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出産費用はいくらかかる?内訳や補助金など知っておきたいお金のはなし

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妊娠の喜びは人生最大の喜びに違いありませんが、現実に戻って気になるのが出産にかかる費用です。出産は健康保険が使えないと聞いたけど一体いくらかかるのか心配になっている人もいるのではないでしょうか。出産費用の実際を知って、安心して出産できるお金について考えてみましょう。

01出産費用はいくらかかる?

ここでの出産費用とは、出産のために入院し、正常分娩で出産して退院するまでの費用です。実際には妊娠がわかってからの検診代や入院準備、家に帰ってからのベビー用品代など様々な費用がかかりますが、ここでは入院して正常分娩で出産し、退院するまでの費用について確認しておきましょう。

出産費用の平均額とその内訳

厚生労働省保険局の集計によると、2022年度に正常分娩で出産した場合の費用は、全施設の全国平均で約48.2万円となっています。これは個室に入った場合の差額ベッド代やお祝い膳など豪華な食事代等が入っていない数字です。差額ベッド代や産科医療補償制度の掛金、その他費用も入れた総額は約54.6万円で6.4万円ほど高くなっています。

出典:厚生労働省「出産費用の見える化等について

2012年度と比べてみると、差額ベッド代等を含まない出産費用の総計は約6.5万円、含んだ場合の出産費用の総計も約6万円増えています。しかし費用の内訳を見てみると、上昇率が大きい項目と逆に減っている項目があります。

室料の差額とその他費用も上昇しており、少子化や高齢出産が増える中、出産を大切なイベントと考えて、少し豪華な個室で過ごしたり、お祝いディナーなどを求めたりする人が増えているのかもしれません。

また、産科医療補償制度の掛金が大きく減っていますが、これは2015年から掛金の一部を健康保険の制度で負担することになったためです。産科医療補償制度とは、出産時の何らかの原因によって重度脳性麻痺となった赤ちゃんと、そのご家族を経済的に支援するための制度です。

出産は病気治療ではないため、原則として出産費用に健康保険や国民健康保険といった公的医療保険は使えず、全額自己負担となります。しかし、妊娠中の妊娠高血圧症候群や重度の悪阻(つわり)、貧血などに対する治療や、帝王切開や陣痛促進剤、吸引・鉗子分娩といった手術は、医療行為として健康保険の対象となります。

医療費となれば3割負担ですが、入院して高額な医療費がかかった場合は、高額療養費の制度や会社によっては健保組合の給付金の制度があり、さらに自己負担額が少なくなる場合もあります。

医療費の自己負担の上限額 (69歳以下の場合)

※出典:厚生労働省保険局

出産費用は保険適用外だけど補助金が受け取れる

出産費用は健康保険や国民健康保険の対象にはなりませんが、出産育児一時金を受けることができます。2023年4月から、出産育児一時金は一児につき一律50万円です。双子なら100万円、三つ子なら150万円が受け取れます。

出産育児一時金はかかった費用を病院が健康保険機関等に請求して、直接病院に支払われます。そのため出産時に窓口で高額な出産費用を立て替えることはありません。かかった出産費用は医療機関への支払いが終了したのち送られてくる「支払い決定通知書」で知ることができます。

出産費用が50万円未満だった場合は、差額分を請求することができます。差額支給がある場合にはその旨が「支払い決定通知書」に書いてありますので、費用の負担者は申請書を加入する健康保険機関に提出し、差額分を受け取ります。「支払い決定通知書」が送られてくる前に申請することもできますが、その場合は医療機関の領収書や明細書、医師による出産の証明等が必要になります。

例えば、出産費用が40万円なら差額の10万円を受け取れますので、出産後の忙しい時ではあるでしょうが、忘れずに申請するようにしましょう。

また、出産のために会社を休み給与を受けられなかった場合は、健康保険から出産手当金が支給されます。出産日以前42日(双子以上の多胎である場合は出産日以前98日)から出産の翌日以後56日までの間に会社を休んだ健康保険加入者が、標準報酬日額の3分の2に相当する金額を受け取れるものです。会社を休んでも給与の支払いがあり、かつ給与額が出産手当金の額を下回ると出産手当金と給与の差額が支給されます。支給額や申請の方法などは勤務先で確認しておきましょう。

確定申告で出産費用が返ってくることも

もし、出産前後に入院するなどして高額な医療費がかかった場合は、確定申告で医療費控除を受けられる場合があります。その年の1月1日から12月31日までに払った医療費が対象です。申告すると実際に払った医療費から出産一時金や高額療養費、保険給付金などを差し引いて、さらに10万円を差し引いた金額に対する税金が戻ってきます。

<医療費控除の控除額>

控除額(最高200万円)=その年中に支払った医療費―保険金などで補填される金額-10万円または所得金額の5%のいずれか小さい額

妊娠・出産に関して、医療費控除の対象となる医療費には以下のようなものがあります。

  • 入院費・分娩費・赤ちゃんの入院費
  • 妊娠と診断されてからの定期検診や検査などの費用、通院費用
  • 出産で緊急入院する際のタクシー代

通院費用は領収書がなくても、家計簿の記録などをもとに、医療費控除の明細書に記入、提出すればよくなっています。

ただし、里帰り出産のための交通費や入院するための洗面具など身の回り品の購入費、差額ベッド代などは医療費控除の対象になりません。

医療費から差し引く「保険金など補填される金額」の具体例には、以下のようなものがあります。

  • 生命保険や損害保険の入院給付金や手術給付金など
  • 高額療養費や出産育児一時金等の給付金
  • 会社の健保組合等からの給付金など

例えば、出産時に帝王切開等医療行為を受けて、自分で加入している医療保険から入院給付金を受け取った場合などは、その金額も差し引きます。

いずれにしても医療費控除を受けるには、領収書や給付金等の通知書、交通費の記録等を細かく残し、もれがないように申告しましょう。ちなみに医療費控除は会社員であっても年末調整はできません。必ず翌年に確定申告が必要です。

なお、妊娠がわかってからの妊婦健診は、自治体ごとに回数は異なりますが、一定回数分を公費で受けられます。妊婦健診は自治体単位で行うため、里帰り出産をする人は妊婦健診の費用を負担する自治体の長宛てに「里帰り出産等妊婦健康診査受診費用助成金交付申請書」を提出しなくてはなりません。里帰り後に郵送でも受け付けてくれる自治体が多いようですが、自治体独自の検診制度等がある場合もあります。里帰り出産をするなら、現在住んでいる自治体の検診と合わせてすべて受けられるのかも含めて、里帰りする前に、出産する自治体に確認しておくと安心でしょう。

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02出産費用は様々な要素で変動する

出産費用の平均的な金額はわかりましたが、実際にかかる出産費用は人それぞれです。ここからはどのような要素で出産費用が変動するのかを見ていきましょう。

都道府県により異なる

厚生労働省保険局の集計によれば、全国の公的病院の出産費用の平均値は約46万円です。

しかし、同じ公的病院で出産しても県ごとに平均値は異なります。2022年度の都道府県別出産費用を見ると、最も安い県は鳥取県の約36万円です。ほかにも、奈良県、佐賀県、鹿児島県、沖縄県が平均値で30万円台後半となっています。

逆に最も高いのは東京都の約56万円で、他にも茨城県が約53万円、神奈川県が約51万円、山形県、新潟県が約50万円となっています。最も安い鳥取県と最も高い東京都では平均値で約20万円の差があります(※)。

※出典:厚生労働省「出産費用の見える化等について」26P

施設により異なる

出産する医療機関によっても費用が異なります。差額ベッド代等を含んだ負担金額は、施設ごとに以下のようになっています。

※出典:厚生労働省「出産費用の見える化等について

集計値から見ると、全体の平均値と比べて公的病院と助産院を含む診療所は安くなっていますが、私的病院は3323円、診察所は1万116円高くなっています。公的病院には国公立病院や国公立大学病院、国立病院機構等があり、診療所には官公立診療所や助産所、個人診療所の他、医療法人診療所があります。私的病院の医療法人病院や個人病院と診療所の区別がわかりにくいですが、病院とは20床以上の病床がある医療施設のこと、診療所は19床以下または病床がない医療施設を指します。

しかし、今は小規模の診療所でも、洗練された雰囲気で高級感のある、いわゆる「ホテルライク」な部屋やフルコースのお祝い膳等で差別化を図る医療機関もあり、実際には選ぶ病院や診療所によって費用が大きく異なります。出産費用は正常分娩であれば自由診療で行われているため、国や自治体で正確な価格設定の基準を設けることができません。

自分たちはどのような出産を望むのかを夫婦でよく話し合って、病院の料金体系等もよく聞いてから出産施設を決めましょう。

出産方法により異なる

出産費用は出産方法によっても異なります。麻酔など医療処置をしない自然分娩の場合、前述の正常分娩でかかる費用とほぼ同額になります。正常分娩が困難と判断して事前に出産日を決めて行う帝王切開や、緊急的な帝王切開の場合は、医療行為となりますので健康保険が適用されます。

また、「和痛分娩」や「無痛分娩」など、麻酔などで痛みを和らげる出産方法もあります。麻酔代や陣痛促進剤などの投与代がかかりますが、本人が希望して行う医療行為ですので、健康保険の適用はできず、全額自己負担となります。そのため、自然分娩より出産費が高額になるのが一般的です。

「和痛分娩」や「無痛分娩」などを行う病院は限られています。希望する場合は事前に行っている病院を調べ、その費用も確認しておきましょう。

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03出産費用を用意しておこう

以上、出産時にかかる費用について見てきました。出産費用はざっくりと50万円程度はかかるものの、50万円の出産育児一時金で補填することができます。出産費用が50万円未満であれば、申請することで差額分を受け取ることもできます。

しかし、出産する地域や出産方法、選んだ病院によっては60万円、70万円といった高額な費用がかかる場合もあります。自分が希望する出産ができる病院を事前によく調べ、かかる費用を目標額として妊娠中に毎月積立をしていきましょう。

今回は出産のための入院から退院までにかかる費用について主にお伝えしました。しかし、出産が終ったら費用がかからなくなるわけではありません。赤ちゃんが退院するとき、自家用車で家に帰るならまずチャイルドシートが必要です。家に帰れば産着やオムツはもちろん、自宅の環境によってはベビーベッドやベビーバスなど、そろえたい物もいろいろとあるでしょう。

赤ちゃんとの幸せな時間を過ごすためにも、妊娠がわかったら出産時の費用だけでなく、購入、レンタルするベビー用品をピックアップし、計画的に出産費用を準備していきましょう。

また最近は、少額投資非課税制度「NISA」を利用して教育資金を確保する家庭も増えています。NISAは2024年1月から制度が新しくなり、年間で合計360万円(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)まで非課税で投資できるようになりました。教育資金づくりにもNISAをぜひ活用しましょう。詳しくは「新NISAではじめる資産形成」をご覧ください。

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有田美津

監修:有田美津子

CFP®、住まいのお金相談室代表

プロフィール

銀行での融資業務、住宅販売、損保会社を経て独立。現在は企業に属さないFPとして、ライフプラン相談やお客様の希望を実現するまでのサポートを行っている。年間相談件数150件以上、相談経験を活かした執筆やセミナーで中立な情報提供も続けている。


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