家づくりは「窓」にもこだわるのが正解 夏涼しく、光熱費抑制とメリット多数

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帝国データバンクが公表した「東京都の猛暑が家計支出に与える影響調査(2024年)」※によると、2024年夏における東京都の家計支出は、平気最高気温が平年通りだったときと比べて1世帯当たり月額約3100円増加したとのことです。2024年8月からは、政府による電気・ガス代への補助金が再開されたことで光熱費高騰を多少抑えられる部分はあるものの、金利上昇による住宅ローンの支払額増加の懸念などもあり、家計にとって好ましくないニュースが続いています。 その地球温暖化による猛暑はこの先も続くと予想されるため、これからのマイホームでは光熱費を抑える省エネ住宅づくりが必須です。中でも「猛暑の夏をいかに涼しく過ごせるか」は大きなポイントになるでしょう。そこでこの記事では、夏に暑さを感じやすい住宅の特徴をはじめ、光熱費抑制に大きな影響を与える「窓選び」について紹介します。 ※参考:帝国データバンク「東京都の猛暑が家計支出に与える影響調査(2024年)」

01夏に家が暑い主な原因は「建物の構造」や「窓の大きさや向き」など

猛暑日を乗り切る有効な対策としては、エアコンの使用が挙げられます。しかし、住宅の構造によってはエアコンを使用しても効きが悪く、逆に暑くなりやすい住宅があることをみなさんはご存じでしょうか。そのような住宅ではエアコンの設定温度を下げたり、風量を強くしたりしなければ涼しさを感じにくいため、電気代高騰の要因になります。そこで、まずは暑くなりやすい住宅の特徴を紹介します。

家の構造による暑さ

住宅の熱のこもりやすさは、構造によって変わる部分が大きいといえます。例えば、RC造(鉄筋コンクリート造)は木造よりも気密性・断熱性に優れていますが、その分室内にこもった熱が逃げにくいため、室内温度上昇の要因になりやすいでしょう。

最も暑くなる日中の時間帯を留守にしている世帯の場合、エアコンを利用することもないので、建物の中にたくさんの熱をため込んでしまいます。その後、夜になると外気との温度差でため込んだ熱を放出しますが、昼間ため込んだ熱によって室内温度がいつまで経っても下がらない要因となるわけです。

特にRC造のマンションは、「蓄熱性が高く一度建物が暑くなるとなかなか冷めづらい」「戸建てより窓が少ないため、風通しが悪く熱がこもりやすい」といったことが要因で、暑くなりやすい構造だといえます。

また建物の中でも、屋根からの熱が伝わりやすく、暖かい空気がたまりやすい「マンションの最上階」もしくは「木造住宅の2階や3階」や、日光を遮って影をつくる役目をする「軒や庇がないキューブ型の住宅」も室内温度上昇が起こりやすいといわれています。

窓の大きさや向きによる暑さ

室内温度上昇には、窓から入ってくる太陽光の熱も大きく影響しています。明るく開放的なリビングにするために大きな窓を南向きに配置する住宅もありますが、その分だけ日中に強い日差しが入り込むので、涼しくなりにくいことは頭に入れておきましょう。また西向きに設置した窓は、そこから夕方まで日差しが入るため、太陽光による熱量が室内に届く時間が長く、暑くなりやすいといえます。

窓メーカーのYKK APによると外気34.8度の場合、流入する熱の割合は屋根4%、床4%、外壁12%なのに対して、窓や玄関ドアは74%もあるとのことです。以上のことから、涼しい家づくりにおいて「外から入ってくる熱量を減らすために、どのような窓を設置するか」を考えることが重要です。

なお、これまでタワーマンションでは一般的に住戸の向きが南→東→西→北の順番で物件価格が下がることが多かったのですが、夏の猛暑が厳しくなってきた近年では徐々に北向きの物件価格が見直されつつある状況です。この流れからも不動産価格に影響を与えるぐらい、室内の暑さ対策に敏感になっている人が増えていることがわかります。

02涼しい家づくり、断熱性・気密性以上に重要な「日射遮蔽性」

涼しい家をつくるには、外気からの熱を室内に流入させないようにするのがポイントです。そのため、外壁や屋根から入ってくる熱量を軽減する断熱性、室内の涼しい空気が外に逃げないようにする気密性に優れた住宅にすることは重要で、家づくりのポイントに高気密・高断熱を挙げる人も少なくありません。しかし、上述したように室内に入ってくる熱量の約70%は窓からなので、涼しい家を目指すなら窓ガラスを通して外からの日光が入り込んでくるのを遮断する「日射遮蔽」にこだわることも大切です。

日射熱の室内への侵入を抑制することを「日射遮蔽(遮熱)性」と呼びます。日射遮蔽を適切に行うことで快適な室温を保ちやすくなり、エアコンの使用量を抑えられ、光熱費削減につながります。これから日射遮蔽を活用する方法を解説していきますが、それ以外の方法で涼しい家づくりをするためのポイントについては、下記の関連記事で紹介しているので、そちらを参考にしてください。

夏に快適な涼しい家を作る3つのコツ!光熱費の抑制で家計負担を軽減しよう
[ニュース] 2024.09.25

03住まいの日射遮蔽性を高める対策

日射遮蔽性を高める方法としては、主に以下のものがあります。

  • 屋根や外壁に当たる日射を跳ね返す
  • 断熱や換気、通気層によって屋根や外壁から室内に流入する熱量を少なくする
  • 窓や玄関などの開口部の遮熱性を高める

例えば、屋根や外壁に日射を反射しやすい塗料や外装材を使用したり、太陽光パネルを屋根に設置して日陰を作ったりするといった方法も日射遮蔽対策の1つです。特に太陽光パネルは省エネに貢献するうえ、パネルと屋根との間にできる空気層によっても断熱対策の一環となります。

しかし最も重要な対策は、やはり開口部である窓の日射遮蔽性を高めることです。窓の日射遮蔽性を高めるには、日射透過率を小さくしてガラスで吸収された熱を室内に伝わりにくくすることがポイントになります。そこで、次の章では具体的な窓ガラスの選び方や設置する場所などについて解説します。

窓ガラスは「遮熱タイプ」を採用する

遮熱性能の高い窓ガラスとして代表的なのは「複層ガラス」と呼ばれるタイプです。複層ガラスとは複数枚のガラスが重なり合ってつくられた製品で、ガラスとガラスの間に空間をもたせることで断熱効果や結露対策になるメリットがあります。複層ガラスにはいくつかの種類がありますが、一般的に使用されているのは「Low-Eガラス(Low-E複層ガラス)」と呼ばれるガラスです。

Low-Eガラスは日本語で「低放射」という意味を持つ、英語の「Low Emissivity」から名付けられていて、主に「断熱タイプ」と「遮熱タイプ」の2つに大別されます。断熱タイプは「日射取得型」とも呼ばれ、冬の断熱性を重視した製品で、一方の「遮熱タイプ」は「日射遮蔽型」とも呼ばれる夏の遮熱性を重視した製品です。両者の違いはLow-E膜の位置が異なっていることによる「日射を取り入れるか、遮るか」だけで、断熱性能を表す熱貫流率値は同じであり、どちらも室内の熱を逃がさないという点では変わりありません。

では、どちらを選ぶかについてですが、夏に涼しい家づくりを目指すなら、「遮熱タイプ」がおすすめです。なぜなら、遮熱タイプは太陽の日差しである「近赤外線」と、暖房の暖かさの元となる「遠赤外線」の双方を反射・吸収する特性があるからです。その特性のおかげで、高い断熱性と遮熱性を誇っており、冬の寒さ対策と夏場の遮熱対策の双方に効果が期待できます。

ただし、性能が高い分だけコストもかかるので、コストが気になる人はすべての窓に使用するのではなく、一般的に日差しが強い南や西向きの窓だけを遮熱タイプにするなど、部分的な対策だけに留めることも検討してみましょう。

窓の配置は「対角線上」が基本

室内温度や湿度を下げるには、風を多く取り込める窓の配置を考えることも大切です。通風のよい窓の基本的な考えとしては、「住まいの平面に風の入り口と出口をつくる」「窓を対角線上に配置する」が挙げられます。例えば、南側のリビングとつながっている北側のダイニングキッチンにそれぞれ窓を設ければ、南北に風の入り口と出口が2か所できて吹き抜けやすくなり、風通しがよくなります。

また、間取りの対角線上に窓を設置することで、室内全体に空気の通り道ができて空気循環の効率がよくなることも覚えておきましょう。一般的に「東窓は朝日、西窓は夕日」がそれぞれ入り込むので、あまりつけないほうがよいといわれていますが、どうしても東や西に窓をつけなければいけないケースでは極力小さいサイズの窓をつけることで採光を取り入れつつ、室内に入ってくる熱量を抑えることができるはずです。

なお、空気は温度差によって動くので、建物の下部と上部といった高さの違う窓をつけるのも通風対策としては有効です。窓から天窓へ通り抜ける風は、平面的に窓を配置した場合に比べて4倍も風量が強くなるといわれています。特に北側に設置した天窓は南側に比べて暗くなりがちな室内に光を取り入れる効果も期待できるのでおすすめです。

なお、通風のよさについては建物の立地条件も関係します。住宅密集地ではほかの建物に邪魔をされて風通しが悪くなることがあるので、どの位置に窓をつけるか考えるときは、事前に周辺環境を確認しておくこともポイントです。

大開口窓でもOK、ただし窓の外側で日差しをカットする工夫を

上述したように窓から入ってくる熱量はとても大きいので、涼しい家をつくるという観点からは大きな窓を南向きに設置することに懸念を抱く人もいるでしょう。しかし、南向きの窓は採光面に優れ、冬場は直射日光を多く取り入れられるメリットがあるのも事実なので、涼しい家づくりにあたって南向きに大きな窓をつくることが必ずしもNGだというわけではありません。

とはいえ、ある程度の対策をしたうえで設置することをおすすめします。例えば、窓から入ってくる日射をカットするために窓の外側に軒または庇を設置したり、シェードやすだれ、シャッター、雨戸などといった日射遮蔽部材を採用したりする方法です。

真夏の昼の太陽は1年の中で最も高度が高いので、軒や庇の設置によって真上からの日射をカットすることで室内温度上昇を防ぐ効果を期待できます。ただし、あまり深い軒や庇を設置すると冬に太陽光が取り込めずに寒くなってしまう恐れもあるので、その点が心配な人は外付けのルーバーを設置するのも1つの方法です。

ルーバーとは主に玄関や窓などに取り付けられ、羽板をブラインドのように並べた製品のこと。外からの視線や外光を調節する機能を持っています。設置にあたって費用はかかりますが、眺望やプライベートを確保しつつ適度に日光を遮断できるので、南向きに大きな窓が欲しい人は検討してみましょう。

2025年4月~義務化される省エネ基準!「ηAC(イータエーシー)値」にも注目しよう

日本では建築物省エネ法の改正によって、2025年4月からすべての住宅に省エネ基準適合が義務付けられます。省エネ基準では涼しい家づくりにつながるUA値とηAC値(イータエーシー)の基準値を全国8つの地域に分けて規定していて、例えば、東京・千葉のUA値は0.46、ηAC値は2.80が基準です。

UA値とは外皮を介して住宅全体の熱がどれぐらい逃げやすいかを示す数値で、値が小さいほど断熱性に優れた住宅であると判断できます。一方のηAC値は平均日射熱取得率のことで、太陽光の室内への入りやすさを表す指標です。

日射によって取得する熱量を冷房期間で平均し、外建物の表面積で割って算出します。ηAC値も値が小さいほど冷房効果が高くなることを示していますが、あくまでも冷房期を対象とした指数なので、寒冷地での基準はありません。ちなみに寒冷地とは北海道や東北、北陸など積雪期間が年間90日以上あり、年平均気温が10℃以下の地域を指します。

どの地域に住むかによって省エネ設計の考え方は変わるものの、近年は比較的緯度の高い寒冷地でも猛暑日が続くことがあるので、基準がない地域に住む場合でも夏の日射対策をしておくことをおすすめします。

04補助金を活用して夏涼しい家を手に入れよう

窓に日射遮蔽を施すことで、外から室内に入ってくる熱量を軽減できますが、しっかりした対策を取ろうとするほど、コストがかかるのも事実です。しかし、対策によっては各種補助金の対象になることがあるので、上手に活用すれば費用面での負担を減らせるでしょう。そこで、ここからは窓の日射遮蔽対策に活用できる補助金を紹介します。

国土交通省「子育てエコホーム支援事業」

子育てエコホーム支援事業は、物価高騰の影響を受けやすい子育て世帯や若者夫婦世帯の住宅取得を支援するための制度で、新築住宅の建築・購入だけでなく、中古住宅のリフォームにも対応しています。ただし、利用にあたっては子育て世帯が「令和5年4月1日時点で18歳未満の子を有する世帯」、若者夫婦世帯が「令和5年4月1日時点で夫婦のいずれかが39歳以下」などの細かい要件があるので、事前によく確認しておきましょう。

補助額は長期優良住宅で1戸につき100万円、ZEH水準住宅は80万円が上限です。いずれも手続き期間は予算上限に達するまでなので、利用する場合は早めの検討を心掛けてください。なお、合計補助額が5万円未満の場合は原則申請できませんが、次に紹介する「先進的窓リノベ2024事業」と併せて申請する場合にかぎり、補助額が2万円以上あれば申請可能です。

環境省「先進的窓リノベ2024」

先進的窓リノベ2024は既存住宅の断熱窓への改修を促し、省エネ化を推進するための制度です。新築住宅の購入には活用できませんが、中古物件を購入してリフォームする場合は対象となります。補助対象となる工事は外窓交換や内窓設置などがあり、一定の省エネ性能を持った対象製品を用いたリフォームが対象です。

ただし、利用にあたっては戸建て住宅や低層集合住宅といった住宅の種類に加え、窓の性能区分、ガラスのサイズといった要素によって補助額が異なる点に注意してください。例えば、既存サッシをそのまま利用して、複層ガラスに交換する工事の補助金は上限で5万5000円です。

05光熱費の削減できる家づくりは「窓」にもこだわろう

猛暑日が続く夏でも涼しく、光熱費の抑制に貢献する住宅をつくるには、一般的な住宅に比べて窓の断熱性や日射遮蔽性を高める必要があります。当然、高性能な住宅ほど価格は高くなりがちなので、補助金の活用も積極的に検討しましょう。

本文でも紹介した先進的窓リノベ事業は基本的に省エネ性能に優れたグレードの高い窓ほどもらえる補助金も多くなるので、いい商品を選んだほうが光熱費削減につながりやすく、結果的に得をしやすい制度になっています。日本では金利上昇によって住宅ローンの総支払額が増えつつあるので、これから住宅を建てるなら光熱費などの固定費を少しでも削減できる家づくりが必須です。

そのためには、まず「住宅ローンの借入上限額はどれくらいか」や「毎月の返済額はどれくらいまでなら大丈夫か」といった予算をシミュレーションしておくことが大切です。当サイト内には住宅ローン予算作成に役立つ各種シミュレーターがあるので、ぜひ活用してみてください。また、住宅ローン審査が不安な人に向けた「住宅ローン保証審査」、フラット35の申し込みを考えている人のための最短1分ですぐに審査できる「ARUHIの家探し前クイック事前審査」といったサービスも用意しているので、これから住宅ローンの利用を検討している人はぜひ試してみてはいかがでしょうか。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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