子供の教育費はいくら必要?幼稚園から大学までの学費をシミュレーション
子供がいる家庭は、将来どのくらいの教育費が必要なのか気になる方も多いのではないでしょうか。今回は幼稚園から大学まで、子供一人を育てるのにトータルでどれくらいの教育費がかかるのか、公的データをもとにして考えてみました。国立(公立)、私立のどちらを選択するかによっても教育費に大きな差が出ますので、家庭の事情に合わせて教育費の計画を立てていきましょう。
01幼稚園~大学までにそれぞれいくら学費がかかる?
まずは幼稚園から大学まで、それぞれいくら学費がかかるのか文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」のデータをもとに見ていきましょう。
幼稚園
文部科学省「平成30年度 子供の学習費調査」によれば、保護者が支出した1年間・子供一人当たりの学習費総額(保護者が子供の学校教育及び学校外活動のために支出した費用の総額)は、 公立幼稚園では22万3,647円、私立幼稚園のでは52万7,916円です 。公立と私立では、年間約30万円もの差があることが分かりますね。詳細は以下の通りです。
学習費総額内訳 | 公立幼稚園 | 私立幼稚園 |
学校教育費 | 12万738円 | 33万1,378円 |
学校給食費 | 1万9,014円 | 3万880円 |
学校外活動費 | 8万3,895円 | 16万5,658円 |
合計 | 22万3,647円 | 52万7,916円 |
学習費総額の内訳を見ると、私立幼稚園で一番負担が大きいのは学校教育費です。授業料のほかに学校納付金などを含み、公立幼稚園に比べて約11万円高くなっています。
ただし皆さんもご存知の通り、2019(平成31・令和元)年10月より幼児教育無償化が開始されたので、今後の学校教育費については公立幼稚園と私立幼稚園の差が縮小する可能性もあります。
次いで負担が大きいのが学校外活動費です。学校外活動費とは、自宅学習や学習塾・家庭教師、体験活動や習い事などの費用を指しますが、公立よりも私立の方が学校外活動費もかかることが分かりますね。
小学校
同調査によれば、1年間・子供一人当たりの学習費総額は、 公立小学校では32万1,281円、私立小学校では159万8,691円です。私立は公立の約5倍になります。詳細は以下の通りです。
学習費総額内訳 | 公立小学校 | 私立小学校 |
学校教育費 | 6万3,102円 | 90万4,164円 |
学校給食費 | 4万3,728円 | 4万7,638円 |
学校外活動費 | 21万4,451円 | 64万6,889円 |
合計 | 32万1,281円 | 159万8,691円 |
なお公立ではここ数年横ばいですが、私立では前回調査から4.6%増加しており、近年、増加傾向にあります。
また学習費総額のうち、学校教育費と学校外活動費は公立と私立で大きな差があります。月額に換算すると、学校教育費は公立で5,258円ですが、私立では7万5,347円と約14倍にも 。これは、公立では授業料がほとんどかからないのに対して、私立では授業料が学校教育費の半分以上を占めるからです。さらに学校外活動費も公立では1万7,870円ですが、私立では5万3,907円と約3倍になっています。
学校外活動費では、公立・私立ともに「補助学習費」(自宅学習や学習塾・家庭教師などの費用)が最も多くなっています。
中学校
同調査によれば、1年間・子供一人当たりの学習費総額は、公立中学校では48万8,397円、私立中学校では140万6,433円です 。私立は公立の約3倍になります。詳細は以下の通りです。
学習費総額内訳 | 公立中学校 | 私立中学校 |
学校教育費 | 13万8,961円 | 107万1,438円 |
学校給食費 | 4万2,945円 | 3,731円 |
学校外活動費 | 30万6,491円 | 33万1,264円 |
合計 | 48万8,397円 | 140万6,433円 |
学習費総額は、公立ではここ数年横ばいですが、私立では前回調査から6%増加しており、近年、増加傾向にあります。
学習費総額のうち、学校教育費は公立と私立で大きな差があります。 月額あたり公立は1万1,580円ですが、私立では8万9,286円と約7.7倍。これは公立では授業料がほとんどかからないのに対して、私立では授業料が学校教育費の4割を占めるからです。学校外活動費については、中学校になると公立と私立では大きな差がなくなります。
学校外活動費では、公立・私立ともに「補助学習費」(自宅学習や学習塾・家庭教師などの費用)が最も多い支出ですが、中学校では公立が私立を上回ります(公立中学校の補助学習費:24万4,000円、私立中学校の補助学習費:22万円)。
また私立中学校は、多くのところが学校給食がなく弁当持参のため、学校給食費がほとんどかかりません。
高等学校(全日制)
同調査によれば、1年間・子供一人当たりの学習費総額は、公立高等学校は45万73,80円、私立高等学校は96万9,911円です。私立は公立の約2倍になります。詳細は以下の通りです。
学習費総額内訳 | 公立高等学校(全日制) | 私立高等学校(全日制) |
学校教育費 | 28万487円 | 71万9,051円 |
学校給食費 | ― | ― |
学校外活動費 | 17万6,893円 | 25万860円 |
合計 | 45万7,380円 | 96万9,911円 |
学習費総額は、公立はここ数年横ばいですが、私立は前回調査から6.8%減少しています。これは主に「学校教育費」のうち「授業料」が、「学校外活動費」のうち「補助学習費」が減少したことによるものです。
学習費総額のうち、高等学校でも公立と私立では学校教育費に大きな差があります。月額では公立が2万3,373円に対して、私立では5万9,920円と約2.6倍です。
高等学校では公立・私立問わず、学校給食がなくなりますので、給食費の負担はなくなります。学校外活動費については、私立が公立の1.4倍となっていますが、小学校、中学校ほどの大きな差はなくなります。
また学校外活動費では公立・私立ともに「補助学習費」(自宅学習や学習塾・家庭教師などの費用)が最も多くなっています。
大学
大学の学費も確認してみましょう。文部科学省「私立大学等の平成30年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」の「国公私立大学の授業料等の推移」及び「平成30年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金 平均額(定員1人当たり)の調査結果について」によると、詳細は以下の通りです。
国立大学 | 私立大学 | |
授業料 | 53万5,800円 | 90万4,146円 |
入学金(初年度) | 28万2,000円 | 24万9,985円 |
施設整備費 | ― | 18万1,902円 |
合計 | 81万7,800円 | 133万6,033円 |
国立大学の授業料は53万5,800円、入学料は28万2,000円です。4年間在籍すると、授業料214万3,200円(53万5800×4年間)と、入学金28万円2,000円の合計242万5,200円が必要になります。
私立大学の初年度学生納付金(平均額)は、授業料90万4,146円、入学金24万9,985円、施設整備費18万1902円の合計133万6,033円になります。初年度以降の3年間は入学金を除いた108万6,048円を納付すると、4年間の納付金合計額は459万4,177円になります。
なお同調査によると、私立大学は学部によって平均納付額が異なります。上記金額は全学部の平均納付額です。学部別の初年度納付金(授業料・入学金・施設設備費)合計は、文科系学部の納付金は116万6,922円(うち入学金22万9,997円)、理科系学部は154万4,962円(うち入学金25万4,309円)、医歯系学部は482万2,395円(うち入学金107万3,083円)、その他学部は145万1,836円(うち入学金25万8,747円)となります。
02大学進学のために、いくら教育費を貯めるべき?月々の貯蓄額をシミュレーションしてみよう
上記の調査から、幼稚園から大学まですべて国公立に通った場合と、幼稚園から大学まですべて私立に通った場合で子供の教育費を比較してみましょう。
【幼稚園から大学まで全て国公立の場合】
- 公立幼稚園 22万3674円×3年間=67万1,022円
- 公立小学校 32万1281円×6年間=192万7,686円
- 公立中学校 48万8397円×3年間=146万5,191円
- 公立高等学校(全日制) 45万7,380円×3年間=137万2,140円
- 国立大学 242万5,200円(4年間在籍)
合計 786万1,239円
【幼稚園から大学まで全て私立の場合】
- 私立幼稚園 52万7,916円×3年間=158万3,748円
- 私立小学校 159万8,691円×6年間=959万2,146円
- 私立中学校 140万6,433円×3年間=421万9,299円
- 私立高等学校(全日制) 96万9,911円×3年間=290万9,733円
- 私立大学 459万4,177円(4年間在籍)
合計 2,289万9,103円
幼稚園から大学まですべて国公立の場合、教育費は約790万円かかるのに対し、すべて私立の場合は約2,300万円かかります。私立は国公立の約3倍かかることが分かりますね。
幼稚園は私立で、小学校から高校までは国公立、大学になったらまた私立というように、国公立と私立を組み合わせて進学するなど、進路の選択方法によって教育費は変動します。さらに大学生で一人暮らしの場合は、別途生活費がかかることも考えておきましょう。
JASSO(独立行政法人日本学生支援機構)「平成30年度 学生生活調査」によると、国立大学(昼間部)学生のうち、実家から通う学生33.8%、アパートなどの一人暮らし59.7%、学生寮6.5%と、半数近くが実家を離れて大学に通っています。私立大学の学生は、実家から通う学生64.5%、アパートなどの一人暮らし29.4%、学生寮6.1%となり、国立大学の学生に比べて実家から通う学生の割合が多くなります。
さらに同調査によると、国立大学生(昼間部)の生活費(食費、住居費・光熱費、保健衛生費、娯楽、し好費、その他日常費)は88万5,500円、私立大学生(昼間部)は65万9,700円です。国立大学生は学費とは別に、月に換算して約7万4,000円の生活費が必要になります。4年間で354万2,000円の生活費がかかる計算になりますから、家庭からの仕送りが難しい場合、本人が奨学金を借りる、アルバイトをするなども考えられます。同調査によると、大学(昼間部)学生の47.5%は奨学金を利用しており、86.1%はアルバイトに従事しています。
もし子供が公立に通う予定ならば、高校を卒業するまでは収入の範囲内でやりくりし、最もお金がかかる教育費については子供が小さいうちから準備をしておくと安心ですね。
国立大学に進学する場合の貯蓄額
では国公大学と私立大学の教育費を準備するためには、月々いくら貯金していけばよいのでしょうか。子供の到達年齢(15歳・18歳)別に計算してみましょう。
【国立大学に進学する場合:4年間の学費242万5,200円】
- 15年間で貯蓄する場合:年間16万1,680円、月額1万3,473円
- 18年間で貯蓄する場合:年間13万4,733円、月額1万1,227円
【国立大学に進学で一人暮らしをする場合:4年間の生活費354万2,000円】
JASSO(独立行政法人 日本学生支援機構)「平成30年度学生生活調査」によると、国立大学(昼間部)の生活費は1年間で88万5,500円。上記の学費とは別に、4年間の生活費「354万2,000円=88万5,500円×4年間」を貯蓄するなら、以下の金額になります。
- 15年間で貯蓄する場合:年間23万6,133円、月々1万9,677円
- 18年間で貯蓄する場合:年間19万6,777円、月々1万6,398円
15歳までに大学の学費を貯蓄するなら、月額1万4,000円です。さらに子供が一人暮らしをするなら、月額2万円を加えた合計3万4,000円の貯蓄が必要です。
18歳までに大学の学費を貯蓄するなら、月額1万2,000円です。さらに子供が一人暮らしをするなら、月額1万7,000円を加えた合計合わせて2万9,000円の貯蓄が必要です。
私立大学に進学する場合の貯蓄額
【私立大学に進学する場合:4年間の学費459万4,177円】
- 15年間で貯蓄する場合:年間30万6,278円、月額2万5,523円
- 18年間で貯蓄する場合:年間25万5,232円、月額2万1,269円
【私立大学に進学で一人暮らしをする場合:4年間の生活費354万2,000円】
私立大学に進学し一人暮らしをする場合でも、生活費は国立大学生同様に1年間88万5,500円かかると仮定すると、以下の金額になります。
- 15年間で貯蓄する場合:年間23万6133円、月々1万9677円
- 18年間で貯蓄する場合:年間19万6777円、月々1万6398円
15歳までに大学の学費を貯蓄するなら、月額2万6,000円です。さらに子供が一人暮らしをするなら、月額2万円を加えた合計4万6,000円の貯蓄が必要です。
18歳までに大学の学費を貯蓄するなら、月額2万2,000円です。さらに子供が一人暮らしをするなら、月額1万7,000円を加えた合計3万9,000円の貯蓄が必要です。
03教育費を準備するための方法
上記のように、子供の教育費はどのような進路を選択するかによって異なります。また住んでいる地域によっては、大学進学に一人暮らしが不可欠な場合もあるでしょう。教育費を準備する方法をいくつか紹介しますので、家庭状況に合った準備方法を選びましょう。
児童手当
児童手当は一般的に、子供が3歳未満は月1万5,000円、3歳以降満15歳(中学3年)に達してから最初の3月31日までは月1万円が支給されます。
児童手当は中学校卒業までと決まっているため、例えば4月2日の遅生まれの場合だと、0歳1カ月から2歳11カ月までの35カ月間で52万5,000円、3歳以上15歳11カ月までの156カ月間で156万円、合計208万5,000円の児童手当が支給されます。児童手当を全額貯金するだけでも、国立大学へ4年間通う学費に近い金額の貯蓄が可能でしょう。
ただし児童を養育している方の所得が所得制限限度額以上の場合は、特例給付として月額一律5,000円の支給となります。
学資保険
学資保険とは、子供の教育費を準備するための保険です。入園・入学時、大学進学時など節目のタイミングや満期時に祝金や満期保険金を受け取れます。突然の事故などにより契約者(親など)が亡くなった場合は、それ以降の保険料の払い込みが免除となります。
終身保険
終身保険とは、亡くなった時や重い障害を抱えた際に死亡保険金を受け取れる保険です。一生涯に渡り保証が続きますが、途中で解約すると解約返戻金を受け取れるので、学資保険代わりに終身保険を利用する子育て世代も見られます。ただし低解約返戻金型の終身保険は、保険料払い込み期間中に解約すると、自分が払い込んだ保険料を下回る返戻金しかもらえないので、注意が必要です。
外貨建て終身保険
外貨建て終身保険とは、米ドルや豪ドルなどの外国通貨で保険料を支払い、外国通貨で保険金や解約返戻金を受け取る保険商品のことです。それらの通貨で運用されるので、外貨ベースでは日本円よりも高い金利がつく可能性がある金融商品といえます。しかし保険料支払い時や保険金受取時には為替変動リスクがあり、為替手数料もかかるなどには注意が必要です。
つみたてNISA
つみたてNISAとは2018(平成30)年1月から始まった、少額からの「長期」「積み立て」「分散投資」を支援するための非課税制度です。対象年齢は20歳以上で、非課税投資額の上限は年間40万円。非課税期間は最長20年です。
財形貯蓄
財形貯蓄とは一部引き出しや解約などが自由にできる、給与天引きの貯蓄のことです。職場に財形制度(勤労者財産形成貯蓄)があれば活用できる制度です。財形貯蓄には、「一般財形貯蓄」「財形年金貯蓄」「財形住宅貯蓄」の3種類があり、教育費のために利用できるのは「一般財形貯蓄」です。
04教育費は子供が小さいうちに計画的に貯蓄しよう!
子供一人にかかる教育費は、高額になることが分かりました。二人、三人と複数の子供がいる家庭では、さらに多くの教育費が必要になります。一般的には、子供が小さい時期はかかる費用も少ないと考えられるため、貯め期とも呼ばれ貯蓄がしやすい時期にあたります。貯蓄の方法もさまざまなので、各家庭の事情に合わせて子供が小さいうちから将来に向けて計画的に貯蓄をしましょう。
監修:岩永真理
IFPコンフォート代表、一級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®、住宅ローンアドバイザー
プロフィール
大手金融機関にて10年以上勤務。海外赴任経験も有す。夫の転勤に伴い退職後は、欧米アジアなどにも在住。2011年にファイナンシャル・プランナー資格(CFP®)を取得後は、金融機関時代の知識と経験も活かしながら個別相談・セミナー講師・執筆(監修)などを行っている。幅広い世代のライフプランに基づく資産運用や住宅購入、リタイアメントプランなどの相談多数。
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