令和5年の路線価上昇率、北海道が全国1位!再開発、半導体会社の影響か

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2023年7月3日、国税庁より令和5年の路線価が公表されました。路線価の全国平均は2年連続の上昇となり、全体的にコロナ禍からの回復傾向が顕著に現れています。しかし都道府県別に見ると、平均路線価が前年を上回ったのは25都道府県であり、地域によって回復傾向に差が出る結果となりました。 都道府県別の上昇率で全国首位となったのは北海道です。上昇率は6.8%にもなり、続く福岡県(4.5%)・宮城県(4.4%)に2%以上の差をつける大きな上がり幅でした。北海道は前年の上昇率も4.0%となっており、2年連続で全都道府県トップの上昇率を記録しています。 この記事では、令和5年の路線価から見る北海道の地価上昇要因を詳しく解説するとともに、反対に地価が下がったエリアの要因についても説明していきます。

01コロナ禍からの回復が顕著に現れた令和5年の路線価

北海道について見ていく前に、まずは令和5年路線価における全国の傾向を確認していきましょう。

2023年7月3日に公表された令和5年路線価では、全国約31万6000地点の調査対象における平均価格が前年比1.5%上昇。全国平均で2年連続の上昇となり、都道府県庁所在地の最高路線価は29都市で上昇しました。上昇率がプラスとなった都市は前年の15都市から倍近くに増え、札幌市・さいたま市・福井市・奈良市・岡山市では5%を超える高い上昇率を記録しています。

このように全国規模で地価が上昇基調にある要因としては、観光目的の訪日外国人客受け入れの再開や出入国制限の緩和が実施されたこと、イベントや飲食店の各種制限撤廃により観光地や商業地の勢いが回復しつつあることなどが挙げられます。コロナ禍で低迷気味だった経済活動が前年以上に活発化し、地価の回復傾向もより顕著になっているのです。

都道府県別の平均路線価は25都道府県で前年比プラスとなった一方、20県で前年比マイナス、2県で横ばいとなりました。全国規模での回復傾向といいつつ、地域差も鮮明になっています。

02路線価上昇率、全国首位の北海道!その要因とは?

全国的に地価の回復傾向が鮮明になった令和5年路線価において、他を大きく引き離して上昇率全国首位となったのが北海道です。2年連続で上昇率トップとなっていますが、背景には大きく2つの要因があると考えられます。

1つ目は、札幌市の札幌駅周辺や副都心エリアにおける大規模再開発が進められていること。2つ目は、新千歳空港があることでも知られる千歳市に国産半導体新会社「Rapidus(ラピダス)」の工場建設が予定されていることです。

以下では、2つの要因について詳しく解説していきます。

札幌駅周辺と副都心「新さっぽろ」における大規模再開発

北海道における地価上昇の1つ目の要因は、札幌駅周辺や副都心「新さっぽろ」において進む複数の大規模再開発です。

現在、新函館北斗まで開通している北海道新幹線は、2030年度末に札幌まで延伸開業予定。これを見据え、札幌駅前に道内一となる高さ約245mの高層ビルが建築されるなど、札幌駅や大通公園周辺の中心市街地で大規模な再開発事業がラッシュを迎えています。

道内で路線価が最も高かった地点は、JR札幌駅南口併設の大規模複合施設「ステラプレイス」前(中央区北5条西3丁目)で1平方メートルあたり668万円でした。上昇率は前年比8.4%、同地点が道内最高価格となるのは18年連続です。

道内で路線価の上昇率が最も高かったのはJR新札幌駅前の「新札幌駅前通り」(厚別区厚別中央2条5丁目)で、前年比14.3%増の大幅上昇となりました。路線価は1平方メートルあたり48万円です。これは、札幌市の副都心である当エリアにおいて進む「新さっぽろ駅周辺地区大規模複合開発プロジェクト」が背景にあると考えられます。

札幌圏内を中心に、再開発以外の宅地・マンションやオフィスの需要も旺盛です。札幌市の郊外や周辺自治体でも住宅購入の動きが見られ、周辺エリアも含めて地価が上昇しています。

なかでも、札幌圏に位置する北広島市共栄町1丁目は、2023年3月公表の地価公示において住宅地の地価上昇率全国1位となりました。北広島市はプロ野球・北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールド」の所在地であり、新たな雇用創出や人口増が見込まれることから大きく地価が上昇しています。

上記のとおり、札幌圏内での大幅な地価上昇が道内全体の平均地価を押し上げる形となりました。

千歳市に国内先端半導体「Rapidus(ラピダス)」の工場建設

北海道の地価上昇を支えるもう1つの要因として考えられるのが、千歳市における国難船体半導体工場の建設決定です。

札幌圏内での大幅な地価上昇が見られると紹介しましたが、とりわけ大きな上昇を見せているのが千歳市。2023年2月、半導体メーカー「Rapidus(ラピダス)」が最先端半導体工場の建設予定地として千歳市を選定したことが大きく影響しています。

Rapidusは国内主要企業8社の支援により2022年に設立された半導体メーカーで、先端半導体の国産化を目標としている企業です。千歳工場は2023年9月着工、2025年1月の完成を見込んでいます。

新工場建設にともない、路線価の市内最高地点であるJR千歳駅前の地価は前年比18.8%と大きな上昇となり、1平方メートルあたり8万2000円でした。

新千歳空港が立地し、道内有数の貿易港・苫小牧港にも近い千歳市では、以前から企業誘致を積極的に進めてきました。その甲斐もあって人口は増加傾向にあり、住宅需要も高まりを見せています。千歳市はハウスメーカーなどに市有地を売却し、大型分譲地を増やすといった取り組みもおこなっています。

工場建設の決定前から企業誘致を進めてきた千歳市では、Rapidus新工場建設を受け、今後さらに住宅需要が高まることが予想されています。

03令和5年の路線価が、昨年を下回ったエリアも!

令和5年の路線価は、北海道をはじめ、商業地や観光客が多く訪れるようなエリアでコロナ禍からの回復基調が顕著となりました。一方、前年から路線価がマイナスとなった県も20あります。

都道府県別の平均下落率で見ると、全国ワースト1位となったのは和歌山県でマイナス1.2%。続いて、福井県のマイナス1.0%、愛媛県のマイナス0.9%となっています。和歌山県の平均路線価が前年比で下落となるのは実に31年連続です。

県内の最高路線価を記録した地点は、JR和歌山駅前(和歌山市友田町5丁目)で1平方メートルあたり36万円でした。同地点が県内最高価格となるのは27年連続です。

2020年に和歌山市街地再開発の象徴ともいえる、高さ約81mの高層ビルを含む複合再開発が完成しています。市街地の繁華性が向上したことにより、安定的な商業・住宅需要が見込めるため、路線価は横ばいとなりました。

和歌山市街地の路線価が下げ止まっている一方、下落が続いているエリアもあります。下落幅が最大となったのは、県北西部に位置する海南市を中心とするエリアです。

海南市は、紀伊水道を望む沿岸部で海の幸に恵まれるなど豊かな自然環境を誇る一方、将来想定される南海トラフの大地震による津波被害が懸念されています。少子高齢化の影響による人口減少にも歯止めがかからず、2023年の路線価上昇率はマイナス2.7%と下落傾向が止まりません。

コロナ禍の行動制限が撤廃されて観光客を受け入れられる状態に戻ったものの、少子高齢化・人口減少による住宅需要の低下が収まる見通しはありません。そのため、地方を中心に路線価が下落したエリアも多いといえるでしょう。

04土地選びでは最新の路線価も確認しよう

令和5年の路線価は全国平均で2年連続のプラスとなり、コロナ禍からの回復傾向が鮮明になりました。路線価は土地購入費の目安になるだけでなく、上昇・下降のトレンドがエリアにおける将来的な資産価値の動向を判断する材料にもなります。

全国平均で上昇傾向といっても、北海道のように大幅上昇となっている地域もあれば、反対に和歌山県をはじめとし20県では低下傾向が続いています。また、地価が下落している県でも、エリアによって下落幅はさまざまです。

土地選びの際には最新の路線価も確認したうえで、資産計画も万全にしておきたいところ。当サイトが提供する目的別の4つの住宅シミュレーションを活用して、資産価値が見込める土地探しをスタートしてみてはいかがでしょうか。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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