はじめての資産運用
今までのNISAとは何が違うの?
NISAの非課税期間はいつまで?2024年開始「新NISA」の変更点とともに解説!
大林香世
CFP®・1級FP技能士
期間限定の制度として開始されたNISA。2024年以降は一部で制度変更があります。何が変わって何が継続するのか確認しておきましょう。
NISAとは少額投資者向けの制度で、通常20.315%の税金が非課税になる
株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対しては、通常、20.315%の税金がかかります。それに対してNISAは、「NISA口座(非課税口座)」内で一定金額の範囲内の元本を投資した場合に、対象となる金融商品から得られる利益や配当、分配金等が非課税となる制度です。
現行のNISA制度の投資可能期間
- 一般NISA
- 2023年まで。2024年以降は新NISAとして2028年まで継続
- つみたてNISA
- 2042年まで
- ジュニアNISA
- 2023年まで
現在は下表のように3つのNISA制度(一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISA)があります。現在の制度が継続するのは、一般NISA、ジュニアNISAは2023年まで。2024年以降は、一般NISAは新NISAへと制度を変えて2028年まで継続し、ジュニアNISAは2023年12月で終了することが決まっています。つみたてNISAは、制度はそのままに、期限が2042年まで延長されることが決まっています。
3つのNISA
一般NISA | つみたてNISA | ジュニアNISA | |
利用できる人 | 口座開設する年の1月1日現在で)日本に住む20歳以上の人 | 口座開設する年の1月1日現在で)日本に住む20歳以上の人 | 口座開設する年の1月1日現在で)日本に住む0~19歳の人 (運用管理者は両親・祖父母等) |
非課税対象 | 株式・投資信託等への投資から得られる配当金・分配金や譲渡益 | 一定の投資信託から得られる分配金や譲渡益 | 株式・投資信託等への投資から得られる配当金・分配金や譲渡益 |
非課税投資枠 | 新規投資額で毎年120万円が上限 | 新規投資額で毎年40万円が上限 | 新規投資額で毎年80万円が上限 |
非課税期間 | 最長5年間 ※1 | 最長20年間 | 最長5年間 ※1 |
投資可能期間 (2024年以降) | 2023年まで(⇒新NISAに制度変更して2028年まで) | 2037年まで(⇒2042年まで) | 2023年まで ※2(⇒2024年以降は制度終了) |
払出し・売却 | いつでも可能 | いつでも可能 | 18歳までは払出し制限あり ※3 |
※1 期間終了後、新たな非課税投資枠への移管(ロールオーバー)による継続保有が可能
※2 2023年12月末の制度終了時点で20歳になっていない場合は、当初の非課税期間(5年間)満了後も、20歳になるまで引き続き非課税で保有できる。
※3 3月31日時点で18歳である年の前年12月31日までの間は、原則として払出しができない。ただし、災害等やむを得ない場合には、非課税での払出しが可能。
現行のNISA、期間はいつまで?
- 一般NISA、ジュニアNISAは2023年まで
- 2024年以降は、一般NISAは新NISAへと制度を変えて2028年まで継続し、ジュニアNISAは2023年12月で終了
- つみたてNISAは、制度はそのままに、期限が2042年まで延長
非課税期間終了後の3つの選択肢
- 非課税期間終了前に売却する
- 特定口座や一般口座などの課税口座に移管する
- 翌年の非課税枠に移管する(ロールオーバー)
最長5年間の非課税期間終了が迫った時期の、一般NISA口座で運用していた株式や投資信託などの金融商品の行き先には「非課税期間終了前に売却する」「特定口座や一般口座などの課税口座に移管する」「翌年の非課税枠に移管する」という3つの選択肢があります。
取得時よりも価格が上がっていて、非課税期間内に売却した場合には、売却益は非課税になります。ただし、取得価格よりも値下がりしていて低い価格で売却する場合も、NISA口座内では売買損失はないものとされるので、特定口座や一般口座で保有する他の株式等の配当金や売買益等との損益通算はできません。
同じ金融機関に特定口座が開設されている場合には、一般NISA口座で運用してきた金融商品は、何も手続きせずに非課税期間の終了を迎えると、特定口座に移されます(別途届け出れば、一般口座に移管することもできます)。特定口座も一般口座も、課税口座なので、その後受け取る分配金や配当金、売却した場合の利益等については課税されることになります。
NISA口座から課税口座に移管する際の金融商品の取得価格は非課税期間終了時の価格になる点に注意!
NISA口座から課税口座に移管する際の金融商品の取得価格は、NISA口座で運用を始めたときの取得価額ではなく、非課税期間終了時の価格に変更されます。したがって、NISA口座内での運用期間中に値上がりしていたか、値下がりしていたかによって取得価格が変わり、課税対象となる金額が変わってきます。
値下がりしている場合
値下がりしていた場合には、課税される金額が大きくなる場合があるので注意
たとえば、NISA口座で株式を100万円分購入し、5年後の非課税期間終了時には80万円に値下がりしていたとします。この時点で、特定口座に移した場合、取得価格は80万円に変更されます。その後、特定口座内で90万円になった時点で売却すると、利益の10万円(=90万円-80万円)に課税されます。NISA口座で運用を始めた際の取得価格は100万円なので、実際には10万円の損失を被っているのですが、課税対象となってしまいます。
もし、はじめから特定口座で同じ銘柄で運用していたとすると、100万円で購入して90万円で売却したのですから、10万円の損失ということで、課税対象にはなりません。NISA口座から特定口座や一般口座に移管する際には、取得価格が変更されることに注意しましょう。
非課税期間が終了するまでの、金融機関が定める期限内に手続きすれば、NISA口座で翌年の非課税投資枠120万円を利用(ロールオーバー)し、非課税のまま運用を続けることもできます。さらに5年間非課税で運用できることになるので、合計最大10年間非課税で運用可能となるわけです。
非課税期間終了時に値上がりしていて120万円を超えていた場合も、超えた金額も含めてロールオーバーできます。ロールオーバーできる金額に限りはありません。
ただし、ロールオーバーした額分だけ翌年の非課税投資枠を使うことになるので、非課税枠内で新規に投資できる金額は少なくなります。120万円以上をロールオーバーしたら、非課税枠を使い切ることになるので、新規の投資はできなくなります。
60万円をロールオーバーした場合
一般NISAの非課税期間終了後の選択肢
- 「非課税期間終了前に売却する」「特定口座や一般口座などの課税口座に移管する」「翌年の非課税枠に移管する」の3つの選択肢がある
開始当初は期間限定の制度だったNISAが2020年の税制改正で見直された
2014年からスタートした、一定額までの投資額から得られた利益が非課税になるNISA(一般NISA)制度は、国民の多くが「投資」することにより、経済成長に必要な成長資金を供給し、かつ、「家計の安定的な資産形成」を目指したものでした。さらに2018年には「家計の安定的な資産形成の支援」により目的を絞った「つみたてNISA」も導入されました。
しかし、NISAは期間限定の制度であったため、2023年の制度終了後が懸念されていました。そこで、2020年の税制改正では、経済成長に必要な成長資金の供給を促すとともに、「人生100年時代」にふさわしい「家計の安定的な資産形成」を目指し、NISA制度全体が見直されることになりました。
少額からの積立・分散投資を促進する方向で制度が見直され、口座開設可能期間が延長に
2024年から始まる新制度では、少額からの積立・分散投資を促進する方向で制度が見直され、口座開設可能期間が延長されることになりました。一般NISAから移行する「新NISA」は2階建てで、1階部分はつみたてNISAと同様のしくみになっており、「家計の安定的な資産形成を支援する」ために、積立・分散投資を促進する観点が強くなっています。つみたてNISAも制度はそのままに口座開設期間の5年間の延長が決まっています。
なお、ジュニアNISAは、利用実績が乏しいことから延長されないことになっています。ただし、ジュニアNISAは18歳まで引き出し制限が設けられていますが、2024年以降は、ジュニアNISA口座で保有している資産の全額について、18歳になる以前でも、非課税で払い出しを行うことが可能になる予定です。
新NISAは2階建て構造!
では、2024年からはじまる新NISAとはどんなものか、見てみましょう。
新NISAの特徴は「2階建て」構造になっていることです。1階部分はつみたてNISAと同様で、運用商品は一定の積立・長期分散投資に適した投資信託のみ。年間の投資上限額は20万円です。
2階部分は現在の一般NISAに近いもので、上場株式や投資信託での運用が可能です。ただし、2階部分でも、レバレッジを効かせた投資信託などのハイリスクな金融商品は除外されることになっています。2階部分の年間投資上限額(非課税枠)は102万円なので、1階部分と合わせると新NISAの非課税枠非課税枠は122万円であり、現在の一般NISAの非課税枠(120万円)よりも2万円多くなります。
原則として、2階の非課税枠を利用するためには、1階部分で積立投資をする必要があります。
ただし、例外として、NISA口座を開設していた人や投資経験者が2階で上場株式のみに投資する場合は、1階での積立投資をしなくても、2階部分のみで新NISAを利用できます。
新NISAの非課税期間は1階も2階も5年間ですが、1階部分については非課税期間終了後には、つみたてNISAへの移行することが可能とされています。つみたてNISAの非課税期間は20年なので、最大25年間、非課税で積立投資ができることになります。
つみたてNISAは、制度は変わらず、口座開設期間が5年間延長されることが決まっています。なお、新・NISAとつみたてNISAは同時に利用することはできず、いずれかを選択して利用することになります。
NISA改正のイメージ
新NISA(2024年から5年間) | つみたてNISA(5年間延長) | |
年間の投資上限額 | 2階102万円 1階20万円※原則として、2階の非課税枠を利用するためには1階での積立投資を行う必要がある。 | 40万円 |
非課税期間 | 2階5年間 1階5年間(終了後は「つみたてNISA」への移行が可能) | 令和19年(2037年まで)⇒令和24年(2042年)まで(5年間延長) |
口座開設可能期間 | 令和5年(2023年まで)⇒令和10年(2028年)まで(5年間措置) | 20年間 |
投資対象商品 | 2階上場株式・公募株式信託等(注)1階つみたてNISAと同様(積立・分散投資に適した一定の公募株式投資信託等) | 積立・分散投資に適した一定の公募株式投資信託等 |
(注)レバレッジを効かせている投資信託、及び上場株式のうち整理銘柄・監理銘柄を投資対象から除外。
一般NISAから新NISAへのロールオーバー
2024年からの制度変更にあたり、5年間の非課税期間を終了する際のロールオーバーについても確認しておきましょう。
一般NISAから新NISAにロールオーバーする場合を3つのパターンに分けて確認します。
※「おむすび stock 一般NISAから新NISAへのロールオーバーの3つのパターン」より引用
現在のNISA制度は2023年で終了するため、2018年に一般NISAで購入した商品は、2023年の一般NISA口座にロールオーバーできますが、2019年以降に一般NISAで購入した商品は一般NISAへのロールオーバーはできません。
2019年以降に一般NISAで購入した商品は、新NISAへロールオーバーが可能です。一般NISA同士でロールオーバーする場合と同様に、新NISAにロールオーバーする場合も、対象となる金融商品の取得価格は、一般NISAの非課税期間終了時の金額に変更されます。
新NISAの非課税投資枠は、1階20万円、2階102万円の2階建てとなっていますが、一般NISAからロールオーバーする場合、2階部分から埋まることになっています。ロールオーバーする金額が102万円を超えると、1階部分も埋まります。1階・2階の合計122万円を超える金額であっても、一般NISAで購入した金融商品は、全額を新NISAにロールオーバーすることができます。このように、2024年からのNISA制度は、新NISAとつみたてNISAの2本建てになり、家計安定のための長期のつみたて投資の比重が高まったものになります。現在のNISA制度からロールオーバーもできるので、資産運用に、延長された非課税期間を活用していきたいですね。
2024年以降に「新NISA」へ移行する背景
- 「家計の安定的な資産形成を支援する」ために、積立・分散投資を促進する狙いがある
- 新NISA制度は2階建て構造
- 現在のNISA制度からロールオーバーもできるので、資産運用に、延長された非課税期間を活用できる
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