地震保険の加入者が増加中!費用の相場や加入の必要性を解説

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日本は世界有数の地震大国。全国どこに住んでいても地震の被害を受ける可能性はゼロではないと言っても過言ではありません。万が一、住まいが地震による被害にあったときに備えるのが地震保険で、近年加入者が増えつつあります。今回は最新の地震保険の概況を示すデータを示すとともに、地震保険の概要や加入の必要性について考えます。

01地震保険の契約件数、増加傾向に

地震保険の契約件数は、1966年の地震保険制度設立以来約30年間はほぼ横ばい、もしくは減少傾向が続いていましたが、1995年1月に発生した阪神・淡路大震災を機に大きく増加。その後も東日本大震災や熊本地震など大規模な地震が相次いだこともあって増加傾向が続いており、損害保険料率算出機構がまとめた「火災・地震保険の概況2020」によると、2019年度末現在の地震保険の契約件数は1974万件(対前年比3.9%増)に上っています。また、火災保険の契約件数うち地震保険を付帯している件数の割合も上昇し続けており、2019年度は2001年の集計開始以来最高の66.7%となりました(※1)。

※1 出典:損害保険料率算出機構「火災・地震保険の概況2020」P44

02そもそも地震保険とは?

ここで改めて、地震保険について概要をおさらいしておきましょう。

住まいを対象とした保険には火災保険と地震保険とがあり、それぞれ次のような場合に保険金が支払われます。

  • 火災保険
    • 火災や落雷、水災や風災、雪災などの自然災害、火災や爆発、水漏れなどにより建物や家財に損害が生じた場合
  • 地震保険
    • 地震や噴火またはこれらによる津波が原因で居住用建物(住宅)や家財に損害が生じた場合

ただし、工場や事務所専用の建物など住宅として使用されない建物、1個または1組の価額が30万円を超える貴金属・宝石・骨とう、通貨、有価証券(小切手、株券、商品券等)、預貯金証書、印紙、切手、自動車などは地震保険の補償対象外です。

また、火災保険では地震による損害は補償されないので、地震への備えをするためには別途、地震保険に加入する必要があります。地震保険は法令により、火災保険とあわせて契約することとされていますが、地震保険が不要な場合は火災保険のみの契約とすることができます。

地震保険の保険金額は?

地震保険は、「地震等による被災者の生活の安定に寄与すること」を目的に、民間保険会社が負う地震保険責任の一定額以上の巨額な地震損害を国が再保険することにより成り立っている保険、いわば国と民間保険会社が共同で運営している保険です。保険金額は「地震保険に関する法律」によって火災保険の保険金額の30~50%の範囲内(ただし、建物は5000万円、家具や家電などの家財は1000万円が上限)とされています。

例えば、建物の火災保険の保険金が1000万円の場合、地震保険の保険料は300万~500万円の間で設定されます。家財の火災保険の保険金が500万円の場合、地震保険の保険料は150万~250万円の範囲内で設定されます。

地震保険の保険料

地震保険の保険料は、対象である住宅および家財を収容する「建物の構造」と「所在地」から損害保険料率算出機構が算定した保険料率をもとに算出します。地震保険の保険料はどの保険会社で申し込んでも同額で「保険料の安い保険会社を探す」ことはできません。

建物の構造

  建物はその構造によって地震の揺れによる損傷や火災による消失のリスクなどが異なります。したがって地震保険の保険料は建物を「イ構造」(主として鉄筋造・コンクリート造)と「ロ構造」(主として木造)とに分けて算出され、イ構造の建物の方が安く設定されます。

所在地

  地震発生のリスクは地域によって異なるため、地震保険の算出にあたっては都道府県を単位として地震発生のリスクに応じて1等地、2等地、3等地に分け、保険料を1等地<2等地<3等地としています。

財務省のホームページでは、「保険期間が1年の場合の保険金額1000万円あたりの保険料」(基本料率)が都道府県別・建物の構造別に紹介されています(※1)。基本料率は最も安い場合で年間7400円、最も高い場合は4万2200円と、大きく幅があります。地震保険の契約を検討している人は、基本料率を確認しましょう。

※1 出典:財務省「地震保険の基本料率(2021年1月1日以降保険始期の地震保険)

なお、地震保険の保険期間は最長5年ですが、火災保険とセットで加入するものなので、火災保険の保険期間によって契約できる保険期間は異なります。2年以上の契約をする場合は、保険料は割り引かれるので総支払額を抑えることができます。もっとも一度に支払う保険料負担は重くなります。

地震保険料の割引制度

地震保険料には、「建築年割引」、「耐震等級割引」、「免震建築物割引」、「耐震診断割引」の4つの割引制度が設けられており、建物の建築年または耐震性能に応じて、10~50%の割引が適用されます。ただし、利用できる割引制度は1つのみで、重複して割引を受けることはできません。

割引制度 条件 保険料の割引率
免震建築物割引 対象物件が、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく「免震建築物」であること 50%
耐震等級割引 対象物件が、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に規定する日本住宅性能表示基準に定められた耐震等級 (構造躯体の倒壊等防止) または国土交通省の定める「耐震診断による耐震等級 (構造躯体の倒壊等防止) の評価指針」に定められた耐震等級を有していること 耐震等級3 50%
耐震等級2 30%
耐震等級1 10%
耐震診断割引 対象物件が、地方公共団体等による耐震診断または耐震改修の結果、建築基準法(昭和56年6月1日施行)における耐震基準を満たしていること 10%
建築年割引 対象物件が、昭和56年6月1日以降に新築された建物であること 10%

地震保険料を試算する

実際の地震保険料は保険会社に問い合わせれば試算してくれますが、その前に自分で確認したい場合は、一般社団法人日本損害保険協会がホームページ上で公開しているシミュレーター「いくらかかるの?地震保険料」を使うと、いくつかの数値を入力するだけで、年間の地震保険料を確認することができます。

このシミュレーターを使って、以下の条件で地震保険に加入する場合の年間保険料と契約金額(保険金額)を試算すると、次のような結果となりました。

条件

  • 契約時期:2021年1月以降の契約
  • 建物のタイプ:持ち家
  • 建物の構造:イ構造(鉄筋造、コンクリート造)
  • 建物の所在地:東京都
  • 火災保険の契約金額:建物5000万円、家財1000万円(いずれも限度額)
  • 割引の種類:免振建築物割引50%

地震保険の試算結果

  • 契約金額(火災保険の30%から50%の範囲で設定する)
    • 建物:1500万~2500万円
    • 家財:300万~500万円
  • 年間保険料
    • 建物:2万630~3万4380円
    • 家財:4130~6880円

03地震保険には入るべき?

では、年間一定の保険料を支払って、地震保険に入る価値はあるのでしょうか?大雨や洪水など火災保険の補償対象である自然災害に比べ、大規模な被害を伴う地震や噴火の発生頻度は低いため、「地震保険料がもったいない」と感じる人もいるでしょう。また、「被災すると公的支援や義援金がもらえるから、地震保険に入る必要はないのでは」と思う人もいるかもしれません。しかし、結論から言うと、やはり地震保険に入っておいた方が安心です。

というのも、地震で住宅が損傷したり倒壊したりした場合、修繕や建て替えには多額の費用がかかるからです。内閣府によると、東日本大震災で全壊被害に遭った住宅の新築費用は平均して約2500万円。これに対して公的支援として受給できたのは、善意による義援金をあわせても約400万円(被災者生活再建支援金300万円+義援金約100万円)にとどまりました(※3)。地震保険に入っていない場合、単純計算すると新築費として2000万円超を自己負担しなくてはならないことになります。上述のとおり、地震保険で受け取れる保険金は火災保険の保険金の30~50%の範囲内(ただし、住宅は5000万円、家財は1000万円が上限)とされているので、場合によっては地震保険に加入していても、新築費用には足りないおそれも十分考えられます。さらに、生活の再建には新築費用だけでなく引っ越し代や家財の購入など、他にもさまざまな費用がかかることは言うまでもありません。

また、内閣府によると、今後発生が危惧されている南海トラフ巨大地震では、推定全壊住宅が 約238万6000棟と東日本大震災の約20倍になると予想されており、地震で自宅が被害にあうことは、決して「他人事」とは言い切れません。もちろん、地震保険に加入するか否かは最終的には個人の判断に委ねられますが、万が一の時に、速やかに自宅を再建して日常生活を取り戻したいのであれば、地震保険に加入して備えをしておくことが大切だと考えます。

※3 出典:内閣府「防災情報のページ

相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

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