不動産の買取再販は仲介よりお得!?メリットや利用時の注意点も解説
日本では高齢化が進み、空き家問題が深刻化しつつあります。その解決のために、事業者が住宅を買い取ってリフォームなどをしたうえで売り出す「買取再販物件」に注目が集まっています。買取再販物件は比較的安価かつおしゃれでカッコイイ物件が多いことから若い世代を中心として人気が高いです。 ただし、買取再販は中古物件の取引であるため、中には購入後のトラブルに見舞われる事例もあります。そこで、今回は買取再販物件の購入を検討している方のために、基本的な情報やメリット・デメリット、利用時の注意点について解説していきます。
01不動産の買取再販とは?
不動産の買取再販とは、住宅メーカーや不動産会社などの事業者が住宅を買い取った後にリフォームまたはリノベーションを行い、中古物件として販売する仕組みです。空き家が増えてきた昨今の日本では住宅市場を活性化させる施策としても注目されており、大手企業も参入しています。
例えば、製造小売業大手の無印良品が新たに住空間事業部門として設立した「MUJI HOUSE」は、MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクトとして団地やマンションのリノベーションを手掛けています。そのほかにも新築マンションのデベロッパーである「三菱地所レジデンス」や、「住友林業」「パナホーム」といったハウスメーカーの中にも、高価格帯のマンションを中心に買取再販物件を取り扱っている事例があります。
買取再販業界がこのような盛り上がりを見せているのは、消費者から高いニーズを誇ることだけが理由ではありません。住宅を取得しやすくするための制度として、国が特例措置を設けて税制面で後押しをしているのも要因の1つです。具体的には、事業者に対する不動産取得税の優遇措置(令和5年3月31日)や個人に対する登録免許税の軽減(令和6年3月31日まで)が挙げられます。
特例措置によって事業者の物件取得コストが下がり、その分だけリフォームなどに予算を充てられる結果、消費者へ質の高い住宅を供給出来て成約件数が増加するという好循環が生まれています。
02消費者にとっての買取再販のメリット
買取再販事業は成約件数も徐々に増えてきており、サービスを扱う事業者側へ利益をもたらしています。しかし当然のことながら、消費者側にもメリットがないと事業としては成り立ちません。そこで、ここからは買取再販物件のメリットについて紹介していきます。
内装や設備が新築に近いにもかかわらず価格がリーズナブル
買取再販は事業者が中古住宅を買い取った後に、全面リフォームやリノベーションを施してから消費者へ販売します。そのため、中古住宅とはいっても、内装については新築並みにきれいな状態であるケースが多いでしょう。
中には水回りなどの設備を総入れ替えしている場合もあるので、そのような物件を選べば新生活を気持ちよく快適に過ごせます。それでいて、あくまでも中古住宅の扱いなので、購入価格は新築住宅に比べてリーズナブルなことが多いのも魅力です。
また、自分で中古物件を購入してからリフォームおよびリノベーションをする場合と違って、完成した状態で内見ができます。買取再販物件は内装工事にかかった費用はすでに購入価格に含まれており、基本的に新たなリノベーションやリフォームを施す必要はありません。そのため、追加工事や諸費用などが発生して、予算オーバーするといった事態が起こりにくいのもメリットです。
仲介ではないため仲介手数料がかからない
住宅購入にかかる諸費用のうち、比較的大きな金額になりがちなのが不動産会社に支払う仲介手数料です。しかし、仲介手数料は不動産会社などに物件を仲介してもらったときに支払う費用なので、買取再販物件のように物件の所有者である事業者から住宅を直接購入する場合に支払う必要はありません。なお、仲介手数料は宅地建物取引業法で上限が定められており、その上限は下記3つの計算式の総合計で求められます。
不動産取引における仲介手数料の上限
売買価格 | 仲介手数料(上限) |
200万円以下の部分 | 売買価格の5%+消費税 |
200万円を超えて400万円以下の部分 | 売買価格の4%+消費税 |
400万円を超えた部分 | 売買価格の3%+消費税 |
たとえば、3000万円の物件を購入した場合、「200万円以下の部分」「200万円を超えて400万円以下の部分」「400万円を超えた部分」をそれぞれ計算し、最後に足し算する形です。これだと計算式が煩雑になるため、一般的に売買価格が400万円を超える取引には「(売買価格×3%+6万円)+消費税」という速算式が用いられ、3000万円の物件の場合は105万6000円((3000万円×3%+6万円)×1.1)が上限になります。
この金額はあくまでも上限であるため、実際に支払う金額は不動産会社によって安くなることもありますが、物件価格によっては100万円以上かかるケースは珍しくありません。買取再販ではこの諸費用がかからないので、購入費用の節約につながります。
長期の保証が付いている
宅地建物取引業法には消費者を守るための条文が含まれており、その代表的なものが「瑕疵担保責任」です。瑕疵担保責任とは、簡単にいうと「欠陥住宅だと判明した場合、それを販売した事業者は責任を負わなければいけない」というルールのことです。宅地建物取引業法では「物件の引き渡しから2年以上は瑕疵担保責任を負うこと」が明文化されており、実際の取引では最低保証期間である引き渡しから2年で契約書を作成するケースがよく見られます。
中古住宅は新築に比べてリーズナブルだとはいえ、数千万円単位の高額な買い物になるので、保証期間が2年では短いと考える人もいるでしょう。そんな人におすすめなのが、事業者が指定するメンテナンス工事を実施すれば、長期保証制度の対象になるサービスです。たとえば、パナソニックホームズであれば、もともと自社が建築した戸建て住宅に最長で60年の保証がついていて、適切な改修を行えば買取再販でも保証をそのまま引き継ぐことができます。このように大手ハウスメーカーが手掛けた買取再販物件には、一般の中古住宅にはつかない手厚い保証が付く場合もあるのが特徴です。
中古物件を購入するより住宅ローン控除の適用期間が長い
住宅ローン控除は消費者の住宅購入を後押しする制度で、年末時点での住宅ローン残高に応じて所得税や住民税の優遇を受けられます。利用にあたってはさまざまな条件があるものの、買取再販物件であっても住宅ローンを契約していれば対象となる場合があります。しかも、宅地建物取引業者によって一定の増改築が施された買取再販物件は新築住宅と同様に住宅ローン控除の適用期間が13年となり、一般の中古住宅(適用期間10年)よりもお得です。
また、住宅ローン控除は住宅の省エネ性能が高ければ高いほど控除額が多くなる制度となっている点も特徴です。たとえば、2022~2023年に買取再販物件を購入した場合の年間最大控除額は、認定住宅35万円、ZEH水準省エネ住宅31.5万円なのに対して、その他住宅では21万円となっています。
それに比べて、一般の中古住宅を2022~2025年に購入した場合は、認定住宅とZEH水準省エネ住宅が21万円、その他住宅が14万円しかありません。住宅ローン控除で新築住宅と同水準の条件が適用される買取再販物件を購入すれば、トータルではかなりの節税につながります。
03消費者にとっての買取再販のデメリット
ここまで紹介したように、買取再販物件は快適に暮らせるだけでなく、購入にかかる費用や節税面でもメリットがあります。しかし、中古物件ならではのデメリットがあるのも事実なので、ここからはその点について解説します。買取再販物件の購入を検討する前にデメリット部分もしっかり押さえておきましょう。
購入した物件が事故物件であることも
買取再販物件のデメリットとして挙げられるのが、事故物件を購入するリスクがあることです。事故物件とは過去に事故や事件などが起きた物件のことであり、一般的に消費者から敬遠されやすく、物件価格は下落します。業者にとっては価格の安い物件を仕入れるチャンスなので、あえてそうした物件をリフォームして販売するケースもあるので気を付けなければいけません。
そうした悪質な販売を取り締まるために、宅地建物取引業法の第47条では「心理的瑕疵物件を取り扱うとき、不動産業者は物件がそれに該当することを買主へ伝えなければいけない」とされています。具体的には、過去に孤独死や自殺、災害による死亡事故があったり、火葬場の近くなど周辺環境が一般消費者に好まれにくい場所にあったりする物件は、心理的瑕疵物件として買主への告知義務があります。
ただし、自然死や家庭内の事故死であった際は心理的瑕疵物件に該当しません。特殊清掃があった場合は買主への告知が義務付けられていますが、事故物件の定義はあいまいな部分があり、購入を希望する物件がそれに該当するかを素人が見極めるのは難しいのが現実です。
こうした事故物件は安く仕入れられることもあって、販売する業者側も周辺物件より低めの価格設定で売り出していることが多いので周辺相場に比べて極端に安いなど、不自然な点がある物件は事故物件の可能性を疑ってみましょう。疑問を持つ物件を見つけたら不動産会社に聞いたり、ネットで調べたりして、その理由を探ってみることをおすすめします。また、仮に事故物件であるなら近隣住民がうわさで知っている可能性は高いので、物件周辺に住んでいる知人がいるなら相談してみるのも1つの方法です。
不具合を見極めることができない
買取再販物件のデメリット2つ目は、「リフォームやリノベーションが適切に行われているかどうかを買主が判断できないこと」です。業者によっては工事のプランニングは自社で行っても、実際の施工は別業者に委託するケースもあります。その場合、最終的にプランニング通りに仕上がっているかどうかのチェックは行うものの、表面上の確認だけにとどまり、委託した業者が実際にどのような工事を行ったかまでしっかり把握していない場合もあることは覚えておきましょう。そうした物件は、業者が不具合を見逃したまま販売している可能性があります。
いくら内見で細かくチェックをしても、工事のプランニングにも加わっていない買主が業者も把握していない不具合を発見するのはとても困難です。上述したように、買取再販物件を扱う業者の中には、アフターサービスの保証を付けているところもあるので、不安な方はそういう業者を利用するとよいでしょう。
04買取再販物件を購入するときの注意点
買取再販物件のデメリットを踏まえたうえで、購入するときのポイントとして挙げるのは「業者の実情についてあらかじめ確認しておくこと」です。たとえば、業者の信頼性を確認するために、過去の販売実績をホームページやネットの口コミなどを参考に調べるとよいでしょう。その際にはついでに買取再販業者独自の保証サービスを実施しているかどうかもチェックしておくとよいです。特に保証内容の詳細や保証期間の長さは安心して暮らすために重要なので、しっかり確認しておいてください。
また、不具合の少ない業者を見わけるポイントとして、販売している物件の検査体制が充実しているかどうかも挙げられます。できるだけ第三者規格に適合していたり、社団法人リノベーション協議会が定めている統一規格をクリアした証のR1物件を販売している業者を選んだりすることをおすすめします。
購入を希望する物件の安全性をもっと確実に判断したい場合は、ホームインスペクション(住宅診断)を利用するのもよいでしょう。ホームインスペクションとは、建築士などの住宅のプロが物件の状態を診断してくれるサービスで、買取再販物件を取り扱う事業者の中には売り出し前に実施して不具合のない物件であることをアピールしている場合もあります。検査費用は住宅の大きさや検査項目によって異なりますが、一般的な相場は5万~6万円程度とそれほど高くはないので、どうしても欲しい物件に不安な点がある場合は自身で申し込むことも検討してみてください。
05買取再販ならリノベーション・リフォームが必要なし!シミュレーションで借入可能額もチェックしてみよう
買取再販物件は購入後のリノベーションおよびリフォームが不要なので、資金計画がシンプルかつ分かりやすいのがメリットです。追加工事などの突発的な出費が生じる可能性は低いため、事前の資金計画をしっかり立てておけば、予算オーバーするリスクは少ないといえます。また、内装は新築時に近い状態にもかかわらず、新築住宅に比べるとリーズナブルな物件が多いので、20代や30代など、まだそれほど年収が上がっていない世帯でも購入しやすいのも魅力です。
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監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
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