024年のアメリカ大統領選挙に当選したトランプ前大統領の新政権は、2025年1月からいよいよスタートします。トランプ次期大統領が実際にどのような行動に出るか読めない部分もありますが、選挙時の公約通りであればアメリカ経済が活性化して円安ドル高が進行する可能性が高く、結果的に日本の住宅ローン金利が上昇するリスクが高まる恐れがあります。

特に金利上昇リスクの影響が大きい変動金利の住宅ローンを利用している人は、固定金利への切り替えや繰り上げ返済などの対策を早めに検討し、備えておくことが重要です。そこまでする必要がないと判断した人も、経済動向や市場金利の変化には敏感になっておいたほうがよいでしょう。住宅ローンは高額な借り入れになるので、将来の負担を最小限に抑えて安心した暮らしを守るためにも、適切な資金計画を立てておき、必要に応じて見直すことがポイントです。

金利の違いで毎月の支払いがどれくらい変わるかを確かめたい人は、当サイト内にある「毎月の支払い返済額シミュレーター」など各種シミュレーターを試してみてください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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