環境配慮型住宅ローンがお得!金利優遇される対象住宅に拡大の動きあり
ZEH(net Zero Energy House)など、環境配慮型住宅への関心がますます高まっています。全国の金融機関では、環境配慮型住宅に対する住宅ローン(以下、環境配慮型住宅ローン)の金利優遇を積極的に進める流れが見られます。これは、省エネ住宅を始めとした環境配慮型住宅を購入もしくは建築することで、住宅ローンを借り入れやすくなり、さらなる省エネ住宅の普及を後押しすることを目的としています。 金融機関によっては、低炭素住宅も追加で金利優遇の対象とするなど、適用範囲を拡大する動きも加速しています。そこでこの記事では、環境配慮型住宅ローンの基本的な仕組みを解説。金利優遇の対象となる住宅の種類や、環境配慮型住宅ローンのメリットも紹介します。
01環境配慮型住宅とは?
環境意識の高まりやエネルギー価格高騰により、いっそう関心が高まっている環境配慮型住宅。エネルギー消費を抑えたり、発電を行ったりすることで、環境に優しい住まいを実現します。該当するのは、次のような住宅です。
- 年間のエネルギー収支をゼロ以下にするZEH住宅・ZEHマンション
- 高気密・高断熱の省エネ住宅
- 太陽光発電システムを取り入れたオール電化住宅
- 認定長期優良住宅
こうした住宅を建築、取得、リフォームした際に利用すると、基準金利よりも低い金利が適用される住宅ローン「環境配慮型住宅ローン」を取り扱う金融機関が増えています。
最近では、二酸化炭素の排出を抑えた「低炭素住宅」にも適用されるなど、金利優遇の対象を拡大する動きも加速。金融機関としても企業の社会貢献につながることから、環境配慮型住宅ローンの提供を積極的に進めています。
02全国で普及する環境配慮型住宅ローン、対象拡大の動きも
各金融機関は、SDGsの達成に向けた住宅の省エネ化・脱炭素化への取り組みの一環として、環境配慮型住宅ローンの推進を活発化させています。環境配慮型住宅といっても明確な基準があるわけではなく、金利優遇の対象となる住宅の種類は金融機関によってさまざまです。4つの銀行の基準を例として具体的に見ていきましょう。
りそな銀行は従来ZEH住宅を優遇の対象としてきましたが、2023年4月に対象を大幅拡大。ZEH住宅に加え、「長期優良住宅」「太陽光発電設備設置住宅」「低炭素住宅」「国産木材を一定以上使用した住宅」なども金利優遇の対象としています。
同じく、国産木材を使用して建築された住宅に対して金利優遇制度を設けているのが、ネット銀行の住信SBI銀行です。ZEH住宅・マンションや太陽光発電を設置している住宅への金利優遇に加え、国産材を95%以上使用している住宅を対象とする「国産材割」を設けています。
横浜信用金庫が対象としているのは、「CASBEE制度」で総合評価Aランク以上の戸建て・マンション、「地域子育て応援マンション認定制度」の認定を取得したマンション。認定長期優良住宅も対象に含んでいます。
また北海道銀行では、北海道ガスが取り扱う省エネ高効率給湯器「エコジョーズ」を設置する住宅も優遇するなど、幅広い住宅が対象です。
このように、金融機関によって対象に入る・入らないが異なるため、制度を活用する際はあらかじめ対象となる条件を確認しておきましょう。
環境配慮型住宅ローンでは、どのくらい金利優遇される?
環境配慮型住宅に対する適用金利を低くする環境配慮型住宅ローンですが、実際どのくらい金利が優遇されるのでしょうか。各行の優遇内容を確認していきます。
例えば、先ほど紹介した住信SBI銀行では、ZEH基準を満たした住宅であることを証明すれば、適用金利から年0.05%引き下げとなります。(2023年7月時点)
三井住友信託銀行では、オール電化住宅、ガス省エネ住宅、各自治体が定める環境配慮型住宅を購入する場合に金利優遇措置を設定。引き下げ条件を満たしている人が全期間一定金利引き下げを利用すると、変動金利・固定金利ともに店頭表示金利から年2%引き下げられます。(ただし、融資手数料型を利用した場合のみ/2023年9月30日までに要申し込み)
なお、金利引き下げ幅は所定の審査結果に基づき決定するため、利用の際は注意しましょう。
対象範囲を大幅に拡大したりそな銀行は、変動型で店頭金利より最大年2.115%引き下げた年0.360%。固定期間選択型(10年)なら店頭金利より最大年2.265%引き下げた年1.275%と、選ぶ金利タイプによって引き下げ幅が異なっています(2023年7月時点)。
上記のとおり、環境配慮型住宅ローンの金利引き下げ方法(適用金利・店頭金利)や引き下げ幅は金融機関によってさまざま。検討する際は、自分たちにとってどの金融機関の住宅ローンが一番有利なのか考えて選ぶことが重要です。
03住宅ローン以外にも!環境配慮型住宅のメリットは多数あり
環境配慮型住宅を建築・取得することによるメリットは、住宅ローンの金利優遇を受けられることだけではありません。他にどのようなメリットがあるのか紹介していきましょう。
環境配慮型住宅にする最大のメリットといえるのが、年間の光熱費が抑えられる点です。環境配慮型住宅は高気密・高断熱で空調効率が良く、夏や冬の空調にかかる光熱費を節約できます。太陽光発電システムを導入している場合、自家発電によっても電気代を削減できるでしょう。
また、高い断熱性能によって結露が起きにくいため、カビの発生を防げるのもポイントです。カビが発生しにくいので、掃除やお手入れの手間が減るというメリットもあります。
一般住宅に比べてコストが高くなりやすい環境配慮型住宅ですが、補助金制度が充実している点は見逃せません。
2023年現在、「こどもエコすまい支援事業」「先進的窓リノベ事業」「給湯省エネ事業」といった補助金制度が設定されています。補助金の内容は年度ごとに変わるため、最新の情報をチェックするようにしましょう。その他、住宅ローン控除など税制面での優遇措置もあります。
04環境配慮型住宅は初期費用が高額になりやすい!資金計画をしっかり立てよう
各金融機関は、環境配慮型住宅ローンの推進を活発化しています。先々の返済負担を軽減する観点からも、環境配慮型住宅は優位性があると考えられるでしょう。
しかし環境配慮型住宅は、一般住宅に比べて建築・取得の初期費用が高くなりやすい点に要注意です。高気密・高断熱にするための建材費や設備費用がコストに上乗せされます。
先ほど紹介した補助金を上手に活用すれば、お得に建築・取得することは可能です。ただし、補助金申請に通らなかったり、予算枠が埋まってしまい受付が終了してしまったりすることもあり得ます。補助金ありきではない資金計画が大切です。 頭金の有無・金額、毎月の返済可能額から借入金額を算出すれば、資金計画を立てられます。当サイトが提供する4種類の住宅ローンシミュレーターを活用して、環境配慮型住宅取得に向けた資金計画を立ててみてはいかがでしょうか。
監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
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