はじめての資産運用
今更?いえ、今こそ始め時なんです!
30代から資産形成を始めるべき理由とは?おすすめの始め方を解説
阿部理恵
CFP®、終活カウンセラー、LABプロファイルインストラクター、FPラウンジ登録FP
資産形成の重要性は理解しつつ、始める時期ややり方に疑問を持つ人も多いと思います。本記事では、30代から始めるべき理由と、その方法についてお答えいたします。
Contents
20代までは不測の事態に備え「貯蓄」が大事。3カ月~1年分の生活費を用意しよう
社会人になって最初に行うべきなのは貯蓄です。日常生活を円滑に送るためのお金と、災害や病気など不測の事態に備える緊急時のためのお金を用意しておくことが必要です。これらのお金は元本が減っては困るものなので、預貯金などの安全な方法、つまり貯蓄として持っていることが望ましいです。
日常生活の資金は毎月の支払いが滞りなく行われるだけの金額を、そして緊急時のためのお金は毎月の生活費の3カ月分~1年分くらい用意しておきたいものです。とは言え、社会人になってすぐの給料はそれほど多くないので、貯蓄に回せるお金もなかなか作れないかもしれません。
ライフイベントを見据えると、30代は資産形成を始めるべきタイミング!
30代になってやっとある程度のお金が貯まり、資産形成用の資金が作れるようになってくるというのが一般的ではないでしょうか。
生きている間に起こる大きな出来事、いわゆるライフイベントを考えると、30代はちょうど結婚、出産、家の購入といった多くのお金のかかるライフイベントが控えているので、資産形成を始めるべきタイミングだと言えるでしょう。
主なライフイベントにかかる費用を下記にまとめました。それぞれまとまったお金が必要なことがわかります。30代のうちから、将来を見据えた資産形成を始めておく必要があることが実感できるのではないでしょうか。
ライフイベント | 費用 | |
---|---|---|
結婚 | 327万1000円※1 | |
出産 | 50万5759円※2 | |
教育 | 982万円※3 | |
住宅購入 | 建売住宅 | 3719万円※4 |
マンション(新築) | 4848万円 | |
老後 | 65歳以上の夫婦の消費支出 | 23万6696円/月※5 |
ゆとりある老後生活費 | 37万9000円/月※6 | |
介護 | 175万円/年※7 |
※2 公益社団法人国民健康保険中央会「出産費用 平成28年度」
※3 幼稚園から高校まで公立、大学だけ私立(文系)の場合
文部科学省「子供の学習費調査(令和3年度)」、「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」
※4 住宅金融支援機構「2022年度フラット35利用者調査」
※5 総務省「家計調査年報(家計収支編)2022年」p.18 参考
生命保険文化センター
※6 生命保険文化センター「『生活保障に関する調査』(2022年度) ゆとりある老後生活費」
※7 厚生労働省「『令和2年度 介護給付費など実態調査の概況』受給者1人当たり費用額」
30代で資産形成を始める場合、次のようなメリットがあります。
- 少額から始められる
- 複利効果を得られる
- 失敗しても取り戻せる時間がたくさんある
- 経験が得られる
少額から始められる
積み立て型商品の場合は30代から始めれば長期間にわたって積み立てられるので、将来のためにまとまったお金を作る場合でも一度に積み立てる額は少なくて済みます。
複利効果を得られる
利息には単利と複利があります。単利が投資元本に対してだけ利息がつくのに対し、複利は元本と元本につく利息の合計に新たに利息がついていくものです。仮に元本が10万円で年利が10%だとすると、単利では、何年たっても毎年の利息は1万円です。
一方、投資信託など複利運用をしているものでは投資元本に利息が組み入れられ、その元本にまた利息がつくので毎年利息が増えていきます。さらにその利息をまた元本に組み入れて運用するため運用期間が長いほど資産が増えていきます。これを複利効果といい、資産形成を始めるのが早ければ早いほど、複利効果の恩恵を大きく受けることができます。
失敗しても取り戻せる時間がたくさんある
投資は元本保証ではないので損失を被ることもありますが、たとえ損失が出たとしても早いうちから投資を始めているとその損失を取り戻せる時間と機会があります。
経験が得られる
投資をしたことがないまま、例えばいきなり退職金で投資を始めようとすると大きな損失を生むこともあります。若いうちからコツコツ投資を始めていると、失敗も含めた投資の経験を重ねるのでさまざまな対応が可能です。こうした経験が資産を守ることにつながります。
30代で資産形成を始める場合、次のようなデメリットがあります。
- 資産形成には十分な資金が必要
- 資元本割れのリスクがある
- 手数料がかかる
- 換金に時間がかかる
資産形成には十分な資金が必要
資産形成のための資金が十分にない場合、家計を切り詰めたり人生を楽しむためのお金を削ったりと、他にしわ寄せが起こるかもしれません。
資元本割れのリスクがある
投資商品は利益を上げるチャンスがある半面、元本割れのリスクもあります。長期で運用したからといって、必ず資産が増えるとは限りません。
手数料がかかる
投資信託や株を売買・保有する場合、手数料がかかります。この手数料が運用利回りを上回れば損失となります。
換金に時間がかかる
預貯金は必要な時にお金をすぐに引き下ろすことができますが、株や投資信託は売却(約定)してから出金できるまでに原則として3営業日かかります。
デメリットはどの年代で資産形成を始めても共通なものなので、早めに資産形成を始めてさまざまな経験を積み、より良い資産形成を目指すことにチャレンジしてはいかがでしょうか。
30代で資産形成を始めるべき理由とは
- 一般的に30代はお金のかかるライフイベントが多く、資産形成を始めるべきタイミングと言われている
- 若いうちから始めておくと、複利効果を得られる他、失敗を取り戻す時間がある、投資の経験を積める、など複数のメリットがある
資産形成をするのは、将来のライフイベントに対応するためのお金が必要だからです。それぞれのライフイベントへの支出が、いつまでに、いくら必要なのかを明確にしておくことが資産形成をしていくためにはとても大切です。
下記の例のような、ライフイベントの一覧表を作り、書き込んでいくことで、目的や目標を「見える化」していきましょう。
(例)ライフイベントとかかる費用一覧
夫 | 妻 | 第一子 | 第二子 | ライフイベント | 費用 | |
---|---|---|---|---|---|---|
2021年 | 35歳 | 33歳 | 2歳 | – | ||
2022年 | 36歳 | 34歳 | 3歳 | – | 第一子幼稚園入園 | ◯◯万円 |
2023年 | 37歳 | 35歳 | 4歳 | 1歳 | 第二子出産 | ◯◯万円 |
2024年 | 38歳 | 36歳 | 5歳 | 2歳 | ||
… | … | … | … | … | … | … |
目的や必要な費用が決まって、それをいつまでに貯めなければいけないかが決まると、どうやって資産形成をすればいいのかが具体的に検討できるようになります。
資金を使う時期を、5年以内、およそ10年先、遠い将来という場合に分けてみて、どういった金融商品を利用すればよいかを考えてみましょう。
資金を使う時期が5年以内(出産や車、家の購入など)
短期間で資金を使う場合、引き出しが容易な投資商品がオススメ
比較的短い間に現金が必要になることを想定すると、引き出しが容易なのは積立定期預金や財形貯蓄などの貯蓄商品ですが、投資商品ではNISAのつみたて投資枠を利用するという方法があります。
NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があり、つみたて投資枠なら年間120万円までの非課税投資が可能です。非課税の対象となるのは、購入した投資商品から得られる売却益や分配金ですが、永久に非課税で運用できるほか、最大で1800万円までを購入できます。ただし、つみたて投資枠で購入できるのは、長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託に限られる点に注意しておきましょう。
また、「成長投資枠」では年間240万円までの非課税投資枠が設けられており、つみたて投資枠と同様に永久に非課税で運用が可能です。成長投資枠で購入できるのは、上場株式や投資信託などで、つみたて投資枠と併用して購入が可能です。ただし、その際の非課税保有限度額は1200万円までになります。
つまり、NISAでは最大1800万円までの非課税投資枠が用意されていますが、そのうち成長投資枠が使えるのは1200万円までということです。
資金を使う時期が遠い将来の場合(老後資金など)
老後資金など、将来に向けて準備するための金融商品には「確定拠出年金」や、上記でも紹介したNISAがあります。
確定拠出年金
確定拠出年金には勤務先で加入する企業型確定拠出年金(企業型DC)と、個人で加入するiDeCo(=イデコ、個人型確定拠出年金)があり、いずれも節税効果が高いという特長があります。
確定拠出年金は定期預金、保険、投資信託など幅広い商品から運用対象を選ぶことができます。加入者の運用の成果によって将来の年金給付額を増やすことができるだけでなく、さまざまな税制優遇を受けることができます。将来に向けた資産形成を目的とした制度なので、原則として60歳まで資金を引き出すことができないことに注意しておきましょう。なお、企業型DCに加入している会社員はiDeCoへの加入に条件があるので、勤務先企業の担当者に確認してください。
NISA(つみたて投資枠)
NISA(つみたて投資枠)は前述の通り、いつでも売却可能なため途中で売却して他の目的のために使うことも可能ですが、複利効果が期待できるので老後資金用として長期間運用することを前提とすると良いでしょう。
30代向け、資産形成の始め方
- まずは、ライフイベントの一覧表を作り、目的を明確化する
- 資産形成の方法は多岐に渡るため、目的や資金の利用時期に応じて金融商品を検討する