マイホーム購入後に転勤になった場合の対応方法
「せっかくマイホームを購入したのに、転勤になった…!!」と嘆く人は多いものです。その場合、単身赴任すべきか家族と一緒に引っ越しすべきか悩みますよね。そこでこの記事では、マイホーム購入したものの転勤になった人向けに、その対応方法について解説します。
01転勤が発生する割合は?
まず「転勤年齢」についてですが、独立行政法人労働政策研究・研修機構の 「企業における転勤の実態に関する調査」によると、「転勤の多い年齢層がある」と回答した企業のうち、国内転勤が多い年代は「30代」が67.4%で最多、続いて「40代」が48.3%、「20代」が39.1%となっていました。
30代については海外転勤も64.1%と多く、やはり会社の主力として期待される30代から40代にかけては、転勤辞令の出やすい安い年代といえそうです。
では、家を購入する人の年齢はどうでしょうか。国土交通省の「令和5年度 住宅市場動向調査 報告書」によると、注文住宅の一次取得者(初めて住宅を買う人)の平均年齢は40.1歳。分譲戸建住宅は36.6歳、分譲集合住宅は39.9歳となっています。30代後半から40代にかけて家を購入する人が多いことがわかりますね。
このように転勤時期と家の購入時期は、30代後半から40代にかけてほぼ重なっています。もし転勤辞令と家の購入が重なってしまった場合は大問題です。せっかく購入した家をどうするかについて決断を迫られます。
02転勤になった場合の対応方法
家を購入して間もなく「転勤辞令」が出てしまった場合、購入した家をどのように扱うべきでしょうか。主な対応方法を解説します。
家を賃貸に出す
1つ目の方法は、家を賃貸に出す方法です。うまく借り手が付けば家を手放さずに家賃収入を得られますが、住宅ローン返済中の家を賃貸に出すにあたっては大きな問題が1つあります。
その問題とは住宅ローンの契約内容です。普通の住宅ローンの場合、金融機関は借り手が「居住目的」で住宅を購入することを条件に融資しています。
ところが、転勤を理由に自宅を賃貸に出す「収益目的」での運用を始めると、金融機関との間で契約違反となってしまう可能性が生じるのです。
最悪の場合、金融機関からローン残債分の一括返済を求められることもあります。したがって、賃貸に出す前に必ず金融機関と相談し、住宅ローンの契約を継続してくれるかどうかきちんと許可を取ることが必要です。
それでは、購入したマイホームを賃貸に出すうえでのメリット・デメリットをあげておきましょう。
家を賃貸に出すメリット
- 家賃収入が入る
管理手数料や仲介手数料などはかかりますが、一定の賃料が毎月入金されるのは大きなメリットです。
家を賃貸に出すデメリット
- 建物が傷む可能性も
- 空室になると赤字になる
- 管理手数料や仲介手数料がかかる
- 好きなタイミングで家に戻れなくなる
入居者が建物や室内を傷めてしまうリスクはあります。修繕費用や設備費用などはもちろんオーナーの負担です。入居者とのトラブルや管理手数料、仲介手数料などのコスト負担なども生じます。万が一入居者が見つからなければ家賃収入が入らないため赤字です。
さらに転勤期間が短くなって早く戻れることになった場合、入居者に出ていってもらう必要があります。しかし、入居者と退去の折り合いがつかなければ家に戻れません。賃貸に出した以上、好きなタイミングで家に戻れなくなるリスクがある点にも注意しましょう。
家を売却する
思い切って家を売却する方法です。せっかく手に入れたマイホームを手放すのは心苦しいですが、賃貸に出すことに比べると手間がかからず現金を手にすることができます。ただし、売却価格よりもローン残債が高い状態、いわゆる「オーバーローン」状態での売却は難しいでしょう。
家を売却するメリット
- まとまったお金が入るので資金的余裕ができる
- 賃貸よりも難易度が低く、管理コストなどもかからない
うまく売却できればまとまった現金が手に入りますので、そのお金を元手に新たに家を買い替えることも可能です。また、賃貸は管理会社への委託や家賃収入の確定申告、入居者との交渉など何かと手間がかかるのですが、売却ではそのような手間はほとんどかかりません。
家を売却するデメリット
- 住む家がなくなってしまう
- 住宅ローン残債が残るリスクがある
マイホームを手放すことになるので、家族にとっての住み家が無くなってしまいます。新たに賃貸するか、買い換えるかを検討しなければなりません。売却益で住宅ローンを完済できない、いわゆるオーバーローン状態での売却になると、ローン残債分を預貯金などで負担することになります。
単身赴任
子どもの学校事情や配偶者の職場事情などを考えたうえで、単身赴任に踏み切る選択肢もあります。単身赴任なら家族はそのまま家に住み続けることができるため、家族にとっての負担は少ないです。ただし、単身赴任先で新たに住居を見つけなければならないなど、経済的な負担は増えてしまいます。
単身赴任のメリット
- 残った家族の生活環境を維持できる
- 家をそのまま維持できる
せっかくの思いで手に入れたマイホームを手放したり、賃貸に出したりすることには抵抗感があるでしょう。家族がそのまま家に住み続けてくれば、家族の生活環境を維持できるだけでなく、家もそのまま保有できるので管理面でも安心です。また、自宅に家族が居住していることに変わりませんので、住宅ローン控除は継続して適用されます。
単身赴任のデメリット
- 単身赴任先での住居費がかかる
- 家族が離れ離れになってしまう
家族が離れ離れになってしまうのは、夫婦や子どもにとって大きな環境の変化となります。お互い精神的に不安定となるリスクもありますし、特に多感な年頃の子どもにとっては想像以上に大きな負担となるかもしれません。
勤務先から住宅手当がない場合は赴任先で新たに住居を借りる必要があり、経済的負担は増えます。住宅ローンの返済と合わせて2重の住居費負担が生じるうえ、光熱費や食費なども2世帯分かかる点にも注意したいところです。
03転勤族がマイホームを買うのにおすすめのタイミング
転勤の可能性が高い職場に勤めている場合は、マイホームを買うタイミングを慎重に見極めなければならないでしょう。転勤族にとってのおすすめのタイミングを4つ紹介します。
子どもができたとき
家族の生活拠点を早めに決めておきたい人にとって、子どもが生まれた時はマイホーム購入のタイミングとなります。子どもの教育環境や生活の利便性を最優先に条件を絞り込めば、理想のマイホームに出会う確率が上がるはずです。若いうちに住宅ローンを組んでおけば月々の返済負担も軽くなり、無理のない返済計画を立てられます。
基本的に家族の転居を想定しない購入プランとなりますから、もし転勤しなければならない場合は単身赴任を選ぶことになるでしょう。転勤の多い職場にお勤めの人は単身赴任となった時の経済的負担を想定したうえで、住宅ローンの返済計画を立てておくと安心です。
子どもが小学校・中学校・高校に進級するタイミング
転勤によって家族ごと移動する場合、子どもの転園・転校の問題が大きな課題となります。特に幼稚園や小学校の転園・転校は、子どもにとって大きな精神的負担となりやすいです。
できるだけ途中で転園・転校のないようにするには、入園や入学のタイミングでの転居を予定するのがおすすめです。子どもの気持ちも切り替えやすく、転居時期も明確となり購入予定も立てやすくなります。中学校・高校の場合は、受験や学区変更なども考えなければなりません。子どもの進学先や本人の気持ちなども汲み取りつつ、転居先を慎重に選ぶといいでしょう。
住宅ローンが組める時期までに
退職年齢や完済時期を見据えたうえで、住宅ローンの開始時期を逆算してマイホーム購入時期を決める方法です。一般的な住宅ローンの借入期間は35年ですが、完済時年齢は最長80歳未満で設定されることが多いです。つまり、借入可能年齢は44歳までが基本で、これ以上の年齢での借り入れは厳しくなってきます。
住宅ローンの完済時期が早ければ早いほど、完済後に浮いた住居費を資産形成や生活費に回せますので、余裕ある生活を実現できます。ご自分のキャリア、年齢、年収などを予測して、住宅ローンが組める時期はいつまでかを予測してみましょう。
定年後
転勤の多い会社は、社宅の整備や家賃補助などを出すケースが多いです。そこで、会社勤めの間は会社からの家賃補助などをフル活用して住居費を抑え、転勤や通勤の必要がなくなる定年後のタイミングで住宅を購入する人もいます。
定年時は退職金も出ますので、預貯金と合わせて頭金を準備することも可能でしょう。子どもが独立して夫婦二人で住める規模の家なら、60代でも購入できるかもしれません。
04まとめ
転勤とマイホーム購入が重なると、家族の生活や家の扱いについて、大いに悩まされます。一番大切なのは、家族全員が納得できる結論を出し、その方向性に合った対応方法を選択することです。売却や賃貸、単身赴任など、子どもの学校事情や収入状況なども考えて、無理のない方法を選んでください。
監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
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