高松市、全国初の空き家対策!高齢者の住宅ローン利用で最大15万円の補助
全国で空き家問題が深刻化するなか、官民を挙げての対策が急務です。特に団塊の世代すべてが後期高齢者となる2025年以降、空き家の増加ペースはこれまで以上に加速すると予想されています。 この問題を受けて、独自の空き家対策に乗り出す自治体も現れました。代表例が香川県高松市です。高松市は住宅ローンを利用した高齢者世帯に対し、補助金を出す制度を開始。こういった空き家対策は全国初で、その効果を含め各方面から注目されています。 そこで今回は高松市の空き家対策をはじめ、制度の中心となる住宅金融支援機構の「リ・バース60」の概要、さらに全国各地で進む空き家対策の最新情報について解説します。
01高松市で全国初!高齢者の住宅ローン利用で最大15万円の補助
高松市は2023年8月より、住宅金融支援機構のリバースモーゲージ型住宅ローン「リ・バース60」によって融資を受けた60歳以上に対し、最大15万円までの補助金を出す「空き家対策」を開始しました。補助金額は「リ・バース60」契約当初から、1年間(12回分)の返済額(利息)合計のうち3分の2相当(最大15万円)までが上限です。
「リバースモーゲージ」とは、所有する自宅を担保に、生活費や福祉サービス、家のリフォーム費用などに充てる資金を新たに借り入れるサービスです。年金生活者など、現金収入の少ない高齢者世帯を対象にしたローンとして注目されています。
住宅金融支援機構の「リ・バース60」も、「リバースモーゲージ」の1つです。住宅金融支援機構が民間の金融機関と連携し、利用者の自宅を担保に「リフォーム資金」や「住宅買い替え」のための融資を行います。
「リ・バース60」が高松市で空き家対策として利用される背景には、空き家予備軍となる中古住宅の数が市内で急増している事情があります。特に香川県は全国でも空き家率が高く、総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」によると、住宅用家屋に占める空き家率は18%とかなり深刻な状況です。
香川県などの地方では親世代が住んでいる住宅を子世代が受け継ぐケースが少なく、売却しようにも買い手がつきにくい傾向にあります。家屋の状態が悪ければ修繕費用や家財の撤去費用で赤字となることも多く、結果的に使い道を失った家屋は「空き家」のまま放置されがちです。
そこで、このような「空き家」予備軍の住宅に住んでいる高齢者に対し、「リ・バース60」を利用して普段から建物の維持管理を行ってもらい、最終的にスムーズな売却につながるように準備してもらおう、というわけです。
具体的な空き家対策の内容については、下記の案内でご確認ください。
02「リ・バース60」と一般的なリバースモーゲージとの違い
高松市が住宅金融支援機構の「リ・バース60」を補助金対象とした背景には、一般的なリバースモーゲージと比べて利用に対するハードルが低い点が挙げられます。
「リ・バース60」は住宅金融支援機構が間に入り、提携する金融機関と契約者の間で契約を結びます。契約者は自宅を「担保」に、リフォーム資金や住宅購入資金を借り入れ、契約者が生存しているうちは利息のみを返済し、契約者の死亡時に担保になった不動産を売却することで元金を返済するという仕組みです。
契約中は利息分だけを返済すればいいため、通常の住宅ローンと比べて月々の返済額は少額で済みます。借り入れできる上限額自体は低いものの、住宅金融機構が間に入ることで保証人が不要となっており、現金収入の少ない高齢者であっても利用しやすい点が「リ・バース60」の大きな特徴です。
もう1点、一般的な「リバースモーゲージ」と「リ・バース60」とで大きく違うのが借入金の「使用用途」です。一般的な「リバースモーゲージ」は、あくまでも不動産担保ローンです。借入金の使用用途は契約者の自由なので、生活費や介護費用はもちろん、交際費や遊興費に使っても構いません。
これに対し「リ・バース60」は住宅ローンに位置づけられているため、借入金は住宅関連目的での資金利用に限定されます。建て替えや修繕、リフォーム、住宅の買い替えなどの目的以外で借入金を使えません。一般的な「リバースモーゲージ」と「リ・バース60」の違いについて、その他の点も含めて簡単にまとめましたので、参考にしてください。
リ・バース60 | 一般的なリバースモーゲージ | |
---|---|---|
使用用途 | 住宅関連の費用に限定される | 使用用途は限定されない |
保証人の有無 | 住宅金融支援機構が「保険者」となるので、基本的に不要 | 原則として必要 |
対象物件 | これから購入予定の自宅やセカンドハウスも対象 | 各金融機関の商品によってさまざま |
借り入れ上限 | 不動産評価額の50〜60%程度 | 金融機関によるが、不動産評価額の自の50~80%程度が一般的 |
対象エリア | 限定なし | 首都圏や関西圏、地方の主要都市などに限定されているケースが多い |
月々の返済内容 | 金利分のみ(元金は契約者の死亡時に不動産を売却して返済) | 元金+金利分 |
「リ・バース60」のノンリコース型選択でリスク軽減ができるメリットも
リバースモーゲージの利用で注意したいのが、不動産価格の下落リスクです。一般的にリバースモーゲージは不動産評価額の50~80%を上限に融資額が決まりますが、建物の価値は年々下がるので、金融機関は定期的に担保となっている不動産の評価額を見直します。不動産の評価額が落ちると、融資額の上限もその際に見直されて、「担保割れ」を起こすリスクがあるのです。
担保割れを起こすと、超過借り入れ分の一括返済を求められてしまいます。つまり不動産の評価額の見直し次第で、契約者の返済額が一気に増えるおそれがあるということです。特に地方は不動産の価格下落リスクが高いため、地域によってはそもそも契約対象外となっているケースも少なくありません。
一方の住宅金融支援機構の「リ・バース60」は、担保となる不動産価値の評価は申し込み時の1回だけで済みます。定期的に不動産の評価額を見直すことがないので、不動産価値の下落を心配する必要がありません。対象地域の制限もないため、どの地方の中古住宅であっても利用可能です。
さらに「リ・バース60」の返済方法は、契約者死亡時に相続人が残債返済義務を負う「リコース型」と、相続人が返済義務を負わない「ノンリコース型」の2種類から選ぶことができます。圧倒的に利用者が多いのが「ノンリコース型」です。
「ノンリコース型」は「リコース型」よりも金利は高くなるものの、万が一担保物件の売却で元金全額を回収できなかったとしても、相続人は残債務を支払う必要ない点が大きなメリットです。売却で赤字になるからと放置されるケースもなくなるため、空き家対策としても有効な契約とされています。
03住宅ローンからの借り換えにも最適な「リ・バース60」
「リ・バース60」が空き家対策の補助対象となった理由には、高齢者世帯の生活支援にも適している点も挙げられます。特に有効な方法が、一般的な住宅ローンから「リ・バース60」への借り換えです。
一般的な住宅ローンの返済は、元金分と利息分を毎月返済するかたちとなります。その点、「リ・バース60」なら、月々の返済は利息分だけです。これにより、現状の生活を続けたまま月々の家計負担を大幅に減らすことが可能となります。現金収入の少ない高齢者世帯にとっては、大きなメリットを感じられるでしょう。
ただし、利息分だけの返済なので元金部分は減らない点はデメリットです。繰り上げ返済をしない限りは利息分だけを延々と返済し続けることになり、長生きすればするほど返済総額が大きくなってしまいます。
さらに「リ・バース60」を取り扱う金融機関のほとんどは「変動金利」のみの取り扱いですので、金利上昇リスクによる返済額の上昇といったリスクも存在します。したがって「リ・バース60」をうまく利用するためには、返済期間や借入金額などをしっかりシミュレーションする必要があるでしょう。
京都市、2026年に空き家税を導入決定
高松市とは全く別のベクトルで「空き家対策」を打ち出したのが、京都市です。京都市は2023年3月に「空き家税(非居住住宅利活用促進税)」を導入し、課税負担の強化という方向からの空き家対策を実施しています。
京都市は市内中心部でのマンション価格が高騰し続けており、予算的に手が出ない子育て世帯を中心に人口の市外流出が問題となっています。その一方で、高齢化を背景とした空き家の増加は進んでおり、市内だけでも実に1万戸の空き家が存在するそうです。こうした住居需給のバランスの悪さは、京都市にとって大きな課題となっています。
そこで京都市は、市内に存在する空き家に対して「空き家税」を課すことにしました。具体的な税負担の中身は、毎年支払う「固定資産税」と「都市計画税」と別に家屋評価額の0.7%を課すというもの。新たな税負担を求めることで、空き家の所有者が所有物件の賃貸や売却を進めるように促そうというわけです。
現状では2023年4月に「空き家税」の条例が交付され、3年後の2026年以降に課税される予定です。京都市の目論見通り、「空き家の減少」と「子育て世帯の流出防止」の2つの面でどれくらいの効果があるか、これからの検証が期待されます。
しかし都市部の空き家対策においては、京都市にならって「空き家税」を導入する自治体が今後増えるかもしれません。空き家税の導入の影響で、中古物件が希望するエリアに出回る可能性が高くなります。マイホームを探している人にはチャンスとなるため、空き家対策に関するニュースにもアンテナを張っておきましょう。
0460歳以降に住宅ローンの支払いが続くなら「リ・バース60」も検討してみよう
空き家対策でも注目される「リ・バース60」は、60歳以降も続く住宅ローンの支払いなどの家計負担を減らしたい方には最適な住宅ローンです。他にも、子どもたちに迷惑をかけずに自宅を処分したい、住み替えをスムーズに行いたい、あるいは相続する人がいないなど、住まいについて将来的な不安を抱えている方は、一度「リ・バース60」を検討してはいかがでしょうか。
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監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
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