物価上昇中に気を付けたい「インフレ特約」とは?マンション購入にも注意!

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新型コロナウイルス感染拡大などに伴う2021年からのウッドショックに始まり、ウクライナ情勢による資源高や記録的な円安など、複合的な要因によってインフレ圧力が急激に高まっています。2022年7月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は4カ月連続で2%を超えており、影響は不動産・建設業界にも波及。戸建ての建築費用も高騰しています。 このような急激なインフレの影響で、契約時よりも建築費用が大幅に値上がりしている場合、状況によってその超過分を請求されるケースも出てきているようです。 そこでこの記事では、インフレ時に適用される工事請負契約における「インフレ特約」をはじめ、インフレに伴って値上がりする、さまざまな住宅関連費用について解説していきます。

01インフレ特約とは?

インフレ特約とは、戸建ての工事請負契約を締結する際、契約書に記載するインフレに関する特約のことです。

具体的には、注文住宅を新築するにあたって工事請負契約を締結した後、賃金水準や物価水準の大幅な変動により、変動額が一定程度を超えた場合、受注者側が請負代金の変更を請求できるというものです。

この特約は、国土交通省の中央建設業審議会が制定する建設工事請負契約のモデル契約書「民間建設工事標準請負契約約款」にも記載されている、一般的な特約となっています。

あくまでもモデル契約書に記載されているものなので、中にはインフレ特約を記載していない契約書も存在します。記載がなければ発注者(施主)がインフレ変動分を追加で支払う必要はありません。ただし、インフレ特約が記載されている契約書が大半です。

約25%の発注者がインフレ特約を受け入れしないという現状も

住宅の建築費は、ここ数年で以前より大きく値上がりしています。ウッドショックの際は1棟につき100万円以上値上がりしたほか、住宅設備については5〜40%と値上がり率に幅があるものの、多くの設備で上昇傾向です。

マンション管理組合向けのコンサルティングを行う「さくら事務所」の調べによると、コロナ禍前に3000万円程度で建設できた戸建て住宅が、現在建設すると約3800万円(約26%の上昇)になるケースもあると言います。

こうした建築費の高騰を受け、受注者(ハウスメーカーや工務店など)は契約変更を発注者(施主)に申し出ているものの、国土交通省の調査によると約25%の発注者が受け入れられないとして、申し出を拒否しているのが現状です。

建築費高騰分の追加請求を受け入れられない場合の対応策としては、全体的な建築費のコストダウンをする、もしくは発注者と受注者の間で協議を行うといったことが考えられます。

協議がしっかりされていなかったり、資材ごとの値上がり状況を把握していなかったりすると、受注者側が知らない間に、建材や資材を安いものに変更されてしまうリスクもあるため注意が必要です。

02インフレ時に上がる住宅関連の費用

急激なインフレによって、インフレ特約のように追加費用を請求されるものもありますが、住宅関連の他の費用についてもコストアップするケースがあります。住宅関連費用はまとまった金額である場合が多く、コストアップが家計に大きな影響を与える可能性もあるでしょう。

続いては、インフレ特約以外でインフレ時に上がる可能性のある住宅関連費用について解説していきます。インフレによる価格上昇の可能性がある代表的なものとして、「分譲マンションの修繕積立費用」と「火災保険の保険料」の2つが挙げられます。

分譲マンションの修繕積立費用

分譲マンションの修繕積立費用は、インフレによって上昇する可能性があります。

最近の急激なインフレにより、分譲マンションのランニングコストは上昇傾向です。しかし、新築分譲マンションの場合、管理費や修繕積立費用が高すぎると売れにくくなってしまいます。そのため、新築販売時には一般的な相場程度の費用設定として、後から修繕積立費用を上乗せするというケースも見られます。

加えてインフレの影響により、当初の大規模長期修繕計画が予算不足に陥るケースも発生します。予算不足に伴い修繕積立費用が増額されたり、当初の計画にはない追加修繕箇所の対応ができず、修繕されない箇所が出てきたりする物件も見られるのです。

中古マンションでは、近い将来に大規模修繕が計画されている場合があります。そのため、中古マンションの購入を検討する際には、長期修繕計画や修繕積立費用の金額が適正なのか、入念にチェックするようにしましょう。

火災保険の保険料

火災保険において支払われる保険金額は、損害が発生した時点における物価などを基準として算定される損害額に応じて決まります。

そのため、保険金額の元となる再調達価格(同じ建物を新たに建築・取得するのに必要な資金)がインフレによって高騰した場合、保険金額と再調達価格の乖離が原則20%を超えた際には、保険会社からの通知により保険金額を妥当な金額に調整するといった措置がとられます。ただし、保険期間が5年以上であるなど、一定の条件が付されるのが一般的です。

物価上昇で再調達価格が上がったとしても、支払われる保険金の上限額はあくまでも保険金額(契約金額)であるため、保険金額だけでは再調達できない可能性もあります。こうした事態に備え、インフレ時にはあらかじめ保険金額を増額することで再調達価格が支払われる仕組みになっています。

インフレ時は保険金額の増額が見込まれるため、合わせて保険料も上昇傾向となります。急激なインフレ時には、加入中の火災保険でどのくらいの保険金額(契約金額)が支払われるのかチェックしておきましょう。

03インフレで高騰している一戸建て!さまざまな条件で資金計画をシミュレーションしておこう

先ほど紹介したとおり、以前は3000万円で購入できた戸建て住宅が、インフレにより3800万円まで高騰するケースも出てきています。実に20%以上、建築価格が値上がりしているのです。こうした状況を踏まえると、インフレ時に住宅を購入する予定がある場合、ある程度余裕を持った資金計画を立てることが重要になります。

当サイトでは、資金計画の立案に便利な各種シミュレーションを用意しています。たとえば、月々の支払額から予算を考えたい人は「借入可能額シミュレーター」、物件の支払いイメージを確認したい人は「毎月の返済額シミュレーター」がおすすめです。

物件価格や建材価格が高騰している現在だからこそ、こうしたシミュレーションを上手に活用して、念入りに資金計画を立てておきましょう。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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