【東京23区】首都直下地震の被害想定から読み解く、地震に強いエリアは?資産価値が高い家を選ぼう!
2022年5月25日、東京都は「首都直下地震等による東京の被害想定」を10年ぶりに見直しました。地震の発生確率については「今後30年間で約70%」と依然として高い水準を維持したままです。首都直下地震がいつ起きてもおかしくないことも踏まえ、住宅選びをする際は「地震に強いエリア」を理解しておくことも大切です。そこで今回は、東京23区で住宅を探している方に向けて、東京都による被害想定などのデータを参考に、地震に強いエリアを紹介します。
01「首都直下地震等による東京の被害想定」が10年ぶりに見直し!
東京都防災会議がまとめた報告書では、M7クラスの都心南部直下地震が発生した場合、23区のおよそ6割のエリアが、震度6強を観測するというシミュレーションになりました。具体的には最も大きな被害が想定される冬の夕方に発生した場合、全壊および焼失棟数19万4431棟、死者数6148人、負傷者数9万3435人という予測になっています。
23区のうち、今回のシミュレーションで特に大きな被害を受けると予想されたのが、沖積低地が多い江東区や荒川区などの東部と、谷底低地が多い港区や目黒区、世田谷区などの南西部です
沖積低地とは、主に河川の堆積作用によってできた最も新しい地層のことで、固まっていない泥や砂、石などで構成されています。そのため地盤としてはとても軟弱であり、今回のシミュレーションでは場所によっては、震度7以上の揺れを観測する恐れがあることも指摘されました。
また、谷底状の地形に堆積物が溜まってできた「谷底低地」も沖積低地同様に軟弱な地盤なので、地震が起きたときの揺れが増幅されやすいといえます。ここで紹介した内容はあくまでも東京都のシミュレーションであり、該当エリアのすべてが軟弱地盤というわけではありませんが、これらのエリアで住宅探しをするときは、首都直下地震が発生した場合に被害を受けるリスクが高いことを考慮したほうがよいでしょう。
02地盤が強い東京23区エリア トップ3!「練馬区」「杉並区」「豊島区」がランクイン
先述のとおり、東京都のシミュレーションでは地盤の弱いエリアほど、首都直下地震が起きたときに大きな被害が想定される結果となりました。では反対に、23区内で地盤が強く、地震による被害を受けにくいエリアはどこでしょうか。そこで今回参考になる資料として挙げるのが、地盤ネットが2018年に公表した「東京都市町村 いい地盤ランキング」です。
このランキングによると、23区のトップ3は第1位「練馬区」、第2位「杉並区」、第3位「豊島区」となっています。ここからは、地盤が強いとされる理由と各区の地盤の特徴を解説していくので、住宅購入を考えている方は一緒にチェックしていきましょう。
練馬区
練馬区は「東京都市町村 いい地盤ランキング」で第1位になっただけでなく、東京都の「首都直下地震等による東京の被害想定」でも23区のうち最も揺れにくいエリアという評価を受けています。練馬区の評価がこれほどまでに高いのは、強固な地盤として知られる「武蔵野台地」にあるエリアだからです。
武蔵野台地の表面は、火山灰からなるローム層で厚く覆われています。ローム層はとても粘性の強い土壌で、地震の揺れや沈下、液状化のリスクが低いのが特徴です。東京都が取りまとめている「地震に関する地域危険度測定調査」でも、練馬区のほとんどの地域で建物の倒壊や火災の危険度ランクが1または2(ランク分けは1~5で評価され、1に近いほど被害を受けるリスクが低い)となっています。
また練馬区は、海抜の平均が30~50m程度あるので津波による被害を受けにくく、さらに高低差の少ないなだらかな台地状となっている点も特徴です。地震によるさまざまな被害に強いうえ、起伏の少ない暮らしやすいエリアであることから、23区で最も良い評価を受けています。
杉並区
「東京都市町村 いい地盤ランキング」で第2位にランクインした杉並区もエリアのほとんどが武蔵野台地にあり、地盤の強い地域です。また練馬区と同様、ローム層高台の平坦部分に位置していることから津波被害に遭いにくく、暮らしやすい地形となっています。「地震に関する地域危険度測定調査」を見ても、建物の倒壊や火災の危険度は多くのエリアで1~3程度と評価されており、災害リスクの低い地域であることが分かります。
ただし、杉並区の中でも高円寺や阿佐ヶ谷、荻窪といった人口密度の高い地域は、火災が起きると延焼して被害が大きくなる可能性が高く、災害時活動の難航も予想されているので注意しましょう。また北部の妙正寺川、中部の善福寺川、南部の神田川沿いの近辺は、先述した谷底低地になっていて地盤が弱い場所もあるため、この近辺で住宅を購入したい場合はどのような被害が起こりやすいか、またその程度について慎重に判断する必要があります。
豊島区
豊島区も武蔵野台地の東部に位置しているため地盤が強く、海抜の高い台地上にある土地も多いのが特徴です。「地震に関する地域危険度測定調査」では、ランク1の地域はそれほど多くありませんが、おおむね2~3という評価を受けており、基本的に地震リスクの低いエリアだといえます。
豊島区で注意したいのは、駒込や雑司が谷などのエリアです。豊島区のほとんどは武蔵野台地にありますが、小河川や水路などによって削られてできた大小の谷地も存在します。駒込や雑司が谷といったエリアには谷底低地が点在しており、地盤が弱い場所もあるため気を付けましょう。
03地盤の強いエリアは資産価値が上がる可能性も!
日本の周囲には太平洋プレートやフィリピン海プレートなど、たくさんのプレートが存在しており、世界的に見ても非常に地震の多い国です。近年でも2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震で多くの被害を受けたのは記憶に新しいところであり、近い将来には南海トラフ地震が高い確率で起こるといわれている状況です。また、地球温暖化の影響を受けて局地的な豪雨や大型化した台風による水害も各地で頻発しており、住宅購入にあたって自然災害に強い住宅に住みたいという人も増えています。
実際に先ほどのランキングで1位に輝いた練馬区は、少しでも安全に暮らしたいと考える人が都区部から流入したこともあり人口が毎年増加し、2005年は約68万人だった人口が、2021年には約74万人になりました。さらに不動産価格は需要と供給のバランスで決まるため、人気のあるエリアの物件価格は高くなりがちです。つまり、地震や水害といった自然災害に強いエリアにある住宅を選ぶことで、安心した暮らしを営めるのはもちろん、将来的に売却する際も有利になりやすいといえるのです。マイホームを選ぶ条件は人それぞれですが、さまざまな自然災害リスクが叫ばれる日本においては、利便性だけでなく災害への強さも考慮したほうがよいでしょう。
04人気エリアは物件価格が高いことも!実際に買えるかどうか、シミュレーションで確認してみよう
自然災害に強い住宅は資産価値が高くなりやすいとはいえ、人気のあるエリアはその分だけもともとの物件価格が高いケースが多いでしょう。住宅探しを始めるにあたってエリアを絞ることは大切ですが、購入する物件価格が想定より高いと、返済が困難な状況に陥るかもしれません。そうならないためにも、無理のない返済を続けられるか予算をしっかり決めてから住宅探しを始めることが大切です。
当サイト内には、月々の支払額から予算を試算できる「借入可能額シミュレーター」、金利の違いによる毎月の返済額の比較をしたい方に向いている「毎月の返済額シミュレーター」などのシミュレーターがあります。また、「審査時間はわずか数分」「すべての作業がネット上で完結する」というメリットのある「スゴい速い住宅ローン審査」というサービスも用意しています。
借り入れに不安がある方は、まず各種シミュレーターで大体の返済可能額を把握し、希望の物件が見つかったら、「スゴい速い住宅ローン審査」で実際にその金額が借りられるかどうかを確かめるという流れで進めると、住宅探しがスムーズになるはずです。ぜひ試してみてください。
監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。