タワマン売却、半数以上が1000万円超の利益  資産性の高さを裏付け

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LIFULLが、過去5年以内に一都三県または大阪府のタワーマンションを売却した経験がある人を対象に意識調査を実施しました。その調査によると、半数以上にあたる57.9%の人が、マンションの売却によって1000万円以上の利益が出たと回答しています。 タワーマンションはもともと資産性が高いことで知られていますが、価格が高騰している今はまさに売り時といえるでしょう。一方で、同じ時期に売却しているにもかかわらず、売却損が出ている人がいる点は要注意です。 資産性が高いとされるタワーマンションで、このような違いが生じるのにはどのような理由があるのでしょうか。この記事では、売却によって利益が生まれたタワマンと損失が生まれたタワマンの物件の違いなどを解説します。

01物件価格の上昇が追い風に!半数以上がタワマン売却で1000万円以上の売却益

冒頭で紹介したLIFULLによるタワマン売却に関する意識調査は、2024年4月24日から5月1日にかけ、一都三県または大阪府で過去5年以内にタワマンを売却した人を対象に行われました。

調査結果によれば、回答者のうち半数近い45.9%が「いずれ売却するつもりで購入」したと答えており、マンション価格が高騰する中で、はじめから売却益を狙って購入した人が多いことがうかがえます。

実際、物件価格の上昇が追い風となり、半数以上の人が1000万円以上の売却益を得たと回答しました。中でも、最も割合が高かったのは2000万円以上の売却益を得たという人で、全体の26.7%に達しています。次いで、売却益1500万〜2000万円の16.1%が続きます。

売却した人の4分の1以上が2000万円以上の売却益を実現している結果は、タワマンの資産性をあらためて裏付けているといえるでしょう。

同調査では、売却全体の満足度についても尋ねています。それによれば「満足した」「やや満足した」の合計が8割以上を占めており、最近タワマンを売却した人の多くは満足していることがわかります。売却で後悔した点について聞く質問に関しても、一番多かった回答は「後悔した点はない」(36.1%)であり、全体的に満足度が高い状況です。

しかし一方で、「もっと高い価格で売却できたかもしれなかった」(33.8%)「売却後にエリアの価値が高まった」(20.7%)との回答も合計で半数以上あり、タワマンの最適な売り時を見極めるのが、難しいことがうかがえます。

02一方で売却損が発生している人は1割強というデータも

調査結果によれば、上記のとおり、過去5年以内にタワマンを売却した人のうち半数以上が1000万円以上の売却益を得ています。その一方、不動産価格の上昇を受けて売却したものの、実際には売却損を計上した人が10%程度いることも見逃せません。

売却損が発生した人の割合は全体の11.5%で、うち1.8%の人が2000万円以上という多額の売却損を計上しています。

先ほど紹介した、タワマン売却で後悔した点に関する質問でも「もっと高い価格で売却できたかもしれなかった」(33.8%)や「相場よりも安く売却してしまった」(10.0%)といった声が挙がりました。現在のマンション相場が上昇している局面でも、すべての人が満足いく価格で売却できているわけではないようです。

タワマン売却時には譲渡所得税がかかる

タワマンを売却した場合、取得価格から売却価格を引いた売却益がそのまま手元に入るわけではありません。なぜならタワマン売却によって得た利益は、譲渡所得税などの税金の対象になるからです。

譲渡所得税とは、不動産を売却して譲渡所得(売却益から譲渡費用などを差し引いたもの)が発生した場合にかかる、所得税・住民税・復興特別所得税の総称です。譲渡所得税は所有期間によって「短期譲渡所得」「長期譲渡所得」に分かれ、異なる税率が設定されています。

条件 税率
短期譲渡所得 売却物件の所有期間が売却年の1月1日時点で5年以内の場合 合計39.63%
長期譲渡所得 売却物件の所有期間が売却年の1月1日時点で5年超の場合 合計20.315%

これを踏まえると、仮に譲渡所得金額が1億円だったとしても、5年以内の売却だと4000万円近い譲渡所得税がかかる計算になります。

さらに物件が高額になるほど、売却の仲介を依頼した不動産会社へ支払う仲介手数料も高くなります。仲介手数料は上限が定められており、売却価格が2億円であれば「売却価格×3%+6万円+消費税」で計算が可能です。実際に求めてみると、税込みで約667万円にもなります。

他にも売買契約書の印紙税などの費用がかかるため、たとえ売買価格が当初の取得費用を上回ったとしても、場合によっては売却損が生じてしまうこともあるでしょう。

コモディティ化することでタワマンの資産価値低下を招くケースも

タワマンの資産価値が高いのは、上層階を中心に希少性があるからです。しかし、近年タワマンの供給数が増えたことにより、ストック数も増加傾向にあります。結果として、タワマンのコモディティ化(付加価値の高い商品が一般化すること)が生じ、今後資産価値の低下を招く可能性も考えられる状況です。

東京カンテイが2024年1月に公表した調査結果によれば、2023年12月末時点でのタワマンのストック数は東京都で479棟・15万6042戸、大阪府で273棟・6万7570戸とのことです。

さらに、2023年には東京都9棟・6170戸、大阪府9棟・1655戸が竣工しました。2024年には東京都15棟・4177戸、大阪府9棟・2627戸が竣工予定となっており、例年以上に多くのタワマンが竣工を迎えようとしています。ただでさえ増加傾向にあるストックが、ますます増加することが懸念されるのです。

こうした背景から、近年ではタワマンでも付加価値がないと資産性を担保できなくなってきています。例えば、高級ホテルさながらの豪華な風格のエントランスやロビー、広い専有面積、住民専用のバーやレストラン、プール、コンシェルジェサービスといった充実した共用施設とサービス、駅直結の好立地などです。

上記のような付加価値が、物件売却時にも大きなセールスポイントとなります。

03タワマンが抱える「老い」、マンション管理の難しさが顕著に

日本経済新聞によると、バブル期前後に建設されたタワマンが軒並み築30年以上となり、今や築30年以上のタワマンは全体の1割にもなるといいます。築20年以上で見ると約3割にのぼり、タワマンの老朽化が進んでいることは明らかです。

今後、多くのタワマンが大規模修繕工事の時期を迎えることになりますが、タワマンの大規模修繕工事には難しい側面があります。その理由として、タワマンならではの事情が挙げられます。

  • 区分所有者の数が多いために合意形成が難しい
  • 住戸の階層によって、エレベーターなどの設備の重要性が大きく異なる
  • 工事期間が長くなるために費用が高くなりやすい
  • 個性的なデザインに合わせた工事に対応できる業者が少ない

4つ目のポイントに関して、国土交通省の調査によれば、地上20階建て以上の超高層マンションにおける大規模修繕工事の受注実績がある企業は、全体の24.2%にとどまっています。専門工事業者系の企業が受注していない理由として「大規模修繕工事の施工経験がない」という回答が多く、4割の企業が対策も取っていないと回答しました。外壁工事における安全対策の難しさ、給排水設備の配管経路の特殊さなどの要因が、業者参入のネックとなっているようです。

さらに、築年数の経過とともに住民の高齢化も進んでいます。新宿区が行った調査では、世帯主が65歳以上の割合が「3割程度」としたマンションが全体の約半数に達しました。高齢化が進むと管理組合の役員のなり手が不足し、住民による管理そのものが機能不全に陥るおそれがあります。

どれだけ建物としての価値があったとしても、管理不全になれば資産価値の低下は避けられないでしょう。

管理不全による資産価値の低下に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。

老いを抱えるマンションに高騰する修繕積立金!資産価値のマイナス要因にも
[ニュース] 2023.12.15

04乱立するタワマン、今後は資産価値が下落するリスクも!購入は慎重に

首都圏は竣工するマンションの8戸に1戸がタワマンといわれるほど、タワマンが乱立している状況です。タワマンの高い資産価値は希少性によるところが大きいため、過剰な供給で希少性が低下すれば、将来的に資産価値が低下していくことも想定されます。

とりわけ最近では、日銀のマイナス金利解除などの影響を受けて金利動向が読みにくく、住宅ローンの借入額を抑える人も増えています。こうした状況下では、周辺相場に比べて高額なタワマンは買い手がつきにくくなり、価格下落につながる可能性もあるでしょう。

タワマンの購入は慎重に検討するとともに、自分にとっての適正な住宅ローン借入額を把握しておくことが重要です。

当サイトでは、「予算・価格・返済・老後」の目的別に4つの住宅ローンシミュレーターを用意しています。タワマンを購入した場合の資金計画がどうなるのか、大まかに判断するのにも有効なので、ぜひご活用ください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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