自営業はいくら貯めれば老後を迎えられる?必要資産と貯蓄術を紹介

2021.01.29 10

会社員と違って退職金がなく、厚生年金も受給できないため、自営業者の中には老後に不安を感じている人も多いのではないでしょうか?そこで今回は、自営業者と会社員とでは老後資金にどのくらいの差が生じるのか、どのくらいの貯金があれば自営業者も安心して老後を迎えることができるのかを見ていきましょう。

01会社員と自営業の老後資金の違い

まずは会社員と自営業者とでは、老後資金にどのような違いがあるのかを見ていきましょう。

退職金がない

多くの会社では、社員が定年を迎えて退職する際には退職金が支払われます。厚生労働省が行った「平成30年就労条件総合調査」によると、大学・大学院卒の社員の定年時に支払われた退職金の平均は一人当たり1983万円でした(※1)。一方、個人事業主などの自営業者の場合は、自分で積み立てをするなどして貯金しておかない限り、仕事を辞めても退職金に該当するお金は手に入りません。つまり仕事を辞めるタイミングで、会社員と自営業者には老後資金に約2000万円の差が生じる可能性があるということになります。

(※1)出典 「平成30年就労条件総合調査 退職給付(一時金・年金)の支給実態」 P2

国民年金しかもらえない

自営業者の多くは国民年金にしか加入できませんが、ほとんどの会社員や公務員は国民年金に上乗せする形で厚生年金に加入しています。加入中、毎月支払う保険料は厚生年金のほうが高額ですが、その分、老後には国民年金よりも多くの年金を受け取ることができます。

たとえば令和3年度の夫婦2人世帯の1カ月あたりの年金受取額を、国民年金と厚生年金で比較してみると、厚生年金のほうが約9万円も高いことがわかります(※2)。

国民年金

1人当たりの老齢基礎年金受給額(月額):6万5075円
夫婦2人だと6万5075円×2=13万150円(月額)

厚生年金

夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額(月額):22万496円

(※2)出典:厚生労働省プレスリリース

自営業者の中には「自営業者は会社員のように定年がないので、その気になれば、一生働き続けられる。毎月の収入があれば年金が少なくても大丈夫」と考えている人もいるかもしれません。しかし、自営業の人が必ずしも一生働き続けられるわけではありません。自分自身が健康を害してしまったり、家族の介護が必要になったりして、働きたくても働けなくなる可能性も十分に考えられます。退職金がなく、会社員より年金受給額も少ない自営業者こそ、計画的に資金を貯め、自ら老後の生活に備える必要があるのです。

02自営業者が老後必要になる資金はどのくらい?

では、自営業者はどのぐらいの貯蓄があれば安心して老後を迎えることができるのでしょうか?快適な生活を送るのに必要な費用は人によって異なるので、ここでは総務省が行った「2019年家計調査」の結果から、高齢世帯で1年間に必要な生活費の目安を探ってみることにします。

家計調査によると、世帯主の年齢が65歳以上の2人以上世帯(無職世帯)の1カ月あたりの消費支出は24万1672円、社会保険料や税金などの非消費支出は3万2174円でした。つまり、老後に夫婦2人で平均的な生活を送るには、毎月約30万円、年間にすると約360万円は必要ということになります(※3)。

夫婦で国民年金を受給している世帯だと、年間の年金受給の合計は約156万円(1人6万5075円/月×2人分×12カ月)ですから、年金だけでは年に約200万が不足してしまいます。不足分を補うには、例えば65歳で仕事を辞め、その後の余生が20年あると想定した場合、計算上は約200万円(年間の不足分)×20年=約4000万円を、年金以外に確保しておく必要があるということになります。

(※3)出典:総務省「2019年家計調査」表番号3-2

03自営業者はどうやって老後資金を貯めれば良い?

では、自営業者が老後資金を貯めるには、どうすれば良いのでしょうか?もちろん、無駄遣いを極力抑え、貯蓄に励むことが基本ですが、自営業者の場合はお金が手元に貯まると事業の維持や拡大のために使ってしまうケースも少なくありません。できれば、以下に挙げた「iDeCo(イデコ=個人型確定拠出年金)」や「小規模企業共済」のように、途中で引き出したり使ったりしづらい設定の商品を活用して貯蓄し、老後に一時期や年金として受け取るようにしましょう。

iDeCo

iDeCoは、確定拠出年金法に基づいて運営されている私的年金制度で、20歳から60歳未満で一定の要件を満たす人なら誰でも加入できます。毎月、自分で決めた掛け金(5000円以上)を積み立てて、自分で選んだ金融商品(元本確保型商品と投資信託)で運用し、60歳以降に老齢給付金を自分の選んだ方式(一時金または年金、もしくは一時金と年金を組み合わせた形)で受け取ることができる仕組みになっています。

iDeCoは税制面で次のようなメリットがあり、公的年金+αの老後の備えとして人気がありますが、同時にいくつかのでデメリットも指摘されています。メリットとデメリットの両方をよく理解した上で、まずは少額の掛け金から始めてみると良いでしょう(掛け金は年に1回、変更できます)。

主なメリット

掛け金を全額所得控除できる

掛け金は全額が所得控除の対象となるため、所得税・住民税を軽減できます。

運用益に課税されない

一般的に金融商品の運用益には、所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%の、計20.315%の税金が課されますが、iDeCoの運用益は非課税とされています。

年金に課税されない

老齢給付金を受け取る際、一時金として受け取ると「退職所得控除」が、年金として受け取ると「公的年金等控除」が適用され、いずれも一定金額までは非課税となります。

主なデメリット

加入できない場合もある

iDeCo加入には一定の要件があり、次に該当する人は加入できません。

  • 20歳未満の人、60歳以上の人(2022年以降は65歳以上の人)
  • 海外に住んでいる人
  • 国民年金保険料を支払っていない人(免除されている人を含む)
  • 海外在住の人
  • 農業者年金に加入中の人
  • 勤務先で加入している企業型確定拠出年金の規約でiDeCo加入が禁じられている人

原則60歳以降まで引き出せない

原則として60歳になるまでは、掛金や運用益などを引き出すことはできません。

掛金に制限がある

加入者の属性ごとに掛金に制限があり、自営業者は月額6万8000円まで、専業主婦は2万3000円までしか積み立てることができません。

元本割れのリスクがある

iDeCoでは掛け金を運用する金融商品を選べる自由がありますが、その運用のリスクについては自己責任になります。

つまり、元本確保型商品でない投資信託で運用をした場合は元本割れとなるリスクがあり、将来受け取れる年金が少なくなるおそれもあります。

小規模企業共済

国の機関である中小機構が運営する、小規模企業の経営者や役員、個人事業主のための小規模企業共済は、例えば商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員が加入できる退職金制度です。毎月の掛け金は1000円~7万円までの間で、500円単位で自由に設定でき、加入後も増額や減額が可能です。

積み立てた共済金は加入者が退職または廃業した時に、退職金として受け取ることができ、受け取りは一括または分割、もしくは一括と分割の併用が選択できます。自営業者で、仕事を辞める際にまとまったお金を老後資金として準備しておきたい人は、以下に挙げるメリットとデメリットを理解した上で、加入を検討してみると良いでしょう。

主なメリット

掛け金を全額所得控除できる

小規模企業共済の掛け金は、確定申告すれば全額を所得控除することができ、所得税・住民税を低く抑えることができます。

納税額を抑えられる

一時金として受け取ると「退職所得控除」が、年金として受け取ると「公的年金等控除」が適用され、いずれも一定金額までは非課税となります。

貸付制度を利用できる

小規模企業共済の加入者は、掛け金の納付期間に応じた貸付限度額の範囲内(掛金納付月数により掛金の7~9割)で、事業資金(10万円以上2000万円以内)の貸付制度を利用することができます。

主なデメリット

20年未満で解約すると元本割れする

掛金納付月数が、240カ月(20年)未満で任意解約をした場合は、受け取れる共済金が掛金合計額を下回ってしまいます。

12カ月未満で解約すると掛け捨てになるおそれがある

掛金納付月数が12カ月未満の場合は共済金や解約手当金などを受け取ることができず、実質的に掛け捨てとなってしまいます。 このほか、自営業者ができる老後への備えとしては、各金融機関が販売している個人年金保険に加入して公的年金プラスアルファの「自分年金」を用意する、もしくは付加年金制度(公的年金の保険料を上乗せして受取額を増やす制度)に加入するなどの方法が考えられます。金融機関の担当者やファイナンシャルプランナーなどに相談してアドバイスを受けると良いでしょう。

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