2025年、立地適正化計画が加速する?家の資産価値に影響も!土地探しの際にチェックしよう
2025年、団塊世代が75歳を迎える日本。超高齢化社会と少子化のスピードを止めることは難しく、全国各地で人口減少が本格化していきます。そこで政府は2014年に「立地適正化計画」を制度化し、人口減少に対応した街づくりの指針を発表しました。 この「立地適正化計画」は各地の不動産の資産価値にも影響するといわれており、これから家を買う、あるいは土地や建物を売却する予定の方は必ずチェックが必要です。 そこでこの記事では、「立地適正化計画」の基本的な内容を紹介しつつ、これからの土地探しや家づくりに「立地適正化計画」がどのように影響するかについて解説します。
01立地適正化計画とは?
「立地適正化計画」とは、人口減少や超高齢化社会が進む中でも安心して暮らせる「コンパクトシティー」を構築するための制度です。
人口減少が進む自治体では税収が減る一方ですが、高齢者の数は増えていくので介護や医療などにかかる費用は増加します。財政状況が厳しくなると、人口密度の低いエリアまでくまなく生活インフラを維持するのが難しくなるでしょう。
そこで、人口減少や少子高齢化社会に対応できる「持続可能」な都市機能の維持のために、国は2014年に「立地適正化計画」を打ち出しました。この計画は住宅や医療・福祉・商業・子育て支援などの生活に必要な施設をまとめて立地させることにより、人口減の状況下でも都市機能を維持できるように各地域を再構築することを目的としています。
「立地適正化計画」は国が創設した制度ですが、具体的な取り組みについては各市町村や民間事業者、住民の代表と作る「市町村都市再生協議会」が中心となって計画を策定します。2022年7月現在、全国約1700の都市のうち634都市が「立地適正化計画」に参画中です。今後も多くの自治体が参加すると予想されています。
「立地適正化計画」の大きな特徴は、各自治体が都市機能を集中させるエリアとそれ以外のエリアを「線引き」する点です。「立地適正化計画」では、都市機能を集約するエリアを「立地適正化計画区域」に指定し、さらに「立地適正化計画区域」は「居住誘導区域(住宅地)」と「都市機能誘導区域(商業地)」に分けて都市機能を誘導します。
「立地適正化計画区域」に都市機能を集中させるため、区域内と区域外で都市インフラの差が広がり、結果として不動産の評価にも大きな差が生じると推測されています。
02立地適正化計画が2025年に加速?家探しへの影響は?
「立地適正化計画」は2025年あたりからより本格化するのでは、との予測があります。というのも2025年は団塊世代(1947年~1949年生まれ)が75歳の後期高齢者になる節目の年。2023年からは人口だけでなく「世帯数」そのものも減少し始めるため、人口減少と超高齢化社会の影響が顕著になるタイミングです。都市計画は一朝一夕に進められないので、これを機に将来のため「立地適正化計画」に参画する自治体は増加するとみられています。
同時に人口減や超高齢化、世帯数の減少は不動産の「供給過多問題」という問題も引き起こします。高齢化が進むことで不動産の管理を手放す人が増加する一方、主な住宅の買い手となる30代~40代の世代人口は減少中、全体的に家余りの状態が加速しているのが現状です。
家余りの状況下で「立地適正化計画」が本格化すると、需要のある家とない家の格差がより大きくなるでしょう。特に「立地適正化計画区域」内に立地しているかどうかは不動産の資産価値を大きく決定づける評価軸となるため、今後の家探しにかなり影響しそうです。
居住誘導区域外だと資産価値が下がる?
「立地適正化計画」によって指定される「居住誘導区域外」のエリアでは、従来の「市街化調整区域」と同様に住宅地化が抑制されます。もともと人口密度の低いエリアが中心とはいえ、これまで以上に公共交通の確保やゴミ収集などの生活サービスが維持できない、商業施設が近くになく買い物しづらくなるなど、さらなる利便性の低下が予想されるでしょう。もちろん、該当地域にある土地や家の資産価値は長い目で見ると下がってしまうため、売りに出してもなかなか売却につながらない状況も考えられます。
このような状況から、今後は「居住誘導区域外」の土地や建物が、かなり安く売り出される可能性は高いといえます。しかし将来的に、資産価値が大幅に下がることが予想されるため、投資目的での購入もあまりおすすめできません。特別な理由がない限り、できるだけ「居住誘導区域外」の家や土地の購入は避けた方が無難といえます。家や土地探しをする際は、目的の不動産が「居住誘導区域内」にあるかどうかを必ずチェックしましょう。
居住誘導区域はメリットが多数!
一方、「居住誘導区域内」で住宅を新たに購入するメリットは、今後ますます大きくなります。「居住誘導区域」では公共交通網や公共施設、商業施設などがどんどん集約されていきますので、時間が経てば経つほど住みやすい環境が整ってくるでしょう。
さらに「居住誘導区域」は、「災害に強い」エリアが重点的に選ばれる点にも注目したいところ。2020年10月20日の閣議決定により、「居住誘導区域」から「災害レッドゾーン(地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域、土砂災害特別警戒区域)」が除外されることになりました。要するに、災害リスクのきわめて高いエリアを「居住誘導区域」に含めることはできない、ということです。「居住誘導区域」では防災対策の制定も強化される予定で、今後は「災害に強いエリア」としても高い評価を受けることになるでしょう。
03家を将来的に手放したい人も立地適正化計画をチェックしておこう
家を売却する際も、立地適正化計画が影響します。売却予定の家の建つ地域が、どのような区域指定を受けているかによって評価が変わる可能性が出てきました。たとえば現状では買い手の付きそうな物件であっても、「居住誘導区域外」であることがわかると売却が難しくなるケースも考えられます。
もし将来的に持ち家の売却を検討中の場合は、地元自治体が「立地適正化計画」に参画しているかをチェックしてください。「立地適正化計画」を策定している自治体であれば、市町村のホームページで「居住誘導地域」の範囲を確認できます。
2023年の段階で「都市機能誘導区域」と「居住誘導区域」をともに設定した市町村は参画634都市中の457都市です。区域の指定に関しては各地域の事情や人口減の状況などに合わせて計画されるため、数年単位で改定されることもあります。国土交通省のガイドラインでも「都市計画や居住誘導区域を不断に見直す」と明記されていますから、できるだけ新しい情報をチェックしたうえで土地価格の動向をつかんでおくことが大切です。
04家、土地探しの際は居住誘導区域かもチェック!シミュレーターで借入可能額も確認しておこう
今回は家の購入や売却で新たにチェックするべき「立地適正化計画」について簡単に紹介しました。まだまだ計画に参画していない自治体は多いものの、超高齢化社会や人口減少が加速する2025年以降は、各地で「立地適正化計画」が進むと予想されます。
住宅の供給過多傾向もあって、今後は「売れる家」と「売れない家」の差が顕著となるでしょう。特に「居住誘導区域内」の土地や家には、人気が集中しそうです。比較的安い価格で買える「居住誘導区域内」の中古物件では、早い者勝ちの状況となるかもしれません。良い物件に出会えたときはこれまで以上に迅速に動く必要があるため、家の購入を検討中の方にはできるだけ早い段階から具体的な資金計画を立てることをおすすめします。 資金計画については、1度具体的にシミュレーションしてみるとかなり明確なイメージをつかめます。まずは当サイト内の各種シミュレーターを利用し、理想の家探しに向けての準備をはじめてみましょう。
監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。