住宅ローンの変動金利、人気に陰り?これからは固定金利が主流か

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不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S」は、今後3年以内に住宅購入の予定がある人を対象に実施した『住宅ローンに関する意識調査』の結果を公表しました。調査結果によると、利用を予定している住宅ローンの金利タイプについて「変動金利」と回答した人が23.3%。これに対し「固定金利」と答えた人は67.9%にも上り、変動金利人気の陰りを感じさせる結果となりました。 この背景には、日銀の金融緩和策の修正や日銀総裁の交代などがあると見られ、今後固定金利を選ぶ人の増加が見込まれます。そのような中、変動金利では適用金利年0.1%という超低金利の商品が登場するなど、金利引き下げ競争が過熱している状況です。 この記事では、住宅ローンを組むにあたり固定・変動どちらの金利タイプを選ぶべきか迷っている人向けに、2023年最新の金利動向を解説していきます。

01住宅ローン利用予定者、変動金利は3割以下、固定金利は7割に迫る

不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S」は2023年3月、今後3年以内に住宅を購入する予定のあるユーザー656名を対象とした『住宅ローンに関する意識調査』を実施しました。

「今、住宅ローンを借りる場合に固定・変動どちらを選ぶか」という質問をしたところ、「変動金利」と回答した人が23.3%だったのに対し、「固定金利」と回答した人の割合は67.9%。実に3倍近い大差で「固定金利」が「変動金利」を上回る結果となりました。

出典:LIFULL HOME’S『住宅ローンに関する意識調査』

国土交通省が2023年3月に公表した「令和4年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」によると、2021年度の住宅ローンの新規貸出額に対する変動金利の割合は76.2%に上っています。

超低金利と言われる状況を受け、これまでは変動金利に人気が集中していたのです。この傾向は、日銀がいわゆる「ゼロ金利」を導入した1999年以来、ずっと続いてきました。

ここに来て一転、固定金利に人気が傾いたのには、大きく2つの要因があると考えられます。1つ目は、長期金利が上昇トレンドにあること。2つ目は、日銀総裁の交代により将来の金融緩和政策を不安視する人が増えたことです。

長期金利の上昇に伴い固定金利もアップしているとはいえ、2023年5月現在でフラット35の最も多い金利(新機構団信付き、返済期間21〜35年の場合)は年1.830%。リーマン・ショック前の2008年前半が年3%前後だったことを考えると、依然として非常に低い水準です。

こうした状況を踏まえ、金利が本格的に上昇する前に、固定金利での借り入れを検討する人が増えているとみられます。

出典:国土交通省「令和4年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」

3大メガバンク、固定金利の水準を引き下げに

長期金利の上昇により固定金利は上昇傾向と紹介しました。しかし、2023年4月・5月と3大メガバンクである「三菱UFJ銀行」「三井住友銀行」「みずほ銀行」は、相次いで固定金利の水準を引き下げています。

これは、アメリカで相次いだ銀行の経営破綻などを受けて欧米で金融不安が広がり、長期金利が大幅に低下したことによるものです。新たに固定金利で借り入れたい、あるいは変動金利から固定金利に借り換えたいという人は、今がチャンスと言えるでしょう。

02変動金利も競争が過熱!年0.1%台の住宅ローンも登場

一方、変動金利は金利の引き下げ競争がさらに過熱しています。もともと、変動金利は固定金利に比べて金利が低いのが特徴。それが、金融機関の間での競争激化によりいっそう低くなっているのです。

特に注目されているのが「auじぶん銀行」の住宅ローン。自社グループのサービスと併用するなど一定の要件を満たした場合、借り換え時の適用金利が年0.196%〜となります。0.1%台というのは、auじぶん銀行でも過去最低水準です。

新規借り入れの適用金利は、2023年5月現在で年0.319%〜となっています。なお、借り換え・借り入れともに、2023年4月14日〜6月30日までのキャンペーンである点は要注意です。

auじぶん銀行が金利を引き下げるきっかけとなったのが、3月に上場した「住信SBIネット銀行」による金利の大幅引き下げでした。借り換え時の変動金利を年0.299%に引き下げたことで、金利の引き下げ競争が一段と激化したのです。

住信SBIネット銀行は、早くから人工知能(AI)を使った審査サービスを導入するなど時間とコストの削減を図ってきました。こうした効率化により、さらなる金利の引き下げが可能になったのです。

ネット銀行のみならず、大手銀行も電子契約の導入によりコストを削減。2023年5月現在の変動金利における適用金利はみずほ銀行が年0.375%〜、三井住友銀行が年0.475%〜など、金利引き下げ競争に追随する動きを見せています。

2023年5月現在、変動金利のベースとなる短期プライムレートはほとんど動きがありません。変動金利の急激な上昇は考えにくく、競争はますます激化していくと見られます。

変動金利の上昇幅、許容範囲は「1.5%まで」が最多回答

現在は超低金利で推移している変動金利。先ほどのLIFULL HOME’Sによる調査で、「実質金利が何%になるまで変動金利を選びますか?」という問いに対して、4割弱が「年1%まで」しか許容できないと回答。さらに上昇幅については、「年1.5%までしか許容できない」と回答しています。

今後短期間で急激に変動金利が上昇することは考えにくいものの、多くの人が超低金利を前提とした返済計画で検討しているというのがわかります。しかし、将来緩やかに金利が上昇する可能性は否定できません。

仮に、5年ごとに金利が年0.5%ずつ上がったとしたら、どれくらい月々の返済額がアップするのでしょうか。借入金4000万円・変動金利 当初年0.389%・借入期間35年の住宅ローンをモデルケースとして、シミュレーションした結果が以下の表です。

年数 金利 毎月の支払額
1〜5年目 0.389% 10万1883円
6〜10年目 0.889% 11万856円
11〜15年目 1.389% 12万310円
16〜20年目 1.889% 13万237円
21年目以降 2.389%※ 14万629円
※21年目以降は金利変動なしと仮定

5年ごとに0.5%という上昇率であっても、10年後には毎月の支払いが+1万8427円、15年後には+2万8354円となります。借入金が4000万円の場合、金利が1%上がれば月2万円弱、1.5%上がれば月3万円弱、支払い負担が増えるのです。

この金額が家計にとって大きな負担であると感じるなら、固定金利を選んだ方が安全と言えるでしょう。

03金利タイプの違いで毎月の支払額がどう変わるか、まずはシミュレーションしてみよう

金利は世界経済や景気の動向によって左右されるため、今後どのように変化していくか予測するのは難しいものです。

現状ギリギリの返済計画を立てている人は、将来の金利上昇リスクに左右されない固定金利を選ぶのが安心といえます。

余裕のある返済計画を立てている人は金利上昇リスクに対応できるので、金利が低めな変動金利を選ぶと良いでしょう。仮に将来金利が上昇するようであれば、繰り上げ返済も有効です。

金利タイプを選ぶ際は金利動向も大切ですが、何よりも資金計画を踏まえるべきです。

「金利が上昇しても繰り上げ返済できる余裕がない」「子どもの進学が見込まれるので、返済期間中に家計負担が増えるのは厳しい」など、世帯の経済状況やライフイベントを見据え、総合的に判断するのがベストです。

まずは、金利タイプの違いによって、どれだけ毎月の返済額が変わるのかチェックしてみましょう。そのうえで資金計画を立て、適した金利タイプを選びたいところです。 当サイトの「借入可能額シミュレーター」は、月々の支払額から借入可能額をシミュレーションすることが可能です。他にも、さまざまな角度から検討できる住宅ローンシミュレーションを用意しています。住宅ローン検討のスタートとして、ぜひ活用してみてください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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