【2025年度】税制改正の行方は?子育て世帯に対する住宅ローン減税の延長も

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現在の日本は人件費や輸入資材の高騰といった要因で物価が上がり続けており、この傾向は2025年も続くと考えられています。そのような中で2024年10月に行われた衆議院議員選挙では、「年収103万円の壁」が大きな話題となりました。これから住宅ローンの支払いが始まる予定の子育て世帯や若年夫婦世帯の中には、家計で使えるお金に大きな影響を及ぼす「税制」に関心を抱くようになった人もいるのではないでしょうか。 そこで、今回はこれから住宅ローンを組む世帯に向けて、「子育て世帯への住宅ローン減税の延長」「年収103万円の壁の見直し」といった生活に直結する身近な税制が変わるかもしれない、2025年度税制改正の動向について解説していきます。

01家計に大きな影響あり!2025年度の税制改正のポイントとは?

日本では毎年のように税制改正が行われており、その項目は多岐にわたります。すべてを紹介すると膨大な量になってしまうので、ここでは2025年度に改正が見込まれている住宅購入や家計・老後資金といった生活に関係のある税制に絞って紹介します。

なお、紹介している内容は、あくまでも2024年11月末時点の情報です。実際に施行される税制は各府省庁が提出した要望書を基に、2024年12月中旬にまとめられる税制改正大綱で具体的な方針が示され、その後に2025年度の税制改正として公表される見込みです。ここで紹介した内容と2025年度の税制改正として公表される内容が異なる可能性がある点は留意してください。

住宅ローン減税の延長と拡充

2025年度の税制改正において、これから住宅購入を検討する世帯に最も大きな影響があるのは住宅ローン減税の取り扱いでしょう。もともと住宅ローン減税は申込期限が決められていて、現在利用できる制度は2024年12月31日で終了することになっていました。

しかし、住宅ローン減税による所得税や住民税の節税効果は大きく、子育て世帯および若者世帯の住宅購入意欲推進につながっていたことから、2025年度の税制において各府省庁から制度の延長を求める要望が出されています。特に19歳未満の子供のいる世帯や夫婦のいずれかが40歳未満の世帯に対する優遇措置が検討されており、少子化や若者夫婦世帯への支援対策として期待が高まっている状況です。

2025年度の税制改正で具体的に検討されているのは「適用期限の延長」と「優遇内容の拡充」の2つです。現行制度の適用期限を延長したうえで、新しい税制では子育て世帯や若者夫婦世帯が新築住宅に入居する場合、借入限度額の上限を最大で1000万円ほど引き上げる案や床面積要件の緩和措置の延長(合計所得金額1000万円以下の人が2024年12月31日までに建築確認を受けた新築住宅を購入する場合に、床面積要件を50㎡から40㎡以上に緩和する措置)といった案が話し合われています。

これらの案は2024年12月中旬にまとめられる税制改正大綱に反映される予定で、その後2025年度の税制改正として実施される見込みとなっています。2024年11月末時点ではあくまでも検討段階であるため、具体的な改正内容や適用時期については政府の正式な発表を待つ必要があるものの、実際に施行されれば子育て世帯や若年夫婦世帯にとって住宅購入の大きな後押しになるでしょう。

「年収103万円の壁」の見直し

2025年度の税制改正の中でも、これまでと大きく変わる可能性があるのが、いわゆる「年収103万円の壁の見直し」です。年収103万円の壁とは、簡単にいうとパートやアルバイトなどで得た給与収入が年間で103万円(基礎控除48万円 + 給与所得控除の最低額55万円)を超えた場合に所得税が課され、手取りが減ってしまう問題を指します。その結果、パートまたはアルバイトの働き控えや労働意欲減少につながることが問題視され、2024年10月の衆議院議員選挙でも争点の1つになりました。

こうした問題を受けて国会では制度の見直しが議論されており、具体的には所得税がかかるラインを103万円に定めた1995年からの最低賃金上昇率である約1.73倍を上乗せした178万円まで引き上げることを検討しています。今回の改正では基礎控除を増やす方向で議論されているので、制度が予定通り実施されればパートやアルバイトといった給与所得者だけでなく、自営業者やフリーランスも含め、所得を得ている人達すべての手取りが増えることにもつながります。

ただし、一方で納税金額が少なくなるということは国や地方の税収減につながるため、これまでどおりの行政サービスを行うには、どうやって財源を確保するかといった課題があるのも事実です。そのため、具体的な実施時期や詳細は今後の議論に委ねられている部分が大きく、実際にどのような内容で施行されるかは不透明な状況となっています。

ガソリン税の減税

2025年度の税制改正では、トリガー条項の発動有無とそれに伴うガソリン税の減税についても注目が集まっています。トリガー条項とは、全国平均のガソリン小売価格が3カ月連続で1リットル当たり160円を超えた場合に、ガソリン税の上乗せ部分を一時的に軽減する仕組みです。ガソリン税は揮発油税と地方揮発油税の2つから成り立っていて1リットル当たり53.8円が課されていますが、そのうち25.1円分が上乗せされています。トリガー条項はもともと2010年の民主党政権時代に導入された制度ですが、近年ガソリン価格が高騰しても政府は同制度を発動せず、補助金などを活用して消費者の負担を実質的に抑える施策を実行していました。

しかし、トリガー条項を適用したほうが毎月のガソリン代や輸送コストの低減といった点で消費者の受ける恩恵が大きいことから、現在でも発動有無について議論されています。現段階で政府は2025年度の税制改正においてトリガー条項の発動にこだわらず、ガソリン税の減税を含めた自動車関係諸税全体の見直しを進める方向で検討しているとのことです。

iDeCoの掛金限度額と加入可能年齢の見直し

少子高齢化が進行し、年金財源の不足が叫ばれている現在の日本では、個人でも老後資金を確保する努力が大切になっています。そのための代表的な公的制度であるiDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金限度額や加入年齢の引き上げも2025年度税制改正の話題の1つです。現行のiDeCoの掛金限度額は、加入者の属性や他の年金制度への加入状況によって異なります。例えば、企業型DC(企業型確定拠出年金)に加入している第2号被保険者の場合、iDeCoの掛金限度額は基本的に月額2万円です。

しかし、企業年金の事業主拠出額が3.5万円を超える場合は「5.5万円 – 事業主拠出額」が上限で、加入者によってはiDeCoの掛金が月額2万円未満になるケースもあり、老後のために十分な資金が貯まらないのではないかという指摘が以前からありました。また、現行の制度では60歳もしくは65歳が年齢上限ですが、60歳以降も働く人が増えたことや健康寿命の延伸といった要因を鑑み、70歳まで引き上げることも検討しています。ただし、一部には掛金限度額の引き上げは所得控除額が増えることから、高所得者層に有利であるという指摘もあり、税の公平性を確保する観点からも慎重な検討が行われている状況です。

退職金税制の見直し

転職が一般化するなど雇用の流動化が進む現代では、従来の退職金税制が時代に追いついていない部分があり、2025年度の税制改正で見直される可能性が高まっています。もともと現行の制度では勤続年数に応じた退職所得控除額が設定されていて、退職金をもらった納税者が納める所得税が少なくなるように配慮されていました。具体的には勤続20年までは1年あたり40万円、20年を超える部分は1年あたり70万円の控除額が設定されています。

しかし、一部ではこうした勤続年数が長いほうが有利な制度は終身雇用が前提だった時代に設計されたもので、時代に即していないという指摘がありました。また、政府税制調査会においても若年層の多様な働き方を支援することを目的として、退職金課税の在り方を検討する必要性について言及しています。

そこで、2024年11月時点では勤続年数の長さにかかわらず、控除額を一律で「勤続年数 × 40万円」とする案が浮上しており、2025年度の税制改正でもこの基準を基本路線として話し合われる見込みです。ただし、控除額を一律に「勤続年数 × 40万円」にすると、勤続年数が20年を超える場合はこれまでよりも控除額が減少して支払う税金が増え、手取りが減る実質的な増税となる場合もあることから、今後の議論で調整が行われる公算が高くなっています。

022025年度の税制改正、家計に影響がある住宅ローン控除や年収103万円の壁の見直しを中心にチェックを!

2025年度の税制改正では、一般消費者の生活に直結するような内容がたくさん議論されています。ただし、今回紹介した内容はあくまでも2024年8月時点で各府省庁から提出されたものが基本となっていて、最終的な改正内容は2024年12月中旬に公表される「税制改正大綱」で正式に決定する予定です。これから住宅を建てる予定の人は、特に家計に大きな影響がある住宅ローン控除や年収103万円の壁の見直しを中心に情報をチェックしておきましょう。

なお、住宅ローンを組む際は計画的な返済が大切です。仮にマイホームを手に入れても毎月の返済に追われるようでは、日々の生活にゆとりがなくなってしまうかもしれません。そのようなことがないように、事前に自分の年収や毎月の返済額からいくらまで借りられるかをシミュレーションしておくことが重要です。

当サイト内には、住宅購入予算シミュレーターをはじめ、資金計画を支えるツールが豊富にそろっています。すべて無料で利用できるので、これから住宅購入を考えている人は、ぜひ活用してみてください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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