はじめての資産運用
NISAを積み立てるとなぜいいの?
つみたてNISAで安定した資産形成が可能?基礎知識から始める準備まで幅広く解説
豊田眞弓
FPラウンジ代表
つみたてNISAのしくみやメリット・デメリット、どんな人に向くのか、始める方法などについて解説します。
NISAは少額で投資を行う人のための非課税制度で、投資促進のために2014年にスタートしたものです。NISA口座内で購入した株式や投資信託を売却したときに得られる利益(譲渡益)や配当金には通常20.315%の税金がかかりますが、それが非課税で済むのが特徴です。NISAには一般NISAとつみたてNISA、ジュニアNISAの3種類がありますが、ここでは2018年1月にスタートしたつみたてNISAに限定して解説します。
年間40万円まで投資可能で非課税期間は20年!最大800万円分の非課税投資枠があります。
つみたてNISAは長期の積立投資を対象とする非課税制度です。新規の投資額は年間40万円までで、非課税期間は20年のため、最大で800万円までの元本を投資することができ、その配当や売買益が非課税になります。
日本在住の20歳以上の人(2023年1月1日より18歳以上の人)が利用できますが、一般NISAとつみたてNISAのいずれか1口座しか開くことはできません。
投資できる金融商品は、投資信託、REIT(不動産投資信託)等です。ETF(上場投資信託)も可能ですが、ただし、商品はかなり限定されており、取り扱う証券会社も限られています。一般NISAと異なり、株式は買えず、投資の方法も積立投資に限られています。また、一般NISAでは、非課税投資期間を満了した株式や投資信託を、翌年の非課税投資枠に移管する「ロールオーバー」が可能ですが、つみたてNISAではできません。
つみたてNISAの概要
項目 | 概要 |
つみたてNISA口座を開ける人 | 日本在住の20歳以上の人※(口座を開設する年の1月1日時点) |
非課税期間 | 最長20年 |
投資額 | 新規投資額年間40万円まで(20年間で最大800万円) |
投資対象 | 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託、REIT、ETF |
投資可能期間 | 2037年12月末まで |
投資手法 | 積立投資 |
金融機関 | 変更可能(1年ごと) |
※令和元年度税制改正により2023年1月1日以降は「18歳以上の人」になります。
投資のリスク軽減方法には、①資産を分散する、②投資するタイミングを分散する(積立)、③長期のスタンスで行う、という3つがあります。つみたてNISAはそれらがすべてそろった投資法で、しかも収益が非課税になることから、ビギナーに向くとされています。
つみたてNISA口座で運用している商品はいつでも売却することができるため、結婚資金や教育資金、住宅取得資金、車の買い替え資金、老後資金などさまざまな目的で積立投資を行うことができます。ただし、あくまでも投資であり、価格変動リスクがあることから、3年超運用できるなど一定期間以上使用する予定が無い資金に限定することは、リスクマネジメントの視点からも重要です。
資産を分散する |
複数の異なる金融資産に分散する 資産を分散することで、価格の下落の際に大きな損失を防ぐ。投資対象商品や投資対象国を分散させる |
投資するタイミングを分散する |
時間を分散する 一度に資金を投入したり引き上げたりせず、タイミングを分散することで購入単価を平準化できる |
長期のスタンスで投資する |
長期間保有する 値動きの幅が縮まり、収益を安定化できる |
つみたてNISAで投資できる投資信託は、金融庁の基準に合う長期の積立・分散投資に適した投資信託に限られています。具体的には以下の条件を満たす商品です。
長期の積立・分散投資に適した投資信託の要件
・販売手数料はゼロ(ノーロード) ・信託報酬は一定水準以下(例:国内株のインデックス投信の場合0.5%以下)に限定 ・顧客一人ひとりに対して、その顧客が過去1年間に負担した信託報酬の概算金額を通知すること ・信託契約期間が無期限または20年以上であること ・分配頻度が毎月でないこと ・ヘッジ目的の場合等を除き、デリバティブ取引による運用を行っていないこと |
最低投資額は証券会社によっては、「1000円以上」から、または「100円以上」から積立投資が可能なところもあります。
つみたてNISAとは
- 3種類ある少額投資者向け非課税制度(NISA)の内のひとつ
- 年間40万円まで投資可能で非課税期間は20年!最大800万円分の非課税投資枠がある
- あらかじめ投資リスクが軽減されていて、金融庁が認めた投資信託から選ぶことができるので初心者でも始めやすい
- 投資ビギナーの人
- 毎月、積立方式で投資をしたい人
- 収入から投資に回せる資金がそれほど多くない人
- 投資信託の積立で投資を行いたい人
- 1度設定したら時々のチェックだけであまり気にしないで暮らしたい人
一般NISAが年間120万円までであるのに比べ、つみたてNISAは年間40万円までと少ないため、これから時間をかけてコツコツと投資をして資産形成をしていきたい人に向いているといえます。
また、投資信託は金融庁が指定した基準に合う商品に限られ、選択肢は決して多くないのですが、「たくさんあっても選べない」という人にはむしろ向くといえるかもしれません。
つみたてNISAはこんな人におすすめ
- 投資ビギナーでこれからコツコツ資産形成をしていきたい人におすすめ
- 投資対象が選びやすいため、金融商品の理解に難しさを感じている人にも向いている
つみたてNISAのメリットを整理してみましょう。
- 年間40万円までの投資元本に対する運用益や配当が非課税
- 金融庁の基準に合うローコストの長期投資商品に絞られている
- ドル・コスト平均法で平均投資単価を抑えられる可能性がある
- 積立投資のため、1度設定したら自動で投資ができる
- 少額でも始められる
それぞれを簡単に見ておきましょう。すでに解説してきたものも含まれます。
①年間40万円までの投資元本に対する運用益や配当が非課税
つみたてNISAの口座で投資をした分は、運用益や配当が20年間非課税になります。本来は20.315%の税金がかかるので、課税口座で投資をした場合は、10万円の利益が出ても税金を差し引いた後の手残りは7万9685円になってしまいますが、つみたてNISA口座であれば10万円がそのまま手元に残ります。これは大きなメリットです。
②金融庁の基準に合うローコストの長期投資商品に絞られている
つみたてNISAで投資できる商品は、金融庁の基準に合う投資信託やREIT、ETFに限られます。ローコストで長期投資に向く商品に限定されているため、商品選びで大きな失敗をすることはないと考えられます。
③ドル・コスト平均法により平均単価が抑えられる可能性も
積立投資をすることで、下記の図のように価格が高いときは少なく、低いときは多く買うことができるため、平均単価が抑えられる可能性があります。これは、「ドル・コスト平均法」と呼ばれる手法で、長期の資産形成に向いていると言われています。
④積立投資のため、1度設定したら自動で投資ができる
つみたてNISAは設定した日に自動で投資を行うので、値動きなどを追って買うタイミングを見計らう労力は必要ありません。
⑤少額でも始められる
投資用の資金がなくても、毎月の収入から3000円でも5000円でも積立投資が可能です。年間40万円までの範囲であれば、少額で始められるのもメリットと言えます。
一方、つみたてNISAのデメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。
- 課税口座との損益通算や繰越控除ができない
- 年間の投資元本が40万円までに限られる
- 投資できる商品が限定されている
- 金融機関の変更は時間がかかる
①課税口座との損益通算や繰越控除ができない
NISA口座以外でも投資する人にとってのデメリットです。
一般NISAにも共通するデメリットですが、株式や投資信託の売買や配当に関して、課税口座内であれば、一方で損失が出ても、他の売買益や配当と損益通算ができます。仮に、▲20万円の売買損が出ても、ほかに20万円の売買益があったときは、相殺されて課税は0円となります。
しかし、つみたてNISA口座と課税口座間ではこれができません。つみたてNISAで▲20万円の損が出ても、課税口座の20万円と損益通算ができないことから、20万円に対して課税されます。
また、その年に出た損失を3年間繰り越して(要確定申告)、その後の運用益から控除する繰越控除も、つみたてNISAは利用できません。
②年間の投資元本が40万円までに限られる
つみたてNISAは年間40万円までの投資元本の積立投資から得られる配当や売買益が非課税になるという制度のため、月33,333円までの積立投資しかできません。たとえば、月50,000円の積立投資をしたい場合は、一部は課税口座での扱いになってしまいます。
③投資できる商品が限定されている
つみたてNISAで購入できるのは、前述の金融庁の基準をクリアした投資信託等です。金融機関によって本数は異なりますが、商品は限定されています。対象商品でないものをつみたてNISAの枠内で運用することはできません。
④金融機関の変更は時間がかかる
これも一般NISAにも共通するデメリットですが、金融機関の変更には一定の時間がかかります。その年に投資をしていなければ金融機関を変更することも可能ですが、元の金融機関に申請して「勘定廃止通知書」を受け取り、変更先の金融機関に提出をする必要があります。通知書の発行も、別の金融機関でつみたてNISAの口座を開くにも一定の日数がかかります。
つみたてNISAのメリット・デメリット
- つみたてNISAは、投資初心者にとってはメリットが多く、投資経験者にとってはデメリット(制限)が多い制度
- メリットとデメリットを理解して始めることが重要
日本在住で20歳以上なら誰でも始められる!(※)
つみたてNISAの口座を開設できる人は、その年の1月1日時点で20歳以上の日本在住の人です(※)。海外転勤などやむを得ない事情で出国し非居住者となる場合、手続を行えば、運用中のつみたてNISA口座の資産については新たな購入はできないものの、非課税での運用は続けられます。
※令和元年度税制改正により2023年1月1日以降は「18歳以上の人」になります。
1.金融機関で専用口座開設
つみたてNISAの口座を開設するには、まずは、証券会社であれば証券口座、銀行であれば投資信託口座を開設する必要があります。その上で、つみたてNISA口座開設の手続を行います(手続きは同時に行う場合もあります)。
2.申込書の取り寄せ
つみたてNISA口座開設のための申請書類を取り寄せます。
3.必要書類の返送
申請書類に必要事項を記入し、マイナンバー記載書類や本人確認書類と一緒に提出します。
4.税務署による申請内容の確認
金融機関が税務署に申請し確認が取れれば、つみたてNISAの口座が開設できます。
5.口座開設通知の到着
税務署で確認の後にNISA口座を開くときは、取引開始まで2~3週間かかる場合があります。
6.運用開始
口座が開設できれば、購入する投資信託や月々の投資額を決めて運用を開始できます。
金融機関への申請方法は、窓口での手続きのほか、郵送やオンライン申請などもあります。利用する金融機関で確認しましょう。
つみたてNISAの始め方
- つみたてNISAは、日本在住の20歳以上の方であれば誰でも始められる
- 金融機関を決めたら、案内に沿って手続きを進めればOK
- 郵送やオンラインで申請を完結できる金融機関もある
NISA口座は1人1口座ですので、つみたてNISAを利用する場合、一般NISAとの併用はできません。当然ながら、他の金融機関でも開けません。1年ごとに、金融機関の変更は可能です。
非課税枠の残りを翌年以降に繰り越しできない
年間40万円の非課税枠は、その年に使用する枠であり、翌年に繰り越すことはできません。40万円中20万円しか投資しなかった場合でも、翌年のつみたてNISA口座の非課税枠は40万円です。
損失の繰り越しはできない
デメリットにも入っていましたが、課税口座であれば、投資信託等の損失は、確定申告をすることで3年間繰り越し、翌年以降の売買益から控除できる繰越控除を利用できますが、つみたてNISAではできません。一般NISAでも同じです。
つみたてNISA口座で行う投資については、確定申告の必要はありません。口座開設時に税務署に非課税口座の承認を得ているからです。
つみたてNISAの注意点
- NISAは1人1口座のため一般NISAとの併用は不可
- 非課税枠や損失の繰り越しもできない点に注意
- NISA口座では確定申告不要
つみたてNISAの期間が延長!
- 期間延長により、2022年1月からつみたてNISAを始めれば最長の20年間を非課税投資期間として活用できる
- 恒久的な制度となるかどうかは未定であり、今後の動向に注視が必要
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