東京都独自の補助金、省エネ住宅に最大240万円!併用できる他の補助金も紹介
2022年6月の建築物省エネ法改正により、2025年4月から原則として全ての建築物に対し、省エネ基準への適合が義務付けられる予定です。これに伴い、2024年10月から東京都では独自の「東京ゼロエミ住宅認証制度」の基準引き上げを実施しました。 東京ゼロエミ住宅認証制度は、省エネ性能の高い住宅を普及させるために新築住宅に対して建築費用の助成を行う制度のこと。今回の改定により、戸建住宅の最大助成額が従来の210万円から240万円に、また集合住宅などでは従来の170万円から200万円に増額されました。国や東京都が実施する他の補助事業と併用可能なケースも多く、都内で省エネ性能に優れた新築住宅をお得に建てるチャンスが広がります。 この記事では、東京ゼロエミ住宅認証制度の概要と共に、併用できる国や都の補助金制度についても詳しく紹介します。東京都内で住宅の新築・購入を検討している人、必見です。
01東京都独自の「東京ゼロエミ住宅認証制度」とは?
東京ゼロエミ住宅とは、東京都が独自に定めた基準をクリアする省エネ性能の高い住宅のことです。ゼロエミとは「ゼロエミッション(ZERO EMISSION)」の略称で、「廃棄物の排出をゼロにする」という理念を意味します。ここでいう廃棄物とは、温室効果ガスのことです。
2020年10月、日本政府は「2050年カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しました。これは、CO2など温室効果ガスの排出量から吸収量・除去量を差し引き、最終的に排出量をゼロにすることを2050年までに実現するという目標です。東京都では、家庭から排出される温室効果ガスが都内全体の排出量の約30%を占めており、より高い省エネ性能を持つ住宅を普及させることを目的としたのが、今回の東京ゼロエミ住宅認定基準の再編です。
独自の助成事業がスタートした2019年以降、東京ゼロエミ住宅の建築件数は年々増加しており、都内の新築戸建住宅に占める割合は1割を超えています。この1割超のうち、従来では環境性能が最も高い「水準3」の住宅が半数を占めていたとから、東京都は今回基準値を見直し、住宅全体の環境性能の底上げを図りました。
対象となるのは、以下に該当する新築住宅です。
- 都内に新築される戸建住宅や集合住宅
- 床面積が2000平方メートル未満のもの
なお、東京ゼロエミ住宅として認証を受ける建売住宅の場合、東京ゼロエミ住宅のロゴマークやラベル、東京ゼロエミ住宅認証を受けている旨のテキストを広告などに表示することが助成金を受ける条件となります。
022024年10月から認証基準が変更、それに伴い助成額もアップ!
2024年10月1日から、東京ゼロエミ住宅認証制度の基準が旧制度の「1〜3」より「C~A」に変更されました。この見直しによって、基準ごとに応じた助成額が新たに設定されます。ここからは、認定基準の変更内容と気になる助成額について詳しく解説します。
住宅性能の基準の見直し
2024年10月1日から適用された東京ゼロエミ住宅認証制度の住宅性能基準は、以下の3段階です。
水準 | 性能基準 |
---|---|
A (新設) | ZEHを大幅に上回る断熱性能と省エネ基準より45%削減 (集合住宅では40%) |
B(旧基準3相当) | ZEHを上回る断熱性能と省エネ基準より40%削減 (集合住宅では35%) |
C(旧基準1~2相当) | ZEH相当の断熱性能と省エネ基準より30%削減する省エネ性能 |
ZEH(ゼッチ)とは「ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称で、住宅で消費するエネルギーを太陽光発電などで自給自足することを目指した基準です。水準Cでも非常に高い省エネ性能を維持していますが、新設される最高位の水準Aは、ZEHを大幅に上回る断熱性能を持ち、戸建住宅全体でのゼロエミッション化達成が期待できます。
また今回の制度再編では、もう一つ変更点があります。太陽光発電設備など再エネ利用設備の設置義務化です。
人口が多く住宅やマンションが密集している東京ですが、2024年3月現在、太陽光発電設備の設置割合は4%ほどでしかありません。そのため、2025年4月から施行される「建築物環境報告書制度」では、原則として再エネ利用設備の設置を大手ハウスメーカーなどに対して義務付けることが決まっており、その旨が東京ゼロエミ住宅認証制度に盛り込まれます。
なお、再エネ利用設備の助成金制度は以下のとおりで、旧制度からの変更はありません。
設備 | 助成額 | 備考 |
---|---|---|
太陽光発電システム (3.6kWまで) |
12万円/kW | 上限額:36万円/戸 |
太陽光発電システム (3.6kW超50kW未満) |
10万円/kW | 50kW以上は対象外 |
蓄電池 | 機器費、材料費及び工事費の3/4 | ・6.34kWh未満:19万円/kWhかつ95万円/戸 ・6.34kWh以上:15万円/kWh |
V2H※ | 機器費等の1/2 | 上限額:50万円 |
助成額が最大210万円から240万円にアップ!
東京都独自の省エネ基準見直しにより、新基準での助成額は次のとおりとなります。
住宅種別 | 新助成額 | 旧制度助成額 | |
---|---|---|---|
水準C | 戸建住宅 | 40万円 | 30万円 |
集合住宅等 | 30万円 | 20万円 | |
水準B | 戸建住宅 | 160万円 | 50万円 |
集合住宅等 | 130万円 | 40万円 | |
水準A | 戸建住宅 | 240万円 | 210万円 |
集合住宅等 | 200万円 | 170万円 |
2024年10月1日以降に設計確認申請を行った場合は新基準と新助成金が適用されます。
03東京ゼロエミ住宅の申請の流れ
東京ゼロエミ住宅の申請は、主に以下の流れで行われます。
着工前
- 新築注文住宅のプランニング
- 設計確認審査の申請
- 東京都が登録する認証審査機関「クール・ネット東京」が確認・認証
工事中
- 助成金の交付申請
工事完了
- 工事完了検査の申請と助成金の実績報告
入金
- 審査後、助成金額の確定と入金
これらの手続きは建築主が直接行いますが、建築業者やハウスメーカーが代行することも可能です。
04併用できる国や自治体が実施する他の補助金制度を紹介!
同じ東京都から支給される補助金でも、事業目的が異なるものや、東京都が補助していない区市町村の補助金は、基本的に併用可能です。併用できる制度をうまく活用できれば、よりお得に住宅を新築・購入することができます。リフォームや家電の買い替えに利用できる制度もあるので、どのような制度があるのかだけでも把握しておきましょう。
以下は、東京ゼロエミ住宅認証制度と併用できるかどうかをまとめた表です。
併用可 | 併用不可 |
---|---|
・子育てエコホーム支援事業 ・地域型住宅グリーン化事業 ・こどもエコすまい支援事業 ・子育て支援型共同住宅推進事業 ・東京ゼロエミポイント(冷蔵庫の買替のみ) ・東京こどもすくすく住宅供給促進事業(東京ゼロエミ住宅の助成金を受ける住戸以外の住戸及び共用部分等が対象) |
・戸建住宅ネットZEH化支援事業 ・次世代ZEH+実証事業 ・集合住宅のCO2化促進事業(ZEH-M) ・LCCM住宅整備推進事業 ・給湯省エネ事業(高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金) ・東京ゼロエミポイント(エアコン、給湯器及びLEDの買替) ・その他東京都環境公社(クールネット東京)が実施している太陽光発電設備、蓄電池、エコキュート、エネファーム、V2H等に対する助成事業 |
支援事業の1つである「子育てエコホーム支援事業」は、子育て世帯や若者夫婦世帯を対象とした補助金制度です。子育て世帯とは、申請時点において18歳未満の子を有する世帯を指します。若者夫婦世帯とは、申請時点において夫婦のいずれかが39歳以下の世帯です。これらに該当する世帯が新築注文住宅や新築分譲住宅を購入する場合、以下のような補助金が支給されます。
住宅性能 | 補助金額 | 備考 |
---|---|---|
長期優良住宅 | 100万円/戸 | 立地が以下に該当する場合、50万円/戸 ・市街化調整区域 ・土砂災害警戒区域 ・浸水想定区域 |
ZEH水準住宅 | 80万円/戸 | 立地が以下に該当する場合、40万円/戸 ・市街化調整区域 ・土砂災害警戒区域 ・浸水想定区域 |
子育てエコホーム支援事業はリフォームにも適用されます。その場合の助成額は以下のとおりです。
区分 | 上限額 | 備考 |
---|---|---|
子育て世帯・若者夫婦世帯 | 上限30万円/戸 | 既存住宅購入を伴う場合は上限60万円/戸 |
その他の世帯 | 上限20万円/戸 | ― |
なお、リフォームでは工事内容に応じて助成額が異なり、長期優良住宅の認定を目的としたリフォームを行う場合は、以下のとおりとなります。
区分 | 上限額 |
---|---|
子育て世帯・若者夫婦世帯 | 上限45万円/戸 |
その他の世帯 | 上限30万円/戸 |
子育てエコホーム支援事業には予算と定員が設定されており、募集期間も限られています。2024年の交付申請は、遅くとも2024年12月31日までに終わらせなくてはなりません。ただし、予算上限に達した時点で締め切りとなるため、申請手順や要件など早めに確認することをおすすめします。
05新築の東京ゼロエミ住宅なら「不動産取得税」が減免に!
2024年10月1日~2025年3月31日までに設計確認申請が行われた新築の東京ゼロエミ住宅では、認定基準に応じて不動産取得税の減免が受けられます。
不動産取得税にはもともと軽減措置があり、宅地評価土地の取得に関しては課税標準が2分の1になる特例や、土地の取得に係る税率が4%から3%に引き下げられる特例が、2027年3月31日まで延長されています。
東京ゼロエミ住宅の場合、これらの軽減措置に加えて、さらに大きな減免が受けられるのが特徴です。2024年9月30日までの申請では不動産取得税の減免割合は通常5割ですが、太陽光発電システムの設置や、水準2または水準3の基準を満たす場合には10割の減免が適用されます。
2024年10月1日以降、新基準に基づく不動産取得税の減免割合は以下のとおりです。
- 水準A:10割減免
- 水準B:8割7分減免
- 水準C:5割減免
このように、環境性能が高い住宅ほど大きな減税が受けられる仕組みです。減免を受けるには納税者本人が申請手続きを行う必要があるため、不明な点は住宅の所在地を所管する都税事務所や支庁に確認しておきましょう。
06自治体と国の補助金併用で省エネ住宅をお得に建てよう
住宅価格が高騰している昨今、東京都で戸建てを建てるなら「東京ゼロエミ住宅認証制度」の活用がおすすめです。旧制度で申請件数が最も多い水準3(新基準B)では、最大160万円の補助金が受けられます。さらに、太陽光発電システム(3.6kWまで)で最大36万円、蓄電池(6.34kWh未満)で最大95万円が加わり、合計300万円ほどの補助が受けられる計算です。
国の「子育てエコホーム支援事業」も併用可能で、子育て世帯・若者夫婦世帯はさらに80万円の補助金(ZEH水準住宅)が受けられます。ただし、細かい要件や必要な設備、申請期限があるため、まずはハウスメーカーや工務店に相談することが重要です。
このように、利便性の高い東京で高性能の新築住宅を「お得に建てられる」となると、間取りや設備にもこだわりが強くなり、最終的には予算オーバーということにもなりかねません。予算に関しては住宅ローンシミュレーターで毎月の支払いを確認し、適正額を把握しましょう。また、借り入れに不安がある方は「住宅ローン保証審査」を、フラット35の審査結果を今すぐ知りたい方は最短1分で結果がわかる「ARUHIの家探し前クイック事前審査」をぜひご活用ください。
監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
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