住宅取得資金贈与の非課税期限が2023年末までに延長決定!税制改正での変更点を解説
2022年度の税制改正大綱で注目を集めていた(祖父母や両親などの)直系尊属による住宅資金贈与の非課税措置は、期間が2年間延長となった一方で、非課税限度額は縮小されることが決まりました。そこで今回は、改正後の非課税措置のポイントについて整理していきます。
01住宅資金贈与の非課税措置が2年延長
2年間延長された住宅資金贈与の非課税措置がどのような制度なのかを、あらためておさらいしておきましょう。
住宅資金贈与の非課税措置とは
住宅資金贈与の非課税措置は、祖父母や両親などの直系尊属から、住宅の新築または取得、増改築のための費用を贈与された場合で、一定の金額について贈与税が非課税になる制度です。
これまでは、受贈者(贈与を受ける者)は次の要件を満たす必要がありました。
受贈者の要件(2022年度税制改正前)
- 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(贈与者は受贈者の直系尊属)であること
- なお、配偶者の祖父母や両親は直系尊属ではありませんが、養子縁組をしている場合は直系尊属となります。
- 贈与を受けた年の1月1日現在、20歳以上であること
- 贈与を受けた年の合計所得金額が2000万円以下であること
- ただし、取得する住宅の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、合計所得金額の制限が「1000万円以下」とされます。
- 原則として2009年分から2014年分までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと
- 配偶者や親族など特別の関係がある人から取得した住宅でないこと。または、これらの人と請負契約して新築もしくは増改築した住宅でないこと
- 贈与を受けた年の翌年の3月15日までに、贈与された資金の全額を充てて住宅の取得や新築をすること
- 贈与を受けた時点で日本国内に住所を有していること
- 贈与を受けた年の翌年の3月15日までにその住宅に居住すること、または同日後、遅滞なくその住宅に居住することが確実と見込まれること
新築または取得する住宅の要件
- 新築または取得した住宅の登記簿上の床面積が40平方メートル以上240平方メートル以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上が受贈者の居住用であること
- 取得した住宅が次のいずれかに該当すること
- 建築後、使用されたことのない住宅
- 建築後使用されたことのある住宅で、その取得の日以前20年以内(耐火建築物の場合は25年以内)に建築されたもの
増改築する住宅の要件
- 増改築後の住宅の登記簿上の床面積が40平方メートル以上240平方メートル以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上が受贈者の居住用であること
- 増改築等に係る工事が、自己が所有し、かつ居住している住宅に対して行われたものであり、一定の工事に該当することについて、「確認済証の写し」、「検査済証の写し」もしくは「増改築等工事証明書」などの書類により証明されたものであること
- 増改築工事に要した費用が100万円以上であること。また、その費用の2分の1以上が、自己居住用の部分の工事に要したものであること
02税制改正での変更点は?
このように、さまざまな要件が課されている贈与税の非課税特例ですが、2022年度の税制改正で、主に「適用期限」、「非課税限度額」、「中古住宅の要件」、「受贈者の年齢」の4つについて、次の通り見直しが行われました。
適用期限の延長
贈与税の非課税特例の適用期限は2年間延長され、2023年12月31日までとされました。
改正前 | 2021年12月31日 |
改正後 | 2023年12月31日 |
非課税限度額の縮小
非課税枠は改正前の最大1500万円から最大1000万円に縮小、住宅の区分に応じて次の金額が非課税限度額とされました。なお、改正前は住宅取得に係る契約の締結時期に応じて非課税枠が定められていましたが、今回の改正により、契約締結の時期は問われなくなりました。
住宅の種類 | 非課税限度額 |
耐震・省エネまたはバリアフリー住宅 | 1000万円 |
その他の住宅 | 500万円 |
中古住宅の要件を廃止
贈与された資金で中古住宅を購入する場合、改正前は住宅の築年数について要件が課されていましたが、今回の改正で廃止されました。
改正前 | 取得の日以前20年以内(耐火建物は25年以内)に建築されていること |
改正後 | 要件廃止 |
受贈者の年齢を引き下げ
改正前、本特例措置を受けられる受贈者の年齢は、贈与を受けた年の1月1日現在で「20歳以上」とされていましたが、成人年齢の引き下げに伴い、今回の改正で「18歳以上」に引き下げられました。
改正前 | 20歳以上 |
改正後 | 18歳以上 |
なお、今回の改正による新税制は、2022年1月1日以降に受贈した住宅資金にかかる贈与税に適用されることになります。ただし、受贈年齢の引き下げについては、成人年齢が引き下げられる2022年4月1日からの適用となることに注意が必要です。
また、2021年度の税制改正大綱で言及されていた「相続税と贈与税の一体化」について、2022年度の税制改正で具体的な改正が行われるのではないかとの観測もありましたが、実際には2021年度と同じく「本格的な検討を進める」との記載に留まっており、一本化に向けた改正は来年度に持ち越された形となりました。
03住宅購入予算シミュレーターを利用してみよう
祖父母や親から贈与などの援助を受けられる場合、その分、住宅購入予算にも余裕を持たせることができます。とはいえ、援助を当てにして大きな予算を組んでしまうと、購入後の生活が苦しくなってしまうおそれも。無理のない予算を組むために、まずは「住宅購入予算シミュレーター」を使った試算が便利です。収入や家族構成などいくつかの項目を入力するだけで、すぐに適正な予算金額を知ることができますので利用してみてはいかがでしょう。
監修:相山華子
ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。
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